来館・成約

厄年を気にする二人には、式場が判断せず日取りの選択肢を渡す

見学の途中で、二人のどちらかが少し声を落として聞いてきます。「あの、厄年にあたるんですが、結婚式ってしても大丈夫なんでしょうか」。式場のプランナーが、いちばん返事に困る質問のひとつです。調べれば何か出てくる気もするし、断言して外れたら責任が持てない。かといって「気にしなくていいですよ」と流せば、本人より先に、横にいる親の表情が曇ることがあります。

僕の提案は、可否の答えを式場が出さないことです。そのかわり、二人が自分で決められるように、日取りの選択肢と確かめ先を渡します。この記事では、なぜ式場が答えを持たないほうがいいのか、選択肢をどう並べるのか、見学のどの場面で受けるのか、やらないほうがいい条件はどこかを整理します。出典のある数字は使わず、判断の条件と段取りだけで書きます。

式場が「大丈夫です」と言わない理由

厄年と結婚の関係は、神社やお寺、地域、家ごとに考え方が違います。結婚はむしろ区切りとして良いと受け止める見方もあれば、念のため避けたいという家もあります。どれが正しいと決める根拠を、式場は持っていません。持っていないものを、見学の場の空気で断言するのは、あとで揉める元になります。

揉め方には型があります。式場が「気にしなくて大丈夫です」と言い、二人はそれで安心して契約する。あとから親族の誰かが「厄年に式を挙げるなんて」と言い出す。二人は「式場が大丈夫と言ったのに」と思い、式場への信頼が落ちる。契約後にこうなると、日取りの変更や取り消しの話に進みかねません。

逆に「厄年は避けたほうがよいかもしれません」と言えば、二人の不安を式場が増やすことになります。気にしていなかった同行者まで気にし始めて、見学が不安の話で終わります。

どちらの言い方も、式場が判断を引き受けています。引き受けるべきなのは、判断の材料を並べることです。判断そのものは二人と家族のものです。

質問の裏にある、本当の不安

「厄年でも大丈夫か」と聞く二人が知りたいことは、実は一つではありません。

一つは、本人が気になっている場合です。縁起を大事にしたい、悪いことが起きたら嫌だ、という気持ち。もう一つは、本人は気にしないが、親や祖父母が気にしている場合です。この二つは、同じ質問の形で出てきます。見分けないまま答えると、的を外します。

前者なら、必要なのは安心できる確かめ先です。後者なら、必要なのは親に説明するための材料です。ですから、答えを出す前に一つだけ聞き返します。「ご自身が気になっていますか。それとも、ご家族からお話が出ていますか」。聞き方はやわらかくて構いません。これだけで、次に渡すものが決まります。

聞き返すのは、答えを避けるためではありません。聞かれた質問に、正面から返すためです。

渡す選択肢は三つに絞る

選択肢はたくさん並べるほど、決められなくなります。僕は次の三つに絞ります。

一つ目は、入籍と式の日を分ける考え方です。入籍した日と式の日は、同じでなくてもかまいません。役所に届けを出す日と、人を集めて式を挙げる日を別に置けます。厄年のことが気になるなら、気になる時期とずらして式の日を考える手があります。式場の側からは、日取りの候補を増やすことにもなります。

二つ目は、式の時期をずらす案です。気になる時期の前後で、空いている日を比べて出します。ここは式場が得意な領域です。繁忙期か閑散期か、人気日か平日か、料金がどう変わるか。厄年の話をきっかけに、日取りの選び方を丸ごと見直す二人もいます。

三つ目は、確かめ先を示すことです。厄年の考え方は神社やお寺で違うので、二人が式を挙げたい場所、あるいは家が付き合いのある神社やお寺に、直接聞いてもらいます。式場が代わりに確かめる必要はありません。確かめに行く行為そのものが、二人と家族の気持ちを落ち着ける役目を果たします。

この三つのどれを選んでも、式場の売上が減るとは限りません。式の日が動けば、予約の日も動きます。逆に、何も渡さずに「どうでしょうね」と返すほうが、二人を迷わせて、契約の時期を先送りにします。

見学のどこで受けるか

この質問は、見学の序盤より、見積もりを見ている途中や、帰り際に出ることが多いと僕は感じています。聞きにくいことほど、場が温まってから出てくるからです。

だから、最初の挨拶や日取りを聞く場面で、先に一言置いておく方法もあります。「日取りは、六曜や厄年のことも含めて、気になることがあれば先に教えてください」。式場が先に口にしておくと、二人は聞きにくい質問を切り出しやすくなります。聞かれなかったときは、それで構いません。

帰り際に出てきたら、その場で全部答えようとしません。三つの選択肢を口頭で軽く伝え、見学のあとのメールで、文面にして送ります。言葉だけで渡すと、二人が親に説明するときに、うまく伝わらないからです。親に見せられる形で残すことが、実は大事なところです。

親に渡す紙は一枚にする

親が気にしている場合、説明の主役は二人ですが、手元に紙があると話が進みます。A4一枚程度で、次の三つを載せておきます。

厄年のことは、式場として可否を決める立場にない、という断り書き。選択肢が三つあること。そして、気になる場合に確かめる先の考え方。

断り書きを入れておくことが大切です。式場が決めない、と先に書いておけば、あとから「式場がこう言った」という話にならずに済みます。紙の中で、特定の神社や教義に踏み込まないことも、同じ理由です。

この紙は、厄年だけでなく、六曜や、喪中、家の習わしなど、日取りに関わる気がかり全般に使い回せます。質問の種類が違っても、式場が判断を引き受けず、選択肢と確かめ先を渡す、という形は変わりません。同じ紙を一つ持っておくと、プランナーごとの答え方のばらつきも減ります。

プランナーの答え方をそろえる

この質問に、プランナーによって違う答えが出ると、あとで困ります。ある人は「大丈夫ですよ」、ある人は「気にされる方は避けますね」。同じ式場の中で、言うことが食い違うからです。

そろえるのは、答えの中身ではなく、答えの形です。次の流れを共通にします。まず「気になっているのはご自身ですか、ご家族ですか」と聞く。次に「式場からは可否は申し上げられません」と伝える。そのうえで選択肢を渡し、メールで紙を送る。この形なら、プランナーの経験や個人の考えに関係なく、同じ対応になります。

新人のプランナーほど、聞かれて答えに詰まり、つい断言してしまいます。形を決めておくのは、新人を守ることにもなります。

見学後のメールは、このくらいの長さで足りる

紙に起こすといっても、大げさな資料は要りません。見学後に送るメールの中ほどに、数行の段落を置くだけで足ります。

たとえば、こんな書き方です。「厄年のお話をいただいたので、日取りの考え方を三つ書いておきます。入籍の日と式の日は分けることもできます。気になる時期の前後で、空いている日をお出しすることもできます。神社やお寺によって考え方が違うため、お近くや、ご家族がお付き合いのあるところに、一度聞いてみていただくのも一つです。式場として、よい悪いを申し上げることはしていません。ご家族と相談されるときの材料にしてください」。

最後の一文が効きます。「材料にしてください」と書いておくと、二人は式場の返事を待たずに、自分たちで話を進められます。式場が結論を持たないことが、二人の側から見ると、押し付けられていない安心感になります。反対に、この段落を省いて口頭だけで済ませると、数日後に二人から「あのとき、どう言われましたっけ」と聞き返されます。聞き返しが来ること自体は悪くありません。ただ、文面で残してあれば、そもそも聞き返さなくて済みます。

数字に置き換えて、どこで効くのかを見る

出典のある数字は使いませんが、台帳で確かめられる見方は示せます。

厄年や縁起の質問が出た見学を、台帳にメモしておきます。質問が出た組と出なかった組を、契約に至った割合で比べます。出た組の契約率が低いなら、質問の場面で何かが止まっています。そのうえで、選択肢を渡した月と渡さなかった月を比べます。

注意したいのは、件数が少ないことです。厄年の質問は、そう頻繁には出ません。月に数組しか出ない式場なら、割合を出しても意味がなく、一組ずつ、その後どうなったかを追うほうが役に立ちます。数字の裏づけが取れるまでは、運用の形を変えて、様子を見る程度で十分です。

やらないほうがいい条件

どの二人にも選択肢を並べるのがよい、というわけではありません。

質問が軽いときは、軽く返します。「厄年なんですけど、まあ気にしてないです」と、本人が笑って言っているのに、三つの選択肢を丁寧に説明すると、かえって重い話になります。相手が気にしていないなら、「そうですか、では日取りの話を続けましょう」で進めます。

日取りがすでに決まっている二人にも、同じ型は向きません。契約済みで日が動かせないなら、入籍と式の日を分ける案や、時期をずらす案は、現実的ではなくなります。この場合は、確かめ先の案内だけを残して、不安が強いなら神社や寺に聞くことを勧めます。

神前式や仏前式を扱う式場は、立場が違います。式を執り行う側として、考え方を持っている場合があるので、「式場として申し上げられません」ではなく、その会場の見解を二人に伝えるほうが自然です。この記事の型は、宗教色の薄い式場や、人前式を中心にする会場向けです。

まとめ

  • 厄年と結婚の関係は神社・お寺・地域・家で考え方が違い、式場が可否を断言する根拠はない
  • 「大丈夫です」も「避けたほうが」も、式場が判断を引き受ける言い方。外れたとき、契約後の揉めごとと信頼の低下につながる
  • 答える前に「ご自身ですか、ご家族ですか」と一つ聞き返し、本人の不安か、親へ説明する材料かを見分ける
  • 渡す選択肢は三つ。入籍と式の日を分ける、式の時期をずらす、神社やお寺に確かめる
  • 見学の帰り際に出た質問は、口頭で軽く答え、あとでメールの紙にして親に見せられる形で残す
  • やらないのは、本人が軽く言ったとき、日取りが契約済みで動かせないとき、宗教施設を持つ式場のとき

厄年の質問に必要なのは、式場の見解ではなく、二人と家族が決められるだけの材料です。