来館・成約

式場の見学予約では、二人が保存した参考写真を1枚だけ送ってもらう

見学予約のフォームに、日時と人数と連絡先を聞く欄はあります。ところが、二人が何を見て式場探しを始めたのかを聞く欄は、ほとんどの会場にありません。

結論から書きます。見学予約の段階で、二人がスマホに保存している参考写真を1枚だけ送ってもらう欄を足すと、当日の最初の15分の使い方を決められます。1枚です。何枚も求めると、答える側の負担が増えて、欄ごと飛ばされます。

この記事の数字は、出典のある統計ではありません。参考写真を事前に送った組の成約率が何ポイント高いという調査を、僕は見つけられていません。数字は全部、僕が置いた前提です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

見学の最初の15分は、ほぼ「一般向けの案内」になっている

見学の流れは会場ごとに違いますが、多くの会場では、最初の10〜15分で受付、ウェルカムドリンク、会場全体の説明をします。このとき担当者は、目の前の二人がどんな結婚式を思い描いているのかを知りません。

だから、どの二人にも通じる話から入ります。創業の経緯、チャペルの歴史、料理の評判、アクセスの良さ。どれも間違いではないです。ただ、二人にとっては「どこの式場でも聞く話」になりやすい時間でもあります。

二人のほうは、すでに何件か見ているかもしれません。Instagramで保存した写真や、友人の結婚式の写真が頭に残っています。たとえば、白い壁と緑に囲まれた小さな庭の写真。あるいは、高い天井から光が落ちる大きな階段の写真。その写真を軸にして会場を見たいのに、担当者はそれを知らないまま、順路どおりに案内を始めます。

これが、見学の最初の15分に起きていることです。二人は「聞きたいことを聞くタイミング」を探していて、担当者は「全員に話す内容」を話している。かみ合わないまま、時間だけが進みます。

参考写真が1枚あると、何が変わるか

参考写真を事前に1枚受け取っていると、担当者は、見学が始まる前に三つのことを決められます。

  • 最初に見せる場所。庭の写真なら庭から、階段の写真なら階段のある会場から入れます。ロビーから順番に回る必要はありません
  • 話す順番。写真に写っているものが「光」なのか「緑」なのか「人数の多さ」なのかで、冒頭の一言が変わります
  • 見せないでいい場所。写真から遠い場所を、時間をかけて説明しなくて済みます

三つ目は意外に大きいです。見学の時間は限られています。仮に90分とすると、ここに7つの場所を見せるなら、1か所あたり13分ほどです。二人の関心から遠い場所を省けば、近い場所に時間を回せます。

もう一つ、写真には、二人が言葉にしにくいことが出ます。「おしゃれな感じ」「落ち着いた雰囲気」と口で言われても、担当者の頭に浮かぶ絵は人によってばらばらです。写真なら、同じ絵を二人と担当者が見られます。

向く会場と向かない会場

全部の会場に向く方法ではありません。分かれ目は、会場の「見せ場」が複数あるかどうかです。

向く会場は、次のような会場です。

  • 庭、チャペル、大広間、屋上など、見せ場が3か所以上あり、見学の順番を選べる会場
  • 挙式のスタイルが複数あり、二人の希望で提案が大きく変わる会場
  • 一組の見学時間が長く、冒頭の15分の使い方が後半に効いてくる会場

向かない会場は、次のような会場です。

  • 会場が1つのホールで、見せるものがほぼ決まっている会場。写真が来ても、順番を変える余地がありません
  • 見学の予約が電話中心で、フォームを使う二人が少ない会場。欄を足しても、集まる件数が少なすぎて役に立ちません
  • 担当者が、受け取った写真を見学前に見る時間を取れない会場。送ってもらっても、当日の朝に初めて見るなら効果は薄いです

一番の条件は最後です。写真を受け取る側に、見る時間と、見せる順番を変える権限があるか。ここが整っていないなら、欄を足す前に、そちらを直したほうが先です。

聞き方を決める

欄の作り方で、集まる件数も中身も大きく変わります。僕なら、次の四点を決めます。

1. 必須にしない

必須にすると、写真を持っていない二人が予約をやめます。見学予約の完了率が下がる損のほうが、写真を集める得より大きくなりやすいです。任意の欄にして、「あれば」と書きます。

2. 1枚だけと明記する

「参考にしている写真があれば、1枚だけ添付してください」と書きます。枚数を絞ると、二人は「一番近いもの」を選ぶので、そこに優先順位が出ます。5枚送られてくると、担当者は5枚の共通点を探す作業になり、読み取りが曖昧になります。

3. 会場の写真に限定しない

「うちの会場の写真」を求めると、他の式場の写真は送りにくくなります。「他の式場の写真でもかまいません」と書きます。他社の写真は、競合に手の内を見せることにも見えますが、二人が何に惹かれているかを知るほうが、会場の側には価値があります。

4. 送り方を一つに絞る

フォームの添付、LINE、メールのどれでもよいとすると、集計も見落とし防止も難しくなります。予約フォームの完了画面に、LINEで送ってもらうリンクを置くなど、一本に決めます。

写真が来たときの見方

写真が来ても、担当者が深読みしすぎると、かえってずれます。見るのは、次の三つに絞ります。

  • 何が一番大きく写っているか(空間、人、料理、花、光)
  • 人が写っているか。写っているなら、何人くらいか
  • 屋内か、屋外か

この三つが分かれば、冒頭の話はほぼ決まります。たとえば、人がたくさん写った大広間の写真なら、収容人数の話から入る準備ができます。屋外の芝生の写真なら、雨の日の代替の動線の話を、聞かれる前に用意できます。

注意したいのは、写真は「欲しい結果」であって、「予算」や「人数」を表すわけではないという点です。豪華な大広間の写真を送った二人が、実際は少人数を考えていることもあります。写真から決めるのは、見せる順番と最初の話題だけです。人数と予算の話は、これまでどおり、見学の中で聞きます。

来なかったときは、当日の最初の質問で補う

任意にする以上、写真が来ない組のほうが多いはずです。その組には、当日の出迎えの直後に、一つだけ聞きます。

「スマホに保存している写真を、1枚だけ見せてもらえますか」

見学が始まってから聞いても、遅くはありません。事前に受け取れたときより、使える時間は短くなりますが、順番を決める材料にはなります。ここで見せてもらった写真に合わせて、最初の見せ場を選びます。

こう聞くと、事前に送った組と送らなかった組で、当日の見学の進み方が分かれます。この差が、あとで効果を見るときの比較の軸になります。

損得を数える

ここから先は、すべて仮置きの数字です。実在の会場の実績ではありません。

前提は次のとおりです。

  • 月の来館は60組
  • 欄を足すと、30%の18組が事前に写真を送る。残りの42組は当日に聞く
  • 事前に送った組と、そうでない組で、成約率に4ポイントの差が出る、という想定
  • 1組あたりの粗利は120万円

4ポイントの差は、僕が置いた数字です。写真を送る二人は、もともと検討が進んでいて、成約しやすい二人だと考えるのが自然です。写真を送ったから決まった、とは言い切れません。因果の向きは分かりません。そのため、差を半分にした場合も見ます。

計算します。18組に4ポイントの差なので、18 × 0.04 = 0.72組。月に0.72組の成約が増える計算です。粗利120万円をかけると、月に86万4千円です。

差が2ポイントなら、0.36組で、月に43万2千円になります。

送る割合も動かしてみます。差は4ポイントのままです。

  • 送る割合が10%なら、6組が送り、増える成約は0.24組。月に28万8千円
  • 30%なら、18組が送り、0.72組。月に86万4千円
  • 50%なら、30組が送り、1.2組。月に144万円

この表から分かることは二つあります。

一つは、効果の大きさが、送る割合と差の大きさの両方で決まることです。割合が低いと、差が大きくても月の金額は小さくなります。欄の置き場所や書き方を工夫して、送る割合を上げるほうが、差の大きさを期待するより確実です。

もう一つは、この数字は、そのまま「欄を足した効果」にならないことです。写真を送る二人は、もともと成約しやすい二人かもしれません。月86万円のうち、欄を足したから増えた分は、もっと小さい可能性があります。

そのため、効果は「送った組と送らなかった組の比較」ではなく、欄を足す前の数か月と、足したあとの数か月の来館全体の成約率で見ます。季節の影響が出るので、前年の同じ月と比べるのが安全です。

費用のほうも見ておきます。欄を足す作業は、フォームの設定で数十分です。担当者が写真を見る時間は、1組あたり5分と置くと、18組で90分。月に1時間半です。費用はほとんど無視できる大きさです。損得の分かれ目は、金額より、担当者が実際に見て、順番を変えてくれるかどうかです。

続けるかやめるかの判断

3か月続けて、次の三つを確認します。

  • 送る割合が10%を切っていないか。切っているなら、欄の置き場所か、書き方を見直します
  • 担当者が、事前に写真を見て、見学の順番を変えた回数。ゼロに近いなら、写真が活かされていません。運用を直すか、やめます
  • 来館全体の成約率が、前年の同じ時期と比べてどう動いたか。他の施策も同時に動いているので、これだけで判断せず、補助の材料にします

三つのうち、一つ目と二つ目が崩れているなら、続ける理由はありません。三つ目だけで続けるかどうかを決めるのは、早すぎます。

まとめ

  • 見学の最初の15分は、二人の関心を知らないまま、一般向けの案内で埋まりやすいです
  • 予約の段階で、保存している参考写真を1枚だけ送ってもらうと、最初に見せる場所と話す順番を決められます
  • 向くのは、見せ場が3か所以上ある会場と、写真を見る時間と順番を変える権限が担当者にある会場です
  • 欄は任意にして、1枚だけと明記し、他社の写真でもよいと書き、送り方を一つに絞ります
  • 写真から決めるのは、見せる順番と最初の話題だけです。人数と予算は見学の中で聞きます
  • 効果は仮置きの数字で月に数十万円の幅があります。送った組と送らなかった組の比較は、因果が分からないので、前年同月の全体の成約率で見ます
  • 続ける条件は、送る割合と、担当者が実際に順番を変えた回数です

見学の最初の15分は、二人の関心を聞く時間に使えます。