来館・成約

式場の見学案内メールには、靴と上着の一言を入れる

見学予約の案内メールに、場所と時間と駐車場の説明は書いてあるのに、服装と靴の話が一行もない。式場の予約確認メールは、そういう作りのものがほとんどです。

結論から書きます。庭、屋外のチャペル、砂利や芝の通路、長い階段のどれかがある会場は、案内メールに「歩きやすい靴で」「羽織るものを」の一言を入れたほうがいいです。理由は、見学の最後に外を見せられない組が、静かに出るからです。屋外を見ずに終わった組は、会場の一番いいところを見ていません。

この記事の数字は、出典のある統計ではありません。ヒールで庭を歩けなかった組が全国で何割いる、というデータを僕は見つけられていないので、数字は全部、僕が置いた前提です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

見学の最後に、外へ出ない組がいる

見学の流れは、会場によって違います。ただ、屋外のある会場は、ロビー、控室、披露宴会場、料理の試食と回って、最後にチャペルや庭を見せる、という順番が多いはずです。

ここで二人が白いワンピースにヒールのあるサンダル、というような格好で来ているとします。庭に出る前に、プランナーがこう聞くことになります。

「外は砂利の道なんですが、よろしければ、ご覧になりますか」

聞かれたほうは、行きますとも行きませんとも言いにくい。多くの人は「大丈夫です」と遠慮します。その「大丈夫」は、行きたくないという意味のこともあれば、靴が汚れるのを気にして言っていることもあります。プランナーには区別がつきません。

結果として、庭を省いた見学ができあがります。二人は、会場の写真を見たときに一番気に入った場所を、自分の足で歩かないまま帰ります。式場側は、見せられなかったことに気づきません。見学後のアンケートに「庭が見られなかった」と書かれることも、まずありません。

損を数える前提

次の前提は、すべて仮置きです。実在の会場の実績ではありません。

  • 月の来館は80組。屋外を歩く動線がある会場です
  • そのうち5%の4組が、靴や服装の事情で、屋外の見学を省きます
  • 屋外まで見た組の成約率は38%、省いた組は28%。屋外を見たかどうかで10ポイントの差が出る、という想定です
  • 1組あたりの粗利は120万円

この差10ポイントは、僕が置いた数字です。屋外を見た組は、そもそも会場への関心が高いので、見たから決まった、とは言い切れません。因果の向きは分かりません。そのため、あとで差を半分にした場合も見ます。

計算します。省く組が4組、差が10ポイントなので、4 × 0.10 = 0.4組。月に0.4組の成約を逃している計算です。粗利120万円をかけると、月に48万円です。

この48万円は、見学案内メールに一行足すだけで、全部が戻ってくる金額ではありません。「歩きやすい靴で」と書いても、全員が靴を替えてくるわけではないからです。仮に、省く組が4組から2組に半分になったとします。戻るのは月24万円です。

省く割合も動かしてみます。

  • 省く割合が2%なら、月に1.6組が省き、損は19万円ほど
  • 5%なら、月に4組が省き、損は48万円
  • 10%なら、月に8組が省き、損は96万円

差を10ポイントでなく5ポイントに半分にすると、損はそれぞれ半分になります。5%で省く場合は24万円です。

書く側のコストは、案内メールのテンプレートを一度直す手間だけです。内容は一行で、毎月の送信にかかる手間は増えません。損が月に10万円でも、直さない理由は見当たりません。数字の精度より、コストがほぼゼロだという点が、この判断の中心にあります。

書くべき会場、書かなくていい会場

とはいえ、全部の会場に必要な一言ではありません。分かれ目は、見学で二人が自分の足で歩く屋外が、どれくらいあるかです。

書いたほうがいい会場は、次のどれかに当てはまります。

  • 庭やテラスに出るとき、舗装されていない地面(砂利、芝、土)を歩く
  • 屋外のチャペルや、離れの建物がある
  • 屋外の階段や坂が、見学の動線に入っている
  • 冬に屋外を5分以上歩く、または夏に日陰のない場所を歩く

書かなくていい会場は、見学の動線が全部屋内で、エレベーターで移動でき、屋外はガラス越しに見せれば足りる会場です。この場合は、服装の一言を足すと、かえって「何か特別な格好が要るのか」と身構えさせます。

迷う会場は、見学の動線を一度、自分で歩いて確かめてください。受付から最後の部屋まで、二人と同じ速さで歩きます。靴が汚れる場所、風が冷たい場所、日差しが強い場所に出会うなら、書く側です。

書き方で失敗する3つの型

一言を足すと決めたあとに、書き方で逆効果になる型があります。

1つ目は、ドレスコードのように書く型です。「服装はスマートカジュアルでお越しください」と書くと、普段着で来るつもりだった二人が、何を着ればいいのかを調べ始めます。見学は、気軽に来てほしい場です。「特に決まりはありません。普段のお出かけの格好で大丈夫です」を先に置いてから、靴の話をします。

2つ目は、注意書きの山に埋める型です。駐車場の案内、キャンセル規定、持ち物、個人情報の扱いが同じ大きさの文字で並ぶと、靴の話は読まれません。案内メールの前半、日時と場所を書いた段落の直後に置くのが、読まれやすい場所です。

3つ目は、理由を書かない型です。「歩きやすい靴でお越しください」だけだと、命令に見えます。「庭の通路が砂利のため」と理由をつけると、お願いになります。

書き方の例を、会場の条件別に置きます。

砂利の庭がある会場の例です。

「当日は、お庭やチャペルのほうまでご案内します。通路の一部が砂利ですので、歩きやすい靴だと安心です。ヒールのある靴でいらした場合は、スニーカーのお貸し出しもあります」

冬の屋外チャペルがある会場の例です。

「チャペルは屋外にあり、見学で10分ほど外に出ます。冬場は風が冷たいので、羽織るものがあるとお楽にご覧いただけます」

屋内だけで済む会場には、書かないという選択もあります。ただし、ドレスの試着体験を見学に入れている会場は、試着のしやすい下着や、脱ぎ着しやすい服という別の一言が要ります。

「貸し出し」を用意すると、一言が強くなる

案内文に「ヒールでは歩きにくい」と書くと、二人は「今から靴を買わなきゃいけないのか」と受け取ることがあります。それを避けるには、会場側に用意があることを一緒に書きます。

用意するものは、高価である必要がありません。

  • 脱ぎ履きしやすいスリッパや、使い捨てのフットカバー(室内用)
  • 屋外用に、サイズ違いを数足そろえた履き替え用の靴
  • 夏は日傘、冬はブランケットかひざ掛け
  • 雨の日は、傘を入口に立てておく場所

履き替え用の靴は、数足あれば足ります。全員が使うわけではなく、使うのは省く組の一部だけだからです。サイズを22.5から25.5まで1足ずつそろえても、2万円前後の備品にすぎません。この金額は僕の目安で、買う靴によって変わります。

大事なのは、案内文の「ヒールでもご安心ください」の一文を、実際に守れる状態にしておくことです。書いたのに用意がなければ、当日のプランナーが謝る場面が増えます。

当日、屋外を省いたかを数える

この施策が効いたかどうかは、成約率の変化だけを見ても分かりません。成約率には、媒体の出し方や季節など、他の要因が多すぎるからです。

見るのは、屋外まで見学に入った組の割合です。見学後の記録に、「庭・チャペルまで行けたか」を、はい・いいえで1行足します。プランナーが見学を終えたあとに書くだけで、二人に聞く必要はありません。

案内メールを直す前の1か月と、直した後の1か月で、この割合を並べます。前は92%、後は96%、のような形で見えるはずです。数字は例です。動いていれば効いています。動いていなければ、案内文が読まれていないか、そもそも省く組が少なかったということです。

どちらの場合も、次にやることがはっきりします。読まれていないなら置き場所を前に移す。省く組が少ないなら、この施策に追加で手をかけない。

注意したいのは、記録のしかたです。「行けた・行けなかった」の理由まで細かく書かせると、続きません。理由は、いいえのときだけ、靴・天気・時間・二人の希望、の4択から選ぶ程度にとどめます。

雨や暑さの日は、別の問題として切り分ける

この記事で扱うのは、二人の服装と靴が理由で屋外を省くケースです。雨の日の見学や、猛暑日の屋外待機のように、天気そのものが理由のケースは、別の対応が要ります。天気の悪い日は、案内文の一言では解決しません。屋内で見せる順番を変える、日を改めて提案するなど、当日の判断になります。

一方、服装の一言は、天気の悪い日にも効きます。雨の日に「濡れてもいい靴だと安心です」と添えれば、二人は外を見るつもりで準備してきます。外を見られるかどうかの判断が、二人と会場の両方にとって、事前に済んだ状態になります。

見学後の写真と、案内メールの関係

もうひとつ、地味な効用があります。屋外を見学した二人は、庭で写真を撮ることが多いです。撮った写真は、家に帰って家族に見せたり、他の式場と見比べたりするときの材料になります。

屋外を省いた組は、この材料を持ち帰れません。家に帰って家族に見せるのは、披露宴会場の写真だけになります。庭がいちばんの強みの会場が、強みを伝える機会を二人に渡し損ねています。

もちろん、これは僕の推測です。写真を撮った組のほうが成約しやすい、というデータを、僕は持っていません。ただ、持ち帰る材料が一つ減る、という点は、事実として言えます。

まとめ

  • 見学案内メールに服装と靴の一言が無いと、屋外を歩く会場では、庭やチャペルを見ずに終わる組が静かに出る
  • 月80組、5%が屋外を省き、屋外を見た組と省いた組の成約率の差が10ポイント、粗利120万円と置くと、月に約48万円の損になる。数字はすべて仮置きで、差が5ポイントなら半分の24万円
  • 書くかどうかは、見学の動線に砂利・芝・屋外のチャペル・階段・長く外に出る時間があるかで決める。全部屋内の会場には、書かない
  • 書き方は、普段の格好で大丈夫と先に置く、日時と場所の直後に置く、理由を添える。ドレスコードのように書かない
  • 靴や羽織るものの貸し出しを用意してから、「ヒールでもご安心ください」と書く
  • 効果は成約率でなく、「庭・チャペルまで行けたか」を見学後の記録に1行足して、前後1か月で比べる