見学に友人やきょうだいが同席した日は、二人の返事を先に取る
見学の予約は二人の名前で入っているのに、当日の受付に友人が一人ついてきている。新婦の妹が来ている。新郎の学生時代の友人が、なぜか先に会場の写真を撮っている。親の同席には対応の型を持っている式場でも、親以外の同席者には決まった動きがないことが多いと思います。
僕の考えは、同席者が誰であっても、各場面で返事を取る順番は「二人が先、同席者は後」に固定する、というものです。同席者を歓迎しないのではなく、同席者の一言が二人の評価を上書きする場面を、順番だけで減らします。この記事は、その段取りの整理です。
先に断っておくと、友人やきょうだいの同席率や、同席時の成約率を示した調査は、探しましたが見つかっていません。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の数字ではありません。断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。
親ではない同席者は何が違うか
親が来る場合は、費用を出す人、招待する側、見守りの人、という三つの立場で見分けると運用できます。友人やきょうだいは、そこに当てはまりません。費用を出さないし、招待客として名前が挙がっているかも分からない。それでも二人は、わざわざ予定を合わせて連れてきています。
連れてきた理由は、だいたい次の三つに分かれます。
一つ目は、経験者としての助っ人です。すでに結婚式を挙げた友人や姉が、「ここ、見ておいたほうがいいよ」と判断の補助に来る。二つ目は、安心のための同行です。二人のうちどちらかが、決める場に一人で座るのが不安で、味方を連れてくる。三つ目は、感想を聞きたい相手です。のちのち招待する可能性が高い人の目で、雰囲気を確かめたい。
三つの理由に共通するのは、同席者の感想が、二人の判断材料として使われることです。親のように意思決定に参加する立場ではないのに、帰り道の「どうだった?」の一言が、二人の印象を動かします。
仕組みとして怖いのは、悪意のない一言です。「ここ、ちょっと暗くない?」「前に行ったところのほうが広かった」。比べる相手がいる人ほど、無意識に他の会場と比べて口にします。二人はその場では何も返さず、帰ってからその一言を思い出す。担当者のほうは、その場で何が起きたか気づけません。
同席者を見分ける最初の一言
見分けは、挨拶の直後の一往復で足ります。細かく聞き出す必要はありません。
僕が良いと思う聞き方は、二人に向けて、同席者の位置づけを確認する形です。「今日は、お友達もご一緒に回られる形でよろしいですか」と二人に聞く。答えるのは二人です。そのあとで、同席者に「今日は、お二人のどんなところを見てあげたいですか」と一度だけ聞く。同席者の目的が、ここで出てきます。
「経験者として見に来た」と言われたら一つ目、「ただついてきた」なら二つ目、「見てほしいと頼まれた」なら三つ目、と判断できます。肩書きを聞く必要はありません。聞く目的は、同席者に役割を渡す準備をすることです。
もうひとつ、この一言には副作用があります。同席者が、自分は観客ではなく、二人を手伝う人だと自覚します。それだけで、不用意な比較の一言が減る場合があります。ただし、これは効果を測った話ではなく、聞かれた側の気持ちを想像した仕組みの話です。
返事を取る順番を固定する
見学の場面ごとに、二人が先、同席者は後、という順番を決めておきます。担当者が毎回その場の空気で決めると、年上や話し上手の同席者の意見が先に出てしまいます。
会場の雰囲気を聞く場面では、最初の質問を二人に向けます。「お二人は、どんな雰囲気がお好みですか」。同席者が先に口を開いたら、「そう感じられたんですね。お二人はいかがですか」と、同席者の発言を受けてから二人に戻します。遮らない。否定しない。順番だけを戻します。
試食では、二人の感想を先に聞きます。二人が箸を置くまで、同席者に感想は求めません。同席者がおいしいと言ったあとで、二人が「普通でした」とは言いにくいからです。逆の場合もあります。同席者が「ちょっと味が濃い」と言ったあとで、二人が「おいしかった」と言いにくくなる。どちらも、二人の本音が出る前に消えます。
見積もりの場面では、金額を示した後の最初の質問を、二人の感覚に向けます。「この金額は、お二人の想定と比べていかがですか」。同席者の友人が「高くない?」と先に言ってしまうと、二人は金額を自分の言葉で判断する前に、他人の驚きを借りてしまいます。
順番を固定するというのは、同席者の意見を聞かないという意味ではありません。聞くのは後です。「お友達は、何か気になる点はありましたか」と、最後に一度は必ず渡します。同席者が連れてこられた意味を果たせるように。
同席者の質問を二人の質問に変える
同席者は、二人が聞かない質問をします。これは強みにもなりますが、扱いを間違えると、二人が置いていかれます。
たとえば同席者の姉が、「ゲストの駐車場は何台ですか」と聞いたとします。質問に答えるのは当然として、その答えを二人にも戻します。「お二人のご友人は、車で来られる方が多いですか」。同席者の質問を、二人の状況に引き戻す一言です。
この一言を挟まないと、二人にとって関係のない情報が積み上がります。二人は、姉が聞いた質問の答えをたくさん持って帰りますが、自分たちが何を知りたかったのかは整理されていません。同席者が経験者であるほど、この現象が起きやすいです。
逆に、同席者が鋭い質問をして、二人が「そういえば確かに」と顔を見合わせる場面もあります。そういうときは、「今のは、お二人のほうで気になっていたことでしたか」と聞きます。二人の答えがイエスなら、見積もりやメモに残す。ノーなら、答えはするが深追いしない。担当者がこの区別をつけるだけで、見学の後半の議論が、二人の優先順位に沿って進みます。
持ち帰りの紙は二人の宛名で書く
見学の終わりに渡す紙は、同席者がいる日でも、二人の宛名で書きます。同席者に渡すものは作りません。
理由は、持ち帰りの先です。紙は二人の家に行って、二人が見返します。同席者が目を通すのは、せいぜい帰りの電車の中までです。同席者向けに書いた情報は、二人の手元に残りにくい。
ただし、同席者の名前を紙に残すことには意味があります。「ご友人からのご質問:駐車場について」のように、同席者の質問と答えを短く一行で記録しておく。後日、二人が友人に「そういえば、あの会場、駐車場は何台って言ってた?」と聞かれたときに、紙を見れば答えられます。同席者に渡す紙を別に作るのではなく、二人の紙に同席者の質問の置き場所を作る形です。
追客のメッセージも同じです。「先日はご友人様とお越しいただき、ありがとうございました」と同席者に触れる一言は入れてよい。ただし宛先は二人のままで、同席者の感想を尋ねる文面にはしません。同席者の感想を担当者が直接聞きにいく形になると、二人の意思決定の外側に、もうひとつ聞き取りの経路ができてしまいます。
前提を置いたモデル計算
同席者への対応を整えることが、成約にどれくらい効くのかを、仮の数字で計算します。繰り返しますが、これは実在の式場の数字ではありません。順番を変えるだけで、どの規模の差になりうるかを見るための試算です。
前提は、次の通りです。月に40組が見学に来る式場を考えます。そのうち6組、つまり15%に、友人やきょうだいの同席があるとします。同席なしの組の成約率は30%と置きます。同席ありの組は、先に述べた「同席者の一言で二人の評価が上書きされる」ことで、成約率が20%に落ちていると仮定します。
この前提で、月の成約数を計算すると、同席なしの34組が10.2組、同席ありの6組が1.2組で、合計11.4組になります。もし同席ありの組の成約率が30%、つまり同席なしと同じ水準なら、合計は12.0組です。差は月0.6組、年にすると7.2組です。
同席ありの成約率が25%までしか戻らない場合でも、月の差は0.3組、年に3.6組です。大きな数字ではありません。ただ、この改善に必要なのは、広告費でも設備の追加でもなく、返事を取る順番を決めて全員が守ることだけです。
そもそも、同席ありの組の成約率が下がっているという前提そのものが、僕の仮説です。実際の式場では、同席ありのほうが高い場合もあるはずです。経験者の友人が背中を押してくれることもあります。だからこの計算は、自分の式場のデータで確かめる手順の説明として読んでください。
自分の数字で確かめる手順
仮説が合っているかは、受付台帳があれば確かめられます。必要なのは三つの列だけです。見学日、同席者の有無、その後の成約か否か。
同席者の有無は、見学の当日に受付で書けば足ります。「同席者:なし/親/それ以外」の三択にしておけば、親とそれ以外を分けて集計できます。
集計は、三か月分たまってからで十分です。見学が月に40組あれば、三か月で120組。そのうち同席ありが18組前後になります。ここまで少ないと、成約率の差が偶然かどうかは判断できません。だから、結論を出すのは半年以上たまってから、もしくは差が極端に大きいときだけにします。担当者別の成約率を組数が足りないうちは並べないのと、同じ考え方です。
数字が出る前でも、順番を固定する取り組みは始められます。同席者がいる日の見学記録に、「二人が先に返事をしたか」を一行だけ書く。守れたか、守れなかったか。守れなかった日は何が起きたか。これを数週間続けるだけで、担当者の側に気づきが貯まります。
同席者を断る線はどこか
ここまでは、同席者を受け入れる前提で書きました。受け入れない線も、一応決めておきます。
予約の時点で同席者の人数が増えたときです。二人と友人二人、計四人になると、説明の速度も座席の配置も変わります。会場側の事情として人数の上限がある場合は、予約時に「見学は最大何名様までです」と先に伝えておいたほうが、当日の気まずさがありません。
人数の上限を理由に断るときは、二人を責める形にしないことが大切です。「この日は他の組様と動線が重なるので、四名様までのご案内になっています」のように、会場側の事情として話します。同席者の人数を聞くこと自体は、失礼にはなりません。予約フォームに「同席者の人数」の欄を一つ置いておけば、尋ねる形も自然になります。
もうひとつの線は、見学の場に同席者が増える意図が見えるときです。たとえば、ほとんど会話に参加しない友人が、動画を撮り続けている。他社の見学の合間に来ているようにも見える。この場合に断る必要はありません。撮影の範囲を、最初に一言伝えるだけで十分です。「会場内は撮影可能です。他のお客様が映らないよう、ご注意ください」。
まとめ
- 友人やきょうだいの同席は、親のように意思決定には加わらないが、帰り道の一言で二人の印象を動かす
- 挨拶の直後に、二人に同席の形を確認し、同席者には一度だけ目的を聞く。役割を渡す準備になる
- 会場の雰囲気、試食、見積もりのどの場面でも、返事を取る順番は二人が先、同席者は後に固定する
- 同席者の質問は答えたあとに、二人の状況へ引き戻す。持ち帰りの紙は二人の宛名で、同席者の質問を一行残す
- 仮に月40組、同席6組、成約率が30%と20%だとすると、順番の固定で年7組ほどの差になりうる。ただし前提は仮説で、受付台帳で半年分を確かめてから判断する
- 同席の人数は、会場の事情として予約時に伝える。断る線は人数に置き、同席者を責める形にしない
