来館・成約

式場の平日夜の見学枠は黒字か|土日から移った組を引いて見る

平日夜の見学枠を足した式場から、「予約は埋まったのに、月の来館数があまり変わらない」という話を聞くことがあります。夜の枠に入った二人が、もともと土日に来るはずだった二人だったとしたら、起きているのは新しい来館ではなく、来館日の移動です。

この記事の結論を先に書きます。平日夜の見学枠が黒字かどうかは、埋まった組数では決まりません。土日から移った組を引いた純増の組数で決まります。しかも、移った組が損になるかどうかは、土日の枠が満席かどうかで逆になります。この記事では、仮の数字で純増の効き方を計算し、予約フォームの1問で食い合いを数える方法まで書きます。

この記事に出典つきの数字はありません。以下の数字はすべて、計算を見せるために僕が置いた仮の前提です。自社の数字に置き換えて読んでください。

夜の枠が埋まっても、来館は増えていないことがある

平日夜の枠を作る理由は、土日に来られない二人を拾うことです。シフト勤務で休みが合わない二人、平日は仕事で動けない二人。夜の枠を作れば、そういう二人が来られるようになります。

ただ、夜の枠を予約した二人の全員が「夜でなければ来られなかった二人」とは限りません。土日も来られるけれど、夜のほうが楽だから夜を選んだ二人もいます。土日に混んだ会場へ行くより、平日の夜に静かな会場で見たい、と考える二人は普通にいると思います。

この二人は、夜の枠がなければ土日に来ていました。夜の枠は、この二人の来館日を動かしただけです。予約表には「夜の枠が埋まった」と出ますが、月全体の来館数には足されません。

見るべき数字は、夜の枠の予約数ではなく、夜の枠がなければ来館していなかった二人の数です。ここでは仮にこれを「純増」と呼びます。

仮の式場で純増を計算する

仮の前提を置きます。

  • 平日夜の枠を、週2日、1日2枠、4週間試す。枠は全部で16
  • 4週間で12組が夜の枠を予約する(埋まり率75%)
  • 来館から成約までの率は35%
  • 成約1組の粗利は80万円
  • 夜の枠を開けるための追加の運営費は、4週間で16万円(残業代、光熱費、試食の食材などをまとめた仮の額)

12組のうち、夜がなければ土日に来ていた組の割合を食い合い率と呼びます。食い合い率ごとに計算すると、次のようになります。

食い合い率 純増の来館 純増の成約 粗利から運営費を引いた額
30% 8.4組 2.9組 約219万円
50% 6.0組 2.1組 約152万円
70% 3.6組 1.3組 約85万円
90% 1.2組 0.4組 約18万円

運営費の16万円を取り戻すのに必要な成約は、16万円を成約1組あたりの粗利28万円(80万円に35%を掛けた額)で割った0.57組です。来館の数にすると約1.6組の純増で足ります。この前提なら、食い合いが90%でも、赤字にはなりません。

ここで「夜の枠は、ほぼ黒字になる」と結論したくなりますが、そこは待ってください。この計算は、食い合いで土日から抜けた組の枠を、ただの空きとして数えています。実際にそうなるかは、土日の枠の埋まり方で変わります。

土日が満席かどうかで、食い合いの意味が逆になる

土日の見学枠が毎週満席で、予約を断っている会場を考えます。夜の枠に移った二人は、土日の枠をひとつ空けます。その枠には、断られていた別の二人が入れます。

この場合、食い合いは損になりません。移った二人の分、土日で別の二人を受けられるからです。食い合い率が90%でも、空いた枠が全部埋まれば、純増は12組のままです。

逆に、土日の枠に空きが目立つ会場では、食い合いはそのまま空席になります。空いた土日の枠に誰も入らないので、純増は食い合い率で決まった数に留まります。

空いた土日の枠が埋まる割合を、仮にqと置いて、食い合い率90%の場合を計算します。

  • q=0(土日に空きが多く、移った枠は空いたまま):純増1.2組、運営費を引いた粗利は約18万円
  • q=50%(土日が混む日と空く日が半々):純増6.6組、約169万円
  • q=100%(土日は満席で、断っていた二人が入る):純増12組、約320万円

同じ食い合い率でも、土日の状況で結果が約18倍違います。土日が満席の会場にとっての夜の枠は、断っていた二人を受ける枠の増設です。土日に空きがある会場にとっての夜の枠は、ほとんどが来館日の付け替えで、運営費が上乗せされるだけになります。

この計算で、夜の枠を足す判断の順番が決まります。先に見るのは夜の需要ではなく、土日の枠を断っている数です。断りが月に何組あるか、土日の枠が何割埋まっているか。それを見てから、夜の枠の食い合いを考えます。

食い合いは、予約フォームの1問で数える

食い合い率は、予約表を眺めても分かりません。夜の枠を予約した二人に、聞くしかありません。

夜の枠の予約フォームに、選択式の質問を1つ足します。

「平日の夜をお選びの理由を教えてください」

選択肢は3つくらいで足りると思います。

  • 土日はお仕事などで来られないため
  • 土日も来られるが、平日夜のほうが都合がよいため
  • 土日はほかの式場を見る予定で、平日の夜に入れたいため

1つ目は純増です。夜の枠がなければ来ていなかった二人です。2つ目は食い合いです。3つ目は少し性質が違って、夜の枠が他の式場との日程調整に使われています。土日は他社に取られているので、夜の枠が空いていたから比較の土俵に乗れた、という二人です。これも純増に近いと考えています。

質問は必須にします。ただ、聞き方で結果が偏りやすいので、「土日は来られませんか」のような詰める聞き方は避けて、理由を聞く形にします。自己申告なので、正確とは限りません。それでも、「夜の枠の予約12組のうち、1つ目が7組、2つ目が3組、3つ目が2組」くらいの粗い数が分かれば、判断には足ります。

4週間で見る3つの数字

試す期間は4週間くらいがひとつの目安だと考えています。短すぎると曜日のばらつきに引っ張られます。長すぎると、効かない枠を開け続けて人件費だけが出ます。

事前に決めておくのは、次の3つです。

1つ目は、夜の枠の予約のうち「土日は来られない」と答えた組の数です。これが純増の下限になります。

2つ目は、土日の枠の埋まり率が、試す前の同じ4週間から下がったかどうかです。下がっていれば、夜の枠に移った組がいて、土日の枠が空いています。ここで下がらなければ、土日の空きが埋まっているか、そもそも食い合いが小さいかのどちらかです。

3つ目は、土日の枠で断った件数です。夜の枠を始めてから、断る件数が減っていれば、夜の枠が断りを吸収しています。

この3つは、予約表と予約フォームの回答だけで取れます。新しい仕組みを入れなくても数えられます。

夜の枠の運営費を軽く見ない

仮の数字では運営費を16万円としましたが、ここは会場ごとに大きく違います。

夜の枠は、閉館後の時間帯に人を残すことになります。プランナーの残業代や代休、試食の食材、照明や空調の費用がかかります。見学の対応が長引けば、運営費は膨らみます。夜の見学は昼より落ち着いて話せる分、長くなりがちです。

また、人を残すことは、プランナーの働き方にも関わります。夜の枠を週2日続けるなら、誰が担当するのか、翌日の勤務をどうするのかを決めておかないと、2週間目から回らなくなります。この点は、粗利の計算に入れにくいぶん、先に決めておくところです。

運営費が仮の4倍の64万円なら、食い合い率90%・q=0の場合は赤字になります。逆に、食い合いが小さく土日が満席なら、64万円かかっても黒字です。運営費は、食い合いの結果と並べて見ないと、高いか安いか判断できません。

判断の分かれ目

整理します。

  • 土日の枠を毎週断っている会場は、夜の枠を足しやすい。食い合いが大きくても、空いた枠に断っていた二人が入る
  • 土日に空きがある会場は、夜の枠を足す前に、まず土日の空きの理由を調べる。夜の枠は空きを埋めず、来館日を動かすだけになりやすい
  • 土日にも夜にも空きがあるなら、新しい枠より、予約の導線や見つけてもらう入口に手を入れるほうが先です

3つ目は、夜の枠だけの話ではありません。枠が足りないのではなく、予約する二人が足りない会場に、枠を足しても来館は増えません。この見極めを誤ると、「夜の枠を試したが効果がなかった」という結論になり、本当に必要だった入口の見直しが後回しになります。

試したあとに、やめる条件も先に決める

試す前に、やめる条件も決めておくと迷いません。たとえば次のように置きます。

  • 「土日は来られない」と答えた組が、4週間で3組に届かなければ、やめる
  • 土日の枠の埋まり率が下がり、断る件数も増えていなければ、枠を減らして週1日にする
  • 「土日は来られない」と答えた組が目標以上なら、続けて、次の4週間は枠を1日増やして同じ数字を見る

やめる条件を決めずに始めると、予約が少し入っているという理由で続きます。予約が入ること自体は、効いている証拠にならないからです。

まとめ

  • 平日夜の見学枠が黒字かどうかは、埋まった組数ではなく、土日から移った組を引いた純増で決まる
  • 仮の前提(12組、成約率35%、粗利80万円、運営費16万円)では、食い合い率が30%から90%に上がると、粗利から運営費を引いた額は約219万円から約18万円に下がる
  • 土日が満席なら、食い合いで空いた枠に断っていた二人が入るので、食い合いは損にならない。土日に空きがあれば、食い合いはそのまま空席になる
  • 夜の枠を足す前に見るのは、夜の需要より土日の断りの件数と埋まり率
  • 食い合い率は、夜の枠の予約フォームに「夜を選んだ理由」を選択式で1問足して数える
  • 4週間で、「土日は来られない」と答えた組の数、土日の埋まり率、土日で断った件数の3つを見る
  • やめる条件は、始める前に数字で決めておく