式場の平日夜の見学枠は、昼に来られない二人を数えてから足す
見学の枠を、平日の夜にも作るかどうか。式場の経営者や支配人から、わりと聞かれる相談です。
足す理由はだいたい同じです。「土日の昼に来られない二人がいるはずだから」。もっともに聞こえます。ただ、これを根拠に夜枠を始めて、3か月後に静かにやめている式場も少なくありません。夜枠は、足すと決めた時点で、担当者の勤務、案内できる場所、試食の出し方まで巻き込みます。思いつきで始めるには、手間が大きい施策です。
僕は、夜枠を足すかどうかは、昼に来られなくて流れた二人の数を数えれば、ほぼ決められると考えています。この記事では、その数え方、仮の数字を置いた採算の目安、夜枠で見せられるものと見せられないもの、4週間の試し方、続けるか止めるかの線を順に書きます。
今回は出典のある統計は使いません。平日夜の見学枠の効果を、式場横断で調べた公開データを僕は見つけていないからです。数字はすべて僕が置いた想定で、実際の式場の数字ではありません。想定だと分かる形で書きます。
「来られない二人」は、問い合わせの段階で見えている
夜枠の根拠になるのは、世間の傾向ではなく、自分の式場で実際に流れた二人です。流れた二人の痕跡は、すでにどこかに残っています。
- 見学予約フォームの自由記入欄に、「平日の夜はありますか」「仕事が土日も入るので」と書かれていた
- 電話で希望日を聞いたら、空いている枠に合わず、「また連絡します」で終わった
- LINEやメールで候補日を出したところ、返事が止まった
- フェア予約のキャンセル理由が、「仕事の都合」だった
これを、直近3か月ぶん集めて、4つに分けます。
- 平日の夜なら行けると、はっきり書いた二人
- 土日の昼は無理だが、夜かどうかは分からない二人(仕事の都合とだけ書いた二人など)
- 日にちが合わなかっただけで、別の週末なら来られた二人
- 理由が分からない二人
夜枠の根拠になるのは1です。2は、聞き返せば1に移ることもあります。3は夜枠ではなく、土日の枠の足し方の話です。4は数に入れません。
ここで大事なのは、1を「夜枠があったら来た人」と読み替えないことです。夜枠があっても、実際に来る二人は一部です。後の試算では、そこを半分と置きます。
記録が残っていない場合は、今日から数えます。見学予約フォームの自由記入欄に「希望の時間帯で、合う枠がなければ教えてください」という任意の一言欄を置くだけでも、1か月で材料が集まります。見学予約の入口が複数ある式場は、入口ごとにメモを取らないと数が抜けます。
仮の数字で、採算の目安を出す
数が分かったら、夜枠の採算を大づかみに出します。以下はすべて想定です。
- 月の見学予約は40組
- 昼の枠が合わず流れた二人のうち、「平日夜なら行けた」と読める二人が月4組(予約の10%)
- 夜枠があれば、そのうち半分の2組が実際に来館する
- 来館した二人の成約率は30%
- 夜枠は週2日、4週で8日。担当者1人が通常の終業より2時間長く残り、その人件費の増えが1日あたり5,000円(時給2,500円×2時間)
- 夜枠の電気・空調・清掃など、人件費以外の増えは考えない
この想定で、1か月の追加費用は5,000円×8日=4万円です。増える来館は2組、成約は 2×0.3=0.6組。1成約あたりの追加費用は 4万円÷0.6=約6.7万円になります。
この約6.7万円を、自社の他の集客手段の1成約あたりの費用と並べて見ます。結婚情報サイトや広告から1成約を取るのにかかる費用と比べて低いなら、夜枠は有力な手段です。高いなら、夜枠は後回しです。比べる相手は、自社の数字です。世間の相場を持ってきても意味がありません。
数え方で結果がどう動くかも見ておきます。「平日夜なら行けた」二人が月2組に減ると、増える来館は1組、成約は0.3組、1成約あたりの追加費用は約13.3万円。月6組なら、来館3組、成約0.9組、約4.4万円です。流れた二人の数が3倍違うと、1成約あたりの費用は3倍違います。つまり夜枠の採算は、「何曜日の何時までやるか」より、「流れた二人が何組いるか」でほぼ決まります。
夜枠が「共食い」になっていないかを見る
ここまでの計算には、見落としがあります。夜枠を作ると、昼に来られたはずの二人まで夜枠に移ることがあるのです。
仮に、夜枠に入った二人のうち、実は昼にも来られた二人が月3組いたとします。夜枠に入った組は、新しく拾った2組と、昼から移った3組の合わせて5組です。昼から移った3組は、夜枠がなくても来館していたので、増えた来館にはなりません。それどころか、移動のぶんの人件費が、純粋な増えになります。
共食いを見分けるには、夜枠の予約に「昼の枠は検討しましたか」と聞くのが確実ですが、聞きづらい質問です。代わりに、次の2つを見ます。
- 夜枠を始めた前後で、土日の昼の予約数が減っていないか
- 夜枠を始めた前後で、見学予約の総数が増えたか
昼の枠が減って夜枠が増え、総数が変わらないなら、移っただけです。総数が増えているなら、新しい二人を拾えています。この見方は、媒体を1つ止める実験でもよく使う、「総数を見る」考え方と同じです。入口ごとの数だけ見ると、移動を成果と取り違えます。
共食いを小さくする工夫もあります。夜枠は、予約ページや案内文で「平日18時以降(土日の昼にいらしにくい方向け)」と、対象を書いておきます。誰でも選べる枠として出すより、昼に来られない二人の目に留まりやすくなり、昼に来られる二人は昼の枠を選びやすくなります。
夜枠で見せられるもの、見せられないもの
次に、中身の話です。夜に案内する見学は、昼の見学とは別の商品になります。
見せにくいものから挙げます。
- 庭、テラス、屋外の挙式場。冬の12月は、東京でも日没が16時半ごろです。18時以降は真っ暗で、見せようにも見えません
- 自然光の入る会場。昼の光で見るはずの写真映えが、夜は伝わりません
- 披露宴が入っている日の会場。夜の平日は宴会場が使われていることがあります
見せやすいものもあります。
- 夜の照明を入れた会場。夕方以降の披露宴の雰囲気は、夜のほうがよく伝わります
- 打ち合わせ室で行う見積もりと日程の相談
- 試食。厨房が動いているなら、昼と同じように出せます
つまり、夜枠は、昼の見学を全部夜にずらしたものにはなりません。会場を見る時間を短く、見積もりと日程の相談を中心に組むと回りやすくなります。「会場の案内は夜景込みで30分、そのあと見積もりと試食」のように、夜に合う形を最初から決めます。
そして、夜枠で見られなかった部分をどう補うかも決めておきます。屋外や自然光の会場なら、「次は昼間の会場だけ、15分で見られます」と、2回目の来館の枠を渡します。2回目の来館を誘うときは、迷っている1点を聞いてから誘うのが基本です。夜枠で終わらせず、昼にもう一度来てもらう設計です。
4週間で試して、続けるか決める
夜枠は、いきなり常設にせず、4週間の試行にします。
試行の条件は、あらかじめ書き出して決めます。
- 曜日と時間:週2日、18時開始の1組、または18時と19時の2枠
- 案内の形:会場30分+見積もりと試食。屋外は見せない
- 担当者:決まった1〜2人。本人の同意を取る。残業の扱い(振替休日にするか、手当にするか)を先に決める
- 予約の入口:自社サイトと電話だけ。媒体の予約枠に載せるのは、結果が出てからにする(入口を増やすと、空き枠の管理が複雑になるため)
- 記録:夜枠の予約数、実際に来館した組数、「昼の枠も検討したか」の自由記入、成約
4週間後に見る数字は、3つです。
- 夜枠に入った組数。ゼロか、1組か、5組以上か。ゼロなら、流れた二人は夜枠を求めていなかったか、夜枠の存在が伝わっていないかのどちらかです
- 見学予約の総数の変化。前の4週間と比べて、増えたか。土日の昼が減っていないか
- 夜枠から成約が出たか。4週間では成約まで出ないことも多いので、来館した組数と、その後の追客の状況までを見ます
続ける線は、あらかじめ決めておきます。例として、「夜枠の来館が4週間で4組以上、かつ見学予約の総数が増えていれば続ける。2組以下なら止める。3組は、もう4週延長する」のように書いておきます。数字は式場ごとに違ってかまいません。決めておく目的は、結果を見てから基準を動かさないことです。
夜枠を知ってもらうために、置く場所
夜枠は、あっても知られていなければ、予約は入りません。流れた二人は、すでに「この式場は平日夜がない」と思って離れています。置く場所は次の4か所が基本です。
- 見学予約ページ:枠の一覧で、夜枠を昼とは別の見出しにする。「平日18時以降」と対象を書く
- Googleマップの情報:営業時間に夜の枠を載せる。見学のための特別営業時間が設定できる場合は、そこに書く
- フェア予約・見学予約の確認メール:「時間が合わない場合は夜枠もあります」の一文
- 電話の応対:電話で「土日は仕事で」と言われたら、断る前に夜枠の案内をする。受付担当に、一言の案内文を渡しておく
最後の電話は見落とされがちですが、いちばん早く効きます。昼の枠が合わず断っていた二人が、その場で夜枠を選べるからです。
夜枠を足さないほうがいい場合
夜枠が合わない式場もあります。
- 流れた二人が月に1組未満の式場。数え方で見た「平日夜なら行けた」二人がほとんどいないなら、夜枠は手間のほうが大きくなります
- 担当者の人数がぎりぎりの式場。夜枠のために誰かが残ると、翌日の見学や打ち合わせに影響が出ます。担当者の負担が増えて離職につながるなら、集客以前の問題です
- 立地が悪く、夜は帰りの足が心配な式場。遠方から来る二人には、夜枠はむしろ負担になります。これは式場のアクセス案内を、往復の足で書く話とつながります
代わりに、土日の朝の枠を足す、動画やオンラインで先に会場を見てもらう、という手もあります。夜枠が答えとは限りません。
まとめ
- 夜枠を足すかどうかは、昼に来られなくて流れた二人の数で決められる。直近3か月の予約フォームの自由記入、電話の記録、返事の止まった候補日から数える
- 流れた二人は4つに分ける。「平日夜なら行けた」とはっきり書いた二人だけを、夜枠の根拠にする
- 想定の数字(月4組が流れ、半分が来館、成約率30%、夜枠8日で4万円)で計算すると、1成約あたりの追加費用は約6.7万円。流れた二人の数が3倍違うと、1成約あたりの費用も3倍違う
- 夜枠が昼の枠から二人を奪っていないかは、予約の総数と土日の昼の予約数で見る。入口ごとの数だけでは、移動を成果と取り違える
- 夜は屋外や自然光の会場が見せにくい。会場は短く、見積もりと試食を中心にして、屋外は2回目の昼の来館に渡す
- 試すなら4週間、週2日。続ける線は、結果を見る前に決めておく
