式場の見学予約は、媒体ごとに空き枠を持つと二重予約が起きる
見学予約の入口は、この数年でずいぶん増えました。結婚情報サイトの予約ボタン、自社サイトのフォーム、LINEのトーク、電話、相談カウンターからの紹介。式場側から見れば、どれも「見学に来てくれる二人」を連れてくる大事な入口です。
ただ、入口が増えると、それぞれが「今日の空き枠」を別々に持ち始めます。媒体の管理画面には媒体用の空きが、自社サイトのカレンダーには自社用の空きが、電話は受付担当の手元の表に。この状態で人気の枠に予約が集まると、同じ時間に2組が入ります。二重予約です。
僕は、二重予約は担当者の不注意というより、在庫の持ち方の問題だと考えています。注意深い人が何人いても、在庫が複数の場所に分かれていれば、いつかは重なります。この記事は、なぜ重なるのか、どのくらいの頻度で起きうるのかを仮の数字で見たうえで、防ぎ方の3つの型と、起きてしまったときの振り替え方を整理します。
今回は出典のある統計は使いません。式場の見学予約で二重予約がどのくらい起きているかを、全国で調べた公開データを僕は見つけていないからです。数字はすべて僕が置いた想定で、実際の式場の数字ではありません。想定だと分かる形で書きます。
二重予約は、在庫が複数の場所にあるから起きる
まず仕組みから整理します。
見学予約の「枠」は、1組が占める時間と、案内する担当者と、見せる会場のセットです。個別見学なら、その時間に会場を使えるのは基本的に1組だけです。フェアのように複数組を同時に受ける形でも、受けられる組数には上限があります。
この上限(在庫)を、予約の入口ごとに別々に数えていると、こういうことが起きます。
- 土曜11時の枠が空いている。自社サイトのカレンダーも、媒体Aの管理画面も、「空き」と表示している
- 午前中に、媒体Aから1組が予約する。この時点で、自社サイトのカレンダーはまだ「空き」のまま。担当者が手で閉じるまでは更新されない
- 夕方に、自社サイトから別の1組が同じ枠を予約する
どちらの二人も、画面では「空き」を見て予約しています。悪いのは二人でも担当者でもなく、閉じる作業が人の手に乗っていたことです。人の手に乗った作業は、忙しい週末の前ほど遅れます。そして見学予約が集中するのは、その忙しい時期です。
どのくらい起きるかを、仮の数字で見る
どれくらいの頻度で重なりうるのか、モデルで見ます。以下はすべて想定です。
- 入口は4つ(媒体A、媒体B、自社サイト、電話)
- 土日の人気枠が週に4つある(土日それぞれの午前と午後)
- 1つの人気枠に、1週間のうちに各入口から予約が入る確率は、入口ごとに独立に20%
- 入口の間で空き枠が同期されておらず、手作業で閉じるのも間に合わないと仮定する(いちばん悪い場合)
この条件で、ある人気枠に2つ以上の入口から予約が入る確率は、次のように計算できます。
1 − (全入口から入らない確率) − (ちょうど1つの入口から入る確率)
全入口から入らない確率は 0.8の4乗 = 0.41。ちょうど1つから入る確率は 4 × 0.2 × 0.8の3乗 = 0.41。したがって、重なる確率は 1 − 0.41 − 0.41 = 約18%です。
人気枠が週に4つあれば、1年(52週)で 4 × 52 × 0.18 = 約38件。同期がまったく無い悪い想定では、年に40件近い二重予約が起きる計算になります。
もちろん、現実の式場はここまで悪くないでしょう。担当者が気づいて手で閉じる、電話の受付が空きを確認する、といった防ぎ方を、すでにどこかで挟んでいるはずです。この計算が言えるのは、「手作業の確認を足せば、ゼロに近づく」ことではなく、入口が増えるほど、確認の手間で追いつかなくなる速さが上がるということです。
入口の数を変えるとどうなるか、同じ条件で見ます。入口が3つなら重なる確率は約10%、入口が4つで1入口あたりの確率が30%(繁忙期)なら約35%です。入口が1つ増えるのと、繁忙期に予約が1.5倍集まるのとで、重なる確率は大きく動きます。人気の日取りの直前ほど、二重予約が起きやすい条件がそろいます。
二重予約で失うもの
二重予約が起きたとき、式場が失うものを整理します。
ひとつは、断られた側の二人です。二人は、自分の予約が「確定」だと思っています。そこに「申し訳ありません、枠が重なっておりまして」と連絡が入ります。この二人は、式場の検討リストの上位に入れるかどうかを決める前の段階で、最初の印象が「予約を間違える会社」になります。
もうひとつは、予約の入口です。媒体経由の予約を式場側の都合で断ったり変更したりすると、媒体の画面に「変更・キャンセル」の履歴が残る形になります。媒体が式場を二人に勧める順位に関わるかどうかは、僕は確かめられていません。ここは分からない部分として、断定しません。ただ、式場側の都合の変更が増えることを、媒体が好意的に見る理由は思いつきません。
3つ目は、案内する側です。重なった枠を無理に両方受けると、担当者は2組を同時に案内するか、片方を待たせるかになります。どちらでも、見学の質が下がります。本来、見学が成約につながるかどうかは、案内の質で決まるところが大きいはずです。
先ほどのモデルに戻って、損失を組数で見てみます。年に38件の二重予約が起きたとして、断られた38組のうち、別の枠への振り替えに応じてくれるのが半分と仮定します。残りの19組は、そのまま他の式場に流れます。見学した二人の成約率を仮に30%とすると、19 × 0.3 = 約6組が、本来なら成約したはずの二人です。
これも想定の数字で、式場によって大きく違います。ただ、「6組」という数字そのものより、広告費と手間をかけて取った予約を、枠の管理だけで失っているという構造のほうが大事です。媒体費は予約を取るために払っていて、予約が入った時点でその費用はもう払い終わっています。
防ぎ方の3つの型
防ぎ方は、大きく3つに分かれます。どれが正解というより、式場の入口の数と、予約システムにかけられる予算で選ぶものです。
型1. 在庫を一本化する
すべての入口を、一つの予約システムか一つのカレンダーにつなぎます。どこかで予約が入った瞬間に、他の入口の同じ枠が閉じる形です。
利点は、二重予約が構造的に起きにくくなることです。人の手を介さないので、忙しい週末前でも遅れません。
欠点は、つなげられる入口とつなげられない入口があることです。媒体の予約管理画面と自社のシステムを、自動で連携できるかどうかは、媒体との契約やシステムによって違います。連携できない入口が1つでも残ると、そこが穴になります。つながらない入口があるなら、型2か型3と組み合わせます。
型2. 入口ごとに枠を割り当てる
在庫を一本化できない場合の次善策は、枠をはじめから入口に割り当てることです。たとえば土曜11時の枠は媒体Aと自社サイトだけに開き、土曜14時の枠は媒体Bと電話だけに開く、といった形です。
この方法は、同じ枠に複数の入口が重なる状況を、そもそも作りません。システム連携が要らないので、すぐに始められます。
欠点は、枠の使い方が硬くなることです。割り当てた入口から予約が入らなければ、その枠は空いたままになります。人気の枠は他の入口にも開けたほうがよかったのに、という状況が起きます。割り当てを固定せず、前日の夕方に空いている枠を他の入口に開き直す運用を足すと、空きの無駄が減ります。ただしその運用は、人の手に乗ります。
型3. 締め時刻を決めて、確認を1回に絞る
システムでも割り当てでも防げない部分を、手で守る型です。人気の枠について、「前日の17時に、全入口の予約を1つの表に集めて、重なりを確認する」と決めます。確認の回数を、毎回の予約ごとから、1日1回に減らします。
利点は、費用がかからないことです。欠点は、確認の時刻までに入った重なりは見つかっても、確認のあとに入った予約は防げないことです。そのため、確認の時刻のあとに入る予約を受ける入口は、あらかじめ締めておきます。「前日17時以降は、電話のみ受付」のように、締め切りのあとの入口を1つに絞れば、重なりは起きません。
3つの型を、入口の数と手間で並べると、次のようになります。
- 入口が2つまで:型3の運用だけでも回ります
- 入口が3つ以上で、連携できるシステムがある:型1
- 入口が3つ以上で、連携できない入口がある:型2と型3の組み合わせ
起きてしまったときの振り替え方
どれだけ防いでも、ゼロにはなりません。重なったと分かったときの動き方を、あらかじめ決めておくと、被害が小さくなります。
最初に決めるのは、どちらの二人を動かすかです。僕は、予約が入った時刻が遅いほうに、振り替えをお願いするのが筋だと考えます。ただし、遅いほうが遠方から来る、来館日が1日しかないなど、動かせない事情があるなら、その事情を優先します。見るのは時刻の順番より、「動かしたときに、二人が被る損が小さいほう」です。
次に決めるのは、連絡の中身です。重なりの連絡は、お詫びで始めて、次の候補を3つ付けます。「申し訳ありません、枠が重なりました」だけで終えると、二人は次の行動が決められません。同じ日の前後の時間、同じ週末の別の日、平日の夜。選べる候補を渡せば、二人は返事を一言で済ませられます。
連絡の手段は、予約を受けた入口と同じにします。媒体経由で予約した二人には、媒体のメッセージ機能と、登録されたメールの両方で。電話で予約した二人には電話で。別の手段で連絡すると、二人が気づかないことがあります。
そして、連絡は気づいた時点で、すぐに出します。前日の夜に分かったことを、当日の朝まで置くと、二人の予定が詰まってしまいます。重なりに気づいたら、振り替えの相談を先にして、社内の原因調べはあとにします。
見直しのタイミング
最後に、いつ在庫の持ち方を見直すかを書いておきます。
見るのは、二重予約そのものの件数です。多くの式場では、二重予約が起きても記録を取っていないはずです。まず1か月、重なりに気づいた件数と、その入口の組み合わせをメモします。件数が月に1件を超えるなら、入口が増えすぎているか、確認が間に合っていないかのどちらかです。
もう一つは、新しい入口を足すタイミングです。新しい媒体と契約する、LINEの予約機能を始める、といった入口の追加は、集客の面では歓迎される話です。ただ、足すたびに、在庫の持ち方も一緒に決める必要があります。新しい入口の契約書にサインする前に、「この入口の空き枠は、既存のどの枠と連動するのか」を先に確認しておくと、あとの手間が減ります。
まとめ
- 見学予約の入口が増えると、空き枠が複数の場所に分かれ、二重予約が起きやすくなる。原因は担当者の不注意より、在庫の持ち方にある
- 想定した数字(入口4つ、人気枠が週4つ、同期なし)で計算すると、重なる確率は1枠あたり約18%、年に40件近くになる。現実はこれより少ないが、入口の数と繁忙期の集中で、確認の手間が追いつかなくなる
- 失うのは、断られた二人の最初の印象と、案内の質。想定上は年に数組の成約に相当する
- 防ぎ方は3つ。在庫の一本化、入口ごとの枠の割り当て、締め時刻を決めた確認の絞り込み。入口の数と連携できるかで選ぶ
- 起きたときは、予約が遅いほうに、次の候補を3つ付けて、同じ手段ですぐ連絡する
- まず1か月、重なりに気づいた件数をメモする。新しい入口を足す前に、空き枠をどう連動させるかを確かめる
