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披露宴のワイヤレスマイクは何本持てば足りるか|予備は使う本数の2割と決める

乾杯の発声の直前に、マイクの音が入らない。披露宴の現場で、ゲストの視線がいちばん集まる場面です。式場の側から見れば、機材の電池が切れていた、受信機の設定がずれていた、というだけの話ですが、新郎新婦とゲストには「あの式場、音が出なかった」という記憶だけが残ります。

結論から書きます。ワイヤレスマイクの本数は、「同時に使う本数」に「その2割、最低2本」の予備を足して決めるのが、いちばん揉めない持ち方だと僕は考えています。そして上限は、金額より電波のほうで先に決まります。この記事は、その決め方を順番に書きます。

先に断っておくと、この記事で出てくる機材の単価や事故の件数は、僕が置いた仮の前提です。出典があるのは、電波の使い方に関する部分(TOAの資料)だけです。自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

披露宴で同時に鳴るマイクは何本か

まず、1回の披露宴で同時に使うマイクを数えます。数え方のコツは、「演出ごと」ではなく「場面ごと」に、同時に口元にある本数を数えることです。

仮に、よくある進行を次のように置きます。

  • 司会者:1本(ヘッドセットかハンドマイク)
  • 高砂の新郎新婦:1本(挨拶や謝辞用)
  • 主賓挨拶と乾杯:1本(ここは持ち回りで、同時には1本)
  • 余興や友人スピーチ:1本
  • 新郎新婦の入場や再入場でのピンマイク:1本

合計で、同時に使うのは最大5本です。ここは会場の進行によって増減します。たとえば、司会が2人体制で、キャンドルサービスの間に新郎新婦と司会が別々に話すなら、6本になります。まず自分の会場の「いちばん多く重なる場面」を、進行表から数えてください。平均ではなく、最大で数えるのがコツです。

数えるときに忘れやすいのが、チャペルです。挙式で使うマイクは、披露宴のマイクとは別に、牧師や司式者のものと、新郎新婦の誓いの言葉のためのものがあります。披露宴会場と同じ機材を運んで使い回すのか、チャペル専用を置くのかで、必要な本数が変わります。使い回す場合は、挙式が終わってから披露宴が始まるまでの間に、電池を替えて、チャンネルを確認して、会場に持っていく時間が要ります。この時間が10分あるかないかで、予備の持ち方も変わってきます。

予備は「使う本数の2割、最低2本」にする理由

予備の本数を決めるとき、現場でよく出るのは「1本あれば十分」という考え方です。ただ、1本だと、同時に2本が不調になった日に足りません。そして、不調は同じ原因で重なることがあります。電池をまとめて同じ日に買った、同じロットの機材が同じタイミングで劣化した、といった形です。

僕が「使う本数の2割、最低2本」と置く理由は、次の2点です。

  1. 故障には2種類ある:機材そのものの故障と、電池切れ・設定ミスなどの運用の失敗。後者が多いはずで、予備は「鳴らなくなったマイクを交換する」ためだけでなく、「電池を替えている間に使う」ためにも要ります
  2. 会場が増えると予備の割合は下げられる:1会場なら使う本数5に対して予備2(4割)。3会場なら使う本数15に対して予備3(2割)で足ります。予備を会場間で融通できるからです

融通できるのは、同じ建物の中で、予備の置き場所が近いときだけです。別の階にあって、取りに行くのに5分かかるなら、予備は会場ごとに持つほうが安全です。

ここで、仮の計算を置きます。1本あたりの単価は3万円(業務用のワイヤレスマイクとして、安く見積もった仮の数字です)、同時に使う本数は1会場あたり5本とします。

同日の会場数 同時に使う本数 予備 合計本数 予備の費用
1会場 5本 2本 7本 6万円
2会場 10本 2本 12本 6万円
3会場 15本 3本 18本 9万円

予備にかかるのは、多くても1本3万円の2〜3本分、つまり6万円から9万円です。5年使う機材だとすれば、1年あたり1万円台です。これに対して、事故が起きたときの損失はどうでしょうか。

事故の損失は、予備の費用の何倍か

年間200組の披露宴をする会場で、マイクが入らない事故が起きる割合を、仮に1%、2%、5%と置きます。事故1回あたりの損失は、お詫びの値引きや返金、紹介が止まることの影響を含めて、仮に5万円とします。

  • 1%の場合:年2件で、損失は10万円
  • 2%の場合:年4件で、損失は20万円
  • 5%の場合:年10件で、損失は50万円

この仮の計算でいうと、事故が1%の頻度で起きるだけで、損失(年10万円)が予備の費用(6万円)を超えます。もちろん、5万円という損失は目に見える額だけです。口コミサイトに書かれたり、新郎新婦が友人に話したりする影響は、数字にできません。それでも、予備を持つ費用のほうが小さくなる条件は、思ったより緩いです。

逆に言うと、予備の本数をそれ以上に増やしても効きません。予備が10本あっても、電池が全部切れていたら鳴りません。予備を増やすよりも、次に書く「電池と受信機の確認」に時間を使うほうが、事故は減ります。

電池と受信機の確認は、誰がいつやるか

事故の原因で多いはずなのが、電池です。ここでは、僕の見方を書きます。電池の確認は、「誰がやるか」より「いつやるか」を決めるほうが効きます。

  1. 前日の夜に、翌日使う全部のマイクの電池を新品に替える:披露宴ごとではなく、1日の最初にまとめて替える。残量が半分の電池を使い回さない
  2. 挙式の前に、全部のマイクで音を出して確認する:電源を入れて、受信機のランプが振れるかを見る
  3. 披露宴の入場前に、司会者のマイクだけもう一度確認する:司会者のマイクが止まると、全部の進行が止まるため
  4. 終わった後に、使ったマイクを回収して、本数を確かめる:予備が1本足りなかったまま翌日を迎える、が一番怖い

この4つを書き出して、貼っておくだけでも事故は減ります。担当者が休んだ日に、別の人が同じ手順をたどれるからです。

予備のマイクにも、電池を入れておきます。予備の電池が別の場所にあると、いざというときに探す時間がかかります。予備のマイクの箱に、新品の電池を一緒に入れておく。これだけで、交換にかかる時間は半分になります。

電波のほうが先に上限になる

ここからが、金額より先に上限が来る話です。

ワイヤレスマイクが使う電波には、種類があります。免許が要らないもののうち、よく使われるのが800MHz帯のB型です。TOAの資料によると、B型は806〜810MHzの範囲で、免許は要らず、業務用途なら誰でも使える規格です。同じ空間で使うときは、B1〜B6の6つのグループから1つのグループだけを選び、同時に使えるのは最大6波までです。

つまり、同じ空間で同時に7本目のマイクを鳴らそうとすると、このやり方では電波が足りません。さきほど数えた「同時に使う最大5本」は、この上限に近い数字です。司会が2人で6本になるなら、ほぼ限界です。

また、同じチャンネルを2つの機材で使うと、混信が起きるおそれがあります。これはSonyなど複数のメーカーの案内にも書かれている注意点です。

ここで考えてほしいのは、隣り合う会場です。同じ建物で、披露宴会場Aと披露宴会場Bが同じ時間に動いているとき、お互いのマイクの電波が届く距離にあるかもしれません。壁があるから大丈夫、とは言い切れません。このとき、AとBで同じグループ、同じチャンネルを使っていないかを、機材の担当者に確認します。

確認の仕方は簡単です。

  • 会場ごとに使うグループを決めて、機材のシールに書く(Aは1グループ、Bは2グループ、など)
  • 予備のマイクは、どのグループにも合わせられる機種か、どのグループ用かを書いておく
  • 同時に動く会場の数が増える日は、事前に割り当て表を作って共有する

予備のマイクを別の会場に持っていったときに、チャンネルが合っていなくて混信する。これは、予備を融通したときに起きやすい失敗です。予備を融通できる、と前に書きましたが、その条件に「チャンネルを合わせる手順がある」ことを足してください。

なお、ここまで書いた電波の話は、免許が要らない帯域の話です。1.2GHz帯など、別の帯域を使う機材もあります。その場合の台数の上限や混信のしやすさは、今回の調べでは確かめられていません。持っている機材の取扱説明書で確かめてください。

司会者・外部業者との役割の決め方

司会者を外部の会社に頼んでいる会場では、マイクを誰が用意するのかが曖昧になりやすいです。外部の司会者が自前のマイクを持ち込んで、会場のマイクと電波が重なる。これが典型的な事故のパターンです。

契約や打ち合わせで、次の3つを決めておくと、事故の原因を1つ減らせます。

  1. 司会者のマイクは、会場のものを使うのか、持ち込みなのか
  2. 持ち込みの場合、使う周波数帯とチャンネルを事前に教えてもらう
  3. 本番前に、会場のマイクと同時に鳴らして、混信がないかを確かめる時間を取る

3つ目が、いちばん大事で、いちばん省かれがちです。司会者の到着が本番の30分前だと、確認の時間がありません。到着時間を45分前にしてもらう、といった取り決めが要ります。

演奏家や友人の余興も同じです。持ち込みのマイクがある場合は、事前に聞き取ります。ただ、新郎新婦の友人に周波数帯を聞いても答えられません。そのため、余興で使う機材は、会場の機材を貸す形に統一するほうが、現場は回りやすいです。貸す機材に、余興用の予備の電池を付けておきます。

事故が起きたときの対応線を決めておく

予備を持っていても、事故はゼロにはなりません。起きたときに、現場の判断だけで動けるように、対応の線を引いておきます。

  • マイクが入らないとき、最初に何をするか(予備のマイクを渡す、ハンドマイクに替える、など)
  • 交換に何秒かかったら、地声で続けるか
  • 終わった後、新郎新婦に誰がどう伝えるか

交換にかかる時間の目安を、会場で決めておきます。僕は、30秒を過ぎたら地声で続けるのが現実的だと思っています。マイクなしでも、司会者の声が通る会場なら、地声で続けて進行を止めないほうが、場の空気を守れます。ただ、これは会場の広さと人数によります。200人を超える広い会場で地声は通りません。この線は、自分の会場で一度試して決めてください。

事故が起きた後の連絡も、決めておきます。披露宴が終わってから、新郎新婦が気づくより先に、式場から「マイクの不調があり、ご不便をおかけしました」と一言伝える。隠すと、後で聞かされたときの印象が悪くなります。伝える担当は、プランナーでも、その日の責任者でもよいですが、誰かに決めておきます。

台帳をつくる

最後に、本数管理の話です。マイクが何本あって、どれが動くのかを、台帳で管理します。大げさなものは要りません。

  • 機材の番号(シールで貼る)
  • 使うグループとチャンネル
  • 最後に電池を替えた日
  • 不調が出た日と内容

不調の記録が、いちばん役に立ちます。同じ番号の機材が3回不調になっていれば、その機材は予備に回すか、入れ替えるかを決められます。記録がないと、「あのマイク、なんか調子悪いよね」という感覚だけで、誰もが使い続けます。

台帳があれば、本数が足りているかも、数字で言えます。「同時に使う最大5本、予備2本、合計7本、うち1本は不調履歴あり」のように。経営側に追加の購入を相談するときも、この一行があるだけで、話が早くなります。

まとめ

  • ワイヤレスマイクの本数は「同時に使う最大本数」を進行表から数え、そこに「2割、最低2本」の予備を足す
  • 仮の計算では、予備は6万円から9万円。事故が1%起きるだけで、予備の費用を損失が超える
  • 予備を増やすより、前日の電池交換、挙式前の音出し、司会者マイクの再確認の3つを手順にして貼る
  • 免許不要の800MHz帯B型は、同じ空間で同時に使えるのは最大6波まで。隣り合う会場と同じチャンネルを使っていないか確認する
  • 外部の司会者や余興の持ち込み機材は、事前に周波数帯を聞くか、会場の機材を貸す形に統一する
  • 30秒を過ぎたら地声で続けるなど、事故時の対応線と、終わった後の伝え方を先に決めておく

予備は、使わなければ無駄に見えます。ただ、その2本があるから、5本のうちの1本が止まった日が、ただの1行の記録で済みます。