披露宴の乾杯は、グラスを注ぐ前に20歳未満のゲストを二人に聞く
披露宴の乾杯は、開宴の少し前にスタッフがテーブルを回って、グラスにシャンパンを注いでおくのが定番です。その時点で、誰が何歳かを知っているスタッフはほとんどいません。注ぐ側が知っているのは、席札の名前と、料理のアレルギーの有無くらいです。
2022年4月から、民法上の成年年齢は18歳になりました。ところが、お酒を飲んでよい年齢は、いまも20歳のままです。大学1・2年生の友人や、高校を出て働き始めた後輩が、新郎新婦の友人席に座っていても、まったく不思議ではありません。
僕の考えを先に書きます。乾杯のグラスは、注ぎ始める前に「20歳未満のゲストが誰か」を二人から聞いておく。聞く場所は、最終人数を確定する打合せの1行です。 当日にゲスト本人へ年齢を尋ねる方法は、手間も空気も悪くなるので、僕は最後の手段だと思っています。この記事では、その理由と、聞いたあとの段取りを書きます。
この記事で出典があるのは、法律の条文と、国税庁が2022年3月に出した要請の内容だけです。披露宴で20歳未満のゲストにお酒が出てしまった件数や、それで式場が処分を受けた事例は、僕は確認できていません。人数や所要時間の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。
成人は18歳、飲酒は20歳のままという前提
まず、法律の側を整理します。
飲酒を禁じる法律の正式名称は、「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」です。民法の成年年齢が18歳になった2022年4月1日に、この法律の名前も条文の言い方も「満20年に至らない者」を指す形に整えられました。国税庁の要請文書には、民法の成年年齢が引き下げられても、飲酒を禁止する年齢は引き続き20歳未満とされた、と書かれています。警察庁、厚生労働省、国税庁の連名で、飲食業や酒類販売の業界団体に、改めて防止の取組を求めた経緯も載っています。
この法律には、立場ごとに別の義務があります。条文から、披露宴に関係するところだけ拾います。
- 20歳未満の本人 … 飲んではいけない
- 親権者や監督する人 … 飲酒を知ったときは制止しなければならない
- 営業者 … 20歳未満と知りながら、酒類を販売したり提供したりしてはならない。違反には50万円以下の罰金が定められている
- 営業者(年齢確認) … 酒類を販売・提供する業態の営業者は、年齢の確認その他の必要な措置を講じるものとする
式場は、披露宴でドリンクを提供する側なので、営業者にあたると考えるのが自然です。ただ、披露宴は「二人が式場に宴会を依頼し、式場がゲストに出す」という形です。ゲストの年齢を一番よく知っているのは二人であり、式場ではありません。ここに、普通の飲食店とは違う難しさがあります。
罰則の読み方は、解説によって分かれる
調べていて引っかかったのは、年齢確認の義務に罰則があるかどうかについて、解説の書き方が割れていることです。
ある解説は、これらの規定に違反すると50万円以下の罰金になると書きます。別の解説は、年齢確認を義務づけてはいるが、違反しても罰則は設けられていないと書きます。条文の作りから見ると、罰金の対象は「20歳未満と知りながら提供した」行為のほうで、年齢確認の義務そのものには罰則が付いていない、という読み方が筋に合うように僕には見えます。ただ、これは僕の読みで、法律の解釈として断言できる立場にはありません。
では、罰則が付くか付かないかで、式場の動き方は変わるのか。僕は変わらないと考えています。理由は2つあります。
1つ目は、「知りながら」という言葉の重さです。二人から「このテーブルに19歳の弟がいます」と聞いていたスタッフが、そのグラスにシャンパンを注げば、知りながら出したことになりかねません。聞いていなければ、守りようがない。聞いてしまえば、守る責任が生まれる。この矛盾が、披露宴の難しいところです。だからこそ、聞くなら、守れる段取りまでセットで用意するのが筋だと思います。
2つ目は、罰金より前に、ゲストの前で起きることのほうが痛いからです。19歳の弟のグラスに誰かがシャンパンを注ぎ、それを親戚の誰かが見つけて指摘する。二人の晴れの日の乾杯の直前に、親族の前で式場が謝る場面です。罰則の有無にかかわらず、これは避けたい。
どこで20歳未満のゲストが出てくるのか
では、披露宴のどの席に、18・19歳のゲストが座るのでしょうか。
典型は次のような顔ぶれです。
- 新郎新婦の弟や妹、いとこ
- 大学1・2年生や専門学校生の友人、サークルやバイト先の後輩
- 高校卒業後に就職した年下の同僚
- 親族の子どもの中の、高校卒業後の年代
20代後半から30代前半で結婚する二人であれば、友人席に18・19歳がいる確率は低めです。一方で、親族席には、きょうだいやいとこの世代として入ってきます。席のどこに座るかより、二人の家族構成と交友関係で決まります。 だから、式場が席次表を見ただけでは分かりません。
公開されている統計で「披露宴ゲストの年齢分布」を直接示したものは、僕は見つけられませんでした。なので、ここは割合を書かず、仮の数で考えます。
3つの確認方法を、手間と空気で比べる
確認の方法は、大きく3つに分かれます。
方法A:当日、注ぐ前にゲスト本人に聞く
乾杯用のグラスを注ぐスタッフが、テーブルごとに「お酒を召し上がる方はいますか」「20歳以上ですか」と聞いて回る方法です。
仮に60席の披露宴で、1席あたり5秒かかるとすると、全員に聞くだけで300秒、つまり5分です。スタッフ3人で分ければ、1人あたり100秒です。時間の計算だけなら重くありません。
問題は、聞かれたゲストの側です。親族や上司のいる席で「あなたは20歳以上ですか」と聞かれて、気持ちよく答える人は少ないはずです。逆に、聞かずに「ノンアルコールにしますか」と一律に勧める運用は、飲める人にも飲めない人にも、不自然に映ります。
方法B:最終人数の打合せで、二人に1行だけ聞く
最終人数を確定する打合せで、「20歳になっていないゲストはいますか。いたら、お名前を教えてください」と1行だけ聞く方法です。
二人はゲストの名簿を持っているので、答えるのに1分もかかりません。式場の側は、教えてもらった名前の席を、ドリンクの指示書に印として書き込みます。
仮に60人の披露宴で、20歳未満のゲストが2人だとします。印をつけるのは2席です。注ぐスタッフは、その2席のグラスだけ別のドリンクに替えれば足ります。確認の手間が、打合せの1分と、指示書の2か所の印に収まります。
この方法の弱点は、二人が答え忘れる、または答えを間違えることです。聞くタイミングが最終人数の確定日であれば、そこから当日までに増えるゲストは少ないはずですが、ゼロではありません。
方法C:全員のグラスをノンアルコール前提で用意し、飲む人が選ぶ
乾杯の1杯目を、全席に同じグラスで出します。中身は、泡の出るノンアルコールのドリンクです。アルコールを飲みたい人は、スタッフに申し出て、注ぎ足してもらう。こうすれば、確認はいりません。
ただし、乾杯の時に全員が同じものを同じタイミングで持っているという、披露宴の見栄えが崩れます。飲める人の側から見ると、ちょっと盛り上がりに欠ける。シャンパンを乾杯の演出に使っている式場なら、そこを削る判断になるので、簡単には選べないはずです。
3つの比較
| 方法 | 手間 | ゲストの空気 | 見落としの起き方 |
|---|---|---|---|
| A 当日に本人へ聞く | 仮に5分・スタッフ3人 | 悪くなりやすい | 聞き漏れ・嘘の申告 |
| B 二人に事前に聞く | 打合せ1分・指示書に2か所 | 変わらない | 二人の答え忘れ・直前の追加 |
| C 全員ノンアル前提 | 確認はいらない | 乾杯の盛り上がりが下がる | 注ぎ足しのときの確認漏れ |
僕なら、Bを基本にして、Aを「直前に増えた人」のためだけに残します。Cは、乾杯のシャンパンを演出の売りにしていない式場が、全体の手間を減らしたいときの選択肢だと考えます。
Bを回すための段取り
Bを選ぶなら、聞いて終わりにしないことです。聞いたあとの動きまで決めておきます。
1. 聞く場所は、最終人数の確定日に置く
最終人数を確定するときは、ゲストの人数、料理のアレルギー、席の配置を、二人と一緒に最終確認する日になります。このタイミングなら、名簿が手元にあります。そこに「20歳になっていないゲスト」の質問を1行足します。
別の日に聞くと、二人は名簿を見返す手間が増えますし、聞き忘れも起きやすくなります。
2. 聞き方は「お酒を出さない席を教えてください」にする
「20歳未満の方はいますか」と聞くより、「お酒をお出ししない方の席を教えてください」と聞いたほうが、答えが具体的になります。
お酒を飲めない理由は、20歳未満だけではありません。妊娠中の人、車で来て運転して帰る人、体質で飲めない人、服薬中の人もいます。ここまで含めて聞くと、乾杯のグラスを替える席が、1回の質問でまとまって出てきます。20歳未満という理由を、わざわざ名指しする必要がなくなります。
3. 印は、スタッフの指示書に書く
席次表の控えと、ドリンクの指示書を、同じ紙にまとめます。お酒を出さない席には、スタッフが一目で分かる印をつけます。名前を書く必要はありません。テーブル番号と席の位置で足ります。
乾杯のグラスを注ぐスタッフは、指示書の印を見て、その席のグラスだけ別のドリンクで用意します。ほかの席と同じ形のグラスで、中身だけ違う。ゲストの側から見れば、特別扱いされた感じは残りません。
4. 席札の色や形は、変えない
席札やグラスの足元に、お酒を出さない席だけ目立つ印をつける方法も考えられます。でも、僕はやらないほうがいいと考えています。親族や上司のいる席で、「この人は未成年」と周りに分かる印になってしまうからです。印は、スタッフだけが読める紙の上に置きます。
5. 当日に増えたゲストは、方法Aの出番にする
最終人数の確定後に、追加で入ってきたゲストや、席が変わったゲストがいる場合は、当日のキャプテンが二人の親族に小声で確認します。ここだけは、本人に聞かず、二人かその親に聞く形がいいと思います。
6. お酒の「回し」には、式場の手が届かないと認める
注いだグラスを、20歳以上の人が20歳未満の人に渡してしまう。これは、式場が完全に防げるものではありません。法律も、親権者や監督する立場の人に制止の義務を置いています。式場ができるのは、最初に出すグラスと、追加で頼まれたドリンクの範囲です。そこまでは、確実に守る。その外側は、二人と親族の目に頼る。この線引きを、打合せのときに口にしておくと、あとで揉めにくくなります。
仮の数字で、段取りの重さを見る
ここまでの話を、前提つきで数字にします。繰り返しますが、数字はすべて僕が置いた仮の前提です。
仮に、年間の披露宴が200組で、1組に20歳未満のゲストがいる確率が10%だとします。すると、年に20組が対象になります。
- 方法Bの確認:打合せで1分
- 指示書への印:1組あたり2分
合計は1組あたり3分で、年間なら 200組 × 3分 = 600分、つまり10時間です。全組に聞いても、1年で10時間。担当者の時給を仮に2,000円とすれば、2万円です。
対象になる20組のうち、見落としが1組でも起きて、親族の前で謝る場面が生まれれば、その組の満足度は、式場の側から見て取り戻しにくい傷になります。口コミに書かれるかどうかは別にして、プランナーが1組の対応に費やす時間は、確認の3分より桁違いに重くなるはずです。
この計算は、僕の置いた仮の数字による試算で、実際の10%や200組は、式場ごとに違います。自分の会場の数字に置き換えて、手間と見落としの重さを比べてみてください。
契約書や打合せシートに、どう書き込むか
確認を二人の記憶に頼らず、書類の上に残しておくのが一番確実です。
最終打合せシートの「アレルギー・食事の配慮」の欄の隣に、「お酒をお出ししない方」という欄をつくります。席と人数が書ける形にして、二人に記入してもらいます。
注意したいのは、名前や生年月日を、式場が必要以上に集めないことです。ゲストの個人情報になるので、集めるのは「お酒を出さない席」の位置だけで足りるはずです。生年月日の記入欄は、つくらないほうが安全だと僕は考えます。
打合せシートの欄の言い方は、たとえば次のようになります。
- 「お酒をお出ししない方の席(20歳になっていない方、妊娠中の方、運転される方など)」
- 「該当の方がいなければ、『なし』と記入してください」
「なし」と書いてもらうのがポイントです。空欄だと、確認し忘れたのか、いないのか、区別がつきません。
まとめ
- 民法の成年年齢は18歳になったが、飲酒は20歳未満が禁止のまま。国税庁は2022年3月、引き続き20歳未満を防止の対象とするよう業界に要請している
- 営業者は、20歳未満と知りながら酒類を提供してはならず、違反には50万円以下の罰金がある。年齢確認の義務に罰則があるかは、解説によって書き方が割れている
- 披露宴では、ゲストの年齢を一番知っているのは二人。当日に本人へ聞くより、最終人数の確定日に二人へ1行聞くほうが、手間も空気も小さい
- 聞き方は「お酒をお出ししない方の席」にすると、妊娠中の人や運転する人もまとめて拾える。生年月日は集めず、席の位置だけで足りる
- 印はスタッフの指示書にだけ置き、席札は変えない。当日に増えたゲストは、本人でなく二人か親に確認する
- 仮の前提(200組、10%)で見ると、全組に聞いても年間10時間。見落とした1組の対応は、それより重い
