披露宴の祝電は、読む通数と読まない基準を打合せで決めておく
披露宴の途中で、司会が祝電を読み上げる場面があります。ゲストの席からは自然な進行に見えますが、裏側では「何通届いているのか」「どれを読むのか」「誰が決めるのか」が、当日の朝まで決まっていない会場が少なくありません。
僕は、祝電の扱いは時間の問題より先に、基準の問題だと考えています。読む通数は持ち時間から逆算できます。読まない基準は、打合せの段階で二人と決められます。この二つが前日までに決まっていれば、当日の判断は「基準に当てはめる」だけになります。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。実際の式場の統計や調査ではありません。自分が見ている会場の進行表の数字に置き換えて使ってください。
祝電の読み上げは「通数 × 秒数」で時間が決まる
祝電の読み上げにかかる時間は、通数と1通あたりの秒数をかけ算するだけで出ます。
1通を読むのに必要な要素は、差出人の名前、肩書や関係、本文の一部、場合によっては社名です。名前と関係だけを紹介すれば10秒前後、本文を短くまとめて読めば20秒前後、全文を読めば40秒前後、という想定で置いてみます。
| 届いた通数 | 10秒(名前だけ) | 20秒(名前と一言) | 40秒(全文) |
|---|---|---|---|
| 5通 | 0.8分 | 1.7分 | 3.3分 |
| 10通 | 1.7分 | 3.3分 | 6.7分 |
| 20通 | 3.3分 | 6.7分 | 13.3分 |
| 30通 | 5.0分 | 10.0分 | 20.0分 |
見ていただくと分かるように、5通や10通なら、全文を読んでも7分以内です。持ち時間に余裕があれば、そのまま全部読んでも進行は崩れません。
問題になるのは、20通を超えたときです。全文で読むと13分を超えます。披露宴の中で13分は、お色直しの中座1回分に近い長さです。歓談やスピーチの時間を削ってでも読むのか、読み方を変えるのか、通数を絞るのか。この判断を、当日の朝に司会とプランナーが慌ただしく決めると、決まらないまま進行表の余白に押し込むことになりがちです。
持ち時間から逆算すると、読める通数が先に決まる
先に持ち時間を決めて、そこから通数を逆算する方法もあります。
祝電に5分の持ち時間を取るとします。これを秒に直すと300秒です。
- 名前だけ(10秒)なら30通
- 名前と一言(20秒)なら15通
- 全文(40秒)なら7通
持ち時間を3分にすると、同じ並びで18通、9通、4通です。7分にすると、42通、21通、10通になります。
この表の使い方は、二人との打合せで「祝電は5分まで取れます。名前と一言なら15通、全文なら7通です」と見せるところにあります。二人は、ゲストに祝電を全部読んでほしいのか、数通だけ丁寧に読んでほしいのかを、時間の枠と一緒に判断できます。枠が見えないまま「できるだけ読んでください」と頼まれると、司会も式場も、どこまで応じてよいか分からなくなります。
読まない基準を先に決めておく
通数が多いと、読むものを選ぶ場面が出ます。このとき、司会がその場で決めると、後から二人やゲストに「なぜあの人の分が読まれなかったのか」と聞かれたときに答えづらくなります。選ぶ基準は、事前に二人と決めておくほうが安全です。
基準として使われやすいものを挙げます。どれを採るかは会場と二人で決めることで、正解があるわけではありません。
- 二人が事前に指定した人を優先する。 打合せで「必ず読んでほしい人」を聞いておきます。主賓、恩師、遠方で出席できない親族などが多いです
- 出席しているゲストの祝電は読まない。 本人が会場にいるのに祝電を読むと、読まれた本人が困る場合があります。出席者から届いた分は、読まずに二人へ渡すと決めておく会場もあります
- 営業色の強い文面は読まない。 社名や商品名の宣伝のように聞こえる文面は、読み上げの時点でゲストが戸惑います。取引先からの祝電に多いので、二人に事前に確認しておきます
- 同じ差出人から複数届いたら、1通にまとめる。 連名で複数の電報が届くことがあります
- 当日の開宴後に届いた分は読まず、お開き後に二人へ渡す。 届く時刻に締め切りを置いておけば、直前に増えても迷いません
この最後の締め切りは、会場側が決めておく数少ないルールです。たとえば、「開宴の30分前までに届いた分を読み上げの対象にする」と決めておくと、司会は原稿を準備する時間が取れます。仮に30分という数字を置きましたが、本当の数字は会場の動線と司会の準備時間で決まります。
管理表に入れておく列
祝電は、受付、司会、プランナーの間を通っていきます。受け取る人と、読む人と、二人に渡す人が別なので、一枚の管理表に状況を書いておくと混乱が減ります。
管理表に入れる列は、次のようなものです。
- 届いた時刻
- 差出人の名前と、ふりがな
- 肩書や二人との関係
- 読む/読まない/出席者のため渡すのみ
- 読む順番
- 読み方(全文・一言・名前のみ)
- 二人への確認が取れているか
- 二人へ渡した時刻と、渡した場所
このうち、ふりがなの列は意外に効きます。祝電は、差出人の名前が難読であったり、同じ漢字でも読み方が複数あったりします。当日にその場で読み上げて間違えると、本人も二人も気まずくなります。事前に二人へ聞いて、ふりがなを書き込んでおきます。分からない場合は、読まずに名前だけ紹介する、という選択肢もあります。
もうひとつ、「二人への確認が取れているか」の列は、司会が読む前に二人が一度目を通すための列です。祝電の文面は、差出人が書いたものがそのまま届きます。二人にとって意外な内容、たとえば二人の過去に触れるような一文が入っていることもあります。全文を読む場合は、二人が先に目を通せる時間を管理表の上でも取っておきます。
当日の動き方
当日の流れを、順番に書き出します。
- 前日まで 届いている分を管理表に入れる。二人に読んでほしい人の指定と、ふりがなを聞く
- 当日の朝 追加分を管理表に入れる。通数と読み方から、読み上げの時間を計算する
- 開宴の30分前(仮) 締め切り。ここまでに届いた分で、司会の原稿を確定する
- 開宴後に届いた分 読まない分として扱い、お開き後に二人へ渡す
- お開き後 読んだ分も読まなかった分も、台紙や現物を二人に渡し、管理表の「渡した時刻」を埋める
この中で、僕が大事だと思うのは3番の締め切りです。司会は、開宴の直前まで原稿を書き換えているよりも、確定した原稿を準備する時間があるほうが、ゆっくり正確に読めます。その分、読み間違いも減ります。
時間が押したときの、祝電の位置づけ
披露宴が押したとき、祝電は削りやすい項目です。ただし、削るのは「読み上げ」であって、「二人に渡すこと」ではありません。
読み上げを省いても、祝電そのものは二人へ渡します。ゲストに向けた読み上げを省く場合は、二人に「進行の都合で読み上げを省略しました。台紙はこちらです」とお伝えします。事前に「押したら祝電は名前だけにします」と合意しておけば、当日に二人へ説明する場面も、司会が迷う場面も減ります。
押した分の人件費がどれくらいかも、仮に計算しておきます。配膳スタッフが12人、時給が1,500円(仮)だとします。1分あたりの人件費は、12人 × 1,500円 ÷ 60分で300円です。10分押すと3,000円、5分なら1,500円です。1回の披露宴で見ると、祝電の読み上げで押す分の人件費は、数千円の範囲です。
数千円で済むなら、祝電は気にしなくてよいのでしょうか。僕はそうは考えていません。直接の人件費より大きいのは、押した時間が後ろの進行、特に退場の時刻や次の組の転換にずれ込むことと、読み間違いや読み漏れで二人やゲストに残る後味です。後味の悪さは、金額に直せません。数千円という直接のコストは、見かけは小さいままです。そのため、祝電の運用が管理されているかどうかは、売上や原価ではなく、「当日の判断が迷わず済んでいるか」で見るのが現実的だと思っています。
打合せで二人に出す質問
祝電の扱いを打合せで決めるとき、二人に聞くことを整理します。
- 祝電は読んでほしいですか(全部/数通/読まなくてよい)
- 必ず読んでほしい人はいますか
- 読み方は、全文・一言・名前のみのどれがよいですか
- 出席されるゲストから届いた分は、読まずにお渡ししてよいですか
- 難読のお名前は、読み方を教えていただけますか
- 開宴後に届いた分は、お開き後にお渡しする形でよいですか
この6つは、いずれも二人が一度答えれば済むものです。打合せの時間は大きく増えません。聞かずに当日を迎えると、答えが必要になる場面は、司会かプランナーが判断することになります。
読み上げの代わりに使える置き場所
読み上げの枠が取れない、通数が多すぎる、という場合は、読む以外の見せ方もあります。会場によって使えるものは違うので、できるものだけ並べます。
- 受付の脇や控室の前に、台紙を並べて置く。ゲストが歓談の合間に自分で見られる
- 席次表やメニュー表の裏面に、差出人の名前だけを載せる。印刷の締め切りがあるので、届く時期が早い分に限られる
- お開き後の見送りの場所で、二人が祝電の差出人の名前を一覧で受け取る
どれも、読み上げと違って持ち時間を使いません。そのかわり、ゲストの前で名前を呼ばれる嬉しさは薄くなります。二人が何を大事にするかで選ぶ話なので、打合せで「読む」「置く」「渡すだけ」の三択を見せておくと、決めやすくなります。
まとめ
- 祝電の読み上げ時間は、通数 × 1通あたりの秒数でほぼ決まる。10通までなら全文でも7分以内、20通を超えると全文では13分を超える(仮の数字)
- 持ち時間から逆算すると、読める通数が先に出る。5分なら、名前だけで30通、名前と一言で15通、全文で7通
- 読まない基準は事前に二人と決めておく。出席ゲストの分、営業色の強い文面、開宴後に届いた分など
- 管理表に、ふりがなと「二人への確認」の列を入れると、読み間違いと不意の一文を防げる
- 開宴の少し前に締め切りを置くと、司会が確定した原稿で読める
- 押したときに削るのは読み上げで、二人に渡すことは削らない。この合意も打合せで取っておく
- 祝電の運用は、金額より「当日の判断が迷わず済むか」で見るのが現実的
