披露宴の司会は、専属2名より専属1名+外部のほうが年414万円安い。仮の式場で分かれ目は、同日3組目と休みの日
披露宴の司会を、社員として抱えるのか、外部のフリーランスや司会派遣会社に頼むのか。この選び方は、式場の人件費の中でも、決め方がいちばん曖昧なものの1つだと僕は見ています。理由は単純で、司会の仕事は土日に集中し、平日はほとんど空くからです。専属に払う給与は毎月ほぼ一定なのに、使う時間は週末にしか出ません。
結論を先に書きます。年120組の仮の式場で計算すると、専属2名は年1,040万円、全部を外部に頼むと年700万円、専属1名+足りない日だけ外部は年約626万円になります。いちばん安いのは、専属を1名だけ置いて、同日の3組目と専属が休む日だけ外部に頼む形です。専属2名と比べると、年414万円の差です。
ただし、この差は外部の単価が1組4万円台後半まで下がると消えます。逆に、専属の司会者が披露宴以外の仕事も引き受けているなら、話はまた変わります。分かれ目になるのは、人数の多い少ないではなく、「同じ日に3組目が入る日が年に何日あるか」と「専属が休む週末が何日あるか」です。
なお、この記事の数字はすべて、僕が置いた仮の前提です。司会者の給与水準や外部の委託単価について、僕が確かめられた公開データはありません。業界の相場として読まず、自分の式場の数字に置き換えるための型として読んでください。
前提を先に置きます
仮の式場の前提は次のとおりです。
- 年間の披露宴は120組です
- 1日に入る披露宴は最大3組で、司会者1人が1日にこなせるのは2組までとします
- 繁忙期(春と秋)の土日祝が48日あり、その期間に年90組が入ります。閑散期の土日祝は56日で、年30組です
- 専属の司会者は1人あたり、給与、社会保険、研修費をあわせて年520万円とします
- 外部に頼む場合は、1組あたり5万円です。打合せ、リハーサル、当日の司会を含む金額とします
- ブライダルフェアの模擬披露は年50回で、1回あたり外部なら2万円とします
- 司会に関わる時間は、1組あたり5.5時間(打合せ1.5時間+当日4時間)とします
- 専属が病気や休暇で出られない週末は、1人あたり年8日とします
- 1組あたりの粗利は140万円とします
結果をもっとも動かすのは、「1日に最大何組入るか」と「その組が繁忙期の土日にどれだけ偏るか」です。年120組という数字だけでは、必要な司会者の人数は決まりません。必要なのは、ピークの日に何人要るかです。
全部を外部に頼む場合
外部に頼むときの費用は単純です。披露宴120組 × 5万円で600万円。ブライダルフェアの模擬披露が50回 × 2万円で100万円。あわせて年700万円です。
この形の強みは、固定費がないことです。組数が減れば、費用もそのぶん減ります。年100組に落ちたとしても、外部の費用は600万円ほどに下がります。専属を抱えていると、組数が減っても給与は減りません。
弱みは2つあります。1つは、人気の日に司会者を押さえられないリスクです。繁忙期の土日は、他の式場も同じ司会者に頼みたい日です。日程が決まるのは契約時なので、そのたびに外部に確認を取る必要があります。もう1つは、同じ式場の流れを知っている司会者が毎回同じとは限らないことです。
専属を2名置く場合
専属を2名置くと、費用は520万円 × 2で、年1,040万円です。全部を外部に頼む700万円と比べると、340万円高くなります。
司会に使う時間は、120組 × 5.5時間で年660時間です。専属1人の年間労働時間を1,900時間とすると、2名で3,800時間あります。司会の仕事だけなら、稼働率は17%です。残りの8割以上は、司会以外の仕事をしている時間か、待機の時間になります。
つまり、専属2名を置く場合、340万円の差は「司会以外の仕事をしてもらう前提」で成り立つかどうかで決まります。340万円を専属の年520万円で割ると0.65人分です。専属2名が合計で年1,240時間以上、司会以外の別の仕事を担当していて、その仕事が本来は別に人を雇うか外注しないと回らない仕事であれば、専属2名は外部より安くなります。
たとえば、ブライダルフェアの進行、見学案内の補助、ウェルカムスペースの準備、プランナーの事務補助などです。この仕事に実際に時間が回っているかどうかは、タイムカードを見ないと分かりません。名目上は「司会兼フェア担当」でも、実態は披露宴のない平日に待機しているだけなら、それは給与を払って待っている状態です。
専属を1名にして、足りない日だけ外部に頼む場合
3つ目の選び方が、専属を1名に絞り、同日の3組目と、専属が休む日だけ外部に頼む形です。
まず、同日の3組目がどれだけ出るかを計算します。繁忙期は48日に90組入るので、1日あたり平均1.875組です。1日の最大が3組なので、各枠が埋まる確率は 1.875 ÷ 3 = 62.5% とします。3つの枠が独立に埋まると仮定すると、1日に3組すべて入る確率は 0.625の3乗で24.4%、48日のうち約11.7日です。閑散期は、56日に30組で、各枠が埋まる確率は17.9%です。3組すべてが入る確率は0.57%で、56日のうち約0.3日です。
あわせると、同日に3組入る日は年に約12日です。専属1名は1日2組までなので、その日の3組目は外部に頼みます。年約12組です。
次に、専属が休む日です。専属1人が休む週末が年8日として、その日に入る披露宴は、1日平均で 120組 ÷ 104日 = 1.15組。8日で約9.2組です。この9.2組も外部に頼みます。
外部に頼む組数は、あわせて年約21.3組です。費用は次のとおりです。
- 専属1名の人件費が520万円
- 外部に頼む21.3組 × 5万円で約106万円
- あわせて年約626万円
専属は披露宴の司会のほかに、ブライダルフェアの模擬披露も担当します。年50回 × 1.5時間で75時間です。司会の時間とあわせて、専属1名の稼働は年約620時間で、1,900時間の33%です。この数字から、専属1名のほうが、2名より稼働が詰まるのは明らかです。
それでも、全部外部の700万円と比べて74万円安く、専属2名の1,040万円と比べると414万円安くなります。
3つの形を並べます
並べると次のとおりです。
- 専属2名:年1,040万円(1組あたり8.7万円)
- 全部外部:年700万円(1組あたり5.8万円)
- 専属1名+外部:年約626万円(1組あたり5.2万円)
同じ120組をこなすのに、1組あたりの司会の費用が、5.2万円から8.7万円まで開きます。差は年に414万円です。粗利140万円の組で数えると、約3組分です。
ここで大事なのは、専属2名が一番高い理由は「専属だから」ではないことです。人数が、必要なピークに対して多すぎるからです。司会者が1日に2組までこなせるなら、ピークの日に3組入っても、専属は2名要りません。1名と外部の補完で足ります。
外部の単価が変わると、順位はどう動くか
外部の1組あたりの単価を動かします。専属の人件費は年520万円のままです。
- 外部4万円:全部外部が580万円、専属1名+外部が605万円、専属2名が1,040万円
- 外部5万円:全部外部が700万円、専属1名+外部が626万円、専属2名が1,040万円
- 外部6万円:全部外部が820万円、専属1名+外部が648万円、専属2名が1,040万円
- 外部8万円:全部外部が1,060万円、専属1名+外部が690万円、専属2名が1,040万円
外部の単価が約4.3万円を下回ると、全部外部のほうが専属1名+外部より安くなります。反対に、外部の単価が8万円近くになると、全部外部は専属2名とほぼ同じ費用になります。
専属の人件費も動かしてみます。専属が年450万円なら、専属1名+外部は外部5万円で556万円です。専属が年600万円なら、同じ条件で706万円となり、全部外部の700万円とほぼ並びます。
つまり、専属1名+外部が有利なのは、「専属の年間コストが外部の単価の約120倍以下」のときです。年520万円で外部が5万円なら、104倍です。年600万円で5万円なら120倍で、全部外部とほぼ並びます。この比率が120倍を超えたあたりから、専属を置く意味が薄れます。この目安は、僕が置いた前提から出てきたもので、一般則ではありません。
数字に出ない部分
ここまでの計算は、すべて費用の話です。司会の質は、一切入れていません。
専属を置く意味は、費用だけではないはずです。式場の流れ、スタッフの顔、直前の変更に対応する力は、毎回同じ人が司会をするほうが安定します。逆に、外部の司会者でも、その式場に何年も通っている人なら、専属に近い働きをしてくれることがあります。
この差を、数字で言うのは難しいです。ただ、置き換えて確かめる方法はあります。仮に、専属を置くことで成約率が上がるとします。専属2名と全部外部の差は340万円で、粗利140万円なら、年2.4組の成約が上積みされれば、差は消えます。年間のフェア来館が800組なら、成約率でいうと0.3ポイントです。この値が現実的かどうかは、式場ごとに見方が分かれると思います。専属の司会者がフェアの模擬披露に出ることで成約率が0.3ポイント上がる、と言えるなら、専属2名は見合う投資です。言えないなら、見合わない投資です。
もう1つ、外部に頼むときに気をつけたいのは、繁忙期の土日が、年間契約や優先枠でない限り、確保できない可能性があることです。外部の単価だけを見て決めると、人気日の司会者が押さえられず、結局は単価の高い派遣会社に頼むことになります。外部に頼む場合は、単価と一緒に、繁忙期の優先枠が取れるかを確認しておく必要があります。
自分の式場で確かめる手順
仮の数字を、自分の式場の数字に置き換えるときの手順です。
- 直近1年の披露宴の日別の組数を並べます。1日に2組、3組入った日が何日あったかを数えます。平均ではなく、日別の分布が要ります
- 専属の司会者が出られなかった週末が何日あったかを数えます。有給、病欠、研修、退職前後の期間も含めます
- 専属の司会者のタイムカードから、司会に使った時間と、それ以外の仕事に使った時間を分けます。司会以外の時間が実際に何時間あるかを見ます
- 外部の司会者に実際に頼んだ組の費用を拾います。打合せ、リハーサル、交通費、キャンセル時の扱いを含めます
- 1日に2組までという前提が現実的かを、現場に確かめます。昼と夕方の転換時間によっては、1日2組が難しい式場もあります
この手順の中で、特に3番目が手間ですが、いちばん結果を動かします。「専属の司会者は、司会以外の仕事を何時間しているのか」が分からないと、専属2名が高いのか安いのかは決まらないからです。
まとめ
- 司会の費用は、組数ではなく、ピークの日に必要な人数で決まります。年120組という数字だけでは、専属が何名要るかは出ません
- 仮の式場では、専属2名が年1,040万円、全部外部が700万円、専属1名+外部が約626万円でした。専属を1名にして足りない日だけ外部に頼む形が、いちばん安くなりました
- 分かれ目は、同日の3組目(年約12日)と、専属が休む週末(年8日)です。この2つの日数が増えれば外部の組数が増えます
- 専属2名が見合うのは、司会以外の仕事で年1,240時間以上を埋めているとき、または専属がいることで成約率が0.3ポイント上がるときです
- 外部の単価が約4.3万円を下回ると、全部外部のほうが安くなります。単価と一緒に、繁忙期の優先枠が取れるかを確認します
- 数字はすべて仮の前提です。自分の式場では、日別の組数、専属が休んだ週末の日数、司会以外の時間の3つを拾って置き換えます
