披露宴のゲストを式場の見込み客にする条件|二人の了承と出口の案内
披露宴には、毎回50人前後のゲストが来ます。その中には、これから結婚を考える二人が必ず混ざっています。式場にとっては、料理も会場もスタッフも、すべてを一日かけて見てもらえる見込み客です。広告費をかけずに、これほど体験の深い接点を持てる場は、ほかにはなかなかありません。
ところが多くの式場は、この接点を何にも使っていません。使わないのには理由があって、当日にゲストへ営業をかければ、二人の晴れ舞台が営業の場になってしまうからです。
僕の見立てを先に書きます。ゲストを見込み客にするかどうかは、案内の上手さではなく、二人の了承を取る順番で決まります。そして、うまくいったとしても規模は大きくありません。年に数組から十組ほどの上積みを狙う、小さな施策です。
この記事では、調査の数字でゲスト経験が会場選びにどこまで効いているかを確認し、そのあとで前提を置いた計算で年間の組数を見積もります。最後に、二人の了承の取り方と、案内の出し方、続けるかどうかの線引きを整理します。使う出典は2つで、それ以外の数字はすべて仮に置いた前提です。
参列した会場に抵抗がない人は、約4割います
まず、ゲスト経験が会場選びにどれくらい効いているのかを見ます。
リクルートブライダル総研の「結婚総合意識調査2016」は、2015年4月から2016年3月に結婚した既婚者に聞いた調査です。家族や友人の披露宴にゲストとして出席した会場で、自分も披露宴を挙げることに抵抗があったかを、式場を決める前の意識として尋ねています。結果は次のとおりでした。
- 抵抗はなかった:41.4%
- 抵抗はあった:58.6%
同じ調査には、事前にその会場の披露宴をゲストとして体験しておきたかったかを聞く設問もあります。「体験しておきたかった」が45.4%、「体験する必要はなかった」が54.6%でした。
さらに、披露宴を実施した人のうち「同じ会場で実施した」が23.9%、「同じ会場で実施しなかった」が76.1%と報告されています。同じ会場で実施した理由の1位は、「出席した披露宴が自分の希望していたイメージに近かったから」の42.3%でした。
数字の読み方には注意が要ります。
- 設問は、家族や友人の披露宴に出席した経験を前提にしています。参列経験のない人は、この数字の外側にいます
- 「抵抗がなかった」は、その会場を選ぶ意思があったという意味ではありません。選択肢に入れてもよい、というところまでです
- 同じ会場で実施した23.9%がどの母数に対する割合なのかは、公開されたページの記述からは僕には確かめきれていません。ここでは、調査が報告している数字として紹介するにとどめます
それでも、ゲストとして体験した会場が、その人の会場選びの基準の1つになりうることは、この調査から読めます。
満足度が低いと、逆に遠ざけます
もう1つの出典は、クロス・マーケティングが2014年12月に実施した、首都圏のゲスト調査です。直近2年以内に首都圏の披露宴へ参列した男女1,000人に聞いています。
未婚・独身者に「その式場で自分の披露宴を行いたいか」を聞くと、「ぜひ行いたい」が12%、「やや行いたい」まで含めると55%でした。
同じ調査の本文には、全体満足度やスタッフ満足度に不満を持つ人は、「行いたくない」の割合が突出して高い、とあります。
この2つを並べると、ゲスト向けの施策には前提があることが分かります。
- ゲストの体験が良ければ、半数以上が候補に入れてもよいと考える
- ゲストの体験が悪ければ、候補から強く外れる
つまり、ゲストに案内を出す施策は、当日の体験が悪い式場では逆効果になりえます。案内を出す前に、ゲストの満足度が低くないかを見る必要があります。見学後アンケートのような形で、参列したゲストの感想をすでに集めている式場なら、そこから確認できます。集めていないなら、この施策を始める前に、二人のアンケートの自由記述に、ゲストの不満が書かれていないかを読み直すのが先です。
なお、この調査は2014年のもので、10年以上前の数字です。今の数字ではないので、割合そのものを自社に当てはめず、傾向を見る材料として使います。
ゲストは年に何組の見込み客になるか、モデル計算で見積もります
ここからは、出典のない仮置きの計算です。数字は自社の実績に置き換えてください。
前提を置きます。
- 年間の挙式は100組
- 1組あたりのゲストは60人
- そのうち、これから結婚を考えるゲストを15人(未婚で、パートナーがいる人や、近いうちに結婚しそうな人の想定)
- ゲストが見学を予約する割合を、0.5%、1%、2%の3通りで置く
- 来館した人の成約率を30%
どれも調査の数字ではなく、計算を回すための仮置きです。
結婚を考えるゲストは、100組 × 15人 = 1,500人です。ここから先は、見学を予約する割合で変わります。
| 見学を予約する割合 | 来館する組数 | 成約する組数(成約率30%) |
|---|---|---|
| 0.5% | 7.5組 | 約2.3組 |
| 1% | 15組 | 4.5組 |
| 2% | 30組 | 9組 |
悪くない数字に見えるかもしれませんが、見る場所は割合の部分です。1,500人のうち、見学を予約するのが1%というのは、100人に1人です。披露宴の後に、案内を受け取った100人のうち1人が予約する想定になります。
費用も仮に置きます。全ゲストに案内カードを渡すとして、100組 × 60人 = 6,000枚です。1枚あたり30円と仮定すると、印刷費は18万円です。
- 0.5%(7.5組が来館):1来館あたり24,000円、1成約あたり約8万円
- 1%(15組が来館):1来館あたり12,000円、1成約あたり4万円
- 2%(30組が来館):1来館あたり6,000円、1成約あたり2万円
ここで比べる相手は、自社の媒体経由の1来館あたり費用です。数字は自社の月次で出してください。ゲスト経由の費用が媒体より低ければ続ける価値があり、高ければ、カードの渡し方か対象を見直します。
この計算は、印刷費しか入れていません。案内の準備や、二人への説明にかかるスタッフの時間は含めていません。時間は、あとで説明する運用に載せれば小さくできますが、ゼロにはなりません。
当日の営業にしないために、二人の了承を先に取ります
ゲストを見込み客にする施策で、最初に決めておくのは案内の中身ではありません。二人にどう了承を取るかです。
二人にとって、披露宴は自分たちの一日です。ゲストへの営業が入っていると知れば、気持ちのいいものではありません。了承を取らずに案内を出すと、二人の口コミが下がり、見学した二人の口コミにも影響します。だから、了承は契約の時点で取ります。
方法は2つあります。
1つ目は、契約書か打ち合わせの確認書に、ゲスト向けの案内を出す欄を作ることです。「ゲストの皆様に、当会場の見学案内を渡してよいか」を選べる形にします。出さない二人には出しません。出す二人にも、案内の中身を事前に見せます。
2つ目は、打ち合わせの終盤に、口頭で聞くことです。「ご友人の中に、これから結婚される方がいたら、見学の案内をお渡ししてもいいですか」と聞きます。紙より気軽に答えてもらえますが、記録に残らないので、担当者が確認欄に印を付ける運用にします。
どちらの場合も、次のことを守ります。
- 二人が断ったら、理由を聞かずに、そこで終える
- ゲストの名簿やメールアドレスを、案内の送付に使わない。名簿は、席次や発送のために二人から預かったものです
- 案内を出す時間は、二人が主役の場面ではなく、終わった後にする
名簿を使わない点は、個人情報の扱いの問題でもあります。預かった目的と違う使い方は避けるのが無難です。法的にどこまでが問題になるかは、顧問の弁護士に確かめてください。僕が断定できる範囲ではありません。
案内は出口で、ゲストが自分で動ける形にします
二人の了承が取れたとして、案内をどこで、どう渡すかを決めます。基本の考え方は、ゲストの側から動いてもらうことです。式場から連絡を取りに行きません。
出口の案内として、よく使われる形は次のようなものです。
- お見送りの後、ゲストが帰る動線に、見学案内のカードを置く。渡すのではなく、手に取れる場所に置く
- 引出物の袋に、二人の了承を取ったうえで、案内を同封する
- 披露宴の後のアンケートに、「ご自身の結婚式にご興味はありますか」という問いを置く
カードに書くことも絞ります。
- 見学の予約ができる二次元コード
- 予約したゲストだけの特典があるかどうか(特典を付けるなら、金額より条件を明確に)
- 「今日の会場をそのまま見学できる」と分かる一文
最後の一文が、いちばん効きます。ゲストは、その日の会場を覚えています。覚えているうちに見学に行ける、と伝えるのは、ほかの会場にはない強みです。
注意することもあります。
- カードを置く場所が、お見送りの二人の目の前だと、営業の場に見えます。動線の少し先に置きます
- 「おめでとうございました」のような、二人への祝意を最初に書きます。営業の文面から入りません
- 煽りや期限を付けた誘いは、使いません
効果は、予約フォームの問いで測ります
この施策をやるなら、数字の取り方を先に決めておきます。決めないまま始めると、効いているのかが分からず、続けるか止めるかを判断できません。
測り方は簡単です。
- ゲスト向けの案内には、専用の二次元コードを付ける。コードの先は、通常のフェア予約ページでよいが、流入元が分かる形にしておく
- 予約フォームの「何で当会場を知りましたか」に、「友人・知人の披露宴に参列して」を選択肢として足す
- 案内を出した組数と、予約が入った件数を、月ごとに記録する
予約が入った件数を、案内を出した組数で割ると、1組に案内を出して何件の予約が入ったかが分かります。これを、先ほどの計算の割合(0.5%、1%、2%)と見比べます。
判断の線引きも、始める前に決めておきます。
- 半年(挙式の数で50組前後)で予約が1件もなければ、対象か渡し方を変える
- 1年やって、1来館あたりの費用が媒体より高ければ、止める
- ゲストの満足度が低い挙式が続いているなら、案内より先に、当日の体験を直す
一方で、止める判断をするときの数字は、小さい母数で揺れます。半年で3件か5件かの違いは、誤差の範囲です。細かい差で一喜一憂せず、年単位で見ます。
続けるのは、当日の体験に自信があるときです
ここまでを整理します。
ゲストを見込み客にする施策は、広告費がほとんどかからず、体験の深い接点を使えます。その一方で、規模は小さく、成果が出るまで時間がかかります。そして、当日の体験が良くなければ、案内を出すこと自体が逆効果になりえます。
この施策に向く式場は、ゲストの満足度に自信があって、二人との関係が良く、年間の挙式数がある程度ある会場です。逆に、挙式数が少ない会場や、ゲストの不満が出やすい会場では、広告や口コミ対策のほうが先です。
新規の獲得は、広告に費用をかけて探してもらう方法だけではありません。すでに会場に来ている人に、見学の入口を置く方法もあります。ただし、入口を置く場所と順番を間違えると、二人の信頼を失います。順番は、二人の了承、出口の案内、予約フォームでの計測の3つです。
まとめ
- 参列した会場に抵抗がなかった既婚者は41.4%、事前にゲストとして体験しておきたかった人は45.4%でした(リクルートブライダル総研「結婚総合意識調査2016」)
- ゲスト調査では、満足度が低い人ほど、その式場で挙げたくない割合が突出して高く出ています(クロス・マーケティング、2014年)。案内の前に、当日の体験を確かめます
- 仮の計算では、結婚を考えるゲスト1,500人のうち1%が予約すると、年に15組が来館し、成約は4.5組です。規模は小さい施策です
- 案内より先に、契約時に二人の了承を取ります。名簿は営業に使わず、案内はゲストが自分で動ける出口に置きます
- 予約フォームに流入元の選択肢を足して測り、半年と1年で続けるかの線を決めておきます
