Instagramのプロフィールリンクをフェア予約ページ直通にすると、仮の式場では年17件の予約が増える。ただし月48回のタップでは、6%と3%の差を試験で確かめるのに2.5年かかる
式場のInstagramのプロフィールには、リンクが1本だけ貼れます。そのリンク先を、どこにしているでしょうか。公式サイトのトップにしている式場が、僕の見る範囲では多いです。
トップは無難です。誰が来ても迷わないし、会場の写真も料金の目安もそこから辿れます。ただ、投稿を見て気になった二人が最初に探しているのは、たいてい「見に行けるのか」「いつ空いているのか」のどちらかです。トップに着いてから、フェアのページを探す手間が1回入ります。
この記事では、リンク先を公式サイトのトップからフェア予約ページに変えると、予約がどれだけ増えるかを計算します。使うのは調査の数字ではなく、僕が置いた仮の前提です。実際の式場の数字ではないので、自社の数字に入れ替えて使ってください。先に結論を書くと、変えたときの得は大きく、損は小さいです。ただし、変えた効果を試験で確かめようとすると、タップの数が足りず、何年もかかります。
仮の式場を置く
前提はこうです。すべて仮置きです。
- Instagramのプロフィールを見る人が月1,200人
- そのうち、プロフィールのリンクをタップする人が4%。月48回、年に576回
- いまのリンク先は公式サイトのトップ。トップから進んで、フェア予約まで行く人が3%
- 1組の成約あたりの粗利は140万円(総額350万円、粗利率40%)
- フェア予約1件に対応する費用(試食、準備、担当者の時間)を1.5万円と置く
プロフィールを見る人の数は、Instagramのインサイトで月ごとに出ます。タップ率はインサイトの「プロフィールのリンクのタップ数」を、プロフィールへのアクセス数で割れば出ます。自社の数字が分かるなら、先にここを入れ替えてください。
この前提だと、いまのトップ経由の予約は、月48回×3%で月1.44件。年にすると17.3件です。
直通にしたときの予約
リンク先をフェア予約ページに変えて、タップした人のうち予約まで行く人が6%になったとします。3%の人が、倍の6%になる想定です。
- 月の予約は、48回×6%で2.88件
- 増えるのは月1.44件、年に17.3件
6%は、僕が置いた数字です。根拠のある数字ではありません。倍になるとは限らないし、1.5倍で止まるかもしれません。そこで、タップ数と、予約率の上がり幅を動かして、年の増加件数を並べます。
| 予約率の上がり幅 | 月24回タップ | 月48回タップ | 月72回タップ |
|---|---|---|---|
| +1ポイント(3%→4%) | 年2.9件 | 年5.8件 | 年8.6件 |
| +3ポイント(3%→6%) | 年8.6件 | 年17.3件 | 年25.9件 |
| +6ポイント(3%→9%) | 年17.3件 | 年34.6件 | 年51.8件 |
月48回のタップで予約率が1ポイントしか上がらないなら、増えるのは年5.8件です。「たった」と感じますが、次の章で見るとおり、これでも元は取れます。
損益分岐の成約率は1.1%
直通ページに変えると増えるのは、「トップを経由しなかったら予約しなかった人」の予約です。この人たちは、もともと熱量が低めの可能性があります。トップで迷って離れる人を、直通リンクが拾うわけですから、増えた予約の成約率はふだんのフェアより低くて当然です。
そこで、増えた予約の成約率を3つに分けて見ます。年17.3件が増えるケースです。
| 増えた予約の成約率 | 増える成約 | 増える粗利 |
|---|---|---|
| 10% | 年1.7組 | 約242万円 |
| 20% | 年3.5組 | 約484万円 |
| 30% | 年5.2組 | 約726万円 |
フェア1件の対応費用が1.5万円なら、17.3件で約26万円です。リンクを変える作業そのものは、1時間もかかりません。粗利140万円に対して費用が1.5万円なので、損益分岐は成約率でいうと1.5÷140で、約1.1%。100件の予約のうち1件成約すれば、対応費用は戻ります。
つまり、成約率が10%を下回るような熱量の低い予約でも、損益は黒字です。損益分岐の低さが、この打ち手のいちばんの特徴です。
損をするのは誰か
ここまでは増える側だけを見ました。減る側も見ておきます。
直通リンクにすると、トップに着く人がいなくなります。それで困るのは、次のような二人です。
- 予約の前に、会場の雰囲気や料金の目安を見たい二人
- 予約はまだ早いと思っていて、情報だけ集めたい二人
- 親や相手に見せるために、まず公式サイトを開きたい二人
この二人は、直通ページに着くと、予約フォームを見せられて戸惑います。戸惑って離れれば、これまでトップ経由で後日予約していた分が減ります。ここは、計算に入っていない損です。
減る分を確かめる方法は、トップへの訪問数です。インサイトや公式サイトのアクセス解析で、Instagram経由の訪問が減る分が、フェア予約ページ経由の予約で補えているかを見ます。トップ経由で後から予約していた人は、数字の上では「Instagram経由」ではなく「検索経由」や「直接」に混ざっていることもあります。このあたりは、きれいには分離できません。
対策は単純で、直通ページの上のほうに、判断に必要な最小限の材料を置くことです。
- 会場の写真を3〜4枚
- 所要時間と持ち物
- 試食の有無と、料金の目安(出している式場なら)
- 「まず公式サイトを見る」という小さなリンクを1本
これで、直通ページが「予約フォームだけの冷たいページ」になるのを防げます。予約率を6%まで上げるのは、このページの出来しだいです。
3つの選択肢
リンク先の候補は、実際には3つあります。
- 公式サイトのトップ(いま)
- フェア予約ページ(直通)
- リンクをまとめたページ(フェア予約、資料請求、LINEでの相談などを並べる)
3つ目は、選択肢が増える分、1つ1つのタップ率は下がります。選択肢を増やすと、迷って何も選ばない人が出るのは、一般に知られた傾向です。その代わり、熱量の違う二人を、それぞれ向いた入口に振り分けられます。
僕は、迷う式場には2番を勧めます。理由は、3番が「どの入口に何人流れたか」を測るために、設計と管理の手間が増えるからです。フェア予約が目的なら、最初から目的の入口に1本で通したほうが、数字の読み方も単純になります。ただ、フェアが埋まっていて資料請求を増やしたい式場なら、話は変わります。目的が変われば、リンク先も変わって当然です。
試験で差を確かめるのは難しい
「直通にして本当に効くのか、A/Bテストをしてから決めたい」と考える人は多いと思います。ここで、タップ数が足りるかを計算します。
3%と6%の差を、有意水準5%、検出力80%で見分けるには、それぞれのリンク先に約750回のタップが要ります。合計で約1,500回です。月48回のタップだと、31か月、2.5年です。
差が小さいほど、必要な回数は急に増えます。3%と4.5%を見分けるには、1つのリンク先に約2,500回、合計で約5,000回。月48回なら、8年以上です。
つまり、月48回のタップしかない式場は、試験では結論が出ません。2.5年のあいだにフェアの内容も季節も広告も変わります。試験の条件が保てなくなって、数字の差が何によるものか分からなくなります。
では、どう決めるか。やることは2つです。
- 変えて、数か月見る。リンクの設定は、数分で戻せます。戻せる変更は、試験の結論を待たずに、まず変えてしまってかまいません
- 件数で見る。有意差は出ませんが、Instagram経由のフェア予約が月何件になったかは、数えれば分かります。変える前の3か月と、変えた後の3か月を並べます。0件から2件に増えたなら、その2件が偶然かどうかは分からなくても、続ける理由には十分です
数え方のために、リンクの末尾に「どこから来たか」の印(UTMパラメータ)を付けます。たとえば、?utm_source=instagram&utm_medium=profile のような形です。予約ページのアクセス解析で、この印が付いた訪問と予約が数えられます。印を付けずに変えると、変えた後の予約がInstagram由来か判別できなくなります。
見る数字は3つ
変えた後に見る数字は、予約件数だけではありません。次の3つを、月に1回見れば足ります。
- Instagram経由のフェア予約の件数。印付きのリンクで数えます。変更の前後で比べます
- 公式サイトのトップへの、Instagram経由の訪問。減りすぎていないかを見ます。ゼロになるのは想定どおりですが、ほかの経路の予約が減っていないかを、全体の予約件数と並べて確かめます
- 増えた予約の成約率。ここが最大の不確定要素です。ただ、月に1.4件しか増えない規模だと、成約したかどうかを2〜3か月見ても、母数が数件で読み切れません。半年から1年の累計で見ます
3つ目が一番重要で、一番読みにくい数字です。増えた予約が、成約率10%の熱量の低い層なのか、30%の層なのか。式場の営業は、ここで差が出ます。この数字は、追うことより、予約ページに着いた時点で温度を上げる工夫のほうが効きます。たとえば、予約ページに載せる写真を、見学で見られる部屋とチャペルにして、「来た先の景色」を見せる。予約の時点で期待を作っておくと、来館したあとの落差が減ります。
変えないほうがいい式場
最後に、直通にしないほうがいい式場の条件を挙げます。
- フェアの枠が、すでに埋まっている式場。予約を増やしても受けきれず、断ることになります。この場合は、資料請求やLINE相談など、枠を使わない入口に振るほうが合います
- Instagramの役割が、予約ではなく、すでに来た二人との関係づくりである式場。成約後の二人がタップして見る情報(準備の流れ、お知らせ)があるなら、そちらを優先して置く判断もあります
- プロフィールを見る人が月100人もいない式場。タップが月4回だと、年に出る差は1件前後で、リンク先を考える時間のほうが高くつきます。先に投稿の見せ方を考えたほうがいいです
条件に当たらなければ、変えて失うものは小さいです。設定ひとつで戻せるので、迷っている時間のほうが損になります。
まとめ
- 月1,200人がプロフィールを見る仮の式場では、リンクのタップは月48回。トップ経由のフェア予約率が3%なら、予約は年17.3件
- 直通ページで予約率が6%になれば、年に17.3件増える。1ポイントしか上がらなくても、年5.8件増える
- 増えた予約の成約率が10%でも、年1.7組で粗利は約242万円。損益分岐の成約率は、対応費用1.5万円で約1.1%と低い
- 減る側は、予約の前に情報を集めたい二人。直通ページの上に、写真、所要時間、料金の目安、サイトへの小さなリンクを置いて減らす
- 月48回のタップでは、3%と6%の差を試験で確かめるのに約2.5年かかる。試験を待たず、戻せる設定として変えて、前後3か月の件数で見る
- リンクの末尾に、Instagram由来と分かる印を付ける。付けずに変えると、効果が数えられない
- フェアの枠が埋まっている式場と、プロフィールを見る人が月100人に満たない式場は、変える前に別の手を考える
