集客

式場の折込チラシは、専用QRと予約番号を付けて数えてから続けるか決める

新聞折込やポスティングのチラシを、毎年なんとなく出し続けている式場は多いと思います。前任の担当者が始めて、印刷会社との付き合いがあって、止める理由も続ける理由もはっきりしないまま、年に何回か版を作り直している。そういう会場です。

結論を先に書きます。チラシは続けるか止めるかを決める前に、数える仕掛けを付けます。仮の式場で計算すると、チラシの損益分岐はかなり低いです。年に来館が2組あれば元が取れる計算になります。ところが、その2組が「チラシから来た」と分かる形で残っていないと、判断のときに「反応がなかった」としか見えません。分岐が低いからこそ、数えていないチラシは、続けるにも止めるにも根拠がありません。

この記事に出典つきの数字はありません。新聞折込の料金や反応率は、地域や新聞社、部数、折込の曜日で大きく違うはずですが、僕は相場を確かめていません。以下の数字はすべて僕が置いた仮の前提です。自分の会場の請求書の数字に置き換えて読んでください。

仮の式場を置く

計算の土台を並べます。

  • 折込は年6回。エリアは会場から車で20分圏の購読世帯です
  • 1回の部数は5万部。配布費は1部3.5円で、1回17.5万円かかります
  • 版のデザイン・印刷用データ制作は年に20万円。6回で割ると、1回あたり約3.3万円です
  • つまり1回あたりの費用は約20.8万円。年6回で125万円です
  • 来館から成約までの率は4割。これも仮です
  • 1組が成約したときの粗利は150万円。こちらも仮です

印刷代を別に払う会場もあるので、実際はこの数字に上積みになります。ここでは「配布と制作だけ」で見ます。

損益分岐は、年に来館2組

年125万円を、1成約あたりの粗利150万円で割ると、約0.83です。年に1組弱が成約すれば、広告費は戻ります。成約率が4割なら、来館が約2.1組、つまり年に3組来てくれれば足ります。

この計算で言いたいことは、チラシが得だということではありません。損益分岐が低い広告は、反応が少なくても黒字になりえます。そして、反応が少ないものは数えにくいです。5万部に対して年6回で30万部を撒いて、来館が3組なら反応率は0.001%です。これを「3組来ました」と確実に拾えるかどうかが、判断の大半を決めます。

仮に、予約の際に「どこで知りましたか」と聞く方式だけで数えていたとします。チラシを見て、スマホでそのままインスタや検索で調べ直してから予約した人は、「ネットで見ました」と答えるかもしれません。仮に、チラシ経由の来館の3分の1しか拾えていないとすると、実際は3組来ているのに数字上は1組です。年125万円に対して1組、成約0.4組。赤字に見えます。実際は黒字ぎりぎりだったのに、数え方のせいで止める判断になる。数えないまま止める損は、ここにあります。

逆もあります。数えないまま続ける会場は、「何となく続けているから、止めたら来館が減りそう」という感覚で、毎年125万円を払います。実際には来館がゼロの回があっても、誰も気づきません。

数える3つの仕掛け

チラシの反応を数えるには、チラシ側に「これはチラシから来た」という印を付けます。やり方は3つあります。

専用QRコード

チラシ専用の予約ページのアドレスを作り、QRコードにして載せます。ふだんのフェア予約ページと同じ内容で、アドレスだけ変えます。予約フォームのシステムに「流入元」の欄があれば、チラシ用の値を入れておきます。

弱点は、QRを読まない人です。折込チラシを見る世代には、スマホでQRを読む人もいれば、読まずに会場名を検索する人もいます。QRで拾えるのは、チラシを見た人の一部に過ぎません。仮に半分としても、数えない状態よりは分かります。QRを読んだ人数と予約に至った人数を分けて見られれば、チラシの「引き」と「予約フォームの出来」を切り分けられます。

専用の予約番号(電話・LINE)

チラシにだけ載せる電話番号やLINEの友だち追加用コードを作ります。電話の場合は、通話の転送ができる番号を1本追加して、チラシ専用にする方法があります。月額は数百円から数千円の範囲だと思いますが、契約の中身で変わるので、通信会社に確認してください。

電話で予約する人は、QRを読まない人と重なりやすいです。QRと電話番号を両方付けると、拾える層が広がります。

予約時の合言葉

フェア予約フォームか電話口で、「チラシをお持ちの方は、キーワードをどうぞ」と聞く方式です。チラシにキーワードを印刷しておき、来館時に特典を付けます。特典は、損益を崩さない範囲で、たとえば試食の追加1品などです。

この方法は、チラシを見て来たことが分かる一方、特典に釣られた人が混ざります。特典の損益はフェアの来場特典の記事で別に書いたので、ここでは省きます。要点は、特典が付くほど「チラシを見た」と言う人が増えるので、反応の数字が膨らむことです。QRや専用番号と並べて、3つの数字を比べると、膨らみ具合が分かります。

3つとも付けるのが理想ですが、作業の重さが違います。QRは最初に作れば終わり、専用番号は契約の手間、合言葉は現場の運用が増えます。最初は、QRと合言葉の2つで始めるのが無理がない組み合わせです。

版とエリアを変えるなら、1回に1つだけ

3回出して反応がなかったとき、版もエリアも配布日も全部変えてしまう会場があります。変えすぎると、次の3回で反応が出ても、何が効いたのか分かりません。

変える順番は、配布エリアより先に版の中身がいいと思います。理由は費用です。エリアを広げると、部数が増えて配布費が比例して膨らみます。仮の式場で部数を5万から7万に増やすと、配布費は1回17.5万円から24.5万円で、年42万円の増加です。版の差し替えは、デザイン費の範囲に収まります。

版の中身で変えるのは、QRの大きさと、予約の入口を1つに絞ることです。フェア日程、会場の写真、特典、アクセス、料金の目安と載せていくと、読み手はどこを見ればいいか分からなくなります。予約の入口はQR1つにして、残りは予約ページに任せるほうが、数える側にも楽です。

エリアを変えるときは、1つずつ足します。たとえば車で20分圏の外側に、隣の市を1か所だけ足し、足した地域の専用QRを別にしておきます。QRを分ければ、足した地域の反応だけが見えます。

続ける線と止める線を、先に決めておく

数える仕掛けを付けても、判断の線が決まっていないと、数字を見て迷います。折込は反応が出るまでに時間がかかることもあるので、線は「何回出したら判断するか」を先に置きます。

仮の置き方を書きます。

  • 3回出して、数えられた来館がゼロなら、版か配布エリアを変えて、もう3回やる
  • それでもゼロなら止める。ここまでで費用は約125万円です
  • 3回で来館が3組以上なら、続ける。成約まで追って、1成約あたりの広告費を出す
  • 1〜2組なら、数え方の取りこぼしを疑う。専用番号を足して、もう3回見る

3回という数字に根拠はありません。年6回のペースで、半年を一区切りにしたかっただけです。会場の事情で、2回でも4回でもかまいません。大事なのは、始める前に線を紙に書いておくことです。数字が出てから決めると、「あと一回だけ」が繰り返されます。

止めるときにやってはいけないこと

やめたあとに来館が減ったかどうかを、前年と比べて判断するのは危険です。婚姻数の増減や近隣の新規開業、フェアの内容の変更、季節で来館は動きます。チラシを止めたことと来館の増減を結びつけるのは、証明が難しいです。同じ理由で、掲載媒体の記事(止めても効果が測れない)でも書いたとおり、止めた前後の比較は単独では当てになりません。

数えておけば、この問題は小さくなります。止める前に3回分の「チラシ経由」の数が残っていれば、止めたあとの全体の来館が動いても、「チラシ分が減った」のか「別の要因」なのかを分けて見られます。

続けたほうがいい条件

数字が薄くても続けるべきケースがあります。仮説として、次の3つです。

  • 親世代に届けたい。親が見る新聞に載っていることが、フェア予約のきっかけになる会場もあります。ただしこれは僕の仮説で、数字では確かめていません。親が来館に同席した組の成約率を自社で数えて、同席の有無で比べるなら、チラシの意味が見えます
  • 地域で名前を知ってもらうことが目的。指名検索の回数(Search Consoleで見られます)が、チラシの配布週に上がるかを見ます。上がらないなら、目的は果たせていません
  • 他に出せる媒体が無い。ネットの広告費を上げても反応が増えない地域では、紙のほうが残っていることがあります

どれも、数えて初めて言えることです。数えていない会場がこの3つを理由に続けるのは、理由が後付けになります。

手を付ける順番

作業の順番を書きます。

  1. 次回の版に、専用QRと合言葉を入れる(印刷会社に版の差し替えを頼む)
  2. 予約フォームの「流入元」に、チラシ用の値を作る。無いシステムなら、チラシ専用の予約ページを別に作る
  3. 配布の日付を記録する。配布週と来館の増減を比べるときに必要になる
  4. 3回出したら、判断の線に照らして続けるか決める

お金のかかる変更は、ほとんどありません。版のデザインを変える20万円の中で吸収できる範囲だと思います。

まとめ

  • チラシの損益分岐は低い。仮の式場(年6回・125万円)では、年に来館3組で元が取れる
  • 低い分岐を下回ったように見えるのは、数え方で取りこぼすため。聞き取りだけだと、実際より少なく出ることがある
  • 数える仕掛けは、専用QR、専用の予約番号、予約時の合言葉の3つ。最初はQRと合言葉の2つで始める
  • 続ける線と止める線は、数字が出る前に決める。3回という区切りは仮で、会場の事情で変えてよい
  • 止める前後の来館数の比較は、単独では当てにならない。数えておけば、チラシ分と他の要因が分けられる
  • 数えていないチラシは、続ける理由も止める理由も、あとから作ることになる