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結婚式の総額が343.9万円から298.6万円に減った、と読んではいけない

2024年10月に発表されたゼクシィ結婚トレンド調査では、挙式と披露宴・ウエディングパーティーの総額の平均が343.9万円でした。2026年1月に出た結婚マーケット調査2025では、挙式と披露宴の両方を行った人の費用総額の平均が298.6万円。並べると45.3万円、率にして約13%の減少に見えます。

でも、これを「結婚式の予算が1年で13%縮んだ」と読むのは危ないです。2つの数字は、同じ物差しで測っていません。調査の名前が変わり、聞いた相手も変わっているからです。

業界の平均値は、自社の単価が高いのか低いのかを判断する場面でよく使われます。その物差し自体が入れ替わった年に、前年比で語ると結論が逆になることがあります。今回は2つの調査の中身を見比べて、何が違っていて、どこまでなら比べてよいのかを整理します。

並べて見える数字と、その出どころ

まず、それぞれの数字を調査の概要つきで並べます。

旧調査のゼクシィ結婚トレンド調査2024は、リクルートブライダル総研が2024年10月25日に発表したものです。公開されているレポートの内容は次のとおりです。

  • 挙式、披露宴・ウエディングパーティーの総額:平均343.9万円(前年調査比105.1%、16.8万円増)
  • 披露宴・ウエディングパーティーの招待客人数:平均52.0人(前年調査比105.9%、2.9人増)
  • 対象:2023年4月〜2024年3月に挙式や披露宴を実施した、または実施予定があった『ゼクシィ』会員

前年にあたる2023年版は、総額327.1万円、招待客49.1人でした。この2つは、2024年版の増加分を引き算して逆算した値で、公開レポートの増分と整合しています。つまり旧調査の側は、同じ会員を対象にした調査が毎年積み上がっていて、前年比で語れる状態でした。総額は3年続けて上がり、招待客も増えています。

一方、結婚マーケット調査2025は、2026年1月22日に公開されました。リクルートによると、2025年から「ゼクシィ結婚トレンド調査」と「結婚総合意識調査」を統合して、この名前の調査になっています。概要は次のとおりです。

  • 調査期間:2025年5月12日〜26日
  • 対象:2024年4月〜2025年3月に、国内での挙式、披露宴・ウエディングパーティー、結婚を機とした食事会のいずれかを行った、全国の20〜49歳の男女
  • 集計サンプル:817人
  • 挙式と披露宴・ウエディングパーティーの両方を行った人:招待客人数は平均57.2人(全体平均47.4人より9.8人多い)、費用総額は平均298.6万円で、最も多い価格帯は300〜350万円

旧調査のレポートには、はっきり書かれている一文があります。2025年の調査は対象が異なるため、本報告内容との過去比較はしない、というものです。調査をしたリクルート自身が、比べないでくださいと言っているわけです。僕はこの断り書きを、この記事の出発点にしています。

差が出る理由を、対象と定義から探す

では、何が違うのか。報告書と概要の記述から、確認できる違いを挙げます。

1つ目は、誰に聞いたかです。旧調査は『ゼクシィ』の会員でした。結婚式場を探して、情報サービスに登録した人たちです。新調査は、全国の20〜49歳の男女から、結婚式や会食を行った人を拾っています。式場探しをしなかった人、サービスを使わなかった人も入ってきます。式場を探した人は、探さなかった人より式にかける金額が大きくなりやすいと考えるのが自然です。ただ、この差がどれくらいあるのかは、僕が見られた範囲の資料には出ていません。

2つ目は、数字の対象になる人の範囲です。新調査の298.6万円は、挙式と披露宴を両方行った人の平均です。旧調査の343.9万円が、どの組み合わせの人を含む平均なのか、僕は報告書の注記までは確認できていません。同じ「挙式、披露宴・ウエディングパーティーの総額」という表現でも、集計に入れる人が違えば平均は動きます。

3つ目は、実施した時期と聞いた時期です。旧調査は2023年4月から2024年3月に実施した人。新調査は2024年4月から2025年3月に実施した人です。ここだけを見れば1年ずれていますから、前年比に見えるかもしれません。ですが、1つ目と2つ目の違いが重なるので、時期のずれだけを取り出して比べることはできません。

4つ目は、費用に何を含めるかです。結婚式の費用は、挙式料、料理や飲物、衣装、写真、引出物、演出と、項目がたくさんあります。ご祝儀を引く前の総額なのか、自己負担なのかでも意味が変わります。どちらの調査も総額の平均を載せていますが、項目の範囲まで一致しているかは、僕は確かめられていません。

この4つのうち、確認できたのは1つ目と3つ目で、2つ目と4つ目は分からないままです。分からないものを分からないと書いておくのは、数字を扱う側の最低限の礼儀だと思っています。

一人あたりに直しても、同じ結論になる

「総額が下がって、人数が増えているなら、一人あたりの金額はかなり下がったのでは」と考える人もいると思います。計算してみます。

  • 旧調査(2024年版):343.9万円 ÷ 52.0人 = 約6.61万円
  • 新調査(2025年版):298.6万円 ÷ 57.2人 = 約5.22万円

一人あたりでは約21%の減少になります。2023年版でも同じ計算をすると、327.1万円 ÷ 49.1人 = 約6.66万円です。旧調査の中では、2023年版から2024年版にかけて一人あたり約6.6万円でほぼ横ばいでした。それが次の調査で、いきなり5万円台前半に落ちています。

仮に実勢が動いたのだとすると、1年で一人あたりの費用が2割落ちたことになります。旧調査では3年続けて上がってきた数字が、です。僕は実勢の変化というより、調査の対象と範囲が変わった影響が大きいと見ています。ただし、これは僕の読みで、証明はできません。検証するには、旧調査と新調査の両方に回答した人の層を突き合わせる必要がありますが、そのデータは公開されていないはずです。

大事なのは、実勢が動いたかどうかを僕が決めつけないことです。分かっているのは、今ある2つの数字では、動いたかどうかを判定できない、ということだけです。

自社の数字を当てると、評価が逆になる

この話が経営の判断に関わるのは、自社の単価との比較に使われる場面があるからです。例を1つ、仮の数字で作ります。実在の会場ではありません。

ある会場の1組あたりの平均売上が320万円だったとします。

  • 旧調査の343.9万円と比べる:320÷343.9−1=約−7%。業界平均より7%低い
  • 新調査の298.6万円と比べる:320÷298.6−1=約+7%。業界平均より7%高い

同じ会場の同じ数字が、どちらの物差しで測るかで、7%低いにも7%高いにもなります。前者なら値上げの余地があるという話になり、後者なら今の単価を守る話になるでしょう。会議の方向が、物差しの選び方だけで変わってしまいます。

もう1つ注意したいのは、自社の売上と調査の総額は、そもそも定義が同じではないことです。調査の総額は新郎新婦が回答した結婚式全体の費用です。会場が受け取る売上には、新郎新婦が外部に支払った衣装や写真、引出物が入らないこともあります。この差も加わるので、平均値との比較はもともと大まかな目安にしかなりません。差が数%程度なら、誤差の範囲と考えたほうが安全です。

業界の平均値を使うときの確認事項

では、業界の平均値は使えないのか。そうではないと思います。使い方を決めておけば、判断の助けになります。僕が確認している点を挙げます。

  • 同じ調査の中で比べる。2024年版の中で地域別に比べる、新調査の中で実施形態別に比べるといった使い方なら、物差しがそろっています
  • 年をまたぐ比較は、調査名・対象・集計の範囲が変わっていないかを先に確かめる。名前が変わった年は、特に疑います
  • 調査機関が過去比較をしないと書いているなら、それに従う
  • 自社の数字と並べるときは、差が小さいうちは判断を変えない。数%の差は、定義の違いで消えます
  • 自社の中の推移は、自社の数字だけで追う。去年の自社と今年の自社は、同じ定義で測れる唯一の比較です

特に最後は重要です。外部の平均は、会場の位置を知るための地図のようなものです。自分がどれくらい進んだかを知るには、自社の数字を前年と並べるのが確実です。

招待客人数のほうは、少し読める

総額は比べられませんが、招待客人数の読み方には手がかりがあります。

新調査のサマリーでは、挙式と披露宴を両方行った人の招待客は平均57.2人でした。全体の平均は47.4人で、差は9.8人あります。この全体平均には、披露宴を行っていない人や、会食だけの人など、規模の小さい形態が混ざっていると考えるのが自然です。つまり、同じ調査の中でも、どの層に絞るかで10人近く動きます。

旧調査の52.0人と新調査の57.2人も、同様に対象の違いが入っています。ここでも、5.2人増えたと読むことはできません。

もう1つ、新調査の数字で使えるのは実施率です。報告書では、挙式の実施率が48.9%、披露宴・ウエディングパーティーの実施率が43.1%と示されています。披露宴まで行う人は、半分に届きません。この数字は、婚姻数と披露宴の関係を書いた前の記事で触れた、披露宴の実施率4割強とも同じ水準です。

式を行う人としない人の比率は、母集団を全国の20〜49歳に広げた新調査のほうが、旧調査より適した設計だと言えます。旧調査の対象は、式場を探す人たちだったからです。逆に、式場を探している新郎新婦の予算感を知りたいなら、旧調査の対象のほうが近かった。どちらが良い悪いではなく、答えられる問いが違うということです。

来年の数字が出たときに、やっておくこと

2026年版の結婚マーケット調査が出れば、新調査の中で初めて前年比が取れるようになります。そのときに備えて、今のうちにできることがあります。

1つは、2025年版の数字を自社の資料に写すときに、調査名と対象を一緒に書いておくことです。数字だけをスライドに貼ると、1年後に誰も出どころを思い出せません。新調査と旧調査の数字が資料の中で混ざると、今回のような誤読が起きます。

もう1つは、自社の過去の資料を見直すことです。旧調査の数字を使って「業界平均に対して〇%」と書いている箇所があれば、新調査の数字に差し替える前に、注記を足します。差し替えるだけだと、自社の位置が突然動いたように見えてしまいます。

数字は1行で済みますが、出どころは1行では済みません。それでも、調査名と対象の1行を足しておく価値はあると思っています。

まとめ

  • ゼクシィ結婚トレンド調査2024の総額343.9万円と、結婚マーケット調査2025の298.6万円は、約45.3万円の差があるが、調査の対象が変わっているので前年比には使えない
  • リクルートのレポートにも、2025年の調査は対象が異なるため過去比較はしない、と書かれている
  • 旧調査の対象は『ゼクシィ』会員、新調査の対象は全国20〜49歳で挙式・披露宴・会食のいずれかを行った817人。一人あたりに直すと約21%下がるが、実勢の変化と読むのは危ない
  • 仮に自社の1組あたり売上が320万円なら、旧調査と比べると約7%低く、新調査と比べると約7%高い。物差しで評価が逆になる
  • 業界の平均値は、同じ調査の中で比べる。年をまたぐ比較は、名前・対象・範囲を先に確かめる
  • 自社の推移を見るなら、自社の数字を前年と並べるのが、同じ定義で測れる唯一の比較