経営・組織

結婚式場48社は利益が8割増えた。同じ年に、減収の会社は1.7倍になっている

東京商工リサーチが2026年6月に出した調査で、結婚式場を運営する主要48社の2025年の最終利益は257億6,700万円でした。前年より80.8%増えています。売上高は3,040億1,900万円で、伸びは1.8%です。

売上が2%足らず伸びる間に、利益が8割増えた。見出しだけ読めば、式場業界は絶好調に見えます。

ところが、同じ調査の別の数字を並べると景色が変わります。減収だった会社は、前年の12社から21社に増えました。1.7倍です。黒字の会社の割合も、前年から2.0ポイント下がっています。

利益は大きく増え、減収の会社も大きく増えた。この2つが同じ年に起きています。平均だけを見ていると、どちらの話も見落とします。この記事では、利益の増え方の中身と、会社ごとに差がついた理由を、公表されている数字で分解します。最後に、自社の数字で確かめる3点も置きます。

利益80.8%増の中身

まず、利益がどこから増えたのかを見ます。

東京商工リサーチの発表では、売上高は3,040億1,900万円、前年比1.8%増で、4年連続の増収です。最終利益は257億6,700万円で、前年比80.8%増。日本経済新聞も同じ調査を報じていて、売上高合計は2%増の3,040億円、最終利益合計は81%増の257億円と書いています。

東京商工リサーチは、利益を押し上げた要因として、婚礼単価の上昇と、付随するホテル事業やレストラン事業などを挙げています。

ここで、前年の数字を逆算してみます。前年の売上高と最終利益は、今年の数字を増減率で割り戻せば出ます。以下は僕の計算で、東京商工リサーチが公表した数字ではありません。

  • 前年の売上高:3,040.19億円 ÷ 1.018 = 約2,986億円
  • 前年の最終利益:257.67億円 ÷ 1.808 = 約142.5億円
  • 前年の最終利益率:142.5億円 ÷ 2,986億円 = 約4.8%
  • 今年の最終利益率:257.67億円 ÷ 3,040.19億円 = 約8.5%

売上高は約54億円増え、最終利益は約115億円増えました。仮に利益率が前年の4.8%のままだったら、売上が54億円増えたことで増える利益は、約2.6億円です。実際の増加は約115億円なので、増えた利益のほぼ全部、およそ112億円は、売上が増えたからではなく、利益率が4.8%から8.5%に上がったことで生まれています。

つまり2025年の増益は、お客さんが増えたことより、1組あたりに残る利益が厚くなったことで起きています。

もう1つ注意が要るのは、最終利益という数字の性質です。最終利益は、本業の儲けに加えて、資産の売却益や特別な損失も含めた最後の数字です。会社ごとの事情が混ざるので、この利益の増加がすべて婚礼の本業から来たとは言えません。東京商工リサーチも、単価の上昇とあわせて、ホテルやレストランといった付随する事業の寄与を挙げています。

減収企業が12社から21社に増えた

次に、会社ごとの動きを見ます。

東京商工リサーチの集計では、2025年に増収だった会社は48社中26社で、構成比54.1%です。前年は35社、72.9%でした。9社減っています。

減収だった会社は21社で、構成比43.7%。前年の12社、25.0%から1.7倍に増えました。

前年と比べた収益のパターンは、次のとおりです。

  • 増収増益:20社(41.6%)
  • 減収減益:12社(25.0%)。前年は7社(14.5%)
  • 減収増益:9社(18.7%)
  • 増収減益:6社(12.5%)

最も多いのは増収増益の20社で、4割を占めます。一方で、4社に1社は減収減益です。前年は7社だったので、5社増えています。

黒字の会社は34社で70.8%、赤字は14社の29.1%でした。7割が黒字という数字だけを見ると健全に見えますが、黒字の割合は2023年から少しずつ下がってきている、と東京商工リサーチは書いています。

注目したいのは、減収増益の9社です。売上は減ったのに、利益は増えた。単価を上げて組数の減少を補った、あるいは付帯事業や費用の見直しで利益を残した、といった道筋が考えられます。ただ、調査にはその内訳が載っていないので、どれが当てはまるかは分かりません。

前年の46社調査との違いに注意する

ここで1つ、数字の読み方の注意があります。東京商工リサーチは、2024年の調査でも結婚式場の業績を出しています。そちらは全国の結婚式場を運営する46社が対象で、2024年の売上高は2,757億円(前年比3.9%増)、最終利益は120億円(同17.6%減)でした。減収企業は15社、構成比32.6%です。

2025年の調査は、5期連続で業績が判明した48社を対象にしています。対象の会社が違うので、2024年調査の数字と2025年調査の数字を直接並べて、増えた減ったを言うことはできません。先ほど逆算した前年の最終利益が約142.5億円で、2024年調査の120億円と合わないのも、対象が違うからです。

比べていいのは、同じ調査の中で前年と今年を並べた数字だけです。この記事の増減や社数の比較は、すべて2025年調査の中の数字を使っています。

もう1つの点として、5期連続で数字が取れた会社だけを集計しているので、途中で倒産や休廃業をした会社は入っていません。東京商工リサーチの別の集計では、結婚式場業の倒産は5件、休廃業・解散は13件で、合計18件でした。新設法人の14件を上回り、この状態が2019年から7年連続で続いています。

つまり48社の数字は、残っている会社の成績です。残っている会社の中で利益が増えたことと、業界全体が良くなったことは、同じ意味ではありません。

市場全体は横ばいで、増益の源は単価に寄っている

市場の側の数字も見ておきます。

矢野経済研究所が2026年5月に出した調査では、2025年のブライダル関連市場(主要5分野計)は、事業者の売上高ベースで1兆5,786億円、前年比99.9%の見込みです。2026年は99.5%の1兆5,700億円と予測しています。

主力の挙式披露宴・披露パーティ市場は、施行件数の減少と列席者人数の伸び悩みで、2024年より微減と推計されています。一方、有力企業や成長企業では、新規施設やリニューアルで受注を伸ばし、組単価の上昇も見込める、というのが同じ調査の見立てです。

厚生労働省の人口動態統計では、2025年の婚姻件数は48万9,119組で、前年より0.8%増えました。増えたとはいえ、ピークだった1972年の109万9,984組の半分以下です。

市場全体が横ばいか微減で、婚姻数もわずかな増加にとどまる。その中で、48社の売上は1.8%伸び、利益は8割増えた。この差を作ったのは、組数ではなく単価と付帯事業だと読むのが、公表されている数字からは自然です。

東京商工リサーチは、会社ごとの業績に差がついた理由について、若年人口が減ってマーケット競争が厳しくなる中で、顧客のニーズを捉えたプラン開発や戦略があるかどうかが、業績の格差につながっているようだと書いています。「ようだ」という書き方なので、断定ではなく推測です。それでも、市場が増えない中で伸びた会社と減った会社に分かれたことを考えると、商品の側に差の原因を探すのは筋が通っています。

売上の少しの動きが、利益を大きく動かすモデル計算

利益が8割増えた、というと別世界の話に聞こえます。しかし、式場の利益構造を考えると、この増え方は特別な魔法ではありません。売上のわずかな動きが、利益には大きく響く構造だからです。

簡単なモデルで確かめます。以下は前提を置いた仮の計算で、実在の会社の数字ではありません。

前提は3つです。

  • 年間売上10億円の式場
  • 最終利益率は、48社の前年の逆算値に近い4.8%(利益4,800万円)
  • 売上が変わっても、費用は変わらないものとする

費用が一切変わらないというのは極端な仮定です。実際には、料理や飲料の原価、引出物、スタッフの時給など、組数に応じて動く費用があります。なので、これから出す数字は、利益の動きの上限と考えてください。

売上が3%増えた場合、増えるのは3,000万円で、利益は4,800万円から7,800万円になります。62.5%の増益です。

売上が3%減った場合、減るのは3,000万円で、利益は1,800万円まで落ちます。62.5%の減益です。

売上が3%動くだけで、利益は6割動く。利益率が5%に届かない状態では、売上のわずかな動きが利益に増幅されて出ます。48社全体で見ても、利益率が4.8%から8.5%に上がれば、同じ売上でも利益は8割近く増える計算になります。

この構造は、増益のときは追い風になりますが、減収のときは同じ強さで逆に働きます。減収の会社が21社に増えた、という数字の重さは、ここにあります。減収の幅が小さく見えても、利益の側では大きな減少として出ます。東京商工リサーチの集計で減収減益の会社が12社に増えているのは、この構造が表に出た結果の1つだと思います。

自社の数字で確かめる3点

ここまでの数字を、自社の経営の目に変換します。全体の平均が良くても悪くても、自社がどちら側にいるのかは、自社の数字でしか分かりません。次の3点を確かめてください。

1つめは、利益の増減を、売上の要因と利益率の要因に分けることです。この記事の前半でやったのと同じ分解を、自社の前年と今年でやります。売上の増減額に前年の利益率を掛けた分が売上要因、残りが利益率の要因です。利益が増えているのに、中身が単価の上昇だけなのか、費用の削減が混ざっているのか。分けると、来期も続く増益なのか、1回きりの増益なのかが見えます。

2つめは、売上の減少を、組数と1組あたりの単価に分けることです。減収の原因が組数の減少なら、集客や成約の問題です。単価の下落なら、商品や見積もりの問題です。組数が減って単価が上がっている会社と、組数が横ばいで単価が下がっている会社では、同じ減収でも打ち手がまったく違います。

3つめは、婚礼以外の収益の比率を出すことです。東京商工リサーチは、ホテルやレストランといった付随する事業が利益を押し上げたと書いています。自社の売上のうち、婚礼の披露宴以外から入っているお金がどれだけあるか。レストラン、宴会、フォト、法人利用など、挙式披露宴の組数に連動しない売上の厚みを一度出しておくと、組数が減った年の落ち方が読めます。

この3つに共通するのは、全体の数字を自社に当てはめる前に、自社の数字を分解するという順番です。48社の平均で利益が8割増えたと聞いて、自社も同じ流れに乗っていると考えるのは危ないです。逆に、減収企業が増えたと聞いて、自社も厳しいと思い込む必要もありません。

まとめ

  • 東京商工リサーチの調査(結婚式場48社)では、2025年の売上高は3,040億1,900万円で前年比1.8%増、最終利益は257億6,700万円で80.8%増だった
  • 前年の数字から逆算すると、最終利益率は約4.8%から約8.5%に上がっている。増えた利益のほぼすべては、売上の増加ではなく利益率の改善によるもの
  • 増収は26社(前年35社)、減収は21社(前年12社)で、減収企業は1.7倍に増えた。減収減益は12社で、前年の7社から増えている
  • 黒字は34社の70.8%だが、黒字の割合は2023年から徐々に下がっている。5期連続で数字が取れた会社の集計なので、途中で消えた会社は入っていない
  • 利益率が5%に届かない状態では、売上のわずかな動きが利益を大きく動かす。モデル計算では、売上3%の増減が利益の約6割の増減になった
  • 自社で確かめるのは3点。利益の増減を売上要因と利益率要因に分ける、減収を組数と単価に分ける、婚礼以外の収益の比率を出す