人数確定のあとに出た当日欠席の料理代を、二人に請求するか。仮の式場で年12万円の差。決めるのは金額より、確定日と体調不良の線引きだ
人数確定のあとに、ゲストが当日欠席になった。朝になって「熱が出た」と連絡が入る。その人の料理は、もう仕込んである。この料理代を二人に請求するのかしないのかは、規定に書いてあっても、現場では毎回少し揉める場面です。
この記事では、確定後の当日欠席の料理代を、仮の式場で計算します。結論から書くと、請求しない場合の持ち出しは、前提によって年6万円から18万円ほど。金額そのものは、式場の経営を左右するほど大きくありません。それでも規定が必要なのは、金額より、二人との関係と現場の判断の揃え方に効くからです。数字はすべて仮置きで、調査の数字は使っていません。自分の会場の数字に置き換える手順も書きました。
当日欠席の料理は、いつ戻せなくなるのか
まず、確定のあとに何が起きているかを分けます。料理の発注は、人数確定の時点から動き出します。確定日から挙式までの間に、食材の発注、仕込み、席の準備が進み、日が近づくほど戻せない部分が増えます。
戻せなくなる部分は、3つに分かれます。
- 食材の仕入れ。発注が済み、キャンセルできる期限を過ぎたもの
- 仕込みの手間。下ごしらえが済んだもの。人件費として、すでに使った時間
- 席と備品。席次表、メニュー表、席札、引き出物など、人数分に紐づくもの
前日と当日の欠席では、戻せる割合がほとんどありません。確定の直後なら、仕入れの発注を減らせる場合があります。つまり、「確定後の欠席」とひとくくりにすると、話が噛み合わなくなります。確定日の直後と、前日・当日とで、式場が負う損失の大きさが違うからです。
規定を決めるときは、最初にここを切ります。「確定日以降」ではなく、「いつから料理代が戻らないか」を、自分の会場の仕入れの締めに合わせて数えます。
仮の式場で数える
数字は前提を置いて計算します。仮の式場の前提は次のとおりです。
- 年間の披露宴は120組
- 招待客1人あたりの料理・ドリンクの売値は、1万5,000円と置く
- そのうち、確定後の欠席でも戻らない原価と手間は、1人あたり5,000円と置く(売値の3分の1にあたる想定)
- 確定後に当日欠席が出る組の割合は、10%、20%、30%の3通りで見る
- 欠席が出る組では、平均1人が欠席すると置く
どれも想定で、実在の統計ではありません。自分の会場の実績で置き換えてください。
計算すると、次のとおりです。
| 欠席が出る組の割合 | 年間の欠席人数 | 請求しない場合の持ち出し(1人5,000円) | 全額を請求した場合の売上(1人1万5,000円) |
|---|---|---|---|
| 10% | 12人 | 6万円 | 18万円 |
| 20% | 24人 | 12万円 | 36万円 |
| 30% | 36人 | 18万円 | 54万円 |
見るべきは、右の2列の差です。請求しなければ、持ち出しは年6万円から18万円。全額を請求すると、売上は18万円から54万円で、持ち出しの3倍になります。請求を満額でやれば、原価を回収したうえに、利益も乗ることになります。
この3倍の差が、請求する側にも、しない側にも、それぞれ理屈を持たせます。しない側は「原価の分は式場が持つ」と言えます。する側は「契約どおりの料金だ」と言えます。どちらの理屈も成り立つので、数字だけでは決まりません。
請求の線は、原価で引くか、売値で引くか
ここで、規定の作り方が2つに分かれます。
売値で請求する。 確定した人数分の料金は、欠席があっても変わらない、という作り方です。契約書に「確定後の人数変更は料金に反映されない」と書き、欠席も同じ扱いにします。運用は単純で、現場で迷いません。その代わり、体調不良で来られなかった人の料理代を、二人が払う形になります。
原価で請求する。 戻らない原価の分だけを請求し、利益の部分は請求しない、という作り方です。上の仮の式場なら、1人5,000円です。二人から見ると、満額より受け入れやすくなります。その代わり、「どこまでが原価か」を式場が説明できる必要があります。
どちらを選ぶかは、式場の価格帯と、二人への伝え方で決まります。ひとつ言えるのは、売値で請求する作り方は、請求した日の説明が一番重くなる、ということです。満額を請求された二人は、払えるかどうかより、「体調が悪かった人の分まで」という感情のほうが先に立ちます。
数字の差は、仮の式場で年6万円から36万円ほどです。この金額と、二人の不信感を天秤にかけるのが、規定を決める作業の実際です。
体調不良だけを別に扱うか
当日欠席の理由は、大きく分けると2つあります。
- 体調不良や急な看病など、本人にはどうにもならない理由
- 仕事の都合や、遠方からの移動の不調など、事前に分かっていた可能性がある理由
規定を作るときに、この2つを分けるかどうかが、一番悩ましい点です。分けると、現場で「理由の確認」が必要になります。診断書を求めるのか、本人の連絡だけで足りるのか。確認の手間は小さくありません。そして、診断書を求めた瞬間、二人の側にも「疑われている」という感触が残ります。
分けない場合は、理由に関わらず、同じ線で扱えます。そのかわり、体調不良の欠席にも原価が請求される、ということを、契約の時点で二人に伝えておく必要があります。
仕組みとして言えるのは、次の点です。理由で分ける規定は、現場の判断が増えるぶん、担当者ごとに結果が揺れます。揺れは、「あの式場は、前の二人には請求しなかった」という不公平感に変わります。揺れを減らしたいなら、理由で分けず、時点と金額で線を引くほうが運用しやすい、ということです。
確定日より前の「欠席の連絡」を、二人に促す
請求の話は、確定のあとの話です。確定の前に、欠席の連絡が入っていれば、そもそも請求は起きません。だから、請求の規定を作るより効く場合があるのが、確定日の前に欠席の可能性を二人に確認する仕組みです。
具体的には、確定日の1週間ほど前に、次の3点を二人に聞きます。
- 出欠の返事が遅れている人はいないか
- 体調に不安のあるゲスト(高齢、妊娠中、持病など)はいないか
- 直前に欠席の可能性がある人を、あらかじめ把握しているか
この確認で、確定後の欠席が全部なくなるわけではありません。ただ、「確定のあとで、料理代が戻らない」という事情は、確定日の前に二人に伝えておけます。確定の前に聞いておけば、当日欠席の連絡を受けたとき、「前にお伝えしたとおりです」と言えます。
規定は、揉めたときに出すものです。揉めないように、前から見せておくほうが、運用としては効きます。
席を空けたままにするか、詰めるか
もう一つ、料理代とは別に、現場で起きることがあります。欠席が出た席を、どう扱うか。
席を空けたままにすると、会場の見た目が少し寂しくなります。詰めると、席次表と合わなくなります。当日の朝に連絡が入った場合、席次表はもう印刷済みです。
現場の判断が分かれるのは、次の2つです。
- 席をそのまま残す。 席次表と実際の席が合っている。その人の席に、メッセージカードを置く式場もあります。欠席者への気遣いを、見える形にできる
- 席を詰める。 見た目はきれいだが、席次表との食い違いが、ゲストにも見える
どちらが正解というより、二人の希望を聞いて決めることです。ここで大切なのは、料理代の請求の話と、席の話を、同じ場面で一緒にしないことです。当日の朝は、二人はすでに慌ただしい。請求の話は、事前に伝えておいた規定に任せ、当日は席の扱いだけを聞くのが、現場の負担を減らします。
自分の会場で数える手順
仮の式場の前提を、自分の会場の数字に置き換える手順です。
- 過去1年の披露宴のうち、確定のあとに当日欠席が出た組を数える。予約システムや、当日の進行メモを遡れば出る
- 出た欠席人数の合計を出す
- 料理の原価と、仕込みの手間を、1人あたりに直す。厨房の責任者に聞くのが早い
- 掛け算して、「請求しなかった場合の持ち出し」を出す
- 実際に請求した金額があれば、それも出す。請求した例と、見送った例が混在している場合は、どちらが何件かを分ける
3の原価は、店舗によって違います。仕入れのうち、キャンセルできる期限を過ぎたものだけを数えます。数えにくければ、売値の3分の1から半分を目安に置いて、感度を見てください。
そして、5が一番見落とされます。過去に請求した例と見送った例が混ざっているとき、混ざっていること自体が、現場の判断が揺れている証拠です。その揺れをなくすのが、規定を作る一番の理由になります。
規定に入れる3つ
最後に、規定に何を入れるかを整理します。入れるのは、次の3つです。
- 料金が戻らなくなる時点。 確定日か、仕入れの締めの日。二人に分かるように、日付で書く
- 請求する金額の考え方。 売値か、原価か。原価の場合は、1人あたりの金額の目安
- 体調不良の扱い。 理由で分けるのか、分けないのか。分けるなら、確認の方法を書く
この3つが決まっていれば、現場の担当者は、迷わずに伝えられます。決まっていなければ、担当者ごとに結果が違い、あとから「前の式場では請求されなかった」という話が出ます。
仮の式場の計算で出た年6万円から18万円は、式場の経営にとって大きな金額ではありません。ただ、規定がないことで生まれる揺れは、金額には現れません。二人に説明する場面で、いつも同じ答えが返せるかどうか。そこに、この規定の価値があります。
まとめ
- 確定後の当日欠席の料理代は、仮の式場(年120組)で、請求しない場合の持ち出しが年6万円から18万円。想定の前提を、自分の会場の実績に置き換えて数える
- 「確定日以降」とひとくくりにせず、いつから料理代が戻らないかを、仕入れの締めに合わせて数える
- 請求は、売値で行うか、原価で行うかの2通り。売値のほうが運用は単純だが、請求した日の説明が重くなる
- 体調不良を別扱いにすると、現場の確認が増え、担当者ごとの結果が揺れる。揺れを減らしたいなら、時点と金額で線を引く
- 確定日の1週間前に、欠席の可能性を二人に確認すると、請求の規定を出す場面そのものを減らせる
- 席の扱いは料理代の請求と切り離し、当日は席だけを聞く
- 規定に入れるのは、料金が戻らなくなる時点、請求の考え方、体調不良の扱いの3つ
