結婚式の総額343.9万円、ご祝儀205.6万円、二人の自己負担161.3万円。差し引きが合わないのは、数字ごとに数えている人が違うからだ
見積書の総額が300万円台でも、二人の財布から出るのはその半分ほどです。ご祝儀が入るからで、新郎新婦の多くはこの差し引きを頭の中でやりながら、人数や料理を決めています。式場の側が総額の説明で終わっていると、二人の頭の中の計算と話が噛み合わなくなります。
ゼクシィ結婚トレンド調査2024には、総額、ご祝儀総額、カップルの自己負担額の3つの平均が並んで載っています。ところが、総額からご祝儀を引いても、載っている自己負担額にはなりません。この記事では、まず3つの数字がなぜずれるのかを調査の注記から確認します。そのうえで、二人が自己負担額で見積もりを読むと、招待客が1人増えることの意味がどう変わるかを、前提を置いた計算で見ていきます。
調査が示す3つの平均
使うのは、リクルートブライダル総研が公表しているゼクシィ結婚トレンド調査2024の報告書です。2023年4月から2024年3月に挙式か披露宴をした人が対象で、数字は全国の推計値です。
- 挙式、披露宴・ウエディングパーティーの総額:平均343.9万円(前年調査から16.8万円増)
- 披露宴・ウエディングパーティーの招待客人数:平均52.0人(前年調査から2.9人増)
- ご祝儀総額:平均205.6万円(前年調査から7.8万円増)
- カップルの自己負担額:平均161.3万円(前年調査から7.6万円増)
ご祝儀総額は、ご祝儀制の披露宴をした人のうち金額を答えた人の平均です。会費制の人は含まれません。自己負担額の分布も報告書に出ていて、0円以下(ご祝儀が総額と同額か、総額を上回った人)が8.9%、100万円未満が合わせて約2割(8.9%を除くと7.5%と11.7%で19.2%)、100万円台が32.3%、200万円台が26.1%、300万円以上が13.6%です。平均の161.3万円の周りに集まっているものの、300万円以上の二人も1割強います。
ここまでの数字で、新郎新婦のイメージは「総額の6割が祝儀で戻ってくる」になりがちです。205.6を343.9で割ると59.8%です。ただ、この割り算は次の節で見るように、そのまま二人の実感と一致しません。
343.9万円から205.6万円を引くと、161.3万円にならない
単純に引くと、343.9 − 205.6 = 138.3万円です。報告書の自己負担額161.3万円とは、約23万円ずれます。
報告書の注記には、自己負担額の数え方が書かれています。
- 回答者ごとに「総額」から「ご祝儀総額(または会費総額)」を引いて算出している
- ご祝儀総額(または会費総額)は、披露宴・ウエディングパーティーをした人にだけ聞いている
- 挙式だけの人は、挙式の総額をそのまま自己負担額として算出している
つまり、161.3万円の平均には、挙式だけをして祝儀を受け取っていない人が、挙式の総額のまま入っています。一方、205.6万円は、ご祝儀制の披露宴をした人だけの平均です。平均を取る人の集まりが違うので、平均どうしを引き算しても一致しません。ずれの23万円を、何が何万円ぶんと分けることは、この報告書の数字からはできません。僕が言えるのは「数える人の集まりが違うから、引き算は合わない」というところまでです。
式場の側にとって使える結論は、1つあります。二人が「総額の半分くらいは戻る」と思っているとき、その感覚は平均として大きく外れていないが、自己負担額の平均は報告書の注記どおり、総額からの単純な引き算より大きいということです。
自己負担額は、地域と年齢でこれだけ違う
自己負担額の平均161.3万円は、全国をならした数字です。報告書には地域別と妻の年齢別の平均も載っています。
地域別の平均は次のとおりです。
- 首都圏:186.0万円
- 宮城・山形:173.8万円
- 東海:172.7万円
- 関西:170.4万円
- 北海道:138.7万円
- 九州:119.6万円
- 岡山・広島・山口・鳥取・島根:120.9万円
- 四国:104.0万円
最も高い首都圏と最も低い四国で、82万円の開きがあります。全国平均の161.3万円は、首都圏から見れば低く、四国から見れば高い数字です。
妻の年齢別では、25〜29歳が169.3万円で、35歳以上は120.0万円です。35歳以上は0円以下が12.2%、50万円未満が15.6%と、軽く済んでいる人の割合が高いのが分布から読めます。この年齢層は総額も低いことが別の記事(note-052)で出ていて、人数が少ないことが理由でした。
ここで押さえたいのは、二人が「自己負担」という言葉で思い描いている金額が、地域によって100万円近く違うことです。自社の商圏の自己負担額が、全国平均よりどちらに寄っているかを、先に見ておく価値があります。調査の地域区分は広いので、商圏そのものの数字ではない点には気をつけてください。
1人あたり8.6万円と、総額÷人数の6.6万円
報告書には、招待客1人あたりの費用も載っています。平均は8.6万円です。
これを見て「343.9万円 ÷ 52.0人 = 6.6万円と合わない」と思った方は、読み方が正しいです。8.6万円は、回答者ごとに「総額 ÷ 招待客人数」を出してから平均した数字です。343.9 ÷ 52.0 = 6.61万円は、平均どうしの割り算です。両方とも正しい数字で、8.6の方が高いのは、人数の少ない組ほど1人あたりの費用が高く出るからです。会場費や衣装などの、人数に関係なくかかる部分が、少ない人数で割られるためです。
この差は、次の節の計算に効いてきます。「1人あたり8.6万円」は、招待客を1人増やしたときに増える金額ではありません。 人数に関係なくかかる費用まで含めて割った平均だからです。1人増えたときに増えるのは、料理や飲み物、引出物など、人数に比例する部分だけです。
招待客が1人増えると、自己負担はいくら動くか
ここからは、調査の平均を使った仮のモデル計算です。実在の式場や二人の数字ではありません。
前提は次のとおりです。
- 総額は343.9万円、招待客は52人、ご祝儀総額は205.6万円とする
- ご祝儀は1人あたり 205.6 ÷ 52.0 = 3.95万円とする(先に見たとおり、この2つの平均は数える人の集まりが違うので、おおよその目安として使います)
- 招待客1人ごとに増える費用(料理、飲み物、引出物などの人数比例の費用)を、仮に4万円、5万円、6万円の3通りで置く
- 人数に関係なくかかる費用は、総額から人数比例の費用を引いた残りとする
- 自己負担額は、総額からご祝儀を引いた金額とする
人数比例の費用が1人5万円だと、人数に関係ない費用は 343.9 − 52 × 5 = 83.9万円です。この前提で、人数を変えたときの自己負担額は次のようになります。
- 人数比例の費用が1人4万円:30人で137.3万円、40人で137.7万円、52人で138.3万円、62人で138.8万円、72人で139.2万円
- 1人5万円:30人で115.3万円、40人で125.7万円、52人で138.3万円、62人で148.8万円、72人で159.2万円
- 1人6万円:30人で93.3万円、40人で113.7万円、52人で138.3万円、62人で158.8万円、72人で179.2万円
読み取れることは、はっきりしています。
1人あたりの増加費用が4万円だと、ご祝儀の3.95万円とほぼ同額なので、人数を増やしても自己負担はほとんど動きません。10人増えても自己負担は0.5万円しか増えません。1人5万円なら10人で10.5万円、6万円なら20.5万円増えます。損益が分かれるのは、1人あたりの増加費用が、ご祝儀の1人あたりの金額(この前提では3.95万円)を上回るかどうかです。
つまり、同じ「あと10人増やす」でも、二人の自己負担への効き方は、料理のグレードと引出物の価格帯で10倍以上変わります。式場側が「人数が増えても、そこまで持ち出しは増えません」と言えるのは、人数比例の費用が、ご祝儀の見込みに収まるときだけです。
人数を減らすと、自己負担が減る額は小さい
逆向きに考えると、見え方が変わります。二人が予算を抑えたいとき、最初に思いつくのは招待客を減らすことです。
上の前提で、52人から40人に12人減らしたときの自己負担の減り方は、次のとおりです。
- 1人4万円:138.3万円 → 137.7万円(0.6万円減)
- 1人5万円:138.3万円 → 125.7万円(12.6万円減)
- 1人6万円:138.3万円 → 113.7万円(24.6万円減)
人数比例の費用が4万円の前提だと、12人減らしても自己負担は0.6万円しか減りません。減るのは総額とご祝儀の両方で、差し引きがほとんど動かないからです。二人は「人数を減らせば負担も減る」と考えていますが、料理の単価が低い式では、人数を絞っても自己負担はほとんど下がらず、ご祝儀をくれる人との関係だけが薄くなります。
反対に、1人6万円の式では、12人減らすと24.6万円下がります。ここまで効くなら、減らす意味があります。
この計算が示しているのは、人数を増やす・減らすの判断は、総額ではなく「1人あたりの増加費用と、見込めるご祝儀の差」で決まるということです。総額の見積書だけを見ていると、この差が見えません。
見積もりに「自己負担の見込み」を並べるか
ここまでの話を、式場の見積もりの出し方に当てはめます。判断は2つに分かれます。
1つ目は、見積書に「ご祝儀の見込み」と「自己負担の見込み」を並べるかです。並べると、二人は総額を見たときの重さと、実際に出ていく金額を同時に比べられます。総額が予算を超えて迷っている二人には、自己負担で見せた方が決めやすくなる場合があります。ただし、ご祝儀は式の後に入るお金なので、契約から式までの支払いは別の話になります。支払いの時期については、note-078で式の前の支払い比率と最短の挙式日の関係を扱っています。
並べることのリスクもあります。ご祝儀の見込みは、招待客の間柄で大きく変わります。報告書には間柄別の招待客人数は載っていますが、間柄別のご祝儀額は載っていません。そのため、見積書に出す数字は、式場が過去の実績から出すしかありません。実績のない金額を「平均です」と示すと、二人が祝儀を当てにしすぎて、式の後に差が出た場合に不信感につながります。
2つ目は、人数を増やす提案をするときの話し方です。上の計算のとおり、増やした1人あたりの費用がご祝儀の見込みを上回るかどうかで、二人の負担感は変わります。「あと5人入れれば料理のコースを上げられます」と提案するとき、増える自己負担を先に示せるかどうかが、納得感の差になります。
この2つに共通するのは、二人が見ている数字を式場側も見るということです。ここで、自己負担を見せる効果は、成約率や客単価にどう出るかは、僕は数字を持っていません。「自己負担で見せると決まりやすい」と書きましたが、これは二人の意思決定の順序から考えた仮説です。確かめるなら、見積書の様式を2種類にして、一定期間ごとに成約率を比べる方法があります。ただ、成約率は月ごとに大きく揺れるので、結論が出るまでには時間がかかります。
親の援助は、自己負担の外側にある
もう1つ、見落とされやすい点があります。報告書では、親・親族からの援助が「あった」人が74.2%、援助額のうち挙式と披露宴に使った金額の平均が168.6万円です。
自己負担額161.3万円は、総額からご祝儀を引いたものです。援助額を引いたものではありません。ですから、二人が自分たちの貯金から出す金額は、援助を受けた人なら161.3万円より小さくなるはずです。ただ、援助の168.6万円は援助を受けた人だけの平均で、自己負担額の平均とは数える集まりが違います。この2つを引き算して「実質ゼロ」のように読むのは間違いです。
式場の側でできることは、二人に「自己負担額」と「援助」の両方を、どの数字を基準に予算を立てているか聞くことです。総額の予算なのか、自己負担の予算なのかによって、同じ見積書の見え方が変わります。
まとめ
- ゼクシィ結婚トレンド調査2024の平均は、総額343.9万円、ご祝儀総額205.6万円、自己負担額161.3万円。総額からご祝儀を引くと138.3万円で、自己負担額とは約23万円ずれる
- ずれる理由は、数える人の集まりが違うから。ご祝儀はご祝儀制の披露宴をした人だけ、自己負担額は挙式だけの人も含む。平均どうしの引き算は合わない
- 自己負担額の平均は地域差が大きく、首都圏186.0万円、四国104.0万円。全国平均だけで二人の感覚は語れない
- 招待客1人あたり8.6万円は、人数に関係ない費用を含んだ平均で、1人増えたときの増加額ではない
- 仮のモデルでは、1人あたりの増加費用がご祝儀の見込み(3.95万円)に近いと、人数を変えても自己負担はほぼ動かない。5万円なら10人で10.5万円、6万円なら20.5万円動く
- 人数の判断は総額ではなく、1人あたりの増加費用とご祝儀の見込みの差で決まる
- 自己負担額で見せると決まりやすいかは、数字が無い。見積書の様式を分けて比べる方法はあるが、成約率の揺れが大きく時間がかかる
