見学した3会場の見積もりが並べて比べられない。二人が見学前に決める「人数と総額の上限」で、安い順が入れ替わる
ブライダルフェアを3つ回って、3枚の見積もりをもらう。帰りの電車でテーブルに並べて、いちばん安いところを一次候補にする。多くの二人がやっていることだと思います。
ところが、その3枚が同じ前提で出ていないことがよくあります。会場Aは60人、会場Bは70人、会場Cは50人で出してくれた。聞かれたのでその場で答えた人数が、会場ごとに少しずつ違う。これだけで、安い順は簡単に入れ替わります。
今回は、この「前提のずれ」を仮の3会場で計算します。見積もりを比べる二人の側の話ですが、式場の側から見ると、見学の最初の10分で何を聞くかの話でもあります。
見学の回数と、比べる材料の数
まず、二人がどれくらい回っているのかを確認します。
ゼクシィ結婚トレンド調査2024(全国推計値)によると、結婚式を検討中でブライダルフェアに参加したカップルは7割を超え、平均すると2.6軒の会場を訪れています。この数字は、ゼクシィの記事「ブライダルフェアは何件行くべき?」に載っているものです。調査そのものの報告書は確認できていないので、記事経由の数字として扱います。
同じ記事には、2025年6月に実施した「ゼクシィ花嫁会」89人のアンケートも載っています。1軒しか行かなかった人の半数以上が、「1軒では少なかった。十分に比較できなかった」と答えています。回答者が89人で、集まった人も限られるので、全体の傾向とまでは言えません。ただ、回ったことのある人が「比べる材料が足りなかった」と感じやすい、という方向は読み取れます。
整理すると、二人は2〜3軒を回って、2〜3枚の見積もりを手に入れ、それを並べて決めようとします。比べる材料は見積もりの数だけです。その3枚の前提がずれていれば、並べたこと自体が判断を誤らせます。
同じ会場でも、人数で順位が入れ替わる
仮の3会場を置いて、ずれがどれくらい効くかを見ます。実在の会場ではなく、説明のための数字です。
結婚式の費用は、人数に関係なくかかる分(会場使用料、装花の基本、司会、衣裳の基本など)と、人数に比例する分(料理、飲み物、引き出物、席札など)に分かれます。これを会場ごとに次のように置きます。
- 会場A:人数に関係なくかかる分が80万円、1人あたり4.0万円
- 会場B:人数に関係なくかかる分が45万円、1人あたり4.3万円
- 会場C:人数に関係なくかかる分が120万円、1人あたり3.4万円
会場Cは固定の分が重い代わりに、1人あたりが安い。会場Bは固定が軽い代わりに、1人あたりが高い。式場のつくりとして、よくある並びです。
人数を変えて総額を計算すると、こうなります(万円)。
| 人数 | 会場A | 会場B | 会場C | いちばん安い会場 |
|---|---|---|---|---|
| 40人 | 240 | 217 | 256 | B |
| 50人 | 280 | 260 | 290 | B |
| 60人 | 320 | 303 | 324 | B |
| 70人 | 360 | 346 | 358 | B |
| 80人 | 400 | 389 | 392 | B |
| 90人 | 440 | 432 | 426 | C |
同じ人数で揃えて比べると、80人まではずっと会場Bが安く、90人になって初めて会場Cが逆転します。計算すると、BとCの総額が等しくなるのは約83人のときです。AとCは約67人、AとBは約117人が交差点になります。
ここまでは、二人が人数をはっきり決めていて、全部の会場に同じ人数を伝えた場合の話です。次に、ずれた場合を見ます。
前提がずれた3枚の見積もりを並べる
冒頭の場面に戻ります。会場Aには60人、会場Bには70人、会場Cには50人と伝えて、それぞれの見積もりが出たとします。上の式に当てはめると、次のとおりです。
- 会場A(60人前提):320万円
- 会場B(70人前提):346万円
- 会場C(50人前提):290万円
並べると、会場Cが290万円でいちばん安く、次が会場Aの320万円、会場Bの346万円です。帰りの電車でこれを見た二人は、会場Cを一次候補にします。
実際に招待したい人数が70人だったとします。70人で揃えて計算し直すと、会場Aは360万円、会場Bは346万円、会場Cは358万円です。いちばん安いのは会場Bで、会場Cは2番目、会場Aが最も高くなります。
最初の並びは「C、A、B」でした。70人で揃えると「B、C、A」です。いちばん安かった会場が、いちばん高い会場の隣まで動いています。会場Bは、見積もりを出した時点ではいちばん高く見えていたのに、同じ条件ならいちばん安かったことになります。
この差は、どの会場が悪いという話ではありません。誰も間違ったことは言っていません。見学のその場で「だいたい何人くらいですか」と聞かれ、二人が答えた数字がばらついただけです。ばらついた数字のまま、総額だけを比べたところに問題があります。
人数のほかにも、ずれる前提があります。挙式の日取り(土日か平日か、午前か夜か)、料理のグレード、衣裳の点数、写真・映像の有無です。見積もりを出す担当者は、聞かれていないことは標準プランで置きます。標準プランの中身は会場ごとに違うので、名前が同じ項目でも中身が揃っていません。
二人が見学前に決める「3つの上限」
では二人は、見学の前に何を決めておけばいいのでしょうか。僕は、細かい希望を全部決める必要はないと思っています。決めておくのは、次の3つで足ります。
1つ目は、人数の上限帯です。「60〜70人」のように幅で決めます。ぴったりの数字を決めるのは難しいので、幅で構いません。ただし、全部の会場に同じ幅を伝えます。見積もりは、帯の真ん中の人数で出してもらいます。
2つ目は、総額の上限です。親からの援助や貯金を足して、これ以上は出さないという線を、見学の前に二人で話しておきます。この線がないと、見積もりを見た瞬間に「思ったより高いけど、これくらいなら出せるかも」という判断が起きます。見積もりを見てから上限を決めるのは、順番が逆です。
3つ目は、譲れない1つです。料理でも、会場の雰囲気でも、日取りでも、写真でも構いません。1つだけ選びます。譲れないものが3つも4つもあると、どの会場も何かが足りなくなって、比較が止まります。
この3つをスマホのメモに書いて、見学のたびに担当者に見せる。それだけで、3枚の見積もりは同じ前提で並びます。
会場側が最初の10分で聞くこと
ここからは、式場の側の話です。二人が3つの上限を決めてきてくれることは、あまり期待できません。だから、会場の側から聞くのが現実的です。
見学の最初に、担当者が聞くことを次の3つにそろえます。
- 呼びたい人数の幅
- 総額で、これ以上は出せないという目安
- 会場選びで、いちばん譲れないもの
最初の10分でこの3つを聞けると、見積もりが変わります。先ほどの計算のように、人数の前提が会場ごとにずれている見積もりは、二人にとって比較の材料になりません。ずれたまま渡すと、二人はその場では納得して持ち帰りますが、家で並べたときに「Cのほうが安い」と判断して、他の会場が候補から落ちます。落ちた会場の側から見ると、価格が高かったのではなく、前提が違う見積もりを並べられて落とされたことになります。
聞くときに気をつけたいのは、総額の上限の聞き方です。「ご予算はいくらですか」と聞くと、答えを控えられることがあります。「全部まとめて、これ以上は出せないという線はありますか」と聞くと、答えやすくなります。答えがなければ、「見積もりを3つの価格帯で出してもよいですか」と聞いて、二人の反応を見る方法もあります。
人数も同じです。「何名様ですか」ではなく、「いまのところ、いちばん少なくて何名、いちばん多くて何名くらいを考えていますか」と聞きます。幅で答えてもらえば、見積もりは帯の両端と真ん中の3パターンで出せます。上の計算で見たように、会場によって順位が入れ替わる人数は決まっています。会場Bなら約83人を超えると会場Cのほうが安くなる、という切れ目です。この切れ目を二人に見せるかどうかは、会場が判断することです。
仮の計算が示すもの、示さないもの
この記事の計算は、仮の3会場を使った説明です。会場Aから会場Cの固定費と1人あたりの単価は、僕が置いた数字で、実際の式場の構造を調べて出した数字ではありません。実際の会場では、人数が増えるほど料理や装花のグレードの選び方が変わったり、一定の人数を超えると別の会場の部屋に移る必要が出たりして、直線の式にはなりません。
また、見積もりの人数のずれは、この記事の例ほど大きくはならないかもしれません。反対に、挙式の日取りや料理のグレード、衣裳の点数のずれまで重なると、もっと大きく動くこともあります。ずれがどの程度起きているかは、自分の会場で出した見積もりと、その後に実際に契約された金額を並べて確かめるのが確実です。
言えるのは、構造のほうです。固定費が重い会場は人数が増えるほど有利になり、固定費が軽い会場は人数が少ないほど有利になります。そのため、人数の前提が揃っていない見積もりでは、順位に意味がありません。ここは仮の数字でなくても成り立ちます。
まとめ
- ブライダルフェアに参加する二人は7割超、平均2.6軒を回るという、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の数字がある。比べる材料は見積もりの数だけで、前提がずれていれば比較自体が成り立たない
- 仮の3会場では、50人・60人・70人とばらばらの前提で出た見積もりの安い順は「C、A、B」だった。70人で揃えると「B、C、A」になり、順位が入れ替わった
- 固定費が重い会場は人数が多いほど有利で、軽い会場は少ないほど有利。切れ目の人数は会場ごとに決まっている
- 二人が見学前に決めておくのは、人数の上限帯、総額の上限、譲れない1つの3つで足りる
- 会場側は最初の10分に、人数の幅、総額の目安、譲れないものを聞く。前提が揃った見積もりは、高く見えても、比較の場で落とされにくい
