式場サイトの挙式実例は、写真の下に総額と足した項目を書く
式場の公式サイトには、たいてい「挙式実例」「Wedding Report」といったページがあります。きれいな写真が並び、二人の名前と、挙式の雰囲気を伝えるひとことが添えられている。あのページです。
僕は、実例ページの出来は写真の質より、写真の横に何を書いているかで決まると考えています。具体的には、含む範囲つきの総額と、「基本プランに何を足した結果なのか」です。人数は見出しに添える前提とします。写真がどれだけ素敵でも、総額と足した項目が無いと、見ている二人は「これはうちでも手が届く結婚式なのか」を判断できません。判断できないまま見学の予約ボタンを押す二人は、見積もりを見た瞬間に離れます。
この記事では、実例ページに総額と足した項目を添える理由、何をどう書くか、載せると何が変わるかを整理します。出典のある数字は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の平均値だけです。それ以外の数字はすべて、仕組みを見るための想定です。実際の数字は、それぞれの式場の実績に置き換えてください。
実例ページは「憧れの棚」であって「比べる棚」ではない
実例ページを見る二人は、2つの気持ちを同時に持っています。「こんな結婚式がいい」という憧れと、「自分たちの予算で、これに近いことができるのか」という確認です。
写真と雰囲気のひとことだけのページは、前者にしか答えていません。憧れは育ちます。ただ、確認の側が空いたままなので、二人は頭の中でこう補います。「この雰囲気なら、きっと高い」あるいは「この写真なら、うちの人数でも大丈夫だろう」。補った答えは、二人の都合のいい方向にずれやすいものです。
ずれたまま見学に来ると、見積もりを出した時点で現実とぶつかります。接客の側は、そこから「この予算でできる範囲」を一から説明し直すことになります。二人の側は「サイトで見たのと違う」と受け取ります。誰も嘘はついていないのに、期待と見積もりのずれが、そのまま失注と接客の時間のロスになります。
実例ページの役割を、憧れの棚から「比べる棚」にも広げる。そのために必要なのが、人数の見出しに加えて、総額と足した項目の2つです。
載せるもの:人数の見出し・総額・足した項目
人数
最初に載せるのは、招待した人数です。挙式だけなのか、披露宴や会食までなのかも一緒に書きます。
参考になる数字が1つあります。ゼクシィ結婚トレンド調査2024(リクルート)では、2023年4月から2024年3月に挙式や披露宴を行った人の披露宴・ウエディングパーティーの招待客数の平均が52.0人、挙式を含めた総額の平均が343.9万円と報告されています。これは調査対象の平均値で、式場ごと・地域ごとにずれる数字です。実例ページに載せる数字は、この平均ではなく、自社で実際にあった組の数字にします。
人数を最初に載せる理由は、二人が自分たちの招待客数を、実例の人数と並べて見るからです。60人の写真を見ながら、自分たちが30人だと「この会場は、うちには大きすぎるのでは」と感じます。逆に、30人の実例が載っていれば、同じ会場でも少人数でこう収まる、と伝わります。
総額
次に載せるのは、見積もりの総額です。ここで大事なのは、どこまで含んだ総額かを書くことです。会場費、料理、飲物、衣裳、装花、写真、引出物、サービス料と税。何が入っていて何が入っていないのかが分からない総額は、載せないより危ない数字になります。二人が他の式場の総額と比べるとき、含む範囲がずれていると、まっとうな式場ほど高く見えてしまうからです。
書き方はシンプルでかまいません。「挙式・披露宴、サービス料・税込、衣裳と写真を含む」のように、1行で範囲を書く。範囲が実例ごとに違うなら、実例ごとに書きます。
足した項目
3つ目は、基本のプランに何を足した結果の総額なのかです。「基本プランに、生花のアーチと、ウェルカムドリンクを追加」「料理を1ランク上げた」「写真は持ち込みのカメラマン」といった、足したものと外したものを3〜5個。
この欄が、実例ページの中でいちばん読まれる欄になります。二人は自分たちが何を足したいかをすでに考えています。「あの花は、この実例だといくら上がったのか」が分かれば、見積もりの前に、総額の動き方の見当がつきます。
数字を載せると、予約が減る?
経営者の側から必ず出る心配は、「総額を載せたら、高いと思われて予約が減るのではないか」です。この心配は正しいです。予約は、おそらく少し減ります。
ただ、見るべきは予約数ではなく、見学に来た組のうち、成約に至る組の数です。仮置きの数字でモデルを組んでみます。数字はすべて想定です。
- 実例ページ経由の見学予約が、月に40組ある
- 数字を載せていない状態では、見積もりを見て予算が合わず離れる二人が3割(12組)
- 数字を載せると、予約が1割減って36組になる。その代わり、見積もりで離れる二人は1割に減る
- 見積もりを見て残った二人の成約率は、どちらの場合も40%とする
この前提で計算すると、載せていない状態では、40組 × 7割 × 40% = 11.2組の成約です。載せた状態では、36組 × 9割 × 40% = 12.96組になります。予約は4組減るのに、成約は約1.8組増える計算です。
見学の件数が減る分、接客の時間も空きます。見学1組にかかる時間を2時間と仮置きすれば、4組分で8時間です。この時間を、残った二人に使えます。
もちろん、この計算はあくまで仮置きの前提で動いています。載せたことで離れる予約が、実は成約に至るはずだった二人だった、という場合は逆転します。大事なのは、「予約が減る=悪い」とは決まらない、という仕組みの部分です。自社の数字で同じ計算をするには、次の3つが必要です。
- 実例ページ経由の月間の見学予約数
- 見積もりを出した後に、予算を理由に離れた組の割合(接客の記録から)
- 見積もりを見て残った二人の成約率
この3つが無い式場は、まず記録を取るところからになります。見学のあと「予算が合わなかった」と二人が言った組を数えるだけでも、実例ページに数字を載せるかどうかの判断材料になります。
実例ページに数字を載せるときの書き方
載せると決めたとき、次の書き方で迷う場面が出ます。
最安の実例だけを載せない
総額の低い実例だけを選んで載せると、二人はそれを「この式場の標準」と受け取ります。そして見積もりの段階で、標準だと思っていた数字との差にがっかりします。実例は、人数と総額の幅が分かるように、少なくとも3〜4組を選んで並べます。小さい規模、中くらい、大きい規模。総額が低い組、真ん中の組、高い組。幅が見えると、二人は自分たちの位置を探せます。
総額は「だいたいこのくらい」の言い方に丸める
実例の総額は、100円単位まで書く必要はありません。「約280万円」「290〜300万円」のように、丸めて書きます。丸めることで、個別の二人の契約が特定されにくくなる効果もあります。個人情報の観点では、そもそも実例に載せる二人の同意が前提です。契約書の掲載同意欄を整えていない式場は、先にそこを直す必要があります。
古い実例は、いつの数字かを書く
食材や人件費が動いている時期に、2年前の総額を載せたまま放置すると、二人は今の見積もりと比べて「値上がりした」と感じます。実例の挙式年月を書いておき、見積もりの基準が変わったら、実例にひとこと添えます。「当時と比べて料理が上がっています」といった注記で十分です。
写真と数字を離さない
数字を別ページの料金表に置くと、読まれません。写真の隣、あるいは写真の直下に置きます。スマホで見る二人の画面では、写真を1枚めくるごとに、人数・総額・足した項目が同じ画面の中に収まるくらいが目安です。
数字を載せたくない式場はどうするか
「総額は載せたくない」という判断も、あり得ます。変動が大きくて実例に意味がない、他社との値段比べの土俵に乗りたくない、といった理由です。その場合でも、人数と足した項目は書けます。
総額の代わりに、「予算帯」を書く手があります。「250万円台」「300万円台」のように、幅を持たせて書く。完全な数字は出さなくても、二人が自分たちの予算と照らして、おおよその見当をつけられます。それも載せないなら、見学の予約の画面で「ご予算の目安」を選んでもらう欄を作り、見学の前に予算の見当を共有する方法があります。
どれを選ぶにしても、避けたいのは、実例ページで憧れだけを育てて、予算の話を見学の席まで持ち越すことです。持ち越した分だけ、見積もりを出す瞬間の落差が大きくなります。
実例ページを直す順番
全部を一度に直す必要はありません。僕なら、次の順に進めます。
- 直近1年の成約から、人数・総額・足した項目が揃っている実例を3〜4組選ぶ(同意の取れているものだけ)
- 実例ごとに、人数・含む範囲つきの総額・足した項目を、写真の直下に足す
- 見学の予約フォームで「実例ページを見たか」を聞く欄を足し、実例経由の予約数と、見積もり後に離れた割合を数え始める
- 3か月たったら、前述の3つの数字で、載せる前と後を比べる
ここまでやれば、実例ページが「憧れの棚」であるだけでなく、「比べる棚」としても働き始めます。
まとめ
- 実例ページの出来は、写真の質より、写真の下に総額と足した項目があるかで決まります
- 数字が無いと、二人は自分に都合のいい方向に補い、見積もりの時点で期待とのずれが出ます
- 総額は含む範囲を1行で書き、最安の実例だけを並べず、幅が分かる3〜4組を載せます
- 載せると予約は減るかもしれませんが、見積もり後に離れる組が減れば、成約はむしろ増えることがあります(本文の計算は想定です)
- 総額を載せたくないときは、予算帯か、予約フォームの予算欄で代わりにします
- 判断には、実例経由の予約数・見積もり後に予算で離れた割合・残った二人の成約率の3つを、自社の記録から出します
