式場サイトの「お客様の声」は、満足の感想より迷った理由を載せる
式場の公式サイトに「お客様の声」のページがある。そこに並んでいるのは、「スタッフの皆さんが優しくて、最高の一日になりました」という感想ばかり。こういう会場は多いと思います。
結論から書きます。見学を迷っている二人に効くのは、満足の感想よりも、「先に契約した人がどこで迷い、何で決めたか」が書かれた声です。感想はどの会場でも似た文章になりますが、迷った理由は会場ごとに違います。違うものだけが、候補を比べている二人の判断材料になります。
この記事では、お客様の声を「迷い型」に組み替える考え方を、声の集め方、載せ方、載せない声の線引き、そして前提を置いた計算の順に整理します。実績の数字は出てきません。僕が確かめた効果の話ではなく、仕組みとして筋が通るかどうかの話です。
お客様の声ページは、誰が何のために読むのか
まず、このページを読む人を考えます。式場の候補が2〜3軒に絞られた二人が、見学に行く前、または見学の後に、「ここで本当に大丈夫か」を確かめに来る。多くはこの使われ方だと思います。
つまり読み手は、会場に好意を持っているわけではありません。まだ決めていない。決めない理由を探している状態です。
この状態の人に「最高の一日になりました」を何件見せても、動きません。理由は単純で、どの会場のページにも同じ言葉が並んでいるからです。感想は読み手の頭の中で「良い口コミが付いている会場」という一つの印象にまとまり、比べる材料としては使われません。
一方で、二人が実際に迷っているのは、たとえばこういう点です。
- 総額は最初の見積もりからどれくらい動いたのか
- 打ち合わせの回数や、担当者との連絡の取りやすさは実際どうだったか
- 親の意見と二人の希望がずれたとき、会場はどう間に入ったか
- 他の会場と最後まで迷ったとき、何が決め手になったか
これらに答えている声があれば、読み手は自分の迷いと照らし合わせられます。これが「候補に入る」から「見学に行く」へ進む力になります。
満足の感想だけが並ぶと起きること
満足の感想だけのページには、集客の面で3つの弱点があります。
1つ目は、差が出ないことです。どの会場も、成約した人の声を載せるので、基本的に好意的です。好意的な声だけの集合は、会場が違っても似た形になります。
2つ目は、疑われることです。結婚式を探している二人は、口コミサイトやSNSも見ています。そこには良い面も悪い面も書かれています。公式サイトだけが良い声ばかりだと、「選んで載せているのだろう」と受け取られます。公式の声が疑われると、その下に置いた料金やプランの説明まで、割り引いて読まれます。
3つ目は、問い合わせの種類が変わらないことです。感想は「この会場、良さそう」で終わります。迷いが書かれた声は、「うちも同じことで迷っている。聞いてみよう」と、具体的な質問や見学の予約に変わりやすくなります。ここは数字では確かめていない、仕組みの推測です。
迷い型の声の形
迷い型といっても、ネガティブな内容を載せるという意味ではありません。迷った点と、決めるまでの経緯が書かれている声のことです。基本の形は4つの要素です。
- 最初に気になっていたこと(契約前の不安や条件)
- 他にどこを見て、何で迷ったか
- 決め手になった出来事(見学のときの一言、見積もりの出し方、担当者の対応など)
- 契約してから分かったこと(良かった点と、事前に知っておきたかった点を1つずつ)
文章にすると、こうなります。
「親族が遠方から来るので、アクセスが一番の不安でした。他の2会場と比べて駅からの距離は一番遠かったのですが、見学のときに、駅からの送迎の時刻表と、遠方の親族向けの案内の紙を見せてもらいました。それで、不安が整理できました」
感想の言葉はほとんどありません。それでも、遠方の親族がいる二人には、ほかのどの声よりも役に立ちます。
注意したいのは、4つ目の「事前に知っておきたかった点」です。「打ち合わせは想像より回数が多かったけれど、毎回の宿題が少なくて助かった」のように、小さな不満と、その後の受け止めを一つ入れる。ここが、声の信頼を作ります。
声の集め方は、感想ではなく経緯を聞く
迷い型の声は、アンケートの自由記述では集まりにくいです。自由記述に書かれるのは、どうしても感想になるからです。
集め方を変えます。契約の後、または打ち合わせが一段落したタイミングで、担当者が次の3つだけを口頭で聞いて、メモしておきます。
- 最初に一番気になっていたことは何でしたか
- 最後まで迷った会場や条件はありましたか。何で決めましたか
- 契約してから、思っていたのと違った点はありましたか
答えを書き起こして、本人に見せて直してもらい、掲載の許諾を取る。これで迷い型の声の材料になります。許諾の取り方は、別の記事で扱った掲載許諾の話と同じです。契約時にまとめて取る方法もありますが、声の文章を本人に確認してもらう段階も残してください。
担当者の負担は、1組あたり10分程度だと思います。年間の成約が100組あっても、声として載せるのは全部でなくて構いません。年に10〜20件あれば、ページとしては十分に厚くなります。
仮の計算:迷い型を混ぜると、予約はどれくらい動くか
効果は、自分の会場の数字を使わないと分かりません。ここでは仮の前提で、動く範囲を計算します。実績ではなく、判断のための目安です。
前提を置きます。
- お客様の声のページは、月に400人が見る
- ページを見た人の3%(12人)が、そこから見学を予約する
- 見学した人の成約率は25%
迷い型を混ぜた結果、予約率が0.2ポイント上がる場合、1ポイント上がる場合を計算すると、次のようになります。
- 3.0%のまま:予約12件、成約3.0組
- 3.2%(+0.2ポイント):予約12.8件、成約3.2組。増分は月0.2組
- 3.5%(+0.5ポイント):予約14件、成約3.5組。増分は月0.5組
- 4.0%(+1ポイント):予約16件、成約4.0組。増分は月1.0組
月400人が見るという前提が大きいと、増分も大きくなります。逆に、ページを見る人が月100人なら、上の数字を4分の1にして読みます。月0.1組から0.25組です。
この計算から分かるのは、声を書き換える効果は、ページが見られている量に比例するということです。声のページが見られていない会場が、文章に手間をかけても、成約への効果はほとんど出ません。先に、声のページが月に何人に見られているかを確かめてください。アクセス解析がなければ、見学予約フォームのどこから来たかを数えるだけでも分かります。
もう一つ、見逃されやすい点があります。声のページに入る前から、見学を決めている二人もいます。その二人には、迷い型の声は効きません。効く相手は「迷っている二人」だけなので、全体の予約率が動く幅は小さくなるはずです。上の計算の+0.2〜+1ポイントは、その意味で大きめに見積もった目安として読んでください。
載せない声の線引き
迷い型にするとき、載せないほうがいい声もあります。
- 解決していない不満:「担当者が替わって不安になった」で終わっている声。載せるなら、その後どうなったかまで書けるものだけ
- 他の会場を名指しで下げる声:「A会場は対応が悪かった」のような比較は載せない。会場の名前を伏せても、読み手は特定します。他社を下げる言い方は、事故リストに入っている領域です
- 個人が特定できる声:親の職業、職場の名前、親族の事情。本人が許諾しても、親族が嫌がる場合があります。構造は残して、固有の情報は丸める
- 金額が書かれた声:「総額が○○万円でした」は、読み手の予算を引っ張ります。書くなら、見積もりから動いた幅(増えた、減った)のほうが役に立ちます
また、声は編集することになります。言葉を足して、本人が言っていないことを加えてはいけません。誇張が入ると、後から本人に指摘されたとき、声のページ全体の信頼を失います。直すのは、読みにくい部分と個人が特定される部分だけにしてください。
表記の注意
お客様の声は、広告の一部として扱われます。体験談であることと、結果が人によって違うことは、分かる位置に書いておきます。具体的な書き方は、景品表示法や自社の顧問に確認してください。この記事では、法的な線引きまでは扱いません。
特に、価格や特典を含む声は、サイトの別の場所に書いてある条件と食い違っていないかを確かめてください。声に書かれた特典が、今はもう終わっていた場合、声が古い情報を広めてしまいます。声には「いつ契約した方か」の時期を添えておくと、古い情報で誤解されにくくなります。
迷い型を入れるときの順番
全部を一度に書き換える必要はありません。次の順番で進められます。
- 今の声のページが、月に何人に見られているかを確かめる
- 今ある声を読み返して、感想だけの声と、迷った経緯が入っている声に分ける
- 次の1か月に成約した二人に、担当者が3つの質問を口頭で聞く
- 聞いた経緯を整えて、許諾をもらい、迷い型の声を3件作る
- 感想型の声は消さずに、ページの下のほうへ移す。上に迷い型を置く
- 3か月後に、声のページ経由の見学予約を数えなおす
6の比較は、季節で予約の数が変わるので、前年の同じ時期や、声のページを見ていない人の予約率と並べて読むのが安全です。比べる相手を決めずに「増えた」と言うと、季節の増減を効果と取り違えます。
向かない会場
この方法が向かない会場もあります。
- 声のページが見られていない会場。先に、ページへの導線を作るほうが先です
- 成約数が年に数十組以下で、声の材料が取れない会場。無理に書くと、同じ二人の声を何度も使いまわすことになります
- 担当者が口頭で経緯を聞く余裕がない会場。聞き取りが形だけになると、結局、感想が集まります
そういう会場は、声のページを増やすより、見学の場で「この前、同じことで迷っていた二人はこう決めました」と口頭で伝えるほうが、手間の割に届きます。ただし、その二人の話を作ってはいけません。実際にあった経緯だけを、特定されない形で話します。
まとめ
- 見学を迷っている二人に効くのは、満足の感想より「先に契約した人がどこで迷い、何で決めたか」の声
- 感想だけが並ぶと、会場の差が出ず、公式サイトの声として疑われやすい
- 迷い型の声は、最初の不安、迷った会場、決め手、契約後に分かったことの4つで組む
- 集め方は、自由記述のアンケートより、担当者が3つの質問を口頭で聞いて書き起こす
- 効果は声のページが見られている量に比例する。仮の計算では、月400人で月0.2〜1.0組、月100人ならその4分の1
- 解決していない不満、他会場を下げる声、個人が特定される情報は載せない
- 声のページが見られていない会場や、聞き取りの余裕がない会場は、先に導線や見学の場の話を整える
