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結婚式場の料金表示は最安値か実勢か|来館3割減でも得する条件

公式サイトの料金ページに「180万円〜」と載せている式場は多いです。この「〜」の前の数字を、いちばん安いプランの額にするか、実際にいちばん多い見積もりの額にするか。経営者の方に聞くと、答えがきれいに割れる論点です。

この記事の結論は1つです。サイトの表示額を実勢に寄せると、来館予約は確実に減ります。それでも得をするかどうかは、来館が減る割合ではなく、成約の組数が減らないかどうかで決まります。仮の式場で計算すると、来館が3割減っても、来館後の成約率が16%から22%強に上がれば成約の組数は変わりません。

先に断っておくと、この記事の数字はすべて僕が置いた仮のものです。調査の数字は1つも使っていません。年に何組が見学を予約するか、成約1組の粗利がいくらか、どちらも自社の数字に置き換えて読んでください。持ち帰ってほしいのは計算の骨組みです。

最安値表示が来館を増やす仕組み

最安値を載せる理由は、はっきりしています。二人が式場を探すとき、最初にやるのは料金の比較です。複数のサイトを開いて、「〜」の前の数字を横に並べて、高いところから外していく。この段階で180万円と330万円が並ぶと、330万円の式場は、中身を見てもらう前に候補から落ちます。

つまり最安値表示は、候補に残るための入場券です。入場券を安くすれば、来館予約の入り口は広がります。ここまでは多くの式場が経験していることでしょう。

問題は、その後です。見学に来た二人が、初回の見積もりを見る場面を考えてみます。サイトには180万円と書いてあったのに、出てきた見積もりは380万円。人数も、日取りも、二人が希望した条件で組んだ結果です。サイト上の180万円は、最少の人数で、平日の、いちばん小さい会場を選んだときの額でした。

嘘は書いていません。ただ、二人からすると2倍以上です。ここで起きるのは、値引き交渉ではなく、静かな離脱です。「思っていたのと違う」と感じた二人は、その場では何も言わず、後日の連絡に返事をしなくなります。

仮の式場で、2つの表示を比べる

ここから数字を置きます。仮の式場はこうです。

  • 料金ページを見た二人のうち、見学を予約するのは、最安値表示だと1,000人中80組
  • 来館した組の成約率は16%。つまり成約は12.8組
  • 成約1組の粗利は150万円
  • 見学1組を迎える手間と費用は、仮に1.5万円

この式場の、1,000人あたりの粗利を計算します。成約12.8組に150万円をかけて1,920万円。見学80組分の手間と費用1.5万円ずつで120万円を引くと、1,800万円です。

次に、サイトの表示を「350万円〜(60名・土日の場合)」に変えたとします。これは実際の初回見積もりの中央値に近い額です。サイトの数字が高くなるので、予約は減ります。いくつ減るかは分からないので、1割から5割まで動かして、1,800万円と同じ粗利を保つために必要な成約率を出しました。

来館予約の減り方 来館組数 必要な成約率 成約の組数
1割減 72組 17.7% 12.7組
2割減 64組 19.8% 12.6組
3割減 56組 22.4% 12.6組
4割減 48組 26.0% 12.5組
5割減 40組 31.0% 12.4組

右の列を見てください。成約の組数は、どの行でも12.5組前後です。来館が減った分の手間と費用が浮くので、わずかに少なくても粗利は同じになる、という意味です。

この表が示しているのは、判断の軸が「来館が減るかどうか」ではない、ということです。来館は減っていい。減ったあとの成約の組数が、元の水準を保てるかを見る。そう決めると、問いが「来館をいくつ捨てるか」から「残った来館で、成約率をどこまで上げられるか」に変わります。

成約率はなぜ上がると考えられるのか

3割減の行で必要な成約率は22.4%です。16%から6ポイント強の上昇になります。これが現実的かどうかは、サイトの表示を実勢に寄せたとき、来館しなくなる二人が誰なのかで決まります。

来なくなるのは、予算の上限が表示額を下回る二人です。仮に予算が250万円の二人は、350万円〜の式場には予約を入れません。最安値表示の時代には予約して来館し、初回見積もりで380万円を見て、離脱していた人たちです。もともと成約する見込みが低い人たちなので、来館の減り方に対して成約の減り方は小さくなります。

ここが、成約率が上がる理由です。成約しにくい来館が先に消えるので、残った来館の平均の成約率が上がる。式場の側から見ると、同じ12〜13組の成約を、少ない見学数で取ることになります。

ただし、これはあくまで仕組みの話です。実際に3割減るのか、成約率が上がるのかは、式場ごとに違います。予算の分布が違えば、消える来館の中身も変わります。そのため、数字は自社で測るしかありません。測り方は後で書きます。

最安値を残したほうがいい式場

では、最安値表示のままのほうがいい式場はあるのか。あります。分かれ目は、最安値のプランを実際に選ぶ二人がどれくらいいるかです。

表示した最安値のプランが、成約の2割、3割を占めているなら、その表示は嘘でも誇張でもなく、実勢の一部です。このとき、初回見積もりとの差で離脱する二人は多くありません。逆に、最安値のプランを選んだ成約が年に数組しかないなら、その表示は、実際には誰も選ばない額を掲げていることになります。

目安として、自分の式場の過去1年の成約を、見積もりの額が低い順に並べてみてください。サイトに載せている額が、下から何番目に当たるかを見ます。下位1割に入っているなら、表示額は「めったに起きない端の値」です。下位4割に入っているなら、かなり実態に近い値です。

もう1つ、最安値で候補に入る価値が高い式場もあります。立地や会場の格で勝てず、価格しか入り口が無い式場です。このタイプは、実勢の額を載せると、そもそも見学の予約がほとんど来なくなる可能性があります。表の5割減の行のように、必要な成約率が31%まで上がるなら、現実的ではありません。

表示を変えずに、差を埋める書き方

表示額を実勢に寄せる決断が重いなら、額は動かさずに差の見え方だけを変える方法があります。

1つめは、条件を額の隣に書くことです。「180万円〜(20名・平日・最小会場の場合)」のように、人数と曜日と会場を同じ行に書きます。小さな注意書きを下のほうに置くのではなく、額と同じ大きさの行に入れる。条件が分かると、二人は自分の希望に当てはめた額を、頭の中で足し直してくれます。

2つめは、見積もりの例を並べることです。「60名・土曜・チャペル挙式」の見積もり例を、サイトに実際の額で載せます。最安値と実例が同じページに並ぶと、二人は初回の見積もりを見る前に、自分の位置を知ります。見積もりの安い順は人数で入れ替わるので、人数ごとに複数の例を置くと、さらに差が埋まります。

3つめは、最安値の隣に「多い組み合わせ」の額を書くことです。「最安 180万円〜 / 60名の場合の目安 350万円前後」というように、2つの額を並べます。入場券としての安さは残しつつ、多くの二人にとっての実態も見えるようにする書き方です。

なお、最安値の表示が、実際には契約できない条件に基づいている場合は、表示のルールの上でも問題になりえます。この点は僕は専門家ではないので、自社の表記は、法務や行政の窓口に確認してください。ここで扱っているのは、実際に契約できる額を、どの条件で見せるかという経営判断の話です。

自社で測る方法

数字は自社で測るしかありません。測り方は2つあります。

1つは、見学当日のアンケートに1問足すことです。「サイトで見た料金と、今日の見積もりは、イメージと近かったですか」。選択肢は「近い」「少し違う」「かなり違う」の3つにします。「かなり違う」と答えた二人の成約率を、他の二人と比べると、差の離脱がどれくらいあるかが見えます。「かなり違う」の成約率が極端に低ければ、表示と実勢のずれが、離脱を生んでいる可能性が高いです。

もう1つは、表示を変えた前後で、月ごとの来館予約数と成約率を並べることです。ただ、予約数は季節で動きますし、フェアの特典や広告の出し方でも変わります。表示だけの影響を取り出すのは難しいので、できれば同じ月の前年と比べるか、変更の前後で他の施策を動かさないようにします。

最低でも、数か月分は見る必要があります。成約率は、来館してから契約まで時間がかかるからです。表示を変えて1か月で「予約が減った」と戻すと、成約率が上がる効果を見る前にやめてしまいます。

数字を読むときの注意

この記事の表は、成約の組数を保つ条件を示しているだけで、実際にそうなる保証ではありません。次の3点は、自社の数字を入れるときに特に注意してください。

まず、来館予約の減り方です。僕が置いた1割から5割は幅を見せるための仮の値で、実際には式場ごとにまったく違います。料金ページを見る二人の予算の分布が、どれくらい表示額の周りに集まっているかで決まります。

次に、成約1組の粗利です。ここでは150万円と置きましたが、粗利が大きい式場ほど、来館が1組減る痛みが大きくなります。同じ3割減でも、粗利が300万円の式場のほうが、必要な成約率の上昇を厳しく見なければなりません。

最後に、見学1組の手間と費用です。ここを軽く見ると、来館が減る効果を過小評価します。担当者の1回の見学が実質3時間かかっていて、その時間で別の組を迎えられるなら、1.5万円はもっと大きくなります。繁忙期の土日に枠が埋まる式場では、来館が減って空いた枠に、成約しやすい二人を入れられるので、効果はさらに大きく出ます。

まとめ

  • 公式サイトの「○万円〜」を実勢に寄せると、来館予約は減ります。判断の軸は来館数ではなく、成約の組数が保てるかです
  • 仮の式場(1,000人中80組が予約、成約率16%、粗利150万円)では、来館が3割減っても、成約率が22%強に上がれば成約の組数は変わりません
  • 来なくなるのは、予算が表示額を下回る二人です。見学に来ても離脱していた層なので、残った来館の成約率は上がると考えられます。ただし実際にどれだけ上がるかは自社で測るしかありません
  • 最安値のプランが成約の大きな割合を占めているなら、表示を変えなくても差は小さいです。過去1年の成約を見積もりの低い順に並べ、表示額が下から何番目かを見ます
  • 額を動かさない選択肢もあります。条件を額の隣に書く、見積もりの例を載せる、最安値と多い組み合わせの額を並べる、の3つです
  • 測るなら、見学当日のアンケートに「サイトの料金と今日の見積もりは近いか」を1問足し、数か月分の成約率を前年と並べて見ます

入場券を安くして来館を集めるか、実態を見せて残る二人の成約率に賭けるか。どちらを選ぶかは、サイトの数字ではなく、自社の成約の並びが決めます。