式場サイトの最初の画面で、誰向けの式場かを言い切る条件
式場の公式サイトを開いて、最初に見える画面には何が書いてありますか。多いのは、チャペルや披露宴会場の大きな写真と、「想いをかたちに」「一生に一度の特別な日を」のような一行です。きれいで、間違いではないと思います。ただ、この一行は、どの式場に差し替えても成り立ちます。
二人は、いくつもの式場のサイトを短い時間で行き来しています。最初の画面で「自分たちの話だ」と思えなければ、スクロールする前に戻るボタンを押します。この記事は、最初の画面に「どんな二人のための式場か」を書くかどうかを、式場側がどう決めればいいかの話です。
先に言っておくと、今回は出典のある統計を使いません。公式サイトの最初の画面の文言と予約率の関係について、全国で通用する公開の数字を、僕は見つけていないからです。そのかわり、仮の数字を置いたモデル計算と、決めるときの手順で書きます。数字はすべて想定だと分かる形で書きます。
最初の画面で、二人は何を判断しているのか
サイトに着いた二人は、式場の良し悪しを判断しているわけではありません。最初にしているのは、もっと手前の仕分けです。
- この式場は、自分たちの人数で使えるのか
- この式場は、自分たちの予算の話なのか
- この式場は、自分たちのやりたい形(挙式のみ、少人数、会食、ふつうの披露宴など)を受けているのか
この三つのどれかに「違うかもしれない」と引っかかると、写真がどれだけ美しくても、二人は先に進みません。逆に、三つとも「合いそうだ」と思えたときは、写真や料理の説明を読む気になります。
つまり最初の画面の仕事は、魅力を伝えることの前に、仕分けの答えを返すことです。「自分たちが対象に入っている」という感触を渡せるかどうかで、その先を読んでもらえるかが決まります。
ここで式場側がやりがちなのが、仕分けの答えを出さないことです。対象を絞ると取りこぼしが出る気がして、誰が見ても嫌われない言葉を選びます。結果として、合う二人にも「自分たちの話だ」という感触が届きません。
言い切ると、何が起きるのか
最初の画面に「60人前後の披露宴を、ゆったりした時間で行う式場です」と書いたとします。サイトを見た二人は、二つに分かれます。
- 60人前後が合っている二人は、「ここは自分たちの人数だ」と感じて、先を読みます
- 20人の食事会を考えている二人や、150人の披露宴を考えている二人は、「ちょっと違うな」と感じて離れます
離れる二人は、もともと成約しにくい二人です。ただ、ゼロではありません。「60人前後」と書いていても、実際には30人や90人も受けられる式場は多いからです。書き方次第で、受けられる二人まで追い返す可能性があります。
だから、判断は「言い切るか、言い切らないか」の二択ではありません。次の問いに答えられるかどうかです。
- 合う二人の予約率は、言い切ることでどれだけ上がるのか
- 合わない二人の予約率は、どれだけ下がるのか
- サイトを見る二人のうち、合う二人は何割いるのか
三つ目が、いちばん効きます。これを仮の数字で見ます。
仮の数字で、分かれ目を計算する
置く前提は次のとおりです。すべて想定の数字で、実在のデータではありません。
- 月に公式サイトを訪れる二人は2,000組
- いまの最初の画面(言い切らない版)では、訪れた二人の1.0%が見学を予約する
- 「60人前後」と言い切った版にすると、合う二人の予約率は1.6%に上がる
- 同じ版にすると、合わない二人の予約率は0.5%に下がる
- 訪れた二人のうち、合う二人の割合をsとして、sを変えて計算する
いまの状態では、2,000組 × 1.0% = 月20件の見学予約です。言い切った版にしたときの件数は、sによって次のように変わります。
- s=30%(合う二人が3割): 約16.6件
- s=40%: 約18.8件
- s=50%: 21.0件
- s=60%: 約23.2件
- s=70%: 約25.4件
分かれ目は、約45%です。式を書くと、s × 1.6% + (1 − s) × 0.5% が1.0%を超える条件で、s > 0.5 ÷ 1.1 ≒ 0.4545になります。
読み取れることは二つです。
一つ目は、合う二人が半分に届かないサイトでは、言い切ると予約が減るということです。この仮定では、合う二人が3割のサイトで、月20件が約16.6件に落ちます。サイトに来る二人が、そもそも式場の想定している客層とずれているときは、言い切る前に、集客のほう(どの二人を連れてきているか)を先に見直す話になります。
二つ目は、合う二人が7割いるサイトでは、月20件が約25.4件に増えるということです。見学予約に対する成約率を30%と置けば、成約は月6件から約7.6件になります。1件あたりの契約額が大きい結婚式場では、最初の画面の一行が、月に1〜2件の成約差になりえます。
もちろん、1.6%や0.5%という数字は、僕が置いた想定です。実際の式場では、上がり幅も下がり幅も違います。この計算で見てほしいのは、数字そのものではなく、合う二人の割合が半分前後を超えているかどうかが、分かれ目になるという構造です。
言い切る前に、確かめる3つのこと
では、自分の式場のサイトで、sはどれくらいなのか。確かめ方は、広告費をかけなくてもできます。
1. 見学予約の二人は、どんな人数・予算で来ているか
過去半年の見学予約と成約を、人数帯で分けます。見学予約の段階で人数を聞いているなら、予約フォームの回答を使えます。聞いていなければ、成約者の最終人数でかまいません。
見るのは、人数帯ごとの割合と、成約率です。たとえば、成約の大半が50〜70人に入っているなら、「60人前後」と言い切る土台があります。成約が30人台と90人台に分かれているなら、一つの数字で言い切ると、片方を追い返します。
2. 検索から来る二人は、どんな言葉で入ってきているか
検索から来る二人が、式場名で入ってくるのか、「地域名 結婚式場 少人数」のように条件で入ってくるのかで、最初の画面に期待しているものが違います。
式場名で入ってきた二人は、すでに何か知っています。この二人には、式場の特徴を確かめさせる画面が合います。条件で入ってきた二人には、条件に合っているかを先に返す画面が合います。Search Consoleや広告の検索語句の画面で、入口の言葉を一度確かめておくと、最初の一行の方向が決めやすくなります。
3. 「受けられるけれど、得意ではない」組を、どう扱うか
実際に受けられる人数と、得意な人数は、別の話です。たとえば最大150人まで入れる会場でも、会場の雰囲気や料理の出し方が合うのは60〜80人かもしれません。
この差を無視して「最大150名様まで」と書くと、150人を考えている二人が来ます。見学で「想像していた雰囲気と違う」となり、契約には進みません。見学枠は限られているので、その枠を使って成約しにくい二人を呼ぶことになります。
得意な人数帯を言い切り、それ以外は「個別にご相談」と丸めず、「この人数なら、こういう形で受けられます」と別の段で書く。この順番にすると、合う二人にははっきり届き、合わない二人にも逃げ道を残せます。
一行の書き方に使える型
言い切ると決めたとき、実際の一行は次の三つの型で作れます。
型1: 人数と時間の使い方
「60人前後の披露宴を、ゆったりした時間で行う式場です」
人数帯が成約の中心に出ている式場に向きます。人数は、二人が最初に仕分けに使う軸のひとつです。
型2: やることを限る
「挙式と会食だけを、家族と友人のために行う式場です」
少人数や会食に力を入れている式場に向きます。披露宴の演出を全部入れる二人は離れますが、受ける形を決めている二人には届きます。
型3: 誰がどう決めるか
「親御さんも一緒に、ひとつずつ決めていける式場です」
家族の関わりが強い客層が多い式場に向きます。二人だけで決めたい人は離れますが、親の意見を聞きながら決めたい二人には、これがほぼ唯一の安心材料になります。
三つの型に共通するのは、誰が見ても嫌われない言葉を外し、誰かには「違う」と思われる言葉を一つ入れることです。「違う」と思われる覚悟がない一行は、仕分けの答えになりません。
一行だけでは足りないとき
最初の画面に一行を置いても、その下の画面が合っていないと、言い切りの効果は薄れます。確かめたい点は三つです。
- 一行で言った人数帯の写真が、すぐ下に並んでいるか。60人前後と書いて、写真が20人の卓ばかりだと、二人は疑います
- 料金の例が、その人数帯で出ているか。60人前後と書きながら、料金の例が100人の見積もりだと、仕分けが外れます
- 予約ボタンの近くに、その人数で見学できる日が出ているか
最初の画面で約束したことを、次の画面が受けているかどうか。二人は、これをかなり細かく見ています。
変えたあとに、どう確かめるか
一行を変えたら、効果は予約率で見ます。ただ、変えた直後の1〜2週間は、数字が揺れます。月に訪れる二人が2,000組でも、予約は月20件前後です。この規模では、1週間に4〜5件しか予約が出ず、1件の増減で予約率が大きく動いて見えます。
だから、次のように見ます。
- 変える前の4週間と、変えたあとの4週間を比べる
- 同じ期間に、広告や媒体の出稿を大きく変えない
- 予約数だけでなく、見学に来た二人のうち「想定の客層」の割合も見る。言い切りが効いていれば、予約数が横ばいでも、合う二人の割合は上がります
予約数が増えなくても、合う二人の割合が上がっているなら、見学枠の使い方は良くなっています。見学の空き枠に限りがある式場では、これだけでも成約に効きます。
戻す判断も、先に決めておく
言い切りの一行は、合わなければ戻せます。ただ、戻す基準を先に決めておかないと、数字が少し下がっただけで元に戻して、結局何も分からなかったということになります。
たとえば、変えて4週間後の見学予約が、変える前の4週間より2割以上少なく、合う二人の割合も上がっていないなら戻す。この基準を、変える日に書き残しておきます。基準を事前に置いておけば、結果が出たときに「感覚」ではなく「基準」で決められます。
まとめ
- 公式サイトの最初の画面で二人がしているのは、魅力の判断の前の仕分け(人数・予算・やりたい形)
- 言い切ると、合う二人の予約率は上がり、合わない二人は離れる。純増になるかは、サイトに来る二人のうち合う二人が半分前後を超えているかで分かれる
- 仮の数字(予約率1.0%を、合う二人1.6%・合わない二人0.5%に変える)では、分かれ目は合う二人の割合が約45%
- 言い切る前に、成約の人数帯、検索の入口の言葉、「受けられるが得意ではない」組の扱いを確かめる
- 一行は、人数と時間の使い方、やることを限る、誰がどう決めるかの三つの型で作れる
- 変えたら4週間で比べ、戻す基準を変える日に書いておく
- 最初の画面は、誰にでも嫌われない一行より、誰かには「違う」と思われる一行のほうが仕事をする
