式場サイトの地名ページは、来館者の住所を数えてから作る
式場の公式サイトに、「〇〇市の結婚式場」「△△駅から行ける結婚式場」といった地名ごとのページを足したほうがいいのか。集客の相談を受けていると、ときどき出てくる問いです。二人が式場を探すとき、「地名 結婚式場」の形で検索することは多いはずで、そこに入口を作っておきたい、という発想は自然だと思います。
ただ、この施策は、作る費用よりも、作ったあとに何が起きるかのほうが問題になります。同じ文面の地名だけを差し替えたページが20枚並ぶと、検索の側から見ても、読む二人から見ても、中身のないページになります。この記事は、地名ページを作るかどうかを、来館者の住所を数えるところから決める話です。
先に言っておくと、今回は出典のある統計を使いません。地名ページの有無と予約数の関係について、全国で通用する公開の数字を、僕は見つけていないからです。そのかわり、仮の数字を置いたモデル計算と、自分の会場のデータで確かめる手順で書きます。数字はすべて想定だと分かる形で書きます。
地名ページで解きたい問題を先に言葉にする
地名ページを作る目的は、「〇〇市 結婚式場」のような、地名つきの検索で自分の式場を見つけてもらうことです。ここで注意したいのは、この検索を打つ二人は、すでにポータルサイトの一覧や、地図アプリの検索結果と並べて見ている、という点です。
ポータルサイトのエリアページは、式場を横に並べて比べる作りです。公式サイトの地名ページが同じ土俵に立つと、並べて比べる情報の量では勝てません。公式サイトの地名ページが勝てる場所は、一つだけです。「その地名に住んでいる二人、またはそこから通う二人が、この式場に来ると何が起きるか」を、式場の側が具体的に書けることです。
- その駅から、式場までの道のりと所要時間
- その地域から招待するゲストが、どう移動して着くか
- その地域の二人が見学に来るとき、いつ出ればいつ着くか
つまり、地名ページの中身は、式場の紹介ではなく、その地名からの移動の説明になります。これを書けない地名は、ページを作っても中身が薄くなります。
作る費用は小さい。だから分かれ目は別のところにある
最初に、作る費用を仮の数字で見ます。前提はすべて想定です。
- 1ページを作る工数は8時間。社内の時間単価を3,000円と置くと、制作費は24,000円
- 公開後の見直し(所要時間の確認、写真の差し替え)は、年に1時間ずつ月に1回の計12時間として、年36,000円
- 1年間で1ページにかかる費用は、合計60,000円
- 見学予約が1件増えたときの価値は、成約率25%、1組あたりの粗利80万円と仮置きして、1件あたり20万円(80万円 × 25%)
この前提で、1ページを1年持たせるために必要な増分は、60,000円 ÷ 200,000円 = 0.3件です。つまり、地名ページ1枚が、1年に0.3件分の見学予約を足せば、費用は回収できます。見学予約率を仮に2%とすると、そのページを経由して公式サイトを訪れる二人は、年に約15組いれば足ります。月にならすと1組強です。
費用の面では、ほとんど障害になりません。ここまで見ると「とりあえず作ればいい」と思えるのですが、この計算には落とし穴があります。そのページ経由で来る二人が、そもそも実在するかを確かめていないからです。商圏の外にある地名のページを作っても、その地名から式場に来る二人がほとんどいなければ、15組はそろいません。さらに、地名ページが増えるほど、中身を保つ手間がかかり、先ほどの年36,000円が膨らみます。
来館者の住所を数える
地名ページを作る地名を決めるには、勘ではなく、過去の来館者の住所を使います。手順は次のとおりです。
- 過去12か月の見学来館の記録から、来館した二人の住所(市区町村まで)を取り出す
- 市区町村ごとに、来館組数を数える
- 多い順に並べて、累積の割合を出す
- 契約に至った組についても、同じ表を作って並べる
ここで見るのは、来館が多い地名と、成約が多い地名がずれていないかです。来館は多いのに成約が少ない地名は、見学には来るが決めきれない地域です。この地名は、地名ページより先に、見学の中身や移動の負担を見直す対象になります。
仮の数字で表を作ります。過去12か月に200組が来館し、住所の内訳が次のとおりだったとします。
- A市46組(累積23.0%)
- B市31組(累積38.5%)
- C市22組(累積49.5%)
- D町14組(累積56.5%)
- E市11組(累積62.0%)
- その他の地域76組(累積100%)
この場合、地名ページの候補はA市、B市、C市の3つです。この3つで来館の半分近くを占めます。D町とE市は、組数が10組台で、年に15組の流入という先ほどの目安に届くかどうかが微妙です。「その他の地域」は、個別の地名ページの対象ではなく、遠方から来る二人向けの案内(宿泊や交通費の話)として別に扱うほうが筋が通ります。
注意してほしいのは、来館者の住所が多い地名は、すでに公式サイトや他の経路で式場を知って来た二人の住所だ、という点です。地名ページを作ると増えるのは、「その地名で検索はしているが、まだ式場を知らない二人」です。来館の多い地名は、その二人もいる可能性が高い、という推定にとどまります。作ったあとで、本当にその地名の検索から来ているかを確かめる必要があります。
地名ごとに違う中身を書けるか
候補の地名が決まったら、次の関門は中身です。同じ文面の使い回しは、避けます。理由は二つあります。
- 読む二人にとって、どの地名のページを開いても同じ内容なら、地名ページを開いた意味がなくなる
- 検索の側から見ても、地名だけ違うほぼ同一のページが並ぶと、ページの価値が低く見られやすい
そこで、各ページに、その地名だけの材料を最低3つ入れます。たとえば次のものです。
- その駅(または最寄りの主要駅)から式場までの実際の所要時間と、乗り換えの回数。式場のスタッフが一度歩いて、測った数字を使う
- その地域から来るゲストの送迎の運用。送迎バスの出発地点、ルート、時刻
- その地域の二人が過去に見学に来たときの動き方(たとえば、土曜の午前に来るのか、夜の枠が多いのか)。ただし、個人が特定されない範囲で、傾向だけを書く
3つ目は、自社のデータがあるから書ける中身です。ポータルサイトには書けません。ここが、公式サイトの地名ページがポータルのエリアページと違う価値を持てる唯一の場所だと思っています。
逆に、地名のページに載せないほうがいい中身もあります。
- その地域の観光名所や、グルメの紹介。式場の話から遠くなり、読む二人の役に立たない
- 「〇〇市で結婚式を挙げるなら当会場」のような、キャッチコピーだけの導入。地名を入れただけの文章になる
- 他社の式場との比較。この種の比較は、公式サイトに書くと信頼を落としやすい
作ったあとに確かめること
ページを公開したら、次の三つを3か月後に確認します。
- そのページに着地したセッション数(サイトのアクセス解析で、ページ別に見る)
- そのページから見学予約までに進んだ件数(予約フォームに進んだ件数と、実際の予約数を分けて見る)
- 検索で表示されたときの検索語句(検索のレポートで、地名つきの語句にどれだけ出ているか)
3か月で着地が月に1組にも満たないページは、費用の面ではまだ許容範囲です。ただ、年に15組という目安から見ると足りません。このときは、ページを足し続けるより、閉じるか、他のページに統合するかを選びます。放置すると、年36,000円の見直し費用だけが残ります。
見学予約が増えたかどうかを判断するときは、他の施策が同時期に動いていないかも見ておきます。フェアの開催日を増やした月に、地名ページの予約も増えたように見えることがあります。地名ページ経由の予約だけを取り出して、前後を比べます。
地名ページを作らないほうがいい式場
次の条件に当てはまる式場は、地名ページを後回しにしても損は小さいと思います。
- 来館者の住所が、特定の2〜3の市区町村に9割以上集中している。この場合は、その2〜3の地名だけで足り、増やす余地が小さい
- 来館者の住所が、広い範囲に薄く散らばっている。リゾート地や、遠方からの旅行を兼ねた挙式を売りにしている会場に多い形で、この場合は地名ではなく「遠方から来る二人への案内」を作るほうが効く
- 現場に、地名ごとの所要時間を測って更新する余力がない。書いた所要時間が古くなったページは、むしろ信頼を下げる
最後の条件は、とくに見落とされやすいところです。ページを作るのは一度ですが、数字を保つのは続けるものです。ダイヤ改正や道路工事、駐車場の変更が起きたとき、誰が直すかを決められないなら、作らないほうが安全です。
作るか作らないかを決める順番
ここまでの話を、決める順番にまとめます。
- 過去12か月の来館者の住所を、市区町村別に数える
- 来館が多い上位の地名から、ページの候補を3つ前後に絞る
- 各地名について、測った所要時間と送迎の運用を、書けるかを確かめる
- 3つ以上の材料が書ける地名だけ、ページを作る
- 公開から3か月後に、着地・予約・検索語句を確かめ、足りなければ閉じるか統合する
この順番で進めると、地名ページを足すかどうかは、感覚の話ではなく、数える作業と、書ける中身があるかの確認で決まります。
まとめ
- 地名ページの費用は、仮の数字で年60,000円程度と小さい。1年に0.3件分の見学予約を足せば回収できる
- 本当の分かれ目は、その地名から来る二人が実在するかと、地名ごとに違う中身を書けるか
- 候補の地名は、過去12か月の来館者の住所を市区町村別に数えて決める。来館と成約のずれも見る
- 各ページには、実測した所要時間、送迎の運用、来館の傾向など、その地名だけの材料を最低3つ入れる
- 公開から3か月で、着地・予約・検索語句を確かめる。足りないページは閉じるか統合する
- 住所が数か所に集中している式場、広く散らばっている式場、数字を更新する余力がない式場は、地名ページを急がない
