予約なしで来た二人は、30分の簡易見学で次の予約まで取る
式場の前を通りかかった二人が、「少し見られますか」と入ってくることがあります。予約はありません。担当者は別の二人の準備中で、見学枠も詰まっています。
こういうとき、「予約制ですので」と断る式場は多いと思います。僕は、断るかどうかは気持ちではなく、その時間の見学枠が空いているかどうかで決めるのが筋だと考えています。空いている時間帯なら、30分の簡易見学で迎えて、次の予約まで取って帰す。埋まっている時間帯なら、断って、その場で予約だけ取る。どちらの場合も、二人を手ぶらで帰さないのが条件です。
この記事では、その線を仮の数字で計算して、30分の中身と断り方の言い回しまで整理します。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の実績でも、業界の平均でもありません。公開された統計は使いません。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。
予約なしで来る二人は、迷っていない二人とは限らない
まず、予約なしで来る二人がどういう二人かを考えます。
- 近くまで来たついでに、場所だけ確認したい二人
- 予約フォームに入力する手間を省いて、先に雰囲気を見たい二人
- すでにほかの式場を回っていて、帰り道に寄った二人
- 親や友人に勧められて、その足で来た二人
共通するのは、検討が始まっていて、足が向いたということです。広告や媒体で見た式場に、予約の手続きを飛ばしてでも来ている。来館の動機としては、決して弱くありません。
一方で、準備のない状態で来るので、見学をフルで案内する式場はまれです。ここに判断の分かれ目があります。90分の通常見学と同じ中身を出す必要はなく、出せるときだけ、出せる分を出せばいい、という考え方です。
受けるかどうかの線は「その時間の枠の値打ち」
予約なしの来館を受けるコストは、30分の担当者の時間です。ただ、本当の費用は、その30分でほかに何ができたかで決まります。
- 通常の見学枠が空いている時間帯:担当者の30分は、ほかに使い道がない。受けても失うものがない
- 通常の見学枠が埋まっている時間帯:この30分を使うと、予約済みの二人に遅れが出る。失うものがある
つまり、受ける線は「簡易見学1時間あたりの期待粗利が、その時間に通常見学で稼げる期待粗利を上回るか」です。空いている時間帯は、比べる相手がゼロなので、ほぼ必ず受けるが勝ちます。
仮の式場で計算する
前提を置きます。すべて仮の数字です。
- 予約なしの来館:月に8組
- 成約1組から残る粗利:60万円
- 通常見学(90分)の成約率:30%。1時間あたりに直すと、0.3 × 60万円 ÷ 1.5時間 = 12万円
- 簡易見学(30分)で迎えた場合:次の予約が取れる割合を40%、次回の見学の成約率を25%とする(通常より少し低く置く)
- 断った場合:帰り際に予約を案内して、次の予約が取れる割合を15%、成約率は同じく25%とする。担当者の時間は1組3分(0.05時間)
計算します。
- 受ける場合:8組 × 40% × 25% = 月0.8組の成約。粗利は48万円。担当者の時間は8組 × 0.5時間 = 4時間
- 断る場合:8組 × 15% × 25% = 月0.3組の成約。粗利は18万円。担当者の時間は8組 × 0.05時間 = 0.4時間
受けることで増える成約は月0.5組、粗利で30万円です。増える担当者の時間は3.6時間。1時間あたりに直すと、約8.3万円です。
これを、通常見学1時間の12万円と比べます。8.3万円は12万円より低いので、通常見学の枠が埋まっている時間帯に簡易見学を差し込むと、予約済みの二人に回せたはずの粗利を、少し削る計算になります。
一方、枠が空いている時間帯なら、比べる相手が0円です。8.3万円が丸ごと上乗せになります。
ここまでが、冒頭の「空いていれば受ける、埋まっていれば断る」の根拠です。
次の予約が取れる割合が効く
結果を動かしているのは、実は「次の予約が取れる割合」です。同じ前提で、受けた場合の割合だけを変えてみます。
- 割合20%:増える1時間あたりの粗利は約1.7万円
- 割合30%:約5万円
- 割合40%:約8.3万円
割合が20%まで落ちると、簡易見学の1時間あたりの値打ちは、通常見学の12万円はおろか、枠が空いている時間帯でも担当者の時間単価を割り込みかねません。つまり、簡易見学は「見せて終わり」にすると意味が薄く、次の予約を取りに行って初めて成り立ちます。
だから、この記事のタイトルは「簡易見学で迎える」ではなく、「次の予約まで取る」としています。
30分の中身を決める
受けると決めたら、30分で何を見せるかを先に決めておきます。当日に思いつきで案内すると、通常見学の短縮版になって、どちらにも使えない中途半端な体験になります。
僕なら、次の3つに絞ります。
- 最初の3分で、いつ・何人で・何を探しているかを聞く。挙式の時期と人数感だけで足ります
- 15分で、その二人の条件に合う場所を1か所か2か所だけ見せる。全館は回らない
- 最後の10分で、次の見学の日程を一緒に選ぶ。予約画面を見せて、その場で押してもらう
見積もりは出しません。準備のない状態で出した数字は、二人のメモにそのまま残り、後で比べられます。出すのは「人数と時期が分かれば、初回の見積もりをお出しできます」という約束までです。
試食や模擬挙式も、30分では入れません。次の見学の目玉として取っておくほうが、二人が戻ってくる理由になります。
断るときは、手ぶらで帰さない
枠が埋まっている時間帯は、断ります。ただ、断り方で二人の印象は大きく変わります。
避けたい言い方は、「予約制なので」「担当者がいないので」だけで終わることです。事実ではあっても、二人にとっては入口で閉じられた体験になります。
僕が勧めるのは、次の順番です。
- 最初に、来てくれたことへの一言を置く。「お越しいただいたのに、今ご案内できず申し訳ありません」
- 次に、理由を一文で言う。「ほかのお二人をご案内している時間帯で」
- すぐに、代わりの提案を出す。「このあとのご予定が合えば、30分後に15分だけでもご案内できます。難しければ、いまスマホで空いている日をお選びいただけます」
- 帰り際に、会場の外観や入口の写真つきの案内を1枚渡す。予約用のQRと担当者の名前を載せておく
ポイントは、予約が取れなくても、二人の手元に「次に何をすればいいか」が残ることです。断る場合の割合を15%と置きましたが、手ぶらで帰すとこの割合はもっと下がると見ています。これは数字で確かめた話ではなく、僕の見立てです。
受ける前に、受付で決めておくこと
簡易見学は、当日の判断に任せると、受ける日と断る日が担当者の気分で分かれます。受付にいる人が迷わないよう、次の3つだけ先に決めておきます。
- 受付が確認する合図:その時間帯に、担当者の誰が空いているかを見る場所(共有カレンダーや、事務所のホワイトボードなど)
- 声をかける人:受付の人が、担当者に「予約なしのお二人です」と伝える一言と、その伝え方(内線、チャット、直接)
- 記録の取り方:来た日時、人数、受けたか断ったか、次の予約が取れたか。紙1枚でも足ります
この3つがあれば、受付は「少々お待ちください」と言いながら、担当者の空きを確認できます。待たせる時間は、長くても2〜3分に収めます。それ以上かかるなら、先に断りの流れに切り替えるほうが、二人の印象を損ないません。
迷いやすい境目
ここまでの線で迷いやすい場面を、4つ挙げます。
披露宴が入っている日
見られない場所が多い日は、見学の中身が薄くなります。簡易見学でも、見られるものを先に伝えます。見えない場所があるなら、その日は「雰囲気だけ」と割り切るか、別の日の予約を先に取るほうが、二人にとって親切です。
フェアの開催中
フェアの時間帯は、担当者が全員ふさがっていることが多く、飛び込みを受ける余裕がありません。ただ、フェアの受付の近くに来た二人は、フェアに参加する候補でもあります。その場でフェアの空き枠を確認して、次回の枠か、同日の別の回に入れられるなら入れます。
一人だけで来た場合
片方だけ来た場合は、見積もりもプランの話も踏み込まず、場所の下見として迎えます。残る一人に渡す紙を持たせて帰します。
同じ二人が何度も予約なしで来る場合
2回目以降の予約なし来館は、検討が進んでいる合図です。このときは、次の予約を取るより、迷っている1点を聞くほうが先です。
数えるのは、予約なしの来館から次の予約が取れた割合
この運用が機能しているかを確かめるには、数える項目を絞ります。
- 月に何組、予約なしで来たか
- そのうち、簡易見学で迎えた組数と、断った組数
- それぞれ、次の予約が取れた組数
- 次の予約に来館した組のうち、成約した組数
これだけで、仮に置いた「40%」と「15%」が、自分の会場でどのくらいか見えてきます。3か月分を溜めれば、今回の計算の前提を実測値に置き換えられます。
実測の割合が20%を下回るなら、簡易見学の中身か、予約の取り方のどちらかが弱いということです。その場合は、30分の最後に予約画面を見せるところまで届いているか、見直します。
まとめ
- 予約なしで来た二人は、検討が始まっている。断るか迎えるかは、その時間の見学枠が空いているかで決める
- 仮の計算では、簡易見学の1時間あたりの粗利は約8.3万円で、通常見学の12万円を下回る。枠が埋まっている時間帯は断り、空いている時間帯は迎える
- 簡易見学の効果は、次の予約が取れる割合で決まる。割合が20%まで落ちると、ほぼ意味がなくなる
- 30分の中身は、聞く・1〜2か所だけ見せる・次の予約を取るの3つ。見積もりは出さない
- 断るときも、一言・理由・代わりの提案・次の予約の案内を渡して、手ぶらで帰さない
- 受付が迷わないよう、空きの確認先・担当者への伝え方・記録の取り方を先に決めておく
- 数えるのは、予約なしの来館数と、そこからの次の予約率、成約率の3つ
