来館・成約

式場の見学組数は成約率の下限から逆算して決める

月に8組の成約が欲しい。そのために見学を何組入れて、問い合わせを何件集めればいいのか。多くの式場で、この逆算は「成約率30%なら、見学は27組」と平均の成約率を1回割って終わります。

結論から書きます。見学の組数は、平均の成約率ではなく、成約率の下限で組んだほうが外れません。平均で組むと、成約率が悪い月に目標を割り、その月に広告を増やそうとしても、見学の枠がもう埋まっているからです。

この記事は、出典のある統計を使いません。式場ごとの成約率や来館率は会場の立地や価格帯で大きく違い、全体を代表する数字を僕は見つけていないからです。数字はすべて僕が置いた仮定で、実在の式場の実績ではありません。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

逆算の前提を置く

仮の式場を置きます。以下はすべて想定です。

  • 月の成約目標は8組
  • 見学に来た組のうち、成約する割合(成約率)は平均30%。ただし月によって25%から35%の間で動く
  • 見学を予約した組のうち、実際に来る割合(来館率)は90%
  • 問い合わせをした組のうち、見学を予約する割合(予約率)は40%
  • 見学の枠は、土日の2日間に1日4枠、月に4.3週として、月34枠

成約までの日数は、ここでは考えません。見学した月に契約する前提で組みます。実際には見学の翌月に契約する組もあるので、月をまたぐ分は最後に触れます。

平均の成約率で逆算した場合

成約率30%で、順番にさかのぼります。

  • 成約8組 ÷ 0.30 = 来館26.7組
  • 来館26.7組 ÷ 0.90 = 見学予約29.6組
  • 見学予約29.6組 ÷ 0.40 = 問い合わせ74.1件

つまり月に問い合わせ74件、見学予約30組弱、来館27組ほどあれば、平均の月に8組届きます。見学の枠は34あるので、数字の上では余裕があります。枠の使用率は、予約30組 ÷ 34枠 = 約87%です。

ここで安心して、問い合わせを74件集める計画を立てる。これがよくある組み方です。

下限と上限でも同じ計算をする

成約率が25%の月と35%の月で、同じ計算をします。

成約率 必要な来館 必要な見学予約 必要な問い合わせ
25% 32.0組 35.6組 88.9件
30% 26.7組 29.6組 74.1件
35% 22.9組 25.4組 63.5件

見てほしいのは、25%の行です。必要な見学予約が35.6組で、枠の34を超えます。成約率が25%に落ちた月は、見学を全部受けても8組に届きません。枠の数がそのまま天井になるからです。

天井にぶつかったときの成約数も出せます。34枠が全部埋まり、来館率90%なら、来館は 34 × 0.9 = 30.6組。成約率ごとの成約数は次のとおりです。

  • 25%:30.6 × 0.25 = 7.65組
  • 30%:30.6 × 0.30 = 9.18組
  • 35%:30.6 × 0.35 = 10.71組

枠が満員でも、成約率が25%なら7.65組です。目標の8組に0.35組足りません。この月に足りない0.35組は、問い合わせを増やしても埋まりません。

広告を増やしても埋まらない理由

成約率が低い月に、広告を増やして問い合わせを20%増やしたとします。

  • 問い合わせ 74.1件 × 1.2 = 88.9件
  • 見学予約 88.9 × 0.4 = 35.6組

見学予約が35.6組になって、枠の34を超えます。超えた1.6組は、別の日を案内するか、断るか、平日に回すことになります。平日に回せば来館率が下がる式場もあるでしょうし、土日の予約が詰まっていることに気づいた二人が他の式場に流れるかもしれません。どうなるかは会場によって違うので、ここでは数字にしません。分かるのは、広告費を足した分が成約に変わるのは、枠に空きがあるうちだけ、ということです。

反対に、成約率が上がる方向の手当ては、枠を使い切った状態でも効きます。成約率が25%から30%になれば、同じ34枠で 7.65組が9.18組になります。1.5組ぶんの差です。

下限で組むと何が変わるか

下限の25%で逆算すると、月の必要数は次のように決まります。

  • 問い合わせは89件(平均の74件より15件多い)
  • 見学予約は36組弱(枠の34を超える)
  • 枠が足りないので、枠を増やすか、成約率を上げるかを先に決める

ここまで計算して初めて、「枠を増やす」「成約率を直す」「目標を下げる」の3つから選ぶ判断ができます。平均で組んでいる限り、この選択肢は計画の上に現れません。

選び方の目安は、次のとおりです。

  • 枠を増やす:平日夜や土日の枠を足せる。ただし担当者の人数と、枠を足した分の来館率の下がり方を見る必要がある
  • 成約率を直す:見学の中身(冒頭の聞き方、見積もりの出し方、持ち帰られたあとの連絡)を直す。効果が出るまで数か月かかるが、枠が満員でも効く
  • 目標を下げる:下限の月は7.65組、と最初から受け入れる。無理に埋めようとして値引きや特典で成約を取りにいくくらいなら、この選択のほうが粗利は残ることもある

3つのうちどれが正しいかは、会場の事情で変わります。ただ、どれを選ぶにしても、下限で計算しておかないと、選ぶ場面が来たことに気づけません。

成約率の幅を、どう決めるか

下限の25%と上限の35%は、どこから持ってくるのか。仮の数字でなく、自分の会場の数字で置きます。

  1. 直近12か月の月ごとの成約率(その月の成約組数 ÷ その月の来館組数)を並べる
  2. 最も低い月と、最も高い月を探す
  3. 外れ値の1か月を除いて、下限と上限にする

12か月分の数字がなければ、6か月でも構いません。そのときは、幅を少し広めにとります。月の来館が25組前後だと、成約率は1組の増減で4ポイント動きます。25組で7組成約なら28%、8組なら32%です。1組の違いで4ポイント動くのだから、25%から35%の幅は、特別に荒れた月の話ではなく、ごく普通の揺れとして見ておくほうが自然です。

成約が月をまたぐ場合は、成約日ではなく見学日で数えます。1月に見学した組が2月に契約したなら、1月の成約として数えて、見学した月に成約率を紐づけます。こうしないと、月初に見学が少ない月に、前月の見学分の成約が混ざって成約率が高く見えます。

来館率と予約率も、同じように幅で見る

ここまでは成約率だけを動かしました。実際には、来館率と予約率も月で揺れます。

来館率が90%から80%に落ちる月を考えます。枠34が満員でも、来館は 34 × 0.8 = 27.2組です。成約率が30%なら 27.2 × 0.30 = 8.16組で、ぎりぎり目標に届きます。ところが成約率が25%と来館率80%が同じ月に重なると、27.2 × 0.25 = 6.8組です。目標との差は1.2組になります。

成約率の下限と来館率の下限が同じ月に来るとは限りません。それでも、悪い条件が2つ重なる月は、年に何回かは来ます。重なった月の成約数を一度計算して、「この月は6.8組まで落ちうる」と知っておくだけで、その月の資金繰りや人員の組み方が変わります。

予約率(問い合わせから見学予約になる割合)は、問い合わせの質で動きます。媒体からの問い合わせが多い月は、まだ比較の初期段階の二人が増えて、予約率が下がることがあります。逆に、紹介や指名検索が多い月は上がりやすい。予約率を40%と固定せず、媒体別に分けて持つと、問い合わせ89件が必要な月に、どの経路で何件集めるかまで落とせます。ここは会場ごとにデータの有無が違うので、持っていなければ平均の1つで始めて構いません。

月をまたぐ成約の扱い

最初に「見学した月に契約する」と置きました。実際には、見学の翌月以降に契約する組がいます。

月またぎが多い式場では、その月の成約数は、前の月の見学で決まっている部分が大きくなります。たとえば、成約8組のうち3組が前月までの見学分なら、その月の見学で決めるのは5組です。この場合、今月の見学の積み増しは、来月以降の成約に効きます。

このずれがあると、「今月の見学が足りなかった」と気づくのが翌月になります。月初の表に見学予約の件数を載せておけば、成約が出る前に、来月の数字の見通しが立ちます。成約が月をまたぐ式場ほど、成約数ではなく見学数の側を先行指標に置く意味があります。

見学から契約までの日数は、会場ごとに自分の記録で出せます。直近の成約を10組ほど拾って、見学日と契約日の差を並べるだけです。分布が見えれば、どの月の見学がどの月の成約になるかを、ざっくり割り振れます。

枠の数え方で見落とすこと

枠を34としましたが、これは担当者が全員いる前提の数字です。

  • 担当者が休みの日は、枠が減る。月のうち担当者が1人欠ける日が2日あれば、その日の枠が減った分、月の枠は34から30前後になる
  • 同じ時間帯に重なる見学は、会場の動線上受けられない場合がある。枠の数と、同時に案内できる組数は別の数字
  • 繁忙期には、成約後の打ち合わせが同じ担当者の時間を使う。見学の枠は、打ち合わせの予定が入った残りの時間にしか置けない

枠を34のまま計画に載せると、使用率が87%と出ても実際は95%を超えている、ということが起きます。枠の数は、カレンダーを見て、その月ごとに数え直します。月初の表に載せる枠は、その月に実際に使える枠にします。

実務での使い方

月初に、次の3つの数字を並べた表を1枚作ります。

下限の月 平均の月 上限の月
必要な問い合わせ 89件 74件 64件
必要な見学予約 35.6組 29.6組 25.4組
枠の使用率 105% 87% 75%

枠の使用率が100%を超える列は、その月に確実に足りなくなる、という印です。この列が出たら、問い合わせを増やす前に、枠の数か成約率に手を入れます。

月の途中でも使えます。月の15日に、見学予約の件数を数えます。そこまでで、その月の必要数の半分に届いていれば順調で、届いていなければ、残り半月で広告を足すかどうかを決める材料になります。足すのは、枠にまだ余裕があるときだけです。

まとめ

  • 成約目標からの逆算は、平均の成約率だけで終わらせず、下限と上限でも同じ計算をする
  • 仮の式場では、成約率が25%に落ちる月は、見学の枠34を使い切っても7.65組で、目標の8組に届かなかった
  • 枠が満員の月に広告を足しても、超えた分の予約は成約に変わらない。成約率を上げる手当てだけが、満員でも効く
  • 下限と上限は、直近12か月の月別の成約率から自分の会場の数字で置く。月の来館が25組前後だと、1組の増減で成約率は4ポイント動く
  • 計画の表に「枠の使用率」の行を足すと、足りなくなる月が先に分かる