来館・成約

式場見学が押して次の二人を待たせるなら、枠の余裕と先の連絡で決める

見学の予約をいただいた二人が、約束の時刻に来館する。ところが前の組の見学が押していて、受付で10分、20分と待たせてしまう。式場なら、どこかで起きている場面だと思います。

そのとき現場では、プランナーが前の組の説明を急いで切り上げたり、次の組に平謝りしたりします。ただ、僕はこの問題の主因が、現場の段取りの悪さにはないと考えています。待たせるかどうかは、見学の枠をどう組んだかでほぼ決まっている、という見方です。

この記事では、仮の数字を置いた試算で、枠の間の余裕が待ち時間をどれだけ吸収するのかを確かめます。そのうえで、待たせると分かった時点で何をどの順で伝えるか、待ってもらう間に何を渡すかを段取りにまとめます。

先にお断りしておくと、この記事に出てくる「押す確率」や「押す分数」はすべて、考え方を見るための想定です。式場の見学の進め方や担当者の数で、実際の値は大きく違います。自社の見学の開始と終了の記録を数えれば、同じ形の計算を実数でできます。その方法も後半に書きます。

待たせた一回は、二人にとって最初の比較材料になる

二人は見学のために、休日の予定を空けて来ています。他の式場も同じ日に見ていることが多く、午前に1軒、午後に1軒という組み方もよくあります。そこで10分待たされると、次の式場への移動が詰まります。

さらに、待たされた二人は、式場の見た目や料理より先に、「この会社は約束の時刻を守る」かどうかを見ます。結婚式は、何か月も前から何十回もやりとりが続く買い物です。予約した時刻を守れない会社が、当日の進行を守れるのか。そう考えるのは自然なことです。

つまり、待たせた一回は、式場が約束を守るかどうかを示す、最初の比較材料になります。見学の内容がどれだけ良くても、この印象を後から取り戻すのは手間がかかります。

ここで言いたいのは、待たせないように全員が急ぐべきだという話ではありません。急いで見学を切り上げれば、前の組の二人に失礼になります。前の組は、納得して帰ってもらう必要があるからです。だから、押すこと自体は、ある程度は避けられないと考えたほうが現実的です。避けられないなら、押しが次の組に波及しない形に、枠を組んでおく。これが、この記事の中心になる考え方です。

押しは、枠の余裕で吸収できる

見学の枠を、次の形で考えてみます。

  • 1日に見学を4組入れる
  • 見学の標準の所要時間は90分で、枠の間隔は、余裕分を足した長さにする
  • 余裕とは、前の見学が押したときに、次の組の開始時刻までに使える時間のこと

そのうえで、前の組の見学が、標準より押す分数を、次のように仮定します。

  • 標準どおりに終わる:60%
  • 10分押す:20%
  • 20分押す:12%
  • 40分押す:8%

「質問が多い組」「試食の説明が長引く組」「契約の相談に進んだ組」など、押す理由はさまざまです。ここでは、押す組は4割あるという想定にしました。

まず、前の組の押しが、次の組の待ち時間にそのまま響くとします。枠の余裕を0分、15分、30分、45分にしたとき、次の組が待たされる確率と、待ち時間の期待値は次のとおりです。

枠の余裕 待たされる確率 平均の待ち時間
0分 40% 約7.6分
15分 20% 約2.6分
30分 8% 約0.8分
45分 0% 0分

余裕が0分だと、10組のうち4組が待たされます。余裕を15分に増やすだけで、待たされる組は半分に減ります。30分あれば、10組のうち1組もいない水準になります。

この計算は、前の組の押しが、後ろの組に引き継がれない場合の話です。実際の見学では、前の組が押したぶん、その組も押された状態で始まるので、押しが連鎖します。そこで、1日4組が続く場合を、乱数で10万回シミュレーションして確かめました。連鎖するときの結果は次のとおりです。

枠の余裕 10分を超えて待たされる組の割合 平均の待ち時間
0分 約29% 約11.4分
15分 約8% 約2.8分
30分 約0.3% 約0.6分

余裕が0分のとき、連鎖すると平均の待ち時間は11分を超えます。10分以上待たされる組が、およそ3組に1組です。夕方の枠ほど、前の押しが積み重なっているからです。余裕が15分あれば、10分を超えて待たせる組は10組に1組未満まで減ります。

もう一度確認しておくと、これは想定した分布での計算です。ただ、形は変わりません。余裕は、足した分だけ待ち時間が減るのではなく、最初の15分で大きく効くことが、この計算から読み取れます。

余裕の枠を足すと、いくら失うのか

余裕を足せば、1日に入れられる組数が減ることがあります。その損失も、同じように計算しておきます。

たとえば、見学の枠が10時から17時までだとします。標準の所要時間が90分で、余裕が0分なら、90分ずつ詰めて、理屈の上では4組が入ります(10:00、11:30、13:00、14:30。最後の組は16:00に終わる)。

余裕を15分にすると、開始の間隔が105分になります。すると、10:00、11:45、13:30、15:15の4組で、最後の組は16:45に終わります。17時までなら、同じ4組が入ります。つまり、余裕の15分は、枠の終わりの時刻に余白があれば、組数を減らさずに入れられることがあります。

余裕を30分にすると、間隔が120分になり、10:00、12:00、14:00、16:00の4組になります。最後の組は17:30に終わるので、17時までの枠だと4組目は入りません。閉館時刻が決まっている式場では、ここで組数の判断が出ます。

判断の分かれ目を、次のように整理できます。

  • 1日の最後の組が、閉館時刻に対して余白を持てるなら、余裕を15分入れても組数は減らない。まずここから試す
  • 余白が無く、組数を減らす必要があるなら、減るのは1組か。それが、待たされて印象を悪くする組の数と釣り合うかを見る
  • 土日の埋まりが浅く、枠が空いているなら、余裕を30分入れても損は小さい

組数を減らすかどうかは、「その日の枠が埋まっているか」で決まります。埋まっていない枠の余裕は、ただで入れられます。埋まっている枠は、1組の見学が成約する確率と、待たされて見送られる確率を、比べて決めることになります。比べるための数字は、見学の記録から出せます。

自社の押しを数える方法

試算の「押す確率」と「押す分数」は、自社の記録から実数に置き換えられます。必要なのは、見学1組ごとの、予定の開始時刻、実際の開始時刻、実際の終了時刻の3つです。

  1. 直近1〜2か月の見学を、1組ごとに書き出す
  2. 「実際の終了時刻」から「予定の終了時刻」を引いて、押した分数を出す
  3. 押した分数を、0分、10分前後、20分前後、30分以上に分けて数える
  4. 曜日と時間帯でも分ける。午後の枠のほうが、押しが積み上がっていることが多い

この記録を、受付の紙でも予約システムのメモでも、とにかく残しておく。まず数え始める。それだけで、何分の余裕が要るのかが、感覚ではなく数字で言えるようになります。

もう一つ、見るとよいのが「押した理由」です。契約の相談に進んだ組が押すのは、成約に近い組なので、押してもよい押しです。一方、担当者が質問に答えきれず長引く、説明が毎回同じところで詰まる、といった押しは、段取りで減らせます。押しを二つに分けて数えると、枠で吸収するべき押しと、現場で直すべき押しの、見分けがつきます。

待たせると分かったら、先に伝える

余裕を入れても、待たせる日は来ます。そのときは、待たせると分かった時点で、先に伝えることが最優先です。

受付に来て初めて「前の組が押していまして」と言われるのと、来館する30分前に連絡をもらうのとでは、二人の受け取り方がまったく違います。後者なら、二人は近くで時間をつぶせるので、待たされたという感覚が小さくなります。

具体的な段取りは、次のとおりです。

  • 前の組の見学が、中盤の時点で10分以上押しそうだと、担当者が分かったら、受付に合図を出す
  • 受付の担当者が、次の組に電話かメッセージで連絡する。内容は、「何分ほど遅れそうか」「何時に来ていただければ、待たずに案内できるか」の2点
  • 来館後は、待ってもらう場所と飲み物を、すぐ案内する
  • 開始が遅れたぶん、見学の内容は短くしない。所要時間のほうを、二人に伝えて確認する

最後の項目は、見落とされがちです。遅れを取り戻そうとして、説明を削る式場があります。しかし、二人は最初の約束に対して、遅れたぶんを黙って削られるほうが、がっかりします。所要時間が延びることを伝え、その後の予定に影響しないかを聞けば、二人が自分で調整できます。

なお、連絡の文面に、謝罪を長く書く必要はありません。「前の見学が長引いています。10分ほど遅れそうです。ご都合は大丈夫でしょうか」くらいの短さで十分です。長い謝罪は、読む側の負担にしかなりません。

待ってもらう間に渡すもの

待ち時間が10分を超えるなら、座って飲み物を待つだけにしないほうがよい、と僕は考えています。手持ちぶさたは、待たされた感覚を大きくするからです。

渡せるものは、見学の内容に近い、軽いものがよいです。

  • 会場の見取り図と、当日の見学の順番を書いた一枚。待っている間に、これから見る場所の見当がつく
  • 見学の後で聞きたいことを書き込める、短いメモ欄。二人が事前に整理できる
  • 季節の写真が見られるアルバム。見学の前に、イメージを持ってもらえる

反対に、渡さないほうがよいのは、待たせたお詫びとして付ける特典や割引です。待たされた二人に特典を出すと、「待たせた代わりに」という理由が見えてしまい、見学そのものの価値が下がって見えます。また、特典の条件が、他の組との間で不公平になることもあります。待ち時間の埋め合わせは、物ではなく、情報と連絡の速さで返すほうが、あとに残りません。

担当者が一人の日は、余裕を大きく持つ

担当者の人数も、押しの影響を左右します。担当者が複数いて、次の組を別の担当者が迎えられるなら、前の組が押しても、次の組は待たずに見学を始められます。一方、担当者が一人しかいない日は、前の組が押したぶんが、そのまま次の組の待ち時間になります。

だから、枠の余裕は、一律ではなく、その日に迎えられる担当者の数で変えるのが現実的です。

  • 担当者が2人以上いる日:余裕は小さくてよい。押した組の担当者以外が、次の組を迎える
  • 担当者が1人の日:余裕を大きく取る。上の試算のように、15〜30分を目安に試す
  • 担当者が1人で、枠が埋まっている日:組数を減らすか、受付で待つ間の案内を、別のスタッフが担当する形にする

予約を受けるときも、担当者の数が少ない日は、「枠の間を空けて、ゆっくりご案内できます」と伝えれば、余裕は二人にとっての利点になります。待ち時間のためではなく、ゆっくり見てもらうための余裕として見せる、という言い方です。

まとめ

  • 見学で次の組を待たせる原因は、現場の段取りより、枠の組み方にある。押しは避けられない前提で、波及しない枠にしておく
  • 仮の分布で試算すると、枠の余裕は最初の15分で大きく効く。連鎖があっても、15分の余裕で、10分以上待たせる組は3組に1組から10組に1組未満まで減る
  • 余裕を足しても、最後の枠に閉館までの余白があれば、組数は減らない。枠が埋まっている日は、組数と待たせる確率を比べて決める
  • 押した分数と押した理由を、見学1組ごとに記録する。成約に近い組の押しは許容し、段取りで減らせる押しは現場で直す
  • 待たせると分かったら、受付に来る前に、遅れの目安と来てもらう時刻を伝える。遅れを取り戻すための説明の短縮はしない
  • 待ち時間の埋め合わせは、特典ではなく、情報と連絡の速さで返す
  • 担当者の人数で、余裕を変える。1人の日は大きく取り、ゆっくり見てもらうための余裕として見せる