集客

式場サイトの会場ページは、最大人数より快適に座れる人数で書く

式場サイトの会場ページには、たいてい「最大収容100名」といった数字が載っています。招待人数を決めかけている二人にとって、この数字は「うちの人数が入るか」を確かめるための最初の物差しです。

僕は、この数字を「最大」で書くか「快適に座れる人数」で書くかで、見学に来る二人の中身が変わると考えています。最大で書けば予約は増えます。そのかわり、来館して初めて「思ったより窮屈だ」と気づく二人も増えます。気づいたあとに契約まで進む人は多くありません。

この記事は、会場ページの人数表記を書き換えるときの判断の条件を整理する話です。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場のものではありません。この論点を直接調べた調査は、探しましたが見つけられていません。そのため、断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。

先に結論を書きます。

  • 最大人数の表記は、予約を増やす代わりに、来館後の「思っていたのと違う」を増やします
  • 快適人数を併記すると、予約は一部の二人で減ります。減る割合ごとに、成約率がどれだけ上がれば元が取れるかは、簡単な割り算で出せます
  • 書き換えるかどうかは、自分の式場の「最大と快適の差」と「その人数帯を希望する二人の割合」で決まります

最大人数はどう決まっているか

会場の収容人数には、少なくとも3つの数え方があります。

1つ目は、消防や建築の基準で決まる上限です。人が建物にいてよい数の上限で、座り方は関係ありません。

2つ目は、着席で並べられる最大数です。円卓を詰めて置き、通路を最低限にして、ようやく全員が座れる数です。サービスのスタッフが動ける幅や、新郎新婦の入退場の通路は考慮されていないことが多いはずです。

3つ目は、余興や高砂への動線、配膳の通路を取ったうえで、無理なく進行できる数です。式場の現場の人が「この会場なら、このくらいが気持ちいい」と感じる数は、たいてい3つ目です。

会場ページの数字は、2つ目の最大数で書かれていることが多いと思います。理由は想像がつきます。数字が大きいほうが、検索や媒体の絞り込みで多くの条件に当てはまるからです。「80名以上入る会場」で絞り込まれたときに、最大100名と書いてある会場は残り、快適80名と書いた会場は、条件によっては落ちます。

これは、集客の側から見れば合理的な書き方です。ただ、見学に来た二人が会場を見たとき、最大数と快適数の差がそのまま体感の差になります。

来館後に何が起きるか

仮に、最大100名・快適80名の会場があるとします。90名前後の招待を考えている二人が、サイトの「最大100名」を見て見学を予約します。

会場に着くと、案内の担当者が円卓の配置図を見せます。90名で組むと、高砂の前の余興スペースが狭くなり、配膳の通路も細くなります。担当者は誠実であれば、そのことを説明します。説明しなければ、契約後の打ち合わせで同じ話が出て、もっと大きな不信につながります。

説明を受けた二人には、3つの選び方があります。

  • 招待人数を減らす(親族や職場の線引きをやり直す)
  • 狭さを承知で契約する
  • 別の式場を探す

最初の選択肢は、二人にとって重い判断です。招待リストを組み直すのは、親や友人との関係に触れる作業だからです。その場で決められず、持ち帰って、他の式場の見学が先に進む、というのが自然な流れだと思います。

つまり、最大人数で書くことは、予約は取れても「この会場で迷える二人」を連れてくるのではなく、「サイトの数字に合わせて来てしまった二人」を連れてくる面があります。

快適人数を併記すると何が変わるか

書き方を変えます。たとえば次のように、数字を2つ並べます。

着席80名までは、余興や入退場の動線に余裕があります。100名まで座れますが、通路と演出のスペースを絞る形になります。

こう書くと、90名前後の二人は、予約の前に自分で判断します。

  • 窮屈でも構わない二人は、そのまま予約します
  • 余裕のある空間を重視する二人は、予約を見送ります
  • 人数を減らせる二人は、予約して、来館時に人数の相談から始めます

予約の数だけ見れば、減ります。ただ、残った二人は、制約を知ったうえで来ています。来館後の説明が「想定外の話」ではなくなり、見積もりも組みやすくなります。

損益分岐を計算する

書き換えが得か損かは、予約が減る割合と、成約率の上がり幅で決まります。

仮の前提を置きます。

  • 月の見学予約のうち、90名前後を希望する二人が毎月6組(年72組)
  • 最大表記のとき、この人数帯の見学後の成約率は10%(年7.2組)
  • 快適人数を併記すると、この人数帯の予約が一定の割合で減る一方、残った二人の成約率は上がる

式にすると、こうなります。

予約が減る割合を x、新しい成約率を r とすると、 6組 ×(1 − x)× r ≧ 6組 × 10%

つまり、r ≧ 10% ÷(1 − x)です。

予約が減る割合 必要な成約率 今の10%の何倍か
20%減 12.5% 1.25倍
33%減 約14.9% 約1.5倍
50%減 20% 2倍

予約が2割減るだけなら、成約率が10%から12.5%に上がれば元が取れます。半分の二人が予約を見送るなら、成約率は2倍にならないと割に合いません。

この表が示すのは、書き換えの答えではなく、確かめる順番です。自分の式場で、予約が減る割合はどのくらいか。残った二人の成約率はどこまで上がるか。この2つのうち、どちらが読みにくいかといえば、予約の減る割合です。成約率の上がり幅は、来館後の説明が楽になったという接客側の実感でも、ある程度つかめます。

予約が減る割合の読み方

予約がどれだけ減るかは、事前に確かめる方法があります。

1つは、今の予約者のうち、希望人数が最大に近い二人の割合を数えることです。予約フォームで希望人数を聞いていれば、人数帯ごとに分けて、成約率と合わせて見られます。「最大に近い人数を希望した二人は、見学後に迷いやすいか」を、過去の数字で確かめます。すでに成約率が低ければ、書き換えで失う予約の価値は、そもそも低いことになります。

もう1つは、書き換えを全ページでなく、一部で試すことです。会場が複数あるなら、1つの会場ページだけ変えます。1か月ごとに戻して比べる方法もありますが、季節や広告の影響が混ざるので、会場ごとの比較のほうが安全です。いずれの場合も、予約数だけでなく、希望人数が90名以上の二人の予約数を別に記録します。全体の予約が増減する中に、この人数帯の変化は埋もれやすいからです。

書き換えたほうがよい式場、そのままでよい式場

条件ごとに整理します。

書き換えたほうがよい場合です。

  • 最大数と快適数の差が、1割を超える(100名と80名のように、差が大きい)
  • 最大に近い人数を希望した二人の成約率が、他の人数帯より低い
  • 担当者が来館時に「実はこの人数だと…」と説明する場面が、月に何度もある

そのままでよい場合です。

  • 最大数と快適数の差が小さい(100名と95名など)
  • 最大数の近くで契約した二人から、狭さへの不満が出ていない
  • 人数帯ごとの成約率に差が見えない

差が小さい会場は、書き換える作業のほうが重くなります。書き換えの手間は小さいですが、媒体の絞り込みから外れるリスクがあるので、差が小さい会場では動かさなくてよいと思います。

媒体の絞り込みに残る方法

公式サイトの表記を変えても、媒体の掲載情報は別に管理されています。媒体には最大数を入れたまま、公式サイトだけを快適人数併記にする、という分け方もできます。

ただ、媒体を見て予約した二人が、そのあと公式サイトも見ます。2つのページで数字が違うと、「どちらが本当か」という疑問が生まれます。分けるなら、媒体のほうにも一文で「快適人数は80名」と入れておくのが安全です。媒体の文字数に限りがあるときは、最大数の隣に「(快適80名)」と括弧で添えるだけでも、差は伝わります。

公式サイトの表記を変えるときは、写真も合わせて見直します。会場の写真が最大数で組んだ円卓の配置だと、文字で快適人数を書いても、写真は窮屈さを隠します。逆に、快適人数の配置で撮った写真に、最大数の配置の図を別枠で添えると、二人は両方を自分で比べられます。

現場で使うときの注意

快適人数を決めるのは、営業ではなく宴会の現場です。最大数を決めた人と、実際に配膳を回す人は、別の人であることが多いはずです。快適数を決めるときは、配膳の責任者に「この会場で、余興と入退場が無理なく回る人数は何名か」を聞きます。聞く相手が1人だと、その人の経験に偏ります。2〜3人に聞いて、ばらつきがあれば、低いほうに寄せます。

もう1つ、快適人数を超えた二人を断るためのページにはしないことです。「80名を超える場合は受けられません」とは書きません。書くのは、100名まで可能で、その場合に何が変わるか、という事実です。何が変わるかが具体的であるほど、二人は自分の判断で動けます。

まとめ

  • 会場ページの人数は、最大数だけで書くと、予約は増えますが、来館後に窮屈さに気づく二人も増えます
  • 最大数と快適数を併記すると、予約は一部で減りますが、残った二人は制約を知った状態で来ます
  • 予約が20%減るなら成約率が1.25倍、半分減るなら2倍になって初めて元が取れます。この計算は、自分の式場の数字で確かめられます
  • 判断の材料は、最大数と快適数の差、最大付近を希望した二人の成約率、来館時に人数の説明をする頻度の3つです
  • 書き換えるなら、媒体の掲載情報と写真も合わせて整えます。数字と見た目が食い違うと、書き換えの効果は出ません
  • 快適人数は、宴会の現場の複数人に聞いて決めます。営業だけで決めない、が前提です