来館・成約

式場の見学予約の変更連絡には、その場で次の候補日を2つ出す

見学やフェアの予約を入れた二人から、「その日、行けなくなりました」という連絡が来ることがあります。電話でも、LINEでも、予約フォームの変更ボタンでも同じです。

このとき、どう返しているでしょうか。「承知しました。ご都合のよい日が決まりましたら、またお知らせください」と返して終える式場は、少なくないと思います。丁寧で、感じも悪くありません。

僕はこの返し方を、集客の損益として見直す価値があると考えています。理由は、変更の連絡が「来館する気がなくなった連絡」ではなく、「来館するつもりが、まだ残っている連絡」だからです。そのまま二人に日程の宿題を持ち帰ってもらうのと、その場で次の日を2つ出すのとでは、再予約になる組の数が変わります。この記事では、仮の式場で組数を計算して、どんな条件でその場で出したほうが得になるのかを整理します。

先に結論を書きます。

  • 変更連絡は、失注の手前にある連絡で、広告費をかけずに手元に戻ってきた来館見込みです
  • その場で次の候補日を2つ出すと、二人の手間が減ります。再予約を決めるのは、日程の空きより、手間の少なさのほうだと思います
  • 得になるかどうかは、再予約率がどれだけ上がるかと、来館後の成約率の掛け算で決まります。自社の数字で確かめる方法を最後に書きます

変更の連絡は、集客費を払い終えた後に来る

見学予約が1件入るまでに、式場は媒体費や広告費、SNSの運用の時間を払っています。予約が入った時点で、その費用はもう戻りません。

予約日の前に変更の連絡が来た場合、その費用で得た「来てくれそうな二人」が、まだ手元にいます。ここで二人が来なくなってしまうと、費用は成約を生まないまま消えます。広告で新しい二人を連れてくるより、すでに予約まで来た二人をもう一度来館に戻すほうが、1組あたりの追加費用は小さく済むはずです。

変更の連絡を、事務処理として処理するか、集客の最後の関門として扱うか。この違いが、この記事の出発点です。

二人にとっての1〜2週間は、思ったより重い

次に、日程が後ろにずれることの重さを見ます。

リクルートブライダル総研のゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国推計値では、二人が披露宴会場を探し始めるのは挙式の平均9.9か月前、決めるのは平均8.3か月前です。差し引くと、探している期間は平均で1.6か月になります。

1.6か月は、およそ48日です。ここで、見学の予約が2週間後ろにずれたとします。14日は48日の約3割にあたります。二人が会場を探し始めてから決めるまでの全体のうち、3割分の時間が、予約の変更だけで流れてしまう計算です。

もちろん、この平均は決めた人全体の数字です。変更を連絡してきた二人がどの時点にいるのかは、この調査からは分かりません。探し始めたばかりの二人なら、2週間のずれは小さいかもしれません。すでに何軒か見て、決める直前の二人なら、2週間のずれは、他の式場で決まってしまうのに十分な長さです。

分かるのは、探している期間が数か月に及ぶ決め事ではなく、1〜2か月のうちに決まる決め事だということです。その短い期間のなかで、後日に回すことの重さは小さくありません。

「改めてお知らせください」は、宿題を二人に返している

変更の連絡に対して、次の日程を決めずに終える返し方を、仮に「持ち帰り型」と呼びます。持ち帰り型では、二人に次の宿題が残ります。

  • 二人の予定を、もう一度すり合わせる
  • 式場の空きを、サイトか電話で確かめる
  • 予約を、もう一度入れ直す

ただでさえ、二人の都合が合わなかったから変更の連絡が来ています。二人は日程を合わせることが難しい状況にいて、その日程の調整を再度やってください、と返していることになります。優先順位は、他の予定、他の式場の候補、仕事に押されて、後ろに下がります。

一方で、その場で次の日を決める返し方を、「その場提案型」と呼びます。「今回は日程が合わなかったのですね。では、土曜の11時と、日曜の14時なら空いています。どちらかなら合いそうですか」と返します。二人は、選ぶだけで済みます。合わなければ、「どちらも難しいです」と答えるか、別の日を言えばよく、会話が前に進みます。

なぜ候補日は「2つ」なのか

候補日を1つだけ出すと、「その日は合いません」で会話が止まりやすくなります。3つ以上出すと、選ぶ手間が増え、読み上げるのも長くなります。

2つにしておく理由は、二人に「選べる」と「決めやすい」を両方渡せる数だからです。この数に統計の根拠があるわけではなく、僕が置いた目安です。式場の予約枠の空き方や二人の返事の様子で、3つのほうが合う会場もあると思います。大切なのは、数ではなく、二人の返事を「はい」か「いいえ」ではなく「どちらにするか」に変えることです。

候補日の選び方にも、決まりがあります。

  • 1つは、元の予約日に近い日にします(たとえば、元が土曜なら翌週の土曜)。二人の予定の型は、そう変わっていないことが多いからです
  • もう1つは、曜日か時間帯を変えた日にします(土曜の午前が合わなかったなら、日曜の午後など)
  • 人気日の枠は、候補に出さないでおきます。ほかの二人に売れる枠を、変更の再予約に使うと、別の損が出ます(詳しくは、見学の受付が詰まる条件を考えた記事で書いています)

仮の式場で、再予約の組数を計算する

数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。実在の式場の数字ではありません。

  • 月の見学予約:80組
  • そのうち、変更の連絡が来る割合:10%(月8組)
  • 持ち帰り型で、後日に再予約まで進む割合:40%
  • その場提案型で、再予約まで進む割合:70%
  • 再予約した組が来館し、契約に至る割合:30%

持ち帰り型では、月8組のうち3.2組が再予約し、そのうち契約するのは0.96組です。その場提案型では、5.6組が再予約し、契約は1.68組です。差は月に0.72組、年にすると約8.6組になります。

この計算では、再予約率の差(40%と70%)と、来館後の成約率(30%)を仮に置きました。どちらも実際の数字とは限りません。なので、2つの数字を動かして、組数の差がどう変わるかを表にします。年間の契約組数の差(月8組が変更連絡する前提)です。

来館後の成約率 その場提案型の再予約率が50% 60% 70%
20% 年1.9組 年3.8組 年5.8組
30% 年2.9組 年5.8組 年8.6組
40% 年3.8組 年7.7組 年11.5組

持ち帰り型の再予約率は、どの行も40%に固定しています。この表から読めるのは、次の2つです。

1つ目は、再予約率が10ポイント上がるだけでも、年に2〜4組の差になることです。月8組という小さな母数でも、1年で積み重なります。2つ目は、来館後の成約率が高い式場ほど、変更連絡への対応の差が大きく出ることです。成約率が高いということは、来館さえしてくれれば決まる式場だということで、来館前の取りこぼしが一番惜しい式場です。

契約1組あたりの粗利が100万円だと仮定すると、年8.6組の差は、約860万円になります。この金額が大きいか小さいかは、式場ごとに違います。ただ、広告費を増やさずに動かせる差としては、小さくはない額です。

費用はどこにかかるか

その場提案型のコストは、ほとんどが「空き枠の見え方」にあります。

1件の変更連絡に候補日を2つ出すとき、枠を仮に押さえておくのか、押さえずに案内するのかで、運用が変わります。

  • 押さえずに案内する場合:二人が「では日曜の14時で」と返したときに、その枠が他の二人で埋まっている可能性があります。その場合は、お詫びと別の候補を出すことになり、二人の手間が逆に増えます。電話口で空きをリアルタイムに確認できるなら、この心配はありません
  • 仮押さえする場合:二人が選ばなかった側の枠は、空いたままになる可能性があります。仮押さえの期限(たとえば24時間)を決めて、期限が来たら自動で戻す仕組みが要ります

どちらを選ぶかは、予約枠が埋まっている度合いで決まります。平日や、土日でも空きの多い時間帯なら、押さえずに案内して構いません。人気日や人気の時間帯だけは、仮押さえにするのが安全です。

もう1つのコストは、受ける側の対応力です。電話口で候補日を2つ出すには、予約システムの空きをその場で見られることが条件になります。画面を開くのに時間がかかる、担当者しか空きを知らない、という状態だと、「確認してから折り返します」になり、結局、持ち帰り型と同じ展開になります。変更連絡への対応は、予約枠の見える化の問題でもあります。

変更の理由は、聞いても聞かなくてもよい

変更の連絡を受けたときに、理由を聞くかどうかも、迷うところです。僕は、理由は「聞いてもよいが、聞き出さない」を基本にするのがよいと考えています。

  • 「差し支えなければ、理由を教えていただけますか」と聞くと、二人は答えを迷う時間がかかります。電話口で、言いにくいことがある二人もいます
  • 二人のほうから理由を話してくれた場合は、その内容に合わせて対応を変えます

話してくれた内容は、おおむね3つに分けられます。

理由の型 二人の状況 返し方
日程の都合 仕事、家族の予定、体調など。式場への関心は変わっていない 候補日を2つ出して終える
他の式場を先に 別の式場の見学が入った、または別の式場に寄っている 日程を押し付けず、見学で見てほしい点を1つだけ伝えて、候補日を出す
迷い まだ具体的に進めたくない、費用が心配など 見学の目的を軽くして(見学だけ、30分だけなど)候補日を出す

3つめの「迷い」は、変更の連絡では、はっきり言葉に出ないことが多いはずです。「ちょっと予定が合わなくて」とだけ言う二人の中に、迷いが混ざっていることがあります。ここは、断定せず、二人の言葉をそのまま受けて、候補日を出すところから始めるのが無難です。

変更が2回目、3回目のとき

同じ二人から、2回目の変更の連絡が来たときの扱いも決めておきます。

1回目の変更は、日程の都合である可能性が高いです。2回目になると、来館そのものの優先度が下がっている可能性が上がります。3回目になると、その可能性はさらに上がります。

僕のおすすめは、2回目までは同じようにその場で候補日を出し、3回目以降は、候補日を出したうえで「ご都合が難しいようでしたら、こちらでの見学はいったん見送りでも構いません」と、断る選択肢も二人に渡す形にすることです。

追い続けるより、二人に選択肢を渡すほうが、結果的に印象が残ります。断られた場合は、その二人は、見学予約の件数には戻りませんが、「無理に追わなかった式場」として覚えてもらえる余地は残ります。これは僕の推測で、数字では確かめられていません。

連絡の手段ごとに、返し方を整える

変更の連絡は、電話だけとは限りません。手段ごとに、候補日の出し方を決めておきます。

  • 電話:その場で空きを見て、候補日を2つ言います。言い終えたあと、二人の返事を待ちます。電話が終わったら、同じ内容をLINEかメールで文面にして送ります。二人が通話中に日程を書き留められないことが多いからです
  • LINE:候補日を2行で書き、「どちらかなら返信1つでお取りします」と添えます。予約リンクを貼るより、返信1つで済むほうが、二人の手間は小さいです
  • メール:件名に変更を受け付けたことを書き、本文の最初の3行に候補日を入れます
  • 予約フォームの変更ボタン:二人が自分でフォーム上で変更できる場合、変更が完了した直後の画面に、次の候補日の選択肢を表示します。ボタン1つで次の予約まで進める作りにしておけば、人の対応なしでも、再予約を取り逃しません

このなかで、いちばん差が出やすいのは、フォームの変更ボタンだと思います。二人は誰にも連絡せずに変更できる分、取りこぼしも見えにくいからです。月の予約変更の件数を、手段別に分けて数えると、この見えにくい部分が分かります。

自社の数字で測る

ここまでの計算は、すべて仮の数字です。自社の数字を使って確かめる方法を書きます。

月に1回、次の5つを数えます。

  1. 見学・フェアの予約の変更連絡の件数(手段別)
  2. その場で次の予約まで決まった件数
  3. 後日(7日以内・14日以内)に再予約が入った件数
  4. 再予約した組のうち、実際に来館した組の数
  5. 来館後に契約した組の数

1と2の比が、その場提案型の再予約率になります。3は、持ち帰り型になった場合の再予約率です。この2つを並べると、自社のなかでの差が分かります。

数える上で、注意が2つあります。

  • 変更の連絡が来た組は、予約管理システムのなかで、元の予約とは別の行として記録します。元の予約の行を日付だけ書き換えると、変更の連絡が来た事実が残らず、数えられなくなります
  • 3か月分くらいのデータが溜まるまでは、結論を急がないでください。月8組という母数では、1か月の動きは偶然で揺れます

もし、その場提案型にまだ変えていない式場なら、まず3か月、今の対応のままで数字を取ります。次に、その場提案型に切り替えて、3か月、同じ項目を数えます。前後で再予約率がどう動いたかを見て、続けるかどうかを決めます。季節の影響を受けるので、前年の同じ月と比べられるなら、それも見ておくと確かです。

まとめ

  • 見学予約の変更連絡は、すでに集客費を払い終えた二人が、まだ来館するつもりでいる連絡です。失注の手前にあります
  • 二人が会場を探している期間は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国推計値で平均1.6か月です。2週間の後ろ倒しは、その約3割にあたります
  • 「改めてお知らせください」は、日程の宿題を二人に返す対応です。次の候補日を2つ、その場で出すと、二人は選ぶだけで済みます
  • 仮の前提(月8組の変更連絡、再予約率40%と70%、来館後の成約率30%)では、年間の契約組数の差は約8.6組です。成約率が高い式場ほど、この差は大きく出ます
  • コストの中心は、予約枠の空きをその場で見られるかどうかです。人気日の枠は候補に出さず、仮押さえには期限を付けます
  • 変更の理由は、聞き出さずに、二人が話した内容に合わせて返します。3回目の変更では、見送りの選択肢も渡します
  • 自社では、変更連絡の件数、その場で再予約になった件数、7日以内・14日以内の再予約、来館、契約を、3か月分数えて判断します