来館・成約

式場見学の枠は、時間帯ごとの成約率で並べ替える

式場見学の枠は、午前10時、午後1時、午後4時のように、なんとなく決めたまま回している会場が多いと思います。この枠の並びを、いつから見直していないでしょうか。

この記事の結論は、見学の枠は「埋まりやすさ」ではなく「時間帯ごとの成約率」で並べ替える、という一点です。予約が入りやすい枠と、契約につながりやすい枠は、同じとは限りません。ただし、成約率の差が本物かどうかは、数字を出してみないと分かりません。ここを間違えると、効いていた枠をやめて、効かない枠を増やすことになります。

出典のある統計は使いません。以下の数字はすべて、僕が置いた仮の前提です。自分の会場の数字に置き換えて、同じ手順で計算してみてください。

まず、時間帯ごとに「来館数」と「成約数」を並べる

必要な数字は2つだけです。見学の開始時刻の枠ごとに、来館した組数と、そのうち契約に至った組数を数えます。

予約数ではなく、来館数で割ります。予約したのに来なかった組が混ざると、枠ごとの無断欠席の差が成約率に混ざってしまうからです。無断欠席の差は別の問題なので、別に見ます。

仮の式場で、直近6か月の土日の見学を、開始時刻で3つに分けた結果を置きます。

  • 午前10時の枠:来館90組、成約27組(30%)
  • 午後1時の枠:来館120組、成約30組(25%)
  • 午後4時の枠:来館60組、成約9組(15%)

合計は来館270組、成約66組で、全体の成約率は24.4%です。

この表を見ると、すぐに「夕方の枠は成約率が低い。やめて午前と午後に寄せよう」と言いたくなります。僕も最初はそう思います。ただ、ここで一度止まって、2つのことを確かめます。数字の揺れと、枠以外の違いです。

母数が少ない枠の誤差

午後4時の枠は、来館60組で成約9組です。成約率は15%ですが、60組という母数だと、本当の成約率が15%だと言い切ることはできません。

統計の考え方で、成約か不成約かの二択を数えたときの幅を、95%の信頼区間という形で出せます。計算はPythonで行いました。上の仮の数字だと、次のようになります。

  • 午前(27/90組):30.0%、幅は21.5〜40.1%
  • 午後(30/120組):25.0%、幅は18.1〜33.4%
  • 夕方(9/60組):15.0%、幅は8.1〜26.1%

幅が重なっていることに注目してください。午前の下端は21.5%で、午後の下端は18.1%、夕方の上端は26.1%です。夕方の上端26.1%は、午後の中心の25%を超えています。つまり、夕方の本当の成約率が午後と同じ25%前後でも、6か月で9組という結果は、そこまで珍しくありません。

この計算は、枠の優劣を決めるためのものではありません。「いま見ている差が、偶然の揺れで説明できる範囲かどうか」を確かめるためのものです。母数が少ない枠ほど、差は大きく見えます。

目安として、同じ成約率の差でも、来館が60組か180組かで幅はこう変わります。仮に成約率30%のとき、60組なら幅は約20〜42%で、180組なら約24〜37%です。母数が3倍になると、幅は半分近くに縮みます。結論を出すには、母数をためる必要があります。

時間帯と一緒に動く別の違い

幅が重ならないほど差が開いたとします。それでも、その差が「時間帯のせい」とは限りません。夕方の枠に来る組と、午前の枠に来る組が、そもそも別の人たちだからです。

時間帯と一緒に動きやすい違いを、5つ挙げます。どれも仮説であって、自分の会場で当てはまるかは確かめるまで分かりません。

  • 来館のきっかけ(どの媒体で知ったか)。夕方は、特定の媒体経由の組が多いかもしれません
  • 何軒目の見学か。1日に複数の式場を回る組は、後ろの時間帯に入りやすいと考えられます。回る日の最後の1軒だと、時間も気力も限られます
  • 検討の段階。情報収集の初期なのか、契約を決める直前なのか
  • 参加者。二人そろっているか、片方だけか、親が同席しているか
  • 担当者。ベテランが午前に入り、新人が夕方に入る、という配置になっていないか

最後の担当者は、特に見落とされます。枠ごとの成約率の差が、実は担当者ごとの成約率の差だった、ということが起きます。時間帯を直したつもりで、担当者の配置を直していた、という結果になりかねません。

だから、時間帯別の表を作ったら、同じ表を「担当者別」と「来館のきっかけ別」でも作ります。時間帯の差が、ほかの表でも同じ方向に出ているなら、時間帯の影響を疑う価値があります。ほかの表の差のほうが大きいなら、時間帯は原因ではなく、結果的に混ざっているだけです。

夕方の枠を動かしたときの損得

ここからは、枠を動かすと決めたときの損得を、仮の前提で計算します。

前提を置きます。

  • 夕方の枠は6か月で60組が来館し、成約率は15%
  • 夕方の枠をやめても、来ていた組の半分にあたる30組は、午前か午後の枠に移って来館する(残りの30組は、そのまま失う)
  • 移ってきた組の成約率は、移った先の枠の平均(午前30%と午後25%の間を取って27%)ではなく、夕方に来る層のままの15%とする。時間帯を変えただけで、人は変わらないと考えるためです

この前提だと、成約は次のように動きます。

  • いまの夕方の枠:60組×15%=9組
  • 枠を動かした後:30組×15%=4.5組

つまり、夕方の枠をやめると、6か月で成約が約4.5組減ります。成約率が低くても、枠をやめたほうが得だとは限りません。

一方で、移った先の枠で成約率が上がる、という前提を置くとどうなるでしょうか。移った組が午前の枠で話を聞き、成約率が27%になるなら、30組×27%=8.1組で、いまとほぼ同じです。この場合は、夕方の枠をやめても大きくは損をしません。

2つの前提で、結果は4.5組と8.1組に分かれます。この差を決めるのは、「夕方に来る組は、時間帯が変わっても同じ人のままか、それとも午前に来れば別の結果になるか」という一点です。そして、ここは数字を見るだけでは分かりません。

動かす前の小さな試し方

分からないことは、小さく試して確かめます。夕方の枠を、すぐにやめる必要はありません。

試し方を3つ並べます。

  • 夕方の枠の、予約の受付を週に1枠だけ減らす。完全にやめず、減らしても来館がどう動くかを3か月見る
  • 夕方の枠に、ベテランの担当者を意識的に入れて、成約率が変わるかを見る。変われば、時間帯ではなく担当者の差でした
  • 夕方に来る組に、見学の冒頭で「今日は何軒目ですか」と聞いて記録する。何軒目かで成約率を分けて見る

どの試し方でも、見る数字は同じです。来館数、成約数、成約率の3つを、枠ごとに記録し続けます。3か月分でも母数は足りないことが多いので、半年たまってから判断するつもりで始めます。

試す期間中は、枠の構成を変えるのを1つに絞ってください。担当者の配置と枠の数を同時に変えると、どちらが効いたのか分からなくなります。

1枠あたりの成約数と埋まり具合

ここまで成約率の話をしてきましたが、枠の価値は成約率だけでは決まりません。もう1つ、予約の入りやすさがあります。

予約が入りにくい枠は、成約率が高くても、年間の成約数は多くなりません。逆に、予約が詰まる人気の枠は、成約率が低くても、成約数の大半を生んでいることがあります。

見るべきは、1枠あたりの成約数です。上の仮の式場なら、次のとおりです。

  • 午前:開いている枠が仮に1日2枠×26週で52枠、成約27組。1枠あたり約0.52組
  • 午後:同じく52枠、成約30組。1枠あたり約0.58組
  • 夕方:同じく52枠、成約9組。1枠あたり約0.17組

枠の数が同じなら、午後がいちばん多く、夕方は午前や午後の3分の1以下です。ここで夕方の枠に空きが多い(52枠に来館60組で、1枠あたり1組ちょっと)なら、夕方の枠を減らしても、実は来ていた組をほぼ全員、ほかの枠で受けられる可能性があります。逆に、夕方が毎週満席なら、減らした分は失うと考えたほうが安全です。

つまり、枠の埋まり具合が、動かすかどうかの2つ目の判断材料になります。成約率が低くて、枠にも空きがあるなら、動かしても失うものが少ない。成約率が低くても、枠が毎週埋まっているなら、動かすと失う分が大きい。この2つの組み合わせで考えます。

やめる以外の手

成約率の低い枠を見つけたとき、選択肢はやめることだけではありません。

  • 夕方の見学の所要時間を短くして、1日のうちの別の枠と差をなくす
  • 夕方の枠は、見学の内容を「まず雰囲気を見たい人向け」に絞る
  • 夕方の見学を、後日の2回目の来館につなげる前提で設計する

どれも、夕方に来る人の事情に合わせる考え方です。日没が早い冬の夕方は、写真映えのする庭やチャペルの光が見られないという事情もあります。時間帯の違いは、見せられるものの違いでもあります。

枠を並べ替える前に、その枠で何を見せているのかも、確かめてみてください。

まとめ

  • 見学の枠は、予約が入りやすいかどうかではなく、時間帯ごとの成約率でも見る。ただし、来館数で割って出す
  • 母数が少ない枠は、成約率が大きく揺れる。仮の数字だと、60組・15%の枠は、本当の値が8〜26%の幅にある
  • 時間帯の差に見えても、担当者、来館のきっかけ、何軒目か、検討の段階の違いが混ざっていることがある。同じ表を、担当者別と来館のきっかけ別でも作る
  • 成約率が低い枠でも、やめると減る成約がある。仮の前提だと、夕方をやめて半分が移ると、6か月で約4.5組減る
  • 枠を動かすかは、成約率、1枠あたりの成約数、枠の埋まり具合の3つで決める
  • 動かす前に、枠を減らす、担当者を入れ替える、何軒目かを聞くのいずれかを、1つだけ試して3〜6か月記録する
  • 動かさず、枠の中身を変える選択肢もある