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見学で認知経路を1問で終えると、媒体の費用対効果を読み違える

見学の受付で、アンケートに「当式場をどこで知りましたか」という欄を置いている式場は多いと思います。この1問の集計をそのまま媒体費の判断に使うと、評価がいつも同じ媒体に偏ります。最初に目に入った場所を数えているだけで、二人が予約を決めた場所を数えていないからです。

この記事では、認知経路の聞き方を「最初に知った場所」と「予約を決める前に最後に見た場所」の2問に分けると、媒体ごとの1来館あたりの費用がどう動くかを、前提を置いた計算で確かめます。実在の式場のデータではなく、仮の数字を使ったモデルです。ただ、聞き方を変えるだけで順位がひっくり返りうることは、数字を置かなくても仕組みとして言えます。

1問だけの集計が偏る理由

二人が式場を決めるまでには、少なくとも数回は式場の情報に触れます。結婚情報サイトで一覧に出会い、Instagramで雰囲気を見て、公式サイトで料金を確かめ、Googleマップの口コミを読んで、予約フォームに進む。この流れの中で、受付のアンケートが聞いているのは「どこで知りましたか」です。人は聞かれたとおりに、一番古い記憶か、一番印象に残った場所を答えます。

ここで起きる偏りは2つあります。

1つ目は、入口の媒体が過大に数えられることです。結婚情報サイトは、式場の名前を初めて見せる役割が強い媒体です。名前を知った後、二人は公式サイトや口コミで確かめてから予約しますが、「どこで知りましたか」と聞かれると、確かめた場所ではなく、最初の場所を答えます。

2つ目は、確かめる場所が1件も数えられないことです。公式サイト、Googleマップ、口コミのように、知った後に見に行く場所は、認知経路の欄では「その他」か「インターネット」にまとめられがちです。選択肢に出てこなければ、数字にも出てきません。

結果として、集計表では入口の媒体が強く見えて、確かめる場所への投資が弱く見えます。公式サイトの写真を撮り直す、口コミ返信を続ける、といった費用は、効果が数字に出ないので予算から削られやすくなります。

2問に分けた聞き方

聞き方は単純です。見学の受付アンケート、または予約フォームの最後に、次の2問を置きます。

  • 問1:この式場を、最初に知ったのはどこですか
  • 問2:見学の予約を決める直前に、最後に見たのはどこですか

どちらも選択肢を作ります。選択肢は、式場の側の都合で分けず、二人が実際に開く場所の名前で並べます。結婚情報サイト、Instagram、公式サイト、Googleマップ・口コミ、友人・家族の紹介、検索で見つけた他の記事、その他、くらいが現実的です。問1と問2で同じ選択肢を使うと、集計表が横に並べやすくなります。

ポイントは問2の言い方です。「決め手は何ですか」と聞くと、料理や立地、スタッフの対応といった式場の中身を答えてしまいます。ここで知りたいのは、予約ボタンを押す直前に二人が見ていた画面です。なので「どこで」と場所を聞きます。中身の決め手を聞く設問は別に作ります。

複数回答にするかどうかは迷いどころです。問1は1つだけ、問2も1つだけにします。複数回答を許すと、全部に丸がついて差が消えます。選ぶのが難しいという二人は、一番近いものを1つ選んでもらえば足ります。厳密さより、毎月同じ聞き方で続けられることのほうが大事です。

仮の数字で順位が変わる様子

ここから、前提を置いたモデル計算です。実在の式場の数字ではありません。

前提は次のとおりです。

  • 1か月の来館は60組
  • 結婚情報サイトの掲載費は月60万円
  • Instagramの運用費(人件費込み)は月20万円
  • 問1の回答は、結婚情報サイト30組、Instagram 15組、検索10組、紹介5組
  • 問2の回答は、結婚情報サイト14組、Instagram 4組、公式サイト24組、Googleマップ・口コミ12組、紹介6組

問1だけで割ると、1来館あたりの費用はこうなります。

  • 結婚情報サイト:60万円 ÷ 30組 = 2.0万円
  • Instagram:20万円 ÷ 15組 = 約1.3万円

この集計だと、Instagramのほうが効率が良く、結婚情報サイトは高く見えます。

次に問2で割ります。

  • 結婚情報サイト:60万円 ÷ 14組 = 約4.3万円
  • Instagram:20万円 ÷ 4組 = 5.0万円

順位が入れ替わります。Instagramは、最初に知ってもらう場所としては働いているのに、予約の直前に見られる場所にはなっていません。二人はInstagramで式場を知った後、公式サイトやGoogleマップに移って予約を決めている、という動きが数字に出ています。

どちらの数字が正しいかという話ではありません。問1の数字は、その媒体が入口として何組を連れてきたかを表します。問2の数字は、その媒体が予約の直前まで残っていたかを表します。2つを並べて初めて、各媒体の役割が見えます。上の仮の数字なら、Instagramは入口で、結婚情報サイトは入口と最後の両方に顔を出していて、公式サイトとGoogleマップは最後の場面を受け持っています。

媒体費の判断に使うときの見方

2問の結果は、1つの合計に混ぜず、役割で読みます。

入口として強い媒体(問1が多く、問2が少ない)は、削る前に、次の受け皿があるかを見ます。Instagramで知った二人が公式サイトに来たとき、料金や実例が見つからなければ、入口の投資が無駄になります。この場合に動かすのは、媒体の費用ではなく、受け皿のページです。

最後に残る媒体(問2が多い)は、そこが整っていないと予約まで届きません。公式サイトの問2が多いのに、フォームの項目が多い、スマホで読みにくい、といった問題があれば、広告費を足すより先に、そこを直します。

両方に出る媒体は、費用対効果が一番読みやすい媒体です。問1で割った費用と問2で割った費用の間が、その媒体の実際の1来館あたり費用の幅だと考えられます。上の例だと、結婚情報サイトは2.0万円から4.3万円の幅です。1つの数字で語らず、幅で持っておくと、掲載費の更新交渉でも冷静に判断できます。

注意したいのは、問2の「公式サイト」や「Googleマップ」を、費用がかかっていない場所と読み間違えることです。公式サイトの運営費、写真の撮影費、口コミ返信にかける人の時間は、費用です。問2で多く出た場所ほど、そこへの投資は削ってはいけない側に入ります。

結果を見たあとの動かし方

数字が出たら、次の順で動かします。順番を逆にすると、費用だけを動かして終わります。

最初に見るのは、問1と問2の差が大きい媒体です。上の仮の数字では、Instagramが問1で15組、問2で4組と開いています。差が大きい媒体は、二人が入口で出会ったあと、別の場所へ移っています。移った先の公式サイトやGoogleマップに、Instagramで見た雰囲気と同じ写真や言葉があるかを、実際に二人の立場で開いて確かめます。

次に見るのは、問2で多いのに問1で少ない場所です。仮の数字だと、公式サイトが問1ゼロ、問2で24組、Googleマップ・口コミが12組です。この2か所は、見つけてもらう場所ではなく、確かめてもらう場所です。ここで離脱が起きると、他の媒体に払った費用がすべて無駄になります。フォームの項目数、料金の見え方、口コミへの返信の速さを、月に一度は見直す価値があります。

最後に、媒体費を動かします。結婚情報サイトのように問1も問2も多い媒体は、掲載プランを下げる実験をしても、来館が何組減るかを2問の数字で追えます。減らす前に、問1と問2の組数を3か月分控えておけば、下げたあとの変化を同じ物差しで比べられます。

続けるための運用

この2問は、集めるのに手間がかかると続きません。続けるための工夫を3つ挙げます。

1つ目は、聞く場所を1か所に決めることです。予約フォームの最後に置くと、全員が答えます。受付のアンケートに置くと、見学当日に回答が集まります。両方で聞くと答えが食い違うので、片方に統一します。僕は予約フォームの最後に置くほうを勧めます。予約を決める直前の記憶が、いちばん新しいからです。

2つ目は、選択肢を半年は変えないことです。選択肢を月ごとに変えると、月の比較ができなくなります。新しい媒体を使い始めたときだけ、選択肢を足します。

3つ目は、集計の単位を月に揃えて、3か月分を見ることです。1か月の来館が60組だと、回答が1組ずれるだけで1.7ポイント動きます。単月の数字で媒体を止めると、ただの揺れに反応することになります。3か月分を足して、問1と問2の割合を出してから判断します。

自由記入欄は作らなくて構いません。選択肢で足りない場合は「その他」を置き、その他が1割を超えたら、中身を見て選択肢に足します。

2問でもわからないこと

この方法にも限界があります。

まず、回答は二人の記憶です。最後に見た場所を正確に覚えている人ばかりではありません。精度を追うより、傾向が毎月同じ聞き方で比べられることに価値があります。

次に、問2の「最後に見た場所」は、予約を決めた理由ではありません。公式サイトが多く出ても、公式サイトが決め手とは限らず、他の場所で関心を持った二人が、予約の前に確認しただけの場合があります。それでも、確認に使われる場所が整っていなければ予約が止まる、という事実は変わりません。

最後に、2問で費用を割ると、紹介のように費用がかからない経路は計算から外れます。紹介の数は、費用の効率ではなく、組数として別に見ます。

まとめ

  • 認知経路を1問で聞くと、最初に目に入った媒体だけが評価され、予約の直前に見られた場所は数字に出ません
  • 「最初に知った場所」と「予約を決める前に最後に見た場所」の2問に分けると、媒体ごとの役割が見えます
  • 仮の数字では、1問目で割るとInstagramが1.3万円、結婚情報サイトが2.0万円で、2問目で割ると5.0万円と4.3万円になり、順位が入れ替わりました
  • 入口として強い媒体は、削る前に受け皿のページがあるかを見ます
  • 最後に残る場所(公式サイトやGoogleマップ)の運営費は、効果が数字に出にくくても削りません
  • 両方に出る媒体の費用は、1つの数字でなく幅で持ちます
  • 聞く場所は予約フォームの最後に1か所、選択肢は半年変えず、判断は3か月分で行います