集客

式場の問い合わせ数は、媒体ごとの通知でなく二人の組数で数える

結婚情報サイトの管理画面、公式サイトの予約フォーム、LINE。式場の問い合わせ数を月末にまとめるとき、これらの件数をそのまま足していないでしょうか。

僕は、足した数は「問い合わせの数」ではなく「通知の数」だと考えています。二人は、式場を1か所から探すわけではありません。サイトで見つけた式場を公式サイトでも見て、LINEで日程を聞き直す。そういう動き方をする二人は、1組なのに3件の通知を残します。通知を数えるかぎり、集客コストは実際より安く見えます。

この記事では、通知と組の違いが集客コストにどれだけ響くかを、仮の数字を置いたモデルで計算します。そのうえで、同じ二人を1組にまとめる名寄せの手順と、まとめたあとに媒体費をどう割るかを整理します。出典のある統計は使いません。数字はすべて、手順を見るための想定です。自分の会場の実数に置き換えて使ってください。

通知100件は、何組なのか

まず、想定する会場を決めます。1か月に届く問い合わせの通知が、次のとおりだったとします。

  • 結婚情報サイトA:38件
  • 結婚情報サイトB:25件
  • 公式サイトの予約フォーム:25件
  • LINE:12件

合計は100件です。媒体費は、Aが月30万円、Bが月15万円とします。公式サイトとLINEには、ここでは広告費をかけていないものとします。

管理画面どおりに割ると、Aの1件あたりの費用は約7,900円、Bは6,000円です。全体では45万円を100件で割って4,500円になります。

ここで、通知を二人の名前と連絡先で突き合わせたところ、100件が70組だったとします。内訳は次のとおりです。

  • 1つの窓口だけから来た二人:45組(通知45件)
  • 2つの窓口から来た二人:20組(通知40件)
  • 3つの窓口から来た二人:5組(通知15件)

45+40+15で通知は100件、組は70組です。この割合は、僕が置いた想定です。実際の会場では、もっと重なりが小さいこともあれば、大きいこともあります。大事なのは、重なりがゼロの会場はまず無い、という点です。

組数で割り直すと、全体の集客コストは45万円÷70組で約6,430円になります。通知で数えた4,500円と比べて、約43%高い数字です。同じ45万円を使って、獲得できたのは100組ではなく70組だった、ということです。

重なりが生まれる仕組み

なぜ同じ二人が複数の窓口に通知を残すのか。仕組みで考えると、避けられないものだと分かります。

1つ目は、媒体が「入口」と「比較の場」を兼ねていることです。二人はサイトで式場を知り、その場で資料請求やフェア予約をします。その後、公式サイトで料金や雰囲気を確かめ直し、日程の相談はLINEで済ませる。窓口ごとに果たす役割が違うので、一人の二人が複数の窓口を使うのは自然な動きです。

2つ目は、二人のうちどちらが連絡するかが窓口で変わることです。新婦がサイトで予約し、新郎が公式サイトのフォームから同じフェアを予約し直す。式場側から見ると2件ですが、来る人は同じ二人です。

3つ目は、確認のための再送です。予約確認のメールが届かない気がして、別の窓口からもう一度送る。電話で聞いたあとに、念のためフォームも送る。これは、返信が遅い会場ほど増えます。

つまり、重なりは二人の落ち度ではなく、窓口を複数持つ会場が必ず抱える構造です。窓口を増やすほど、通知の数は組の数から離れていきます。

重なりが広告費の判断を狂わせる3つの場面

通知で数えることの害は、全体のコストが安く見えることだけではありません。判断を3つ狂わせます。

1. 媒体ごとの優劣が、入れ替わりかねない

媒体Aと媒体Bのどちらに費用を寄せるかは、1件あたりの費用で決める会場が多いと思います。ところが、通知は窓口ごとに重なり方が違います。

先ほどの想定で、媒体ごとの費用を3通りの割り方で計算してみます。

  • 管理画面どおり(通知で割る):A=約7,900円、B=6,000円
  • 最初に接触した窓口に1組を丸ごと帰属させる:A=約8,300円、B=約8,300円
  • 重なった窓口に1組を等分する(2窓口なら0.5ずつ):A=約10,650円、B=約8,490円

管理画面ではBが約1,900円安く見えましたが、最初の接触に帰属させると同額になります。Aは、サイトでの最初の接触が多いので、組で数え直すと費用が実態に近づきます。Bは、Aで知った二人が比較のために触れる場になっていた、と読めます。

ここで言いたいのは「どれが正しい割り方か」ではありません。どの割り方でも、通知で割った数字よりも1組あたりの費用は上がります。そして、割り方によってAとBの差が1,900円にも、ゼロにも見えます。差が割り方で動くなら、その差だけを理由に費用の配分を変えるのは危ない、ということです。

2. 公式サイトとLINEの成果が、実際より大きく見える

広告費をかけていない窓口は、費用がゼロなので、どれだけ通知が来ても「安い」と見えます。しかし、想定では公式サイトの25件のうち、サイトAやBにも通知を残した二人が14組と、半分以上を占めています。公式サイトが二人を呼んだのではなく、媒体で知った二人の確認先になっているだけです。

この見え方のまま「公式サイトは費用ゼロで25件も取れる。媒体費を減らして公式サイトに寄せよう」と決めると、媒体で知ってもらう入口が細り、公式サイトへの通知も一緒に減ります。

3. 追客の人手が、二重に使われる

同じ二人に、各窓口の担当が別々に返信すると、二人には似た連絡が3通届きます。返信の速さで選ばれる場面では、これは逆効果になりえます。名寄せは、集計のためだけでなく、返信を1本にするためにも必要です。

名寄せは、4つのキーで機械的に始める

同じ二人を1組にまとめる作業を「名寄せ」と呼びます。大げさな仕組みは要りません。月に100件前後なら、表計算ソフトで足ります。

照合に使うキーは、強いものから順に4つです。

  1. 電話番号:ハイフンの有無をそろえれば、最も強いキーです。携帯番号が一致すれば、ほぼ同じ人です
  2. メールアドレス:一致すれば同じ人です。ただし、二人が別々のアドレスで送ると一致しません
  3. 氏名のよみ:同姓の二人はいるので、単独では使わず、下の4と組み合わせます
  4. 希望の来館日や挙式時期:氏名のよみが一致して、希望時期も近ければ、同じ二人と見てよいでしょう

新郎が連絡した件と新婦が連絡した件は、電話番号もメールも別になります。ここは、氏名のよみの姓が同じで、希望時期が近く、問い合わせの日も近い、という3点がそろったものを候補に挙げて、人が見て判断します。自動で全部つなごうとしないでください。つなぎ間違いは、別々の二人を1組に数えてしまい、逆の誤差を生みます。

作業の流れは次のとおりです。

  • 月初に、前月の通知を窓口ごとの一覧から1枚の表にまとめる
  • 電話番号の列で並べ替えて、同じ番号の行に同じ組の番号を振る
  • 残った行をメールアドレスで同じように並べ替える
  • 氏名のよみと希望時期で、候補を人の目で拾う
  • 組ごとに「最初に触れた窓口」と「予約の入口になった窓口」を1行ずつ書く

最後の1行が、次の割り方の材料になります。窓口の名前と日付だけが入っていれば、あとから割り方を変えても、数え直せます。

重なった組の媒体費は、どう割るか

名寄せしたあと、媒体費を割る方法は主に3つあります。どれにも長所と短所があります。

最初に触れた窓口に丸ごと帰属させる方法。 「どこで知ってもらえたか」を測れます。短所は、最初の接触を覚えていない二人の記録が、通知の日付に頼ることです。通知は、知った日ではなく、動いた日の記録だからです。

予約の入口に帰属させる方法。 「どこが予約を決めたか」を測れます。短所は、公式サイトやLINEに成果が寄りすぎて、媒体が過小に見えることです。

重なった窓口で等分する方法。 どの窓口にも手がかりを残せます。短所は、数字が割り切れず、会議で説明しにくいことです。

僕のおすすめは、最初の接触を主に、予約の入口を補助に、2つの数字を並べて見ることです。1つの数字で媒体の優劣を決めるのではなく、2つのどちらでも順位が変わらないときだけ、費用の配分を動かします。順位が割り方で入れ替わるときは、差が出るほどの根拠がまだ無い、と受け止めて、判断を一段先に送ります。

この考え方なら、先ほどの想定でAとBの差は「最初の接触ではゼロ、等分では約2,160円」になります。片方の割り方で差が消える以上、媒体Bに寄せる根拠として弱いと分かります。

名寄せの結果は、次の3つの数字に戻す

名寄せは、一度やって終わりではありません。毎月、次の3つの数字に戻して見ます。

  1. 通知数と組数の比:想定では100件に対して70組、比は約1.43です。この比が月ごとに大きく動くなら、窓口の導線や返信の速さが変わった可能性があります
  2. 窓口をまたいだ組の割合:想定では25組、全体の約36%です。この割合が高いほど、窓口ごとの成果の読み方が割れやすい会場です
  3. 全体の1組あたりの費用:45万円÷70組の約6,430円です。窓口ごとの比較より、まず会場全体の費用が上がっていないかを確かめます

窓口ごとの割り方に迷う月でも、全体の1組あたりの費用は1つに決まります。媒体の配分を議論する前に、この数字を土台に置いておくと、議論が割り方の話に流れにくくなります。

名寄せを始める前に確かめること

最後に、始める前の確認を3つ挙げます。

  • 個人情報の扱い:名寄せは、電話番号やメールを別の窓口の記録と突き合わせる作業です。取得時に示した利用目的の範囲に入っているかを、運用ルールで確かめてください。集計後は、組の番号と窓口名だけを残し、連絡先の列は消しておく運用が安全です
  • 件数が少ない月は割り算しない:月の通知が20件を切るような会場では、1組の増減で比率が大きく動きます。3か月分まとめて見るほうが落ち着きます
  • 成約までつなげる:組の番号を成約の管理表にも引き継ぐと、「最初の接触の窓口別の成約率」まで見られます。ここまで来ると、1組あたりの集客費用ではなく、1成約あたりの費用で媒体を比べられます

まとめ

  • 管理画面の問い合わせ数は「通知の数」で、同じ二人が複数の窓口に残した分だけ、組の数より多くなります
  • 仮に100件が70組なら、全体の集客コストは約4,500円ではなく約6,430円。通知で数えると、実際より約3割安く見えます
  • 窓口ごとの割り方は、通知で割る・最初の接触・予約の入口・等分で数字が変わります。割り方で順位が入れ替わるときは、その差で費用を動かさないほうが安全です
  • 名寄せは、電話番号、メール、氏名のよみ+希望時期の順で照合します。自動でつなぎ切らず、候補は人が見て決めます
  • 毎月見る数字は、通知と組の比、窓口をまたいだ組の割合、全体の1組あたりの費用の3つです