集客

式場の媒体費は、予約数でなく来館数で割ると順位が変わる

結婚式場の媒体費を比べるとき、いちばん手に入りやすい数字は「見学予約1件あたりいくらか」です。媒体の管理画面に予約数が出るので、媒体費をそれで割れば、1分で順位がつきます。

ただ、この割り算には抜けがあります。予約と来館は別のものだからです。予約が入っても来ない二人がいて、その割合は媒体によって違います。分母を予約数にすると、来ない二人が多い媒体ほど、実際より良く見えます。

この記事では、仮に置いた数字で計算しながら、分母を来館数に替えると順位がどう動くかを見ます。出典のある調査の数字は使いません。数字はすべて、仕組みを見るための想定です。

予約数で割ると、何が見えなくなるか

媒体費は、見学の予約が入った時点で使い切られています。掲載料にしても広告費にしても、二人が実際に来るかどうかで金額は変わりません。ところが、売上につながるのは来館した二人だけです。来なかった二人は、接客もできず、見積もりも出せず、成約の可能性がありません。

つまり、媒体費の「使い道」は予約ではなく、来館を作ることです。予約はその途中の通過点にすぎません。途中の数字で割ると、途中で消える二人の分が、見えない形で混ざります。

では、なぜ媒体によって来館率が違うのか。仕組みとして考えられる理由は、いくつかあります。

  • 予約の取りやすさが違う。ボタン1つで予約できる媒体は、思いつきで押す二人が増えて、欠席も増える
  • 予約から来館までの日数が違う。2週間先の予約と、翌週末の予約では、予定が変わる確率が違う
  • 特典の付き方が違う。来館しなくても特典の予約だけ取れる形だと、特典目当ての予約が混ざる
  • 比較の途中か、決める直前かが違う。情報収集の入口で予約した二人は、他の式場を見たあとに行かなくなることがある

どれが効いているかは、式場によっても媒体によっても違います。だから「この媒体は欠席が多い」と決めつける必要はありません。自社の数字で、媒体ごとに来館率を出せば足ります。

仮置きの数字で計算する

ここから、想定の数字で計算します。実在の式場の数字ではありません。

ある式場が、月に2つの媒体を使っているとします。

  • 媒体A:月の掲載費30万円、見学予約が30件
  • 媒体B:月の掲載費24万円、見学予約が30件

予約数で割ると、1件あたりの費用は次のとおりです。

  • 媒体A:30万円 ÷ 30件 = 1万円
  • 媒体B:24万円 ÷ 30件 = 8,000円

この比べ方だと、Bのほうが2,000円安く、効率がよい媒体に見えます。掲載費の更新を考えるときに、Aを減らしてBを増やそうという話になりやすい状況です。

ここで、予約した二人が実際に来館した割合が、Aは80%、Bは50%だったとします。

  • 媒体A:30件 × 80% = 24組が来館
  • 媒体B:30件 × 50% = 15組が来館

来館1組あたりの費用に直します。

  • 媒体A:30万円 ÷ 24組 = 12,500円
  • 媒体B:24万円 ÷ 15組 = 16,000円

順位が逆になりました。予約1件あたりではBが安かったのに、来館1組あたりではAのほうが3,500円安くなります。

成約まで進めると、差はさらに開く

来館のあとの成約率が両方とも30%だとすると、成約数は次のようになります。

  • 媒体A:24組 × 30% = 7.2組
  • 媒体B:15組 × 30% = 4.5組

成約1組あたりの媒体費は、Aが約4万1,700円、Bが5万3,300円です。予約1件あたりで比べたときの「Bのほうが2割安い」という印象は、成約まで進めると「Bのほうが3割近く高い」に変わっています。

もちろん、成約率が媒体で同じとは限りません。Bから来た二人のほうが、検討が進んでいて成約率が高い、という可能性もあります。たとえばBの成約率が40%なら、成約は6組で、1組あたりの媒体費は4万円。Aの約4万1,700円とほぼ並びます。

ここで大事なのは、どちらが勝つかではありません。予約数で割った順位は、来館率と成約率の差が入っていない順位だということです。入っていない差が大きければ、順位は簡単に入れ替わります。

どこまで測れば足りるか

分母を成約数まで進めるのが理想ですが、成約は月に数組しか出ない式場も多く、媒体ごとに割ると件数が少なすぎて、月ごとにぶれます。そこで、段階に分けて考えるのが現実的です。

段階 分母 件数の多さ 向いている用途
予約 見学予約数 多い 日々の増減を見る
来館 来館した組数 中くらい 媒体費の配分を見直す
成約 契約した組数 少ない 半年から1年単位で更新を決める

おすすめは、来館を、月ごとの配分判断の分母にすることです。予約よりは売上に近く、成約よりは件数が出ます。成約は、半年や1年の単位でまとめて、掲載の更新や撤退を決めるときに使います。

媒体別に来館数を数える手順

媒体別の来館数を数えるのは、意外と手間がかかります。理由は、予約と来館が別の帳簿に載っているからです。予約は媒体の管理画面やメール、来館は受付や接客の記録に残ります。この2つを同じ二人でつなげる作業が必要です。

最低限の手順は、次の4つです。

  1. 見学予約を受けた時点で、どの媒体から来たかを予約台帳に1列で記録する
  2. 来館した日に、予約台帳の同じ行に「来館」と書く
  3. 来なかった二人には「欠席」と書き、連絡がついたかも残す
  4. 月末に、媒体ごとに予約数、来館数、来館率を集計する

台帳の列は増やしすぎないほうが続きます。媒体、予約日、来館予定日、来館したか、の4列があれば、来館率は出せます。

注意したいのは、電話やLINEで入った予約の媒体が不明になることです。媒体を見て電話をかけてきた二人は、予約台帳に「電話」と書かれ、元の媒体が消えます。受けた時点で「どちらで見つけていただきましたか」と一言聞くだけで、かなり拾えます。聞いても答えない二人もいるので、不明は不明として別の行に残し、無理に媒体へ割り振らないほうが、数字として正直です。

来館率の差が大きいときに見直すこと

媒体Bのように、来館率が低い媒体が見つかったとき、すぐに掲載をやめる必要はありません。先に確かめたいのは、欠席の理由です。

  • 予約から来館までの日数が長すぎないか。長いなら、近い日付の枠を前に出す
  • 前日や数日前に、リマインドを送っているか。送っていないなら、そこで来館率が動くことがある
  • 特典が来館と結びついているか。来館しなくても受け取れる形なら、条件を直す
  • 予約の入力が簡単すぎないか。簡単すぎる導線は、本気度の低い予約も呼ぶ

直せる点を直したあとで、もう一度2〜3か月分を測ります。それでも来館率が上がらず、成約まで進んだ数字でも見合わないなら、配分を減らす判断になります。

反対に、予約単価が高く見える媒体に、来館率が高い二人が来ているなら、見かけの高さは見直しどころです。予約数だけを見て減らしてしまうと、成約につながっている媒体を削ることになります。

来館率が10ポイント動くと、何が変わるか

来館率の改善が、金額でどれくらいの意味を持つかも計算しておきます。先ほどの媒体Bで、リマインドの工夫などにより、来館率が50%から60%に上がったとします。予約は同じ30件のままです。

  • 来館は15組から18組に増える
  • 来館1組あたりの媒体費は、16,000円から約13,300円に下がる
  • 成約率が30%のままなら、成約は4.5組から5.4組に増える

媒体費は1円も変わっていません。変わったのは、予約した二人が来る割合だけです。掲載費を値切る交渉や、媒体の入れ替えより、予約から来館までの間を整えるほうが、少ない手間で効くことがあります。予約数で割っているうちは、この改善は数字に出ません。予約は30件のままだからです。

件数が少ないときは、月ごとに判定しない

最後に、件数が少ない式場の注意点です。媒体別に見ると、1か月の予約が数件、来館が数組という媒体は珍しくありません。来館率80%と50%の差も、月に5件の予約なら、1組来たか来なかったかで逆転します。

こういうときは、月ごとに順位をつけず、3か月から6か月を合算して見ます。合算しても予約が20件に届かない媒体は、来館率の差を語れる件数ではありません。その場合は、来館率の高低を決めつけず、「まだ判断できない」と台帳に残して、次の期間まで同じ条件で続けます。判断できないものを、無理に判断しないことも、数字の使い方のひとつです。

予約の数字を捨てる必要はない

ここまで読むと、予約数を見る意味がないように聞こえるかもしれません。そうではありません。予約数は、媒体に出した広告や写真を変えた直後に、反応が動いたかを見るには、いちばん早く出る数字です。広告の文面や1枚目の写真を替えて、翌週の予約数が動いたかを見る、という使い方には向いています。

使い分けは次のとおりです。

  • 短い期間の反応を見るとき:予約数
  • 媒体費の配分を決めるとき:来館数
  • 掲載の更新や撤退を決めるとき:成約数(半年以上でまとめる)

同じ媒体の中での改善は予約で見て、媒体と媒体を比べるときは来館以降で見る。分母を目的ごとに替えれば、判断は安定します。

まとめ

  • 媒体費を見学予約数で割ると、予約しても来ない二人が多い媒体ほど、実際より効率よく見える
  • 想定の計算では、予約1件あたりで安かった媒体が、来館1組あたりでは高くなり、順位が入れ替わった
  • 順位が入れ替わるのは、来館率と成約率の差が、予約数で割った数字に入っていないから
  • 媒体費の配分は来館数、掲載の更新や撤退は成約数(半年以上)、広告や写真の改善は予約数、と分母を使い分ける
  • 来館数を媒体別に出すには、予約台帳に媒体、予約日、来館予定日、来館したか、の4列を持ち、受けた時点で媒体を一言聞く
  • 来館率が低い媒体は、すぐ切らずに、予約から来館までの日数・リマインド・特典の条件・予約の入力の簡単さを先に見直す
  • 件数が少ない媒体は月ごとに順位をつけず、3〜6か月を合算して見る。20件に届かなければ「まだ判断できない」と残す
  • この記事の数字はすべて仮置き。自社の来館率は、自社の台帳で数える