来館・成約

式場の見学で受付が詰まる条件|同時刻の組数と対応時間で決まる

土曜の10時。フェアの開始時刻です。エントランスに二人組が次々と着きます。受付にはスタッフが1人。名前を確認して、アンケートを渡して、ウェルカムドリンクの席を案内します。3組目の二人が、カウンターの前で立ったまま待っています。

この場面を、現場は「ちょっと混んでいた」で済ませます。でも二人にとっては、その式場との最初の対面です。見学の最初の5分を、立って待つことから始めさせている。それがこの記事の出発点です。

結論から言います。受付で待たせるかどうかは、スタッフの手際や愛想より先に、2つの数字で決まります。同じ時刻に何組が着くか。1組の受付に何分かかるか。この2つを掛け合わせると、待ちが出る条件は計算で出せます。しかも、その条件を外す手は、増員だけではありません。

この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査の数字は1つも使っていません。到着時刻の分布も、受付にかかる時間も、自分の会場で測った数字に置き換えて読んでください。計算は乱数を使ったシミュレーションで、条件ごとに4,000回の開始時刻を回した平均です。

待ちは「平均の混み具合」では出ない

受付の混雑を考えるとき、よくあるのは「1日に来るのは何組か」から入る考え方です。1日に8組なら、1組あたり受付に3分かけても合計24分。1日の中では、余裕があるように見えます。

でも待ちは、1日の合計では起きません。起きるのは、到着が重なった15分間です。フェアや見学の枠は、開始時刻が決まっています。10時開始と案内した枠なら、二人は9時45分から10時に着くように家を出ます。到着が、開始時刻の直前に寄ります。

ここで、仮の前提を置きます。

  • 開始時刻の15分前から、開始の5分後までの20分間に、二人が一様にばらけて着く
  • 受付は1か所で、1組の受付にかかる時間は平均3分(最短で約2分、最長で約4分のばらつき)
  • 同じ時刻の枠に着く組数を、4組、6組、8組、10組と変えて見る

受付スタッフが1人の場合、組数ごとの待ちは次のようになりました。

同じ枠の組数 平均の待ち 10組中1組が待つ長さ(上位10%) 5分より長く待つ組の割合
4組 0.8分 3.0分 約2%
6組 1.9分 5.1分 約10%
8組 3.6分 8.0分 約31%
10組 5.8分 11.9分 約53%

4組なら、待ちはほぼ出ません。6組で、5分を超える待ちが10組に1組。8組では3組に1組。10組では、2組に1組が5分より長く待ちます。

ここで注目したいのは、平均の待ちが「1.9分」「3.6分」という小さな数字に見えるところです。平均は小さくても、後ろに着いた組は平均よりずっと長く待っています。待たされるのは、いつも一部の組です。現場の感覚が「ちょっと混んでいた」で止まるのは、平均で見ているからです。

1組あたりの受付時間が5分になると、組数の余裕が消える

次に、受付にかける時間を変えます。同じ6組でも、1組の受付が3分か5分かで、結果は大きく変わります。

条件(スタッフ1人、6組) 平均の待ち 上位10%の待ち 5分より長く待つ組の割合
1組の受付が1分 0.2分 0.7分 0%
1組の受付が3分 1.9分 5.1分 約10%
1組の受付が5分 5.8分 12.5分 約52%

受付が3分から5分に伸びると、5分を超える待ちは10組に1組から、2組に1組に変わります。たった2分の差です。

この2分は、現場では簡単に生まれます。名前を聞いて、アンケートを書いてもらって、「今日はどちらでお知りになりましたか」と一言添えて、ドリンクのメニューを渡して、席を案内する。ひとつひとつは親切な行為です。でも全部を受付カウンターの前でやると、1組の受付は5分に近づきます。

逆に、受付を1分にできると、10組が同じ枠に着いても待ちはほとんど出ません。10組・1分のとき、平均の待ちは0.4分、上位10%でも1.2分です。受付カウンターで確認するのは「予約の名前」と「席」だけにして、アンケートは席で書いてもらう。それだけで、受付の容量は大きく変わります。

増員は効くが、最初の一手ではない

受付が詰まるなら人を増やす。当たり前の答えに見えますが、数字で見ると、確かに効きます。

条件(受付1組3分) 平均の待ち 上位10%の待ち 5分より長く待つ組の割合
8組・スタッフ1人 3.6分 8.0分 約31%
8組・スタッフ2人 0.4分 1.6分 約0.1%
10組・スタッフ1人 5.8分 11.9分 約53%
10組・スタッフ2人 0.7分 2.4分 約0.6%

2人にすれば、10組でも待ちはほぼ消えます。増員の効果は大きい。

それでも増員を最初の一手にしない理由は、受付に立つ人は、その時間にほかの仕事をしていないからです。フェアの開始直前は、会場の最終確認、料理の確認、案内役の配置が重なる時間帯です。受付にもう1人を立てるということは、その15分間、別の担当を受付に取られるということです。人を足せない式場ほど、先に打つ手が要ります。

先に打つ手は、2つあります。到着をばらけさせることと、1組の受付を短くすることです。

手1:到着をばらけさせる

同じ枠に着く組が10組なら、待ちが出ます。では枠を分けたらどうなるか。同じ10組でも、5組ずつ2つの枠に分ければ、計算上は、5組の枠が2回あるのと同じになります。

同じ前提で5組の枠をシミュレーションすると、5分を超える待ちの割合は約5%でした。10組の約53%と比べて、数字が一桁変わります。

枠を分ける方法は、いくつかあります。

  • フェアの開始を10時と10時30分の2枠にし、予約のときに選んでもらう
  • 同じ開始時刻でも、受付は「9時45分から」と案内して、到着の目安を10時の前に寄せすぎない
  • 10組目以降は、次の枠に回す(定員の設定)

3つ目の定員は、すでに別の記事で扱った「定員を超えて受けるか」の話とつながります。ここで言いたいのは、定員は会場の広さや料理の数だけで決めるものではなく、受付で待たせない組数という見方もある、ということです。

一方で、枠を細かく分けると、二人の側には選びにくさが出ます。予約サイトの枠が多すぎると、迷います。分ける数は2つか3つで十分です。

手2:1組の受付を1分にする

もうひとつは、受付カウンターでやることを減らす手です。1組の受付を1分にできると、先の表のとおり、スタッフ1人でも10組を受けられます。

受付でやることを、「その場で必須のもの」と「あとでもよいもの」に分けます。

その場で必須のものは、二人の名前の確認と、席の案内です。これは受付でしかできません。

あとでもよいものは、アンケートの記入、飲み物の注文、パンフレットの説明、紹介経路の聞き取りです。どれも、席に着いてからで足ります。

具体的には、次の形にします。

  • 事前に予約の完了メールで、二人の名前と「受付では名前だけお伝えください」と書いておく
  • 予約者のリストを手元に置いて、二人が名乗る前に「〇〇様ですね」と声をかける。名前が分かっていれば、確認は一言で終わる
  • アンケートは、席に着いてから案内役が渡す。受付では渡さない
  • 飲み物の注文は、席で案内役が聞く

こうすると、受付のカウンターは、名前の確認と席の案内だけの場所になります。二人は受付で足を止めず、そのまま席に向かえます。

事前に名前を呼ぶ形は、リストを見て顔と名前を一致させる必要があるので、予約者が多いと難しくなります。そのときは、アンケートや名前の書かれた紙を事前にウェルカムボードに貼って、二人が自分で見つけて席に向かう形に変えます。受付が呼ぶ形ではなく、二人が自分で動く形です。

待たせないことの値打ちを、数字にしない理由

ここまで読むと、「待ちが何分で成約率はいくら下がるのか」を知りたくなると思います。僕は、この数字を置きません。

理由は、待ちと成約の関係を測った調査を、僕が確認できていないからです。「受付で5分待たせた二人の成約率は、待たせなかった二人より何%低い」という数字を仮に置くことはできますが、その数字を入れた損益は、仮の数字を重ねるだけの計算になります。結論が置いた数字で決まってしまうので、やりません。

代わりに、自分の会場で測れる数字を示します。測るのは2つです。

1つ目は、受付に着いてから、最初の案内が始まるまでの時間です。1週間分、フェアの日の分だけ、受付が到着の時刻と案内開始の時刻をメモします。1組ごとにメモするのが大変なら、開始時刻の前後15分に着いた組だけで十分です。

2つ目は、同じ枠の組数です。予約リストから、枠ごとの予約組数を出します。

この2つがあれば、先の表と自分の会場を並べて、5分を超える待ちがどれだけ出ているかが分かります。5分を超える組が1割を切っていれば、手を打つ優先度は低い。3割を超えていれば、手を打つ価値があります。

そのうえで、待たされた二人が成約しなかったかどうかは、見学後の追客のデータと並べて見られます。待たされた組と待たされなかった組を、後から同じ表で見比べる。その結果は、自分の会場の数字として、いちばん信用できます。

受付の混雑は、最初の5分の印象に直結する

見学の最初の5分は、二人が式場に抱く印象の大部分を占める、と言いたいわけではありません。そうは言い切れません。ただ、最初の接点で何が起きるかは、その日の見学全体の空気を決めます。

受付で5分立って待った二人は、案内が始まったとき、すでに5分を使っています。その日のほかの会場の予定があれば、時間はなおさら気になります。案内役が最初に謝ることから話を始めると、会場の説明に入る前に、貸しを作った状態になります。

待たせないことは、説明の質を上げる手ではなく、説明を邪魔しない手です。その意味で、効果は「成約率が上がる」より「下がる要因を1つ消す」に近い。だから優先度は、自分の会場の数字で決めます。

受付の設計を見直す順番

最後に、見直しの順番を並べます。

  1. 枠ごとの予約組数と、受付から案内開始までの時間を、1週間分測る
  2. 5分を超える待ちが1割を超えるなら、受付カウンターでやることを「名前と席」に絞って、1組の受付を短くする
  3. それでも足りなければ、フェアの開始時刻を2つに分けて、到着をばらけさせる
  4. 最後に、人を足す。足す人がいない日は、受付の係を案内役が兼ねず、受付専任を1人決めておく

人を足すのは、最後です。先の2つで、1組の受付と到着の集中を和らげれば、増員の必要がそもそも出ないことが多いからです。

まとめ

  • 受付の待ちは、1日の組数ではなく、同じ時刻に着く組数と、1組の受付時間で決まる
  • 仮の前提(到着が20分に散る、受付3分、スタッフ1人)では、同じ枠が4組なら待ちはほぼ出ず、6組で5分超の待ちが約10%、8組で約31%、10組で約53%になる
  • 受付を3分から5分に伸ばすと、6組でも5分超の待ちが約10%から約52%に増える。受付を1分にできれば、10組でも待ちはほぼ消える
  • 増員は効くが、開始前の15分は別の準備と重なる。先に打つのは、到着をばらけさせる手と、受付でやることを名前と席に絞る手
  • 受付で渡すアンケートや飲み物の注文は、席に着いてからに回す
  • 待ちと成約率の関係は、確認できる調査がないので数字を置かない。自分の会場で、受付から案内開始までを1週間測り、5分を超える組の割合で優先度を決める