ブライダルフェアの開催日を増やす損益は、日程が合わず逃した組の数で決まる
フェアの開催日を増やすかどうか。会議でこの話が出ると、たいてい最初に出てくるのは「スタッフが足りない」「試食の原価がかさむ」という声です。経費の話から入るのは自然なのですが、僕はそこから入ると判断を外しやすいと思っています。
この記事の結論は1つです。開催日を増やす損益は、1回あたりの経費では決まりません。決めるのは、今の日程が合わなくて逃している組が、開催日を増やすと何組減るかです。逃している組が減らないなら、何回増やしても経費が増えるだけです。減るなら、経費はたいてい取り返せます。
仮の式場で計算して、その線がどこにあるかを見ていきます。この記事の数字は、特記がない限りすべて僕が置いた前提で、実在の式場や調査の数字ではありません。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。
日程が合わない二人は、断りの連絡も残さず消える
フェアの予約ページを開いた二人が、希望の日に空きを見つけられなかったとき、何が起きるでしょうか。
「満席です」と電話で断られた、という形ならまだ記録が残ります。ところが今は、予約ページで日付を眺めて、合う日がなければそのまま閉じる二人がほとんどです。式場には何も届きません。問い合わせにも予約の失敗にもならず、ただ来なかった二人になります。
だから開催日を増やす話は、いつも感覚で語られます。「週末は埋まっているから増やしても無駄」と言う人もいれば、「平日夜にやれば取れるはず」と言う人もいます。どちらも根拠は、見えている予約の埋まり具合だけです。見えていない二人の数を誰も数えていないので、議論が噛み合いません。
見えているのは、予約が入った組の数だけです。逃した組は、定義上どこにも載っていません。そこで次の計算では、逃した組の割合を「取りこぼし率」と呼んで、変数として置きます。
仮の式場で、月の開催日を変えて計算する
前提を置きます。
- 月に「来館を検討する」二人が80組いる。式場の名前を知って、フェアに行ってもいいと考えている二人です
- 開催日が月4回(週1)のとき、そのうち30%は日程が合わず来ない。80組の30%にあたる24組が来られず、56組が来る
- 来館した二人のうち25%が成約する。この率は開催日の数に関係なく同じとする
- 成約1組あたりの粗利は100万円とする
- 開催1日の固定費は6万円とする(準備、片付け、当日のスタッフの追加稼働の合計)
- 来館1組あたりの変動費は7,000円とする(試食の原価など)
開催日を増やすと、日程の選択肢が増えるので取りこぼし率は下がります。ただし、下がり方は徐々に鈍ります。ここでは月4回で30%、6回で22%、8回で15%、12回で10%と置きました。この下がり方そのものが仮定です。あとで、この仮定が外れたらどうなるかを見ます。
| 月の開催回数 | 取りこぼし率 | 来館 | 成約 | 開催コスト | 成約粗利−コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 4回 | 30% | 56.0組 | 14.0組 | 63.2万円 | 1,336.8万円 |
| 6回 | 22% | 62.4組 | 15.6組 | 79.7万円 | 1,480.3万円 |
| 8回 | 15% | 68.0組 | 17.0組 | 95.6万円 | 1,604.4万円 |
| 12回 | 10% | 72.0組 | 18.0組 | 122.4万円 | 1,677.6万円 |
最後の列は、成約の粗利からその月の開催コストを引いたものです。回数を増やすほど増えています。ただ、増え方は小さくなっていきます。
増やした分だけで見ると、どこで頭打ちになるか
全体の合計より、「1段階増やしたときに増えた分」のほうが判断に使えます。
- 4回から6回:来館が6.4組、成約が1.6組増える。コストは16.5万円増えるが、成約の粗利は160万円増えるので、差し引きで約143万円のプラス
- 6回から8回:来館が5.6組、成約が1.4組増える。コストは15.9万円増え、差し引きで約124万円のプラス
- 8回から12回:来館が4.0組、成約が1.0組増える。コストは26.8万円増え、差し引きで約73万円のプラス
3つともプラスです。この前提では、12回まで増やしても損はしません。ただ、1回増やすごとに効く量は減っています。4回から6回では1回増やすたびに約72万円ずつ増えていたのが、8回から12回では1回あたり約18万円です。
ここで見てほしいのは、プラスの大きさより、コストの側が小さいことです。成約1組の粗利が100万円あると、開催コストの16万円や27万円は誤差に近い大きさです。だから僕は、フェアの開催日を増やす損益は、コストの精度を上げて議論するより、取りこぼし率の見積もりを議論したほうがいいと考えています。
取りこぼし率が下がらなかったら、同じ計算が逆転する
次に、仮定を外します。開催日を月4回から8回に増やしたのに、取りこぼし率が30%のまま変わらなかったとします。つまり、日程の問題で逃していたのではなく、別の理由で来ていなかった場合です。たとえば、そもそも式場の名前を知った二人の関心が薄かった、料金の見え方で候補から外れていた、といった場合です。
このとき来館は56組のままです。開催コストは8回×6万円+56組×7,000円で約87.2万円になり、月4回の63.2万円から24万円増えます。成約は14組のままなので、粗利は増えず、月に24万円の損です。
逆に、損益がちょうど0になる線も計算できます。月4回から8回に増やすと、固定費だけで24万円増えます。増えた来館者の変動費も含めると、成約が約0.33組増えれば取り返せます。成約率25%なので、来館が月に約1.3組増えれば足ります。
つまり、月4回から8回に増やすなら、取りこぼしがほんの少し、月1組か2組分減るだけでも元が取れます。逆に、その1組か2組も増えないなら、増やすべきではありません。計算の入口は、こういう形になります。
- 増やす回数ぶんの固定費を出す
- 成約1組の粗利で割って、必要な追加成約数を出す
- 成約率で割って、必要な追加来館数にする
この追加来館数が「月に1〜2組」なら、あまり慎重になる必要はありません。「月に10組」なら、慎重になる理由があります。
固定費が小さいか大きいかは、人件費の形で変わる
仮定の中で、会場ごとに一番ぶれるのが固定費です。ここは2つの型に分かれると思っています。
1つ目は、スタッフがもともと出勤している日に、フェアを重ねる型です。婚礼のない平日や、挙式の合間の時間帯に開く場合です。このとき人件費は、フェアをやってもやらなくても発生しています。増えるのは準備と片付けの手間くらいで、固定費は上の6万円より小さくなります。この型なら、開催日を増やす損益はほぼ取りこぼし率だけで決まります。
2つ目は、フェアのために追加のシフトを組む型です。パートを呼ぶ、休みのプランナーに出てもらう、といった場合です。このとき固定費は6万円より大きくなります。時給と人数で、数万円から10万円を超えることもあります。この型では、さきほどの「必要な追加来館数」が増えるので、増やす回数は絞ったほうがいいと思います。
どちらの型かは、会場の勤怠表を見ればすぐ分かります。見るのは、フェアを増やしたい曜日と時間帯に、プランナーと配膳が何人すでに出ているかです。追加の人件費がほぼ発生しないなら、1つ目の型です。
1回あたりの来館組数が少なすぎるときの注意
開催日を増やすと、1回あたりの来館組数は減ります。上の表だと、月4回のとき1回14組、8回で8.5組、12回で6.0組です。
この数が減ること自体は悪いことではありません。1組あたりに時間を使えるので、接客の質はむしろ上がります。ただ、1回に1組か2組しか来ない日が出てくると、固定費の回収が遅れ、スタッフも「今日は誰も来ない」という空気になります。
僕は、1回あたりの平均が5組を切りそうなら、増やし方を変えたほうがいいと考えています。たとえば、開催日を増やす代わりに、同じ日の時間帯を分ける方法があります。午前と午後の2回に分ければ、日程の選択肢は増えます。同時に、人は同じ日に集まるので、準備と片付けは1回分で済みます。固定費を増やさずに取りこぼしを減らす方法です。
取りこぼし率は、予約ページの動きから推定できる
ここまでの話は、取りこぼし率が分からないと使えません。ただ、まったく測れないわけではありません。次の3つを見れば、おおよその大きさが分かります。
1. 予約ページの日付選択画面で、予約完了まで進まなかった割合
アクセス解析で、予約ページの日付選択画面を見た人のうち、予約完了まで進んだ人の割合を見ます。予約ツールによっては、日付を選んだところから完了までの離脱率が出ます。この離脱が高く、かつ離脱した人が見た日付が「満席」ばかりなら、日程の問題を疑えます。
2. 満席になっている日の割合
向こう2か月の開催日のうち、定員まで埋まっている日が何割あるかを数えます。これが7割以上なら、日程が合わない二人はかなりいると考えるのが自然です。逆に、半分以上の開催日に空きが残っているなら、開催日を増やしても取りこぼしは減りません。空きがあるのに予約が入らない理由は、日程ではなく別のところにあります。
3. 予約フォームに「希望の日がない場合」の入力欄を足す
予約ページの最後に「ご希望の日がなかった方はこちら」と書いて、希望の曜日と時間帯を選べる小さなフォームを置きます。数週間おくと、どの曜日のどの時間帯の希望がどれだけあるかが分かります。逃している二人の数を、直接数える方法です。入力してくれるのは一部の二人だけなので、数字は少なめに出ます。でも「平日夜の希望が週に3件ある」と分かれば、議論は一気に具体的になります。
3つのうち、まず2番目の「満席の割合」は、今日すぐ数えられます。
試してから決める:1か月だけ増やして、来館の増え方を見る
計算で決まらないときは、期間を区切って増やしてみるのが一番確実です。
たとえば、月4回の会場が1か月だけ、平日夜を2回足して月6回にします。そのうえで、前年や前の月に比べて、来館が何組増えたかを見ます。さきほどの線だと、月4回から6回なら、来館が月に半組ほど増えれば元が取れます。それ以上増えれば、続ける理由になります。
見るときの注意が1つあります。増えた来館が、追加した日のものか、もともと来るはずだった二人が日を移っただけか、を分けて見ることです。新しい日に来た二人が、過去に問い合わせや資料請求の履歴を持っていたなら、日程を動かしただけの可能性が高いです。この場合、来館は増えていません。履歴のない新規の二人が何組いたかを数えるのが、一番ごまかしのきかない見方です。
まとめ
- ブライダルフェアの開催日を増やす損益は、1回あたりの経費ではなく、日程が合わず逃している組の数で決まります
- 逃した二人は記録に残らないので、感覚で議論になりやすいです。取りこぼし率を変数として置いて計算します
- 仮の式場(月80組が検討、成約1組の粗利100万円)では、月4回から8回に増やすと、取りこぼし率が30%から15%に下がる前提で月に約268万円増えます。下がらなければ月に約24万円の損です
- 月4回から8回なら、来館が月に約1.3組増えれば元が取れます。必要な追加来館数を先に出すと、慎重になる範囲が分かります
- 固定費は、スタッフがもともと出勤している日に重ねるか、追加シフトを組むかで大きく変わります
- 1回あたりの来館が5組を切りそうなら、日を増やす代わりに、同じ日の時間帯を分ける手があります
- 取りこぼし率は、満席の日の割合、予約ページの離脱、「希望の日がない方」のフォームで推定できます
- 迷うときは、1か月だけ増やして、履歴のない新規の来館が何組増えたかを見ます
