来館・成約

式場のオンライン見学は、来館が難しい二人にだけ前面に出す

「オンライン見学を始めれば、遠くの二人も取りこぼさずに済むのではないか」。そう考えて、予約ページにオンライン見学の枠を置く式場が増えました。

結論から書きます。オンライン見学は、来館を置き換えるものとして使うと成約が減ります。来館が難しい二人を、来館まで連れてくる前座として使うと、増えることがあります。分かれ目は、オンライン見学を受けた二人のうち何割が実際に来館するか。僕が置いた前提だと、その線は14%でした。

この記事の数字は、出典のある統計ではありません。オンライン見学の実施率も、来館率も、成約率も、会場ごとに大きく違うからです。僕が置いた前提を先に並べるので、自社の数字に入れ替えて読んでください。

前提を先に置きます

次の前提は、すべて仮置きです。実在の会場の実績ではありません。

  • 来館が難しい二人(遠方、仕事の都合、小さな子どもがいる、など)からの月間問い合わせは40組
  • この40組に来館だけを案内すると、20%が来館の予約まで進む。来館した組の成約率は35%
  • 40組にオンライン見学を案内すると、全員が受けるわけではないが、受けた組のうち30%が来館に進む。オンラインを経由して来館した組は、条件がかなり絞れているので成約率は50%
  • オンライン見学1回の担当者の拘束は45分

数字の置き方は、現場の感覚に合わせて変えて構いません。大事なのは、オンライン見学を挟むと「来館に進む率」と「来館後の成約率」の2つが別々に動く、という構造のほうです。

来館だけを案内した場合とオンラインを挟んだ場合

来館だけを案内した場合の成約は、40組 × 20% × 35% で、月に2.8組です。

オンラインを挟んだ場合は、40組 × 30% × 50% で、月に6組になります。差は3.2組。1組あたりの粗利を仮に120万円と置けば、月に約380万円の差です。担当者の拘束は、40回 × 45分で月に30時間。1か月に30時間で3組分の成約が増えるなら、割に合う計算です。

ただし、この計算は「来館に進む率が30%」という前提に支えられています。ここを動かすと、結論がすぐ変わります。

元が取れる来館率の線は14%

オンライン経由の成約が、来館だけを案内した場合と同じ2.8組になる来館率を逆算します。

2.8組 ÷ 40組 ÷ 50% で、14%です。オンライン見学を受けた二人のうち、14%が来館すれば、来館だけの案内と同じ成約数になります。それより上なら増え、下なら減ります。

つまり、オンライン見学を始めるかどうかは、「やるか、やらないか」で決める話ではありません。始めた後で、オンライン見学を受けた組の何割が来館したかを数えて、14%の線と比べる話です。逆に言うと、数えていない式場は、始めて半年たっても、効いているのか足を引っ張っているのか分かりません。

数え方は簡単です。予約管理の表に「オンライン見学の実施日」の列を1つ足し、その二人が後日来館したかを同じ行に残します。月に1回、実施した組数と来館した組数を割り算するだけです。

来館できる二人にまで勧めると、食い合いが起きる

もう一つの落とし穴が、オンライン見学を、来館できる二人にまで勧めてしまうことです。

別の前提を置きます。近隣に住んでいて来館できる二人からの問い合わせが月100組。来館だけを案内すると60%が来館の予約に進み、成約率は35%なので、月に21組が成約します。

この100組のうち、一部がオンライン見学に流れたとします。流れた組は、さきほどと同じく来館率30%、来館後の成約率50%で、成約は1組あたり0.15。来館だけの場合の1組あたり0.21より低くなります。

流れる割合を変えて計算すると、こうなります。

  • 10%が流れる:月の成約は21組から20.4組へ
  • 20%が流れる:19.8組へ
  • 30%が流れる:19.2組へ

オンライン見学を気軽にしたせいで、来館できたはずの二人が「まずオンラインで」と選ぶと、30%が流れた場合に月1.8組、粗利にして200万円以上が消える計算です。来館が難しい二人には増やす道具だった同じ仕組みが、来館できる二人には減らす道具になります。

この食い合いが起きる理由は、オンライン見学が来館より軽いからです。移動も服装も要らず、断りやすい。軽いぶん、そこで気が済んでしまい、来館まで進まない二人が一定数出ます。

予約ページで出し分ける

食い合いを避けるには、オンライン見学を全員に見せない設計にします。

来館の枠を先に見せ、オンラインは「来館が難しい方へ」と書く

予約ページの最初に出すのは、来館の見学予約です。オンライン見学は、その下に「遠方などで来館が難しい方はこちら」と条件を添えて置きます。条件が書いてあるだけで、来館できる二人は自分には関係ないと判断して、来館の枠へ進みます。

予約フォームで居住地か来館の見込みを聞く

条件を書いても、軽いほうを選ぶ人はいます。フォームに「会場までのおよその所要時間」を選択式で入れておくと、近隣の二人にはオンライン見学の案内を出さず、来館の候補日だけを返信できます。聞く項目が1つ増えると、予約フォームの完了率は下がり得ますが、その代わりに食い合いは防げます。

オンライン見学の終わりに、来館の候補日を出す

オンライン見学を、最後まで説明して終わりにしません。終わる直前に、来館の候補日を2つ出します。来館に進む率を決めるのは、オンラインの内容より、終わり際に次の約束を取れたかどうかです。ここで次の約束を取れない運用だと、14%の線を割りやすくなります。

候補日の出し方は、見学の変更連絡で次の候補日を2つ出す方法と同じ考え方です。「いつでも来てください」と言うより、具体的な2日を出したほうが、二人は選びやすくなります。

オンラインで見せるものと、来館まで取っておくものを分ける

オンラインで会場のすべてを見せ切ると、来館の理由が消えます。写真や動画で伝わるもの(会場の広さ、導線、光の入り方)はオンラインで見せ、来館でしか分からないもの(料理の試食、実際の距離感、スタッフの雰囲気)は来館の理由として残します。「試食はご来館のときにご用意しています」と一言添えるだけで、来館の理由が1つ立ちます。

45分の使い方を決めておく

月30時間という拘束は、計算上は小さく見えても、現場では見学の予約枠と取り合いになります。オンライン見学の枠は、来館の見学が入りにくい曜日や時間帯(平日の夜、来館の予約が少ない曜日)に寄せておくと、来館の枠を食わずに済みます。二人の側も、仕事のあとの平日夜なら画面越しに参加しやすいはずです。

当日の45分は、次の配分で組むと、話が会場の紹介だけで終わりません。

  • 最初の10分:二人の希望を聞く。人数、時期、気になっていることを先に出してもらう
  • 次の20分:希望に合わせて会場を見せる。全部を見せず、聞いた希望に近いところから
  • 次の10分:来館でしか分からないことを伝える。試食、広さの体感、当日の動線
  • 最後の5分:来館の候補日を2つ出す

先に希望を聞くのは、来館につなげるためでもあります。どんな二人か分かっていれば、来館の案内に「お話にあった親御さんの席の距離は、実際に歩くとこの感じです」のように、具体的な理由を添えられます。

親が来られない二人は、親の同席を勧める

来館が難しい理由の一つは、親が遠方に住んでいることです。この場合、二人だけでオンライン見学を受けても、あとで親に説明しきれず、話が止まりやすくなります。予約の時点で「ご家族も同じ画面で参加できます」と書いておき、親が遠方の二人には、親も同席する日程を勧めるほうがよいと思います。親が画面越しにでも会場を見て、担当者と話した経験があれば、来館のときに親が来られなくても、判断を任せてもらえる可能性が上がります。

判断の分かれ目

ここまでを、始める前の判断に直すと、次の3つになります。

  1. 来館が難しい二人が、月にどれくらい問い合わせてくるか。ほとんどいない式場なら、始めても使われず、担当者の時間が減るだけです
  2. オンライン見学を受けた二人の来館率を、数え続けられるか。数えない運用なら、始めないほうが安全です
  3. 近隣の二人にまで、オンライン見学が見えていないか。見えているなら、先に予約ページの見せ方を直します

3つのうち1つでも「いいえ」なら、オンライン見学は後回しにして、来館の予約導線の改善に時間を使ったほうが、成約は増えます。

オンライン見学を断る二人にも、理由を一言だけ聞いておくと材料になります。「やはり実際に見たい」「日程が合わない」「家族が反対している」のどれが多いかで、直す場所が変わります。見たいが多ければ来館の案内を、日程が多ければ枠の曜日と時間帯を見直します。

検証が終わったら、見直す

最初の3か月は、試験期間として扱うのがよいと思います。オンライン見学の実施数、来館に進んだ数、その後の成約数を毎月書き出し、14%(自社の前提で計算し直した線)を超えているかを見ます。超えていなければ、終わり際の次の約束の取り方を直します。それでも超えなければ、オンライン見学は、来館が難しい二人への限定的な案内にとどめます。

まとめ

  • オンライン見学は、来館の代わりにすると成約が減り、来館の前座にすると増えることがある
  • 仮置きのモデルでは、オンライン見学を受けた二人の14%が来館すれば、来館だけの案内と同じ成約数になる。自社の数字で線を計算し直す
  • 来館できる二人にまで勧めると、軽いほうに流れて成約が減る。流れる割合が30%なら、月1.8組が消える計算
  • 予約ページでは来館の枠を先に見せ、オンラインは「来館が難しい方へ」と条件を添える。フォームで所要時間を聞くと出し分けやすい
  • オンライン見学の終わりに、来館の候補日を2つ出す。次の約束を取れたかどうかが、来館率を決める
  • 始める前に、来館が難しい二人の数、来館率を数え続けられるか、近隣の二人に見えていないかを確かめる