式場の見学に二人が遅れたら、何分まで待つか|組み直しの線の引き方
見学の予約時刻を5分過ぎても、二人が来ない。10分過ぎても来ない。受付から「まだお見えになりません」と声がかかったとき、担当者は何分まで待つでしょうか。
この線引きを決めている式場は、あまり多くないと思います。担当者が次に何も入っていなければ30分でも待つし、次の予約が詰まっていれば10分で「今日は難しいかもしれません」と電話をかける。同じ式場なのに、遅れた二人の受けた対応が、その日の担当者の都合で変わっています。
僕は、これを集客の問題として扱う価値があると考えています。遅れてくる二人は、広告費も媒体費もすでにかかった、来館の直前にいる二人だからです。待ちすぎれば次の予約の二人を待たせ、早く切りすぎれば、来る気があった二人を失います。この記事では、仮の式場で数字を置き、待つ時間の線を何で決めるかを整理します。なお、数字はすべて僕が置いた前提で、実在の式場の数字ではありません。出典になる調査も、見つけられていません。
先に結論を書きます。
- 待つ時間の線は、二人の遅れの長さではなく、次の予約までの余白で決めます
- 線を超えたら、「今日はお断り」ではなく、見学を縮めるか、組み直すかを二人に選んでもらいます
- 決めた線は、予約の確認連絡の時点で二人に伝えておきます。遅れそうな二人が、早めに連絡してくれるようになります
遅れは「来ない連絡」ではなく、まだ来る途中の二人
予約の時刻に来ない二人には、いくつかの型があります。
- 道に迷っている、駐車場が分からない、電車が遅れている。来る気はあり、連絡できていないだけ
- 出発が遅れた。連絡が入るかもしれないが、まだ入っていない
- 来ない。理由を連絡するつもりがない
3つ目は、無断欠席です。これは別の問題で、リマインドの設計や、連絡をもらうための文面の話になります。この記事で扱うのは、1つ目と2つ目、つまり「来るつもりで、遅れている二人」です。
見分けるのは難しいですが、見学の予約を入れた時点で、二人は式場に時間を使うと決めています。予約時刻の数分から十数分の遅れは、来る気がなくなった合図というより、移動の事情であることのほうが多いはずです(これは僕の推測で、数字では確かめていません)。
だからこそ、遅れた二人への対応は、集客の最後の数メートルです。ここで「お待ちしていましたが、次の方がいらっしゃるので」と切ると、せっかく来る途中だった二人が、そのまま別の式場の記憶に残ります。
待つ時間は、次の予約までの余白で決める
待つ時間を「15分まで」のように固定する式場もあります。分かりやすい反面、実際の運営とは合いません。見学の予約は、次の枠までの間隔が日によって違うからです。
1日のうちの見学枠を、仮に次のように置きます。
- 1組あたりの見学枠:90分
- 枠と枠の間に置く片づけの余白:15分(テーブルの片づけ、資料の入れ替え、担当者の休憩)
- 同じ時間帯の見学は、1組ずつ受ける(同時刻の組数は1)
このとき、10時開始の枠に二人が20分遅れたとします。見学が11時30分に終わる予定だったところ、11時50分になります。余白の15分を使い切っても、次の12時の枠には、5分足りません。この5分が、次の二人の待ち時間になります。
つまり、待てる時間の上限は、次の予約までの余白です。この仮の式場では、余白は15分なので、15分遅れまでは、見学を縮めずに受けても、次の予約には影響しません。15分を超えたら、見学を縮めるか、次の枠を動かすか、組み直すかのどれかを選ぶことになります。
逆に、次の枠が空いている日は、30分の遅れでも通常どおり受けられます。平日の昼など、前後が空いている時間帯なら、待つ線をもっと長く取れます。
線は3段にしておく
線を1本だけ引くと、超えた瞬間に「全部断る」という極端な対応になりがちです。そこで、僕は3段にすることをおすすめします。
| 遅れの目安 | 状況 | 対応 |
|---|---|---|
| 余白の範囲内 | 次の予約に影響しない | 通常どおり受ける。到着時に遅れを責めず、すぐ見学に入る |
| 余白を超え、次の枠まで30分以内 | 通常の見学だと、次の二人に影響が出る | 見学を縮める。ただし、二人の見たい場所を先に聞く |
| それ以上 | 縮めても次の枠に入り込む | 当日の見学を断り、その場で次の候補日を2つ出す |
目安の分は、式場の運営に合わせて置き換えてください。大切なのは、どの段階にいるのかを、担当者が自分の判断だけでなく、あらかじめ決めた表を見て言えることです。
表があると、担当者の気持ちが楽になります。二人に断るとき、「申し訳ありません、次の予約が入っておりまして」と、式場側の理由を説明しやすくなるからです。表がなければ、二人の遅れに対して、担当者が責める空気を出してしまうことがあります。
縮めるなら、二人の見たい場所を先に聞く
2段目の「見学を縮める」には、コツがあります。90分の見学を60分に縮めるとき、順路の後ろを切るのではなく、二人の関心に合わせて残す場所を決めます。
二人が着いたら、まず次の一言を言います。
「お待ちしていました。今日は少し時間が短くなってしまいますが、いちばん見たいのはどこですか」
二人が「披露宴会場と、料理です」と答えたなら、会場と試食を先に見て、残りの時間で、挙式会場を見る。二人が「全体の雰囲気が知りたい」と答えたなら、会場を順に回って、細かい説明は省く。
縮めるときにやってはいけないのは、順路の後半を黙って省略することです。二人は後半に何があったのかを知らないまま帰ります。のちに、他の式場で「あそこは見せてもらえなかった」という比較が起きる可能性があります。省略する場所があるなら、「こちらは時間の都合で、今日は飛ばします。写真をお渡しします」と一言添えます。
見学の順路を二人の関心に近い順で組む考え方は、すでにこのメディアで別の記事に書いています。遅れてきた二人に対しては、その組み方を、時間が短い場合に応用するイメージです。
組み直すときは、その場で次の日を出す
3段目で当日の見学を断る場合、断って終わりにしないことが肝心です。
「今日は難しいので、また改めて」と言うと、二人は日程の宿題を持ち帰ります。ここは、遅れた二人が、もう一度予約を入れ直すという手間を負うところです。手間が増えるほど、再予約は取りにくくなります。
そのため、断るのと同時に、次の候補日を2つ出します。「今日は次のご予約の関係で、十分な時間がご用意できません。明日の11時と、今度の土曜の14時でしたら、ゆっくりご案内できます。どちらかでいかがでしょうか」。
遅れの理由が電車の遅延や渋滞のように、二人のせいではない場合は、申し訳なさをこちらから先に言います。「お気をつけてお越しください。着いたらお声がけください」と、到着前の電話のうちに、二人の安全を優先する言葉を入れておくと、印象が残ります。
組み直しの候補日の出し方は、変更連絡の考え方と同じです。人気日の枠を再予約に使わないこと、仮押さえには期限を付けることも、同じ前提で運用できます。
遅れの連絡を、早く出してもらうために
線を引いても、二人から連絡が来なければ、線は使えません。遅れそうなときに、早めに電話をもらう仕組みが要ります。
予約の確認連絡(前日のリマインドなど)に、次の一文を入れておきます。
「当日、お時間に遅れそうな場合は、お手数ですが、こちらの番号まで一報をお願いします。15分程度の遅れでしたら、そのままご案内できます」
この一文の効果は2つあります。
1つ目は、遅れそうな二人が、連絡してよいのだと分かることです。連絡しないのは、怒られると思っている場合があるからです。「15分まででしたら大丈夫です」という上限を先に示すと、連絡の心理的な壁が下がります。
2つ目は、式場が線を二人に先に伝えられることです。線を超えそうなときは、二人も「見学が短くなるかもしれない」と覚悟できます。到着してから初めて「時間が短くなります」と言われるより、納得してもらいやすくなります。
電話番号は、当日の見学に出ている担当者の携帯ではなく、受付が取れる番号にします。見学中の担当者は、電話に出られないからです。電話が取れない問題は、別の記事でも書いているので、そちらも参考にしてください。
仮の式場で、待ちすぎの損を計算する
待つ線を決めていない式場では、どれくらいの損が出るのか。仮の前提で計算します。
- 月の見学:80組
- 遅れて到着する組の割合:10%(月8組)
- そのうち、次の予約に影響が出るほど遅れる組:4組
- 線がないとき、次の予約の二人が15分以上待たされる割合:その4組の全部(4組の次の二人、月4組)
- 待たされた二人の成約率が、待たされなかった場合より下がる幅:5ポイント(30%から25%)
最後の5ポイントは、根拠のある数字ではありません。僕が置いた仮の値です。この前提で計算すると、月4組が待たされ、成約は1.2組から1.0組に減ります。月に0.2組、年に2.4組の差です。契約1組の粗利を仮に100万円とすると、年240万円の違いになります。
この計算を、他の数字でも見てみます。待たされた二人の成約率の下がり幅を動かします。
| 待たされた二人の成約率の下がり幅 | 月の成約の減り | 年の成約の減り |
|---|---|---|
| 2ポイント | 0.08組 | 約1.0組 |
| 5ポイント | 0.2組 | 約2.4組 |
| 10ポイント | 0.4組 | 約4.8組 |
下がり幅が実際にいくつなのかは、僕には分かりません。ただ、待たされた二人の側から見れば、式場の最初の印象が、待ち時間の長さで決まる可能性は、小さくないと思います。
反対側にも損があります。早く切りすぎたときの損です。遅れた4組のうち、2組が当日の見学を断られ、そのうち再予約まで進むのが半分とします。取りこぼすのは月1組、成約率30%で、月0.3組、年3.6組です。
つまり、待ちすぎても、切りすぎても損が出ます。どちらも、仮の前提のもとでは同じくらいの大きさです。線を3段にして、縮める段を挟む意味は、ここにあります。待つか切るかの二択ではなく、縮めるという中間を作ると、両方の損を小さくできます。
自社の数字で測る
ここまでの数字は、仮の置き方です。自社で確かめるときは、次の項目を3か月分、数えてください。
- 遅れて到着した組の数(予約時刻から5分以上)
- 遅れの長さの分布(5〜15分、15〜30分、30分超)
- 遅れが次の予約の開始に影響した回数
- 遅れた組の対応の内訳(通常どおり・縮めた・組み直した)
- それぞれの対応の、契約までの組数
数えるときの注意が2つあります。
- 遅れの記録は、受付が付ける1行メモで足ります。予約管理の画面に「遅れ◯分」の項目があれば、それを使います。なければ、まずは紙でも構いません
- 母数は小さいので、1か月の結果で判断しないでください。3か月分が溜まってから、対応の内訳ごとに契約までの割合を比べます
比べて、縮めた組の成約率が通常どおりの組と大きく違わなければ、縮める段の運用は成功しています。組み直した組の再予約率が低ければ、次の候補日の出し方を見直します。
まとめ
- 見学に遅れてくる二人は、広告費がかかったあとの、来館の直前にいる二人です。ここでの対応は、集客の最後の数メートルです
- 待つ時間の線は、遅れの長さではなく、次の予約までの余白で決めます
- 線は3段にします。余白の範囲内は通常どおり、少し超えたら見学を縮める、大きく超えたら組み直す
- 縮めるときは、二人の見たい場所を先に聞き、省略する場所は一言添えます。組み直すときは、断るのと同時に次の候補日を2つ出します
- 予約の確認連絡に「15分程度の遅れならそのままご案内できます」と書いておくと、遅れそうな二人が早めに連絡してくれます
- 仮の前提では、待ちすぎの損も、切りすぎの損も年に2〜4組ほどの大きさです。縮める段を挟むと、両方を小さくできます
- 自社では、遅れの長さ、次の予約への影響、対応の内訳、契約までの組数を、3か月分数えて判断します
