式場の来館1組の費用は、媒体費に担当者の時間を足して数える
結婚式場の媒体を比べるとき、多くの会場は「媒体費÷来館数」か「媒体費÷成約数」で順位をつけています。この割り算に入っているのは、媒体に払ったお金だけです。見学を1組受けるために、プランナーが何時間使ったかは入っていません。
結論から書きます。来館1組の費用は、媒体費に、見学1組に使う担当者の時間を足して数える。足すと、媒体費だけで見たときに安かった媒体が、いちばん高い媒体になることがあります。この記事では、その入れ替わりを仮置きの数字で見せて、時間の測り方と、どこまで足すかの線引きを書きます。
先に断っておくと、この記事に出てくる数字は全部、僕が置いた仮の前提です。結婚式場の見学1組に何時間かかるかを調べた統計は、僕は見つけられていません。時間も時給換算も、自分の会場の実測に入れ替えて読んでください。
媒体費だけで割ると、何が見えなくなるか
プランナーの人件費は、媒体を増やしても減らしても、月の固定費として出ていきます。だから集客の損益を見るとき、人件費は「別の勘定」として外されがちです。
ただ、見学の枠には上限があります。土日の見学枠が埋まっている会場では、媒体Aからの来館が1組増えると、そのぶん別の1組を断るか、1組あたりの時間を削ることになります。人件費は固定でも、プランナーの時間は固定ではありません。時間は、使い道を選ぶものです。
見学1組に使う時間は、見学の2時間前後だけではありません。実際に分けて書き出すと、だいたい次の4つになります。
- 来館前の準備(予約内容の確認、会場の用意、前回までのやりとりの読み返し)
- 見学と面談の本番
- 見積もりの作成と送付
- 見学後の追客の連絡
この4つを合計した時間が、来館1組の「担当者の費用」です。
仮置きのモデル:媒体費が安い媒体のほうが高くなる
仮に、2つの媒体を比べるとします。数字は全部、想定です。
- 媒体A:月の掲載費60万円。来館20組、成約8組
- 媒体B:月の掲載費40万円。来館40組、成約8組
見学1組に使う時間を4時間、担当者の1時間あたりの費用を3,000円と置きます。1組あたり12,000円です。時給3,000円は、給与に社会保険などの会社負担を足して、月の所定労働時間で割った額を想定しています。
計算してみます。
| 媒体A | 媒体B | |
|---|---|---|
| 媒体費だけで成約1組あたり | 75,000円 | 50,000円 |
| 媒体費だけで来館1組あたり | 30,000円 | 10,000円 |
| 担当者の時間を足した成約1組あたり | 105,000円 | 110,000円 |
| 担当者の時間を足した来館1組あたり | 42,000円 | 22,000円 |
媒体費だけで見ると、Bのほうが成約1組あたり25,000円安く、安い媒体です。時間を足すと、Aが105,000円、Bが110,000円で、順位が入れ替わります。
理由は単純で、Bは来館が多い代わりに成約率が低い媒体だからです。来館40組のうち成約が8組で、32組は成約しません。この32組にも、準備と見学と見積もりと追客の4時間ずつが使われています。媒体費はBのほうが安くても、見学に使う時間はAの2倍かかっています。
この計算は、時間を12,000円と置いた場合の結果です。1組あたりの時間が2時間なら、Bの成約1組あたりは50,000円に40組×6,000円÷8組を足して80,000円になり、Aは75,000円に20組×6,000円÷8組を足して90,000円ですから、順位は入れ替わりません。**入れ替わるかどうかは、見学1組の時間がどれだけあるかで決まります。**だから、時間を実測する意味があります。
見学1組の時間は、1週間つけて決める
時間を推測で置くと、結論も推測になります。測るときは、次のやり方で十分です。
見学を担当するプランナー全員が、1週間(できれば土日を2回含む2週間)、見学ごとに次の4つの時間を、分単位でメモします。
- 来館前に使った時間
- 見学・面談の実時間
- 見積もりを作って送るまでの時間
- 見学後の連絡に使った時間
追客は数日にわたるので、「見学後の連絡」は、その見学の1組に使った分をその都度足していきます。2週間では追客が終わらない組もありますが、その場合は、終わった組の平均から推定します。
ここで見るのは、平均より、成約した組と成約しなかった組の差です。成約した組は、打ち合わせの前段階として見積もりの修正や再来館が入るので、時間が長くなりがちです。反対に、見学だけで終わった組は、本番だけで終わっているかもしれません。この差が大きい会場は、成約しない組に使う時間を削る余地があります。
時給換算は、人事の担当者に「社会保険の会社負担を含めた1時間あたりの人件費」を聞くのが早いです。個人の給与を知る必要はなく、職種ごとの平均で足ります。
台帳に足す列:測るための最小の準備
時間を毎月測り続けるのは手間なので、予約の受付台帳に、次の3列だけ足しておくと続きます。
- 見学の担当者名と、見学の実時間(分)
- 見積もりを送った日時と、作成に使ったおおよその時間(15分刻みで足ります)
- 見学後の連絡の回数
この3列があれば、月末に媒体ごとの来館数を数えるとき、同じ表で時間も足せます。媒体ごとの来館数は、見学のときに「どちらでお知りになりましたか」と聞いた答えか、予約の入口で振り分けます。ただ、認知経路は1問で聞くと読み違えることがあるので、時間の計算に使うのは、予約が入った入口のほうが無難です。
精度は荒くて構いません。順位が入れ替わるかどうかは、20%や30%の誤差では変わらないことが多いからです。上の例でも、1組の時間が3.5時間と4時間のあいだで、AとBの差は数千円です。測りたいのは、1,000円の差ではなく、順位が入れ替わるほどの差が出ているかどうかです。
どこまで足すか:全部足さない
担当者の時間を足すと言っても、すべての人件費を媒体に割り当てるわけではありません。線引きは、次の3つで決めます。
- 足す:見学の予約が入ってから、成約するか見送りが決まるまでに、その1組のために使った時間
- 足さない:媒体の管理画面の更新、写真の差し替え、メッセージ返信の作業。これは掲載の運用費であって、来館1組の費用ではなく、媒体ごとの運用費として別の行に立てる
- 足さない:会場の管理や打ち合わせなど、成約後の時間
運用費も別の行に立てると、媒体ごとに「掲載費」「運用の時間」「見学の時間」の3段で並びます。この3段を合計して、来館数と成約数で割る。それで、媒体の順位を見ます。
順位が入れ替わったあと、何をするか
入れ替わったからといって、すぐに媒体Bを止めるわけではありません。見るのは次の3点です。
1つ目は、Bの成約しない32組に、時間を減らせる余地があるかです。見学の予約を取る時点で、人数、予算、挙式の希望時期を聞いておけば、予算が大きく合わない二人には、見学の時間を短くして、見積もりの作成を省略する運用に変えられます。Aは4時間のままで、Bの成約しない組だけ見学を3時間に縮められたとします。成約した8組は4時間、成約しなかった32組は3時間として、Bの時間は8組×4時間+32組×3時間で128時間、費用は38万4,000円です。媒体費40万円と合わせて78万4,000円を8組で割ると、成約1組あたりは98,000円。Aの105,000円より安くなります。
2つ目は、見学の枠が余っているかです。平日の昼の枠は埋まらず、プランナーの手が空いていることがあります。その枠に入る来館なら、時間の機会費用は小さくなります。足すのは、枠が埋まっている日の見学だけという考え方もあります。この場合は、土日の来館だけ時間を足して数えます。
3つ目は、Bから来た人の来館後の行動です。成約率が低くても、半年後に別の媒体の名前で予約し直して成約している二人が混じっていることがあります。媒体別の成約数を二重に数えていないかは、別の問題として確認が要ります。
数字の読み方で、よく起きる間違い
この計算で、気をつけたい間違いが2つあります。
1つは、時間の費用を、会場全体の人件費の総額で割って「1組あたりの費用」を出してしまうことです。総額を総来館数で割ると、媒体によらず1組あたりの額が同じになり、順位が変わりません。媒体の違いを見るには、媒体ごとの来館数に、見学1組の時間を掛けます。
もう1つは、時間を足したせいで、すべての媒体の費用が高く見えて、集客自体が割に合わないように見えることです。上の表でも、媒体費だけなら成約1組あたり50,000〜75,000円だったものが、105,000円や110,000円になっています。これは、成約1組を取るための本当の費用がそれだけかかっている、というだけで、媒体を切る理由にはなりません。比べる相手は、成約1組から得られる粗利です。粗利が成約1組あたり数十万円ある会場なら、この費用は回収できています。
まとめ
- 媒体を比べる割り算に、担当者の時間が入っていないと、来館が多くて成約率の低い媒体を安く見積もる
- 見学1組の時間は、準備、見学、見積もり、追客の4つに分けて、1〜2週間つけて測る
- 仮置きの計算では、媒体費だけで見て安かった媒体Bが、時間を足すと高くなった。見学1組が4時間の場合の結果で、2時間なら入れ替わらない
- 足すのは、予約が入ってから成約か見送りが決まるまでの、その1組に使った時間だけ。媒体の運用の時間は別の行に立てる
- 入れ替わったら、成約しない組の見学を短くできるか、枠が余っている日の来館かを確かめてから、媒体の扱いを決める
- 比べる相手は成約1組の粗利で、費用が高く見えること自体は、媒体を切る理由にならない
