式場の媒体別予約数は、同じ二人の二重予約を除いてから比べる
媒体ごとの見学予約数を月末に集計して、その数字で「どの媒体が効いているか」を決めている式場は多いと思います。
その集計に、同じ二人が入っていないでしょうか。結婚式場を探す二人は、複数の情報サイトを見て、気になった式場に、見たサイトごとに予約を入れることがあります。式場から見ると、予約は2件。来館するのは1組です。
僕の考えは、媒体別の予約数を比べる前に、同じ二人の二重予約を一度まとめておくべき、というものです。まとめないまま媒体費を割ると、1組あたりの費用の順位が入れ替わることがあります。この記事では、二重予約がなぜ起きるのか、どう見つけるのか、見つけた二重予約をどの媒体に数えるのか、数え方で何が変わるのかを、判断の条件として整理します。
なお、出てくる件数と金額は、すべて説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではありません。自分の式場の数字に置き換えて使ってください。
二重予約は、なぜ起きるのか
二人が同じ式場に二重で予約を入れる理由は、悪気のあるものではありません。よくあるのは次の三つです。
一つ目は、比較のために両方の画面で押してしまうケースです。最初にA媒体で見つけて予約した。数日後、B媒体でも同じ式場が出てきて、特典がB媒体のほうが良さそうに見えたので、そちらでも押す。特典の違いを確かめたいだけで、来館は一度のつもりです。
二つ目は、予約したことを忘れているケースです。仕事の合間にスマホで予約して、数日後にまた別の画面から予約する。予約完了のメールが迷惑メールに入っていれば、予約が通ったことに気づけません。
三つ目は、二人のどちらかが別々に予約を入れるケースです。新婦がA媒体、新郎がB媒体から予約する。お互いに相手が予約したことを知らないまま、同じ日に同じ式場が2件入ります。
式場に届く側から見ると、どれも「別々の予約」です。媒体ごとの管理画面や通知メールは、媒体の中でしか見えません。そのため、放っておくと、二重はそのまま二重に数えられます。
二重を数えないと、何が起きるのか
仮の例で、数字を置いて見てみます。1か月に、3つの媒体A・B・Cから見学予約が入った式場を考えます。
- A媒体:予約60件、その月の媒体費30万円
- B媒体:予約40件、媒体費16万円
- C媒体:予約20件、媒体費6万円
これを「予約1件あたりの媒体費」で割ると、Aは5,000円、Bは4,000円、Cは3,000円です。いちばん安いのはC、次にB、いちばん高いのはAです。この数字を見たら、「Aの掲載を減らして、BやCに寄せよう」と考えたくなります。
ここで、予約者の氏名と電話番号を突き合わせて、同じ二人を見つけたとします。次のような結果が出たと仮定します。
- AとBの両方に予約を入れた二人:18組
- AとCの両方に予約を入れた二人:6組
- BとCの両方に予約を入れた二人:6組
合計30組が二重に予約していました。予約の延べ件数は120件でしたが、実際に来る二人は 120 − 30 = 90組です。
媒体ごとに、「その媒体にだけ予約した二人」を数えるとこうなります。
- Aだけ:60 − 18 − 6 = 36組
- Bだけ:40 − 18 − 6 = 16組
- Cだけ:20 − 6 − 6 = 8組
36 + 16 + 8 = 60組が、1つの媒体にしか予約していない二人です。残りの30組が二重に予約した二人で、合計90組になります。
ここまでは数え方の問題です。問題はその先で、二重に予約した30組を、どの媒体の成果にするかです。
二重予約を、どの媒体に数えるか
選び方は主に三つあります。
最初に予約した媒体に数える
二人が最初に予約を入れた媒体を、その二人を連れてきた媒体とする数え方です。「最初に出会った場所」を重く見ます。
仮に、重なった30組のうち、予約の日時を比べると次のようになったとします。
- AとBの18組:Aが先だった12組、Bが先だった6組
- AとCの6組:Aが先だった4組、Cが先だった2組
- BとCの6組:Bが先だった3組、Cが先だった3組
この数え方だと、媒体ごとの二人の数はこうなります。
- A:36 + 12 + 4 = 52組
- B:16 + 6 + 3 = 25組
- C:8 + 2 + 3 = 13組
合計は52 + 25 + 13 = 90組で、実際に来る二人の数と合います。
最後に予約した媒体に数える
反対に、最後に予約した媒体に数える方法もあります。「背中を押した場所」を重く見ます。ただ、二重予約の二人は、最後の媒体を「特典を比べるために押しただけ」ということもよくあります。最後を重く見ると、特典の見せ方が目立つ媒体が有利になりやすいです。僕はこの数え方を、見学予約の段階では使いません。
重なりを等分する
重なった二人を、関わった媒体で等分する数え方もあります。2つの媒体に予約した二人は、それぞれ0.5組として数えます。数学的にはきれいですが、現場では「0.5組」という数字が使いにくく、会議で説明するのに時間がかかります。
僕は、見学予約の段階では最初に予約した媒体に数えるやり方を勧めます。理由は二つあります。一つは、数字が整数で出て、説明が短く済むこと。もう一つは、二重予約の二人が最初の媒体で式場を知らなかったら、二つ目の媒体を見ても予約を入れる機会がなかった、と考えやすいことです。
数え直すと、1組あたりの費用の順位が変わる
さきほどの仮の数字で、1組あたりの媒体費を計算し直します。
| 媒体 | 媒体費 | 延べ予約件数での単価 | 最初の予約で数えた二人 | 二人あたりの単価 |
|---|---|---|---|---|
| A | 30万円 | 5,000円(60件) | 52組 | 約5,770円 |
| B | 16万円 | 4,000円(40件) | 25組 | 6,400円 |
| C | 6万円 | 3,000円(20件) | 13組 | 約4,620円 |
延べ件数での順位は、安い順に C、B、A でした。二重を整理して、最初に予約した媒体に数えると、安い順は C、A、B に変わります。AとBの順位が入れ替わっています。
理由は仕組みで説明できます。Bは、Aと重なる二人が多い媒体でした。Aで先に予約した二人が、あとからBでも予約を入れていたため、Bの予約件数のうちかなりの部分が「すでにAが連れてきた二人」だったのです。
もう一つ見ておきたいのは、全体の数字です。3媒体の媒体費の合計は52万円です。延べ件数120で割ると約4,330円。実際に来る二人90組で割ると約5,780円です。全体で見ても、1組あたりの費用は3割以上高く出ます。
延べ件数の単価で見ていると、実際の集客コストを3割ほど安く見積もっていたことになります。
二重予約を見つける方法
では、現場でどうやって見つけるか。特別な仕組みは要りません。
氏名と電話番号で突き合わせる
見学予約のフォームで集めた氏名と電話番号を、月に1回、一覧にして並べます。同じ電話番号、または同じ氏名の予約が複数あれば、同じ二人の可能性が高いです。電話番号は新婦と新郎のどちらの番号かが違うことがあるので、氏名の姓が同じで、来館希望日が近いものも候補にします。
表計算ソフトで電話番号の列を並べ替えて、隣り合った行が同じなら印をつける。この程度の作業で足ります。件数が月に100件前後なら、30分かからないはずです。
予約の媒体名と予約日時を残す
突き合わせるには、予約の媒体名と予約日時が残っている必要があります。媒体の管理画面から取り出した予約を、そのまま媒体ごとのファイルに保存していると、あとで並べる作業が手間になります。予約が入ったら、媒体名・予約日時・氏名・電話番号・来館希望日を1つの表にまとめる習慣をつけておくと楽です。
来館時に1問だけ聞く
もう一つ、現場でできることがあります。来館した二人に、「今日は、どちらの媒体からご予約でしたか」と聞くことです。二重で予約していた二人は、「実はAとBの両方で押していました」と答えてくれることがあります。ここで聞いた内容は、月末の突き合わせの答え合わせになります。
注意したいのは、聞き方です。「二重に予約しましたね」と責めるように聞くと、二人は気まずくなります。二重予約は悪いことではありません。「どちらからでも大丈夫です。今後の案内の参考にさせてください」と添えて聞くのがいいと思います。
二重予約を見つけたら、式場の側で何をするか
数え方を整えるだけでなく、現場の対応も変わります。
まず、同じ二人の予約が2件入っているのに気づいたら、来館前に1本、連絡を入れることです。「A媒体とB媒体から、同じ日のご予約をいただいていたようです。1件にまとめてよろしいでしょうか」と確認します。まとめないと、枠が2つ押さえられたまま、片方が当日に来ない扱いになります。見学枠が限られる人気の週末だと、枠の無駄が出ます。
次に、特典です。媒体ごとに来館特典が違う場合、二人はどちらの特典を受けられるのかが分からなくなっています。まとめるときに、「どちらの特典も受けられます」「高いほうの特典になります」のように、どちらなのかをはっきり伝えます。ここで曖昧にすると、来館当日に「B媒体の特典が受けられると思って来た」と言われ、最初の接客が謝るところから始まります。
特典の扱いは式場ごとの判断です。ただ、二重予約の二人に不利な扱いをすると、「申し込み方で損をした」という印象が残ります。僕は、迷ったら二人に有利なほうに寄せるほうが、成約までの流れには良いと考えます。特典1組分の差額は、1組を集めるのに払っている媒体費に比べれば小さいはずだからです。
数え方を決めるときの、判断の分かれ目
最初に予約した媒体に数える方法を勧めましたが、いつもそれが正しいわけではありません。条件によって、考え方を変えます。
重なりがもともと少ないとき
月の予約が20〜30件ほどで、突き合わせても重なりが1〜2組なら、数え直しの手間のほうが大きくなります。延べ件数のままで比べても、順位は変わりません。手間をかけるのは、重なりが全体の1割を超えたあたりからでいいと思います。
重なりの割合は、仮の例だと30 ÷ 120 = 25%でした。この割合は式場や時期で変わるはずなので、自分の数字で一度だけ出してみるのが近道です。出してみて数%なら、それで終わりにしてかまいません。
成約まで媒体別に追えているとき
見学予約の段階ではなく、成約の段階で媒体別に数えられているなら、そちらを優先します。二重予約をしていた二人が、最終的にどの媒体の予約で来館し、どの媒体の特典を使って契約したか。成約した時点の記録があれば、それが最も確かです。
ただ、成約は月あたりの件数が少なく、1か月ではばらつきが大きくなります。見学予約の数字は、成約の数字が溜まるまでのつなぎとして使います。その間は、二重を除いた見学予約の二人の数で、媒体費の単価を見ておくのが現実的です。
媒体の契約を見直す時期が近いとき
契約更新まで1〜2か月というタイミングなら、二重を除いた数字で一度見直す価値があります。更新の1か月前に慌てて集計するより、毎月の突き合わせの中で、重なりが多い媒体の組み合わせを見ておく。AとBの重なりが大きいとわかっていれば、片方を絞っても、来館する二人の数はそれほど減らない可能性があります。
もちろん、これは仮説です。絞って1〜2か月様子を見て、二人の数がどう動いたかで答え合わせをします。重なりが大きいことは、片方をやめても大丈夫という保証にはなりません。重なっている二人のうち、先に予約していたのがどちらの媒体かで、やめたときに失う二人の数が違ってくるからです。
数字を見るときの注意
最後に、この数え方の限界も書いておきます。
まず、氏名や電話番号が違う二重予約は見つけられません。新婦と新郎が別々の電話番号で、別々の姓の表記(旧姓など)で予約していれば、突き合わせでは別人に見えます。ここで見つかる重なりは、実際より少ない可能性があります。ですから、「重なりがこれだけ見つかった」ではなく、「少なくともこれだけ重なっていた」と読みます。
次に、最初に予約した媒体が、二人を連れてきた媒体とは限りません。最初の媒体では詳しく見ず、二つ目の媒体の口コミを読んで決めた、ということもあります。数え方は、あくまで比べるための約束ごとです。因果を証明する数字ではありません。会議では「最初に予約を入れた媒体で数えています」と、約束を先に伝えておくと、あとで数字が一人歩きしません。
最後に、媒体費は掲載料と予約課金で性質が違います。仮の例では媒体費をひとまとめにしましたが、実際には、掲載料は固定で、予約課金は件数に比例します。予約課金の媒体で二重予約が多い場合、支払う費用そのものが、重なった分だけ多くなっている可能性もあります。契約書の課金の条件に、同じ二人の重複を除く定めがあるかどうかは、一度確かめておく価値があります。ここは契約内容ごとに違うので、僕は一般論を書きません。
まとめ
- 媒体別の予約数を足すと、同じ二人の二重予約が混じり、実際に来る二人より多く出ることがある
- 二重予約は、比較のための重複押し、予約を忘れた再予約、二人が別々に押した予約から起きる
- 仮の例では、延べ120件のうち30組が重なり、実際は90組。全体の1組あたり費用は3割以上高く出た
- 重なった二人は、最初に予約した媒体に数える方法が、見学予約の段階では説明が短くて使いやすい
- 数え直すと、媒体費の1組あたりの順位が入れ替わることがある。AとBが入れ替わったのは、Bの予約にAと重なる二人が多かったため
- 見つけ方は、氏名と電話番号を月1回突き合わせる。媒体名と予約日時を1つの表に残しておく
- 二重を見つけたら、来館前に1件にまとめてよいか確認し、特典の扱いを先に伝える
- 重なりが全体の1割に満たないなら、数え直しは不要。重なりが多いなら、契約更新の前に一度見直す
- 見つけられる重なりは「少なくともこれだけ」。数え方は比べるための約束で、因果の証明ではない
