結婚情報サイトの上位表示オプションは、追加で来る組数から買うか決める
結婚情報サイトの営業担当から、上位表示のオプションを勧められることがあります。検索結果の上のほうに出る、特集枠に載る、写真を大きく出せる。名前はサイトによって違いますが、中身は「お金を足すと、二人の目に触れやすい場所に置いてもらえる」という商品です。
月額は数万円から、高いものだと数十万円になります。営業の説明は、だいたいこう始まります。「上位に出ると閲覧数が増えます」。閲覧数が増えるのは、おそらく本当です。ただ、経営者が知りたいのは閲覧数ではなく、それで来館が何組増えて、元が取れるのかどうかのはずです。
この記事では、買うかどうかを決める手順を書きます。結論から言うと、買う前にやることは2つです。元が取れる追加来館の組数を先に計算すること。もう1つは、増えたように見える来館のうち、オプションがなくても来ていた二人を引いて数えることです。
先にお断りします。この記事の数字は、出典のある統計ではありません。上位表示のオプションで来館が何割増えるかを示す公的な調査を、僕は見つけられていません。以下の数字は全部、僕が置いた仮の前提です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。
先に決めておく、元が取れる追加来館の組数
営業の話を聞く前に、1つだけ計算しておきます。オプションの月額を、来館1組あたりの期待値で割った数です。
来館1組の期待値は、成約率に、成約1組が残す利益を掛けて出します。仮に次のように置きます。
- オプションの月額は30万円
- 媒体経由で来館した二人の成約率は30%
- 成約1組が残す利益は100万円(売上から、その1組のためにかかる料理や衣裳などの原価を引いた額)
この前提だと、来館1組の期待値は 0.3 × 100万円 = 30万円です。月額が30万円なので、オプションを付けたことで増えた来館が月に1組あれば、ちょうど元が取れます。
月額と成約率を変えると、必要な追加来館は次のように動きます(成約1組の利益は100万円のまま)。
- 月額10万円で、成約率が20%なら0.5組、30%なら約0.3組、40%なら0.25組
- 月額30万円で、成約率が20%なら1.5組、30%なら1.0組、40%なら0.75組
- 月額60万円で、成約率が20%なら3.0組、30%なら2.0組、40%なら1.5組
並べてみると、損益分岐の来館数は意外に小さいです。月額が60万円でも、追加で2組来れば足りる計算になります。ここだけ見ると、買ったほうが得に見えます。
ところが、この表をそのまま信じると失敗します。次の2つの補正を入れていないからです。
補正1、増えた来館の全部がオプションのおかげではない
オプションを付けた月に、媒体経由の来館が3組増えたとします。この3組は、全部オプションの成果でしょうか。
違う可能性が高いです。上位表示で目に入るようになった二人のうち、一部は、オプションがなくても公式サイトや口コミ、別の媒体から来ていた二人です。同じ二人が、入口だけ変えて来館したことになります。媒体の予約数は増えて、会場全体の来館数は増えていない。これを、この記事では共食いと呼びます。
共食いの割合は、会場ごと、時期ごとに違います。僕は実測した数字を持っていないので、仮に半分だとします。媒体経由で3組増えたら、本当に増えたのは1.5組です。
先ほどの月額30万円、成約率30%の例に戻すと、元を取るには追加来館が1.0組必要でした。共食いが半分なら、媒体上の来館が2.0組増えないと、その1.0組に届きません。月額60万円なら、媒体上の増加は4.0組が目安になります。
共食いを確かめる方法は、地味です。見学予約フォームの「何で知りましたか」と、媒体側の予約数を、同じ月で並べます。媒体側の予約が増えた月に、公式サイトやGoogleマップなど、他の入口の予約が同じだけ減っていれば、共食いです。他の入口が変わっていなければ、本当に増えています。会場全体の来館数が、前の年の同じ月と比べてどう動いたかも、あわせて見ます。
補正2、上位表示で来る二人は成約率が低いことがある
もう1つの補正が、成約率です。上位表示で新しく目に入った二人は、その会場を目当てに探していた二人より、比較の途中にいる割合が高いと考えるのが自然です。たくさんの会場を回っている最中の二人は、1会場あたりの成約率が低くなります。
ここも実測の数字は持っていないので、仮に、オプション経由の追加来館の成約率は、普段の媒体経由の8割だとします。30%の8割で、24%です。
損益分岐を計算し直します。月額30万円、成約率24%、利益100万円なら、元を取るのに必要な追加来館は 30 ÷ (0.24 × 100) = 1.25組です。ここに共食い半分を重ねると、媒体上の来館は2.5組増えないと足りません。
最初の計算では「月に1組で元が取れる」でした。2つの補正を入れると「媒体上で2.5組」になります。同じ商品でも、ハードルが2.5倍に変わりました。補正の中身は僕の仮置きですが、方向は動きません。補正を入れると、必要な組数は必ず増えます。
月ごとの来館数のぶれが、効果より大きい
次に、買ったあとの確かめ方です。ここが、いちばん引っかかるところです。
月に40組が媒体経由で来る会場を考えます。来館のような数え上げのデータには、何も変わらなくても、月ごとに散らばりが出ます。ものすごく単純に、ランダムに来ると考えたときの散らばりの目安は、平方根で出ます。40組なら、平方根は約6.3組です。つまり、月によって上下に6組ほど動くのが普通です。
オプションの損益分岐は2.5組でした。月ごとの散らばりが6組あるのに、2.5組の増加を1か月の数字で見分けることはできません。2か月合計の80組で見ても、散らばりは約9組です。分岐より大きいままです。
ここから分かるのは、「買ってみて、来館数が増えたかどうかで続けるか決める」という運用は、判断材料として弱いということです。増えたように見えても、たまたまの月かもしれない。増えなかったように見えても、効いていたのに隠れただけかもしれません。婚礼の来館は、季節でも大きく動きます。前の月と比べると、季節の動きが混ざります。
だから、効果を見て決めるのではなく、買う前に決めておくことを増やします。
買う前に決める3つのこと
契約の期間と、やめる日
上位表示のオプションは、半年や1年の契約を勧められることがあります。月額が安く見えるからです。最初は最短の期間で入れるものを探します。最短が3か月なら、3か月で見直す日を、契約の日にカレンダーへ入れます。
見直す日を決めずに始めると、自動更新で続きます。続けた理由が「やめる理由がなかったから」になります。
見る数字は4つだけ
効果を見分けるのは難しいので、見る数字を絞ります。
- 媒体の自分の会場ページの表示回数と、予約ボタンを押された回数(媒体の管理画面に出ます)
- 媒体経由の予約数
- 見学予約フォームの「何で知りましたか」の他の入口の予約数
- 会場全体の来館数
上の2つが上がって、下の2つが変わらなければ共食いです。上の2つが上がって、会場全体の来館数も上がっていれば、効いている可能性があります。ただし、先ほど書いたとおり、月ごとの散らばりがあるので、「可能性がある」までしか言えません。
自分の目で表示順を確かめる
もう1つ、数字より先にやることがあります。実際に、二人と同じ画面を見ることです。
自分の会場のあるエリアで、挙式の希望日や人数を入れて検索します。ログインしていない状態で、自分の会場が何番目に出るか、写真はどう見えるか、競合の会場がどんな見え方をしているかを見ます。オプションを付ける前と付けたあとで、同じ条件の画面を保存しておきます。
上位表示のオプションは、買えば必ず1位になる商品とは限りません。同じエリアで同じオプションを買った会場が増えると、順番は並び直されます。営業の資料にある「掲載位置のイメージ」と、実際の画面が同じかどうか、自分で見てから判断します。
買わないほうがいい場面
損益分岐の計算とは別に、そもそもオプションが効かない場面があります。
1つ目は、見学の枠が埋まっている時期です。来館の予約が増えても、受けられる枠がなければ、増えた二人は他の会場に行きます。土日の枠が毎週ほぼ埋まっている会場では、上位表示にお金をかける前に、枠の使い方を直すほうが先です。
2つ目は、会場の写真や料金の見せ方に問題があるときです。上位に出て目に入っても、写真が古い、料金が分からない、という状態なら、見た二人は離れます。表示される回数を増やす前に、表示されたときの中身を直します。
3つ目は、月の媒体費の予算が、すでに上限に近いときです。オプションの月額を足すなら、どこかを削ることになります。削る先の媒体が、実は来館の取りこぼしを防いでいたとしたら、全体では減ります。媒体費は、1成約あたりの費用で比べて配ります。
数字を3つ並べて、営業と話す
実際に営業担当と話すときは、次の3つを聞きます。
- 同じエリアで、同じオプションを付けている会場は今いくつか
- 付けていない会場と付けている会場で、予約ボタンの押される回数はどのくらい違うか
- 途中でやめたいとき、いつまでに言えば解約できるか
最初の2つは、サイトの側が持っている数字です。出せるかどうかで、そのオプションの説明がどこまで確かなのかが分かります。出せない場合は、その場の返事を鵜呑みにせず、持ち帰ります。
自分の側では、先ほど計算した「元が取れる追加来館の組数」を、紙に書いて持っていきます。月額と、補正を入れた必要組数。この2つが書いてあれば、営業の説明が閲覧数の話に流れそうになったとき、来館が何組増える見込みかの話に戻せます。
まとめ
- 上位表示のオプションは、月額を来館1組の期待値で割って、元が取れる追加来館の組数を先に出す
- 仮の例では、月額30万円、成約率30%、成約1組の利益100万円で、必要な追加来館は月に1組
- 媒体上で増えた来館には、オプションがなくても来ていた二人が混ざる。共食いを半分と置くと、必要な増加は2倍になる
- 新しく目に入った二人は成約率が低いことがある。8割と置くと、必要な追加来館は1.25組、共食いを重ねると媒体上で2.5組
- 月40組が媒体経由で来る会場では、月ごとの散らばりが6組ほどあり、2.5組の増加は1〜2か月の数字では見分けられない
- 効果を見て続けるかを決めるのではなく、最短の契約期間と見直す日を、買う日に決めておく
- 見る数字は、会場ページの表示回数と予約ボタン、媒体経由の予約数、他の入口の予約数、会場全体の来館数の4つに絞る
- 見学枠が埋まっている時期、写真や料金の見せ方に問題があるとき、媒体費の予算が上限に近いときは、オプションより先に直すことがある
