来館・成約

見学の予約で「誰と来るか」を聞くと、親が同行する二人に先手を打てる

見学の当日、受付に二人が着きます。その後ろに、もう2人います。新婦の両親です。予約は「2名」で入っていました。

こういう日は、現場が一瞬だけ止まります。会場の案内は4人分になり、試食の席は足りず、見積もりの説明はテーブルの向きから変わります。何より、説明の相手が変わっています。二人に話すつもりで用意した内容を、予算を出す側の親に向けて話し直すことになります。

この記事の結論は1つです。見学の予約フォームに「当日、誰と来ますか」を足すと、親が同行する二人に先手を打てます。ただし、聞くだけでは何も変わりません。聞いた答えを見学の中身に反映する段取りを持っている式場だけが、項目を1つ増やす損を取り返せます。

仮の式場で計算して、その線がどこにあるかを見ていきます。この記事の数字はすべて、僕が置いた仮のものです。調査の数字は1つも使っていません。年に何組来るか、親が何割ついてくるか、どれも自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

親の同行は、予約の時点で分かっていない

二人が見学を予約するとき、フォームに入れるのは氏名、連絡先、希望日、人数あたりです。人数の欄に「2」と入れた二人が、当日に4人で来る。これは珍しい話ではありません。理由は単純で、予約を入れる時点では、親を連れていくかどうかが決まっていないからです。

二人がまず予約を入れて、そのあとで親に話します。「こんな式場があるんだけど、一緒に見に行かない?」。親が行くと答えれば、当日の人数が変わります。予約フォームの「2名」は、予約した瞬間の事実で、当日の事実ではありません。

式場側から見ると、同行の有無が当日の受付まで分からない運用になっています。ここに手を入れる余地があります。

親が来ると、見学の中身が変わる

親が同行するかどうかを、式場は気にする必要があるのか。気にする必要があるとしたら、何が変わるのか。見学の流れに沿って、変わる箇所を並べます。

1つ目は、所要時間です。会場の案内は人数が増えると遅くなります。親は質問が多く、足を止める場所も増えます。仮に同行ありの見学は、同行なしより30分長いとします。

2つ目は、席です。試食を出す席が2席から4席になります。予約の時点で分かっていれば、席を組み直して料理を4人分仕込めます。当日に分かると、その場で席を足して、料理長に伝えて、出すタイミングがずれます。

3つ目は、説明の中身です。ここがいちばん大きい。二人だけの見学なら、写真の見せ方、演出の話、二人の好みの聞き取りが中心になります。親が同行する見学では、話の重心が移ります。誰が何人来るのか、費用を誰が出すのか、親族の人数はどれくらいか。親が気にするのは、見た目より、総額と、当日の流れと、親族の扱いです。

4つ目は、見積もりの出し方です。親が同行した見学で、プランナーが「後日、メールでお送りします」と言えば、親は「今日もらえないのか」と思うかもしれません。逆に、二人だけの見学で最初から総額の話を厚くすると、二人が引くかもしれません。同行者が分かっていれば、どちらの見学かに合わせて、見積もりの出し方を決められます。

この4つはどれも、見学が始まる前に分かっていれば準備できて、始まってから分かると対応で終わる種類のことです。

「誰と来るか」を聞く損益を、仮の式場で計算する

仮の式場を置きます。

  • 年に300組が来館する
  • そのうち同行者がいる(多くは親)のは25%、年に75組
  • 見学の予約は年に375件入り、来館は80%
  • 予約後に実際に成約する割合は、来館した組の30%
  • 成約1組あたりの粗利は100万円
  • 人件費は1時間あたり3,000円

数字はすべて仮です。25%が高いのか低いのかは、会場の立地や客層で大きく変わります。まずは自分の会場で、直近の見学100組のうち親が同行した組を数えてみてください。数えた数字を入れれば、以下の計算がそのまま使えます。

聞く損:フォームの項目が1つ増える

項目を増やすと、予約フォームの完了率が落ちる場合があります。落ち幅は仮に1%とします。予約375件に対して3.75件、来館にならなかった分が成約率30%を通すと、年に約1.1組の成約が減ります。粗利にして約113万円の損です。

落ち幅が0.5%なら約56万円、2%なら約225万円です。この損は、フォームの設計で小さくできます。「当日の同行者」は必須にせず、選択式の1問にして、答えなくても送れるようにします。必須項目にするのはやめたほうが無難です。

聞く得:同行ありの見学を組み直せる

同行ありの75組に対して、見学を組み直した結果、成約率が2ポイント上がるとします。年に1.5組、粗利で150万円の増です。3ポイントなら2.25組で225万円、5ポイントなら3.75組で375万円になります。

ここで、先に出した損との釣り合いを見ます。フォームの落ち幅が1%のとき、損は年に1.1組分です。得の側は、同行ありの75組の成約率が1.5ポイント上がれば釣り合います。1.5ポイントというのは、75組のうち1組が決まるか決まらないかの違いです。

もう1つ、時間の面があります。同行ありの見学が30分長くなるとして、75組で年に37.5時間。これを予約の段階で枠を長く取れば、後ろの見学を押し出さずに済みます。押し出した場合の損は、時間の人件費ではなく、後ろの組が見学を短縮される損として出ます。人件費だけで見ると、37.5時間×3,000円で約11万円です。小さな数字ですが、見学枠が詰まる土日では、この30分が次の組の待ち時間になります。

損益を分けるのは、聞いた答えの使い道

ここまでの計算は、「成約率が1.5ポイント以上上がるか」という一点に集約されます。上がるかどうかは、聞くことでなく、聞いた後に何を変えるかで決まります。

同行者を聞くだけで、当日の対応が何も変わらないなら、成約率は上がりません。フォームの完了率の損だけが残ります。この場合は聞かないほうが得です。

聞いた答えを使う段取りは、4つで足りる

聞いた答えを見学に反映する段取りは、増やしすぎないほうが回ります。次の4つで足ります。

枠を30分長く取る。 同行ありと答えた予約には、自動で見学枠を30分延ばします。予約システムで枠の長さを変えられないなら、同行ありの予約は枠の間に15分の余白がある時間にだけ入れます。

席と料理を人数分で用意する。 試食付きの見学なら、同行者の人数分を前日までに厨房へ伝えます。伝える先と時刻を決めておけば、当日の混乱は減ります。

説明の順番を替える。 二人だけの見学は、写真と演出の話から入ります。親が同行する見学は、総額と当日の流れ、親族の人数の話を先に置きます。順番を替えるだけで、親の「何の話をしているのか分からない」を避けられます。

見積もりを紙で渡す準備をする。 親が同行する見学では、その日のうちに概算の見積もりを渡せる状態にしておきます。出すかどうかは担当が判断するとして、出せる状態にしておくことが肝心です。当日の見積もりを出すかどうかの判断そのものは、別の記事で扱っています。

この4つのうち、枠と席は事務の話で、説明の順番と見積もりの準備は接客の話です。事務の話だけ実行して成約率が上がることは、期待しないほうがいいと思います。上げるのは接客の側です。

聞き方で、答えが変わる

「当日の同行者」の聞き方も、損益を左右します。

「ご両親は同行されますか」と聞くのは、避けます。親がいない二人、親と疎遠な二人、片方の親だけの二人にとって、答えにくい質問になるからです。

「当日、ご一緒に来られる方はいますか」のように、選択肢で聞きます。たとえば「二人だけ」「親も一緒に来る予定」「友人やきょうだいも一緒に来る予定」「まだ決まっていない」の4択です。「まだ決まっていない」を入れておくのが大事で、予約の時点で決まっていない二人が、嘘をつかずに答えられます。

「まだ決まっていない」と答えた二人には、予約の確認メールで、決まったら教えてほしいと一言添えます。前日の確認連絡で、もう一度聞き直す手もあります。電話やLINEでの前日連絡をしている式場なら、そこに1行足すだけです。

聞く理由も、フォームに一言書きます。「席とお時間のご用意のためにお聞きしています」。理由が書いてあれば、答える側は安心します。営業のためではなく、準備のためだと分かるからです。

聞かないほうがいい式場もある

ここまでの計算は、同行ありが年に75組、全体の25%という仮の数字の上に立っています。同行がほとんど無い会場では、話が変わります。

たとえば、同行者が全体の5%、年に15組の会場です。得の側は、15組の成約率が何ポイント上がっても、増える成約は1組に届きません。フォームの落ち幅が1%なら、損の年1.1組分を取り返せません。この会場では、予約の時点で聞かず、当日の受付で「ご一緒の方は何名様ですか」と聞いて、その場で対応するほうが割に合います。

見学の枠が余っている会場も同じです。枠が余っていれば、30分長くなっても後ろの組を押し出しません。席も、料理の仕込みに余裕があれば、当日に足せます。段取りの価値が小さい会場に、フォームの項目を増やす損を払う理由はありません。

逆に、土日の見学枠が満枠で、試食を付けている会場は、聞く価値が高くなります。枠の押し出しと、料理の仕込みが、どちらも当日では取り返せないからです。

親の同行率は、聞く前に数えられる

聞くか聞かないかを決める前に、数える作業が1つあります。直近の見学の記録から、親などの同行者がいた組の割合を出すことです。

見学の記録に同行者の欄がなければ、プランナーに聞いて、直近の1か月だけでも数えます。数えて分かるのは、同行率だけではありません。同行ありの見学が、同行なしの見学と比べて成約したかどうかも、記録と突き合わせれば見えます。

ただし、ここは読み方に注意が要ります。親が同行した二人は、もともと本気で式を挙げるつもりの二人かもしれません。同行ありの成約率が高く出ても、それは同行の効果ではなく、本気度の違いの可能性があります。見るべきは、同行ありの成約率が全体の平均より低くないか、です。低いなら、同行ありの見学が上手く回っていないということで、先手を打つ余地があります。

まとめ

  • 予約フォームの人数欄は予約時点の事実で、当日に親が来ることは受付まで分からない。同行者を聞く運用はここを埋める
  • 仮の式場(年300組、同行率25%)では、フォームの落ち幅1%の損は年に約1.1組分。同行ありの成約率が1.5ポイント上がれば釣り合う
  • 損益を分けるのは、聞くことではなく、聞いた答えで見学を組み直すこと。枠・席・説明の順番・見積もりの準備の4つで足りる
  • 必須項目にせず、選択式で聞く。「まだ決まっていない」の選択肢と、聞く理由の一言を添える
  • 同行者が全体の1割を切る会場や、見学枠が余っている会場は、予約で聞かず、受付で聞いて当日に対応するほうが割に合う
  • 先に、直近の見学で同行者がいた組を数える。数字は自分の会場のものに置き換えて使う