式場見学の冒頭で何軒目かを聞き、1軒目と3軒目で説明を変える
式場見学の冒頭で、担当者が最初に聞くことは何でしょうか。ご予算、挙式の希望時期、人数あたりが多いと思います。ここに「今日は何軒目の見学ですか」を足すと、そのあとの説明の順番と長さを変えられます。
僕の考えははっきりしています。1軒目の二人と3軒目の二人に、同じ60分の案内をしてはいけません。1軒目は「式場とはこういうもの」という物差しがまだなく、3軒目はすでに物差しを持って比べにきています。同じ説明では、どちらにも半分しか届きません。
この記事では、何軒目かを聞く理由と、聞き方、軒数ごとの説明の変え方、変えるときの落とし穴を整理します。数字はすべて仮の式場での計算で、統計ではありません。式場ごとに置き換えて読んでください。
何軒目かで、二人の頭の中が違う
結婚式場を探す二人は、見学を重ねるたびに判断の材料を持ち帰ります。1軒目を見たあと、二人の会話は「広かったね」「料理がおいしそうだったね」くらいの感想です。3軒目になると、「あそこは試食が付いていた」「あっちは見積もりの項目が細かかった」と、他の式場との差で話します。
つまり、見学の場にいる二人の問いが違います。
- 1軒目:式場の見学って、何を見ればいいのか
- 2軒目:さっきの式場と、ここは何が違うのか
- 3軒目以降:ここに決めていい理由はあるか
担当者が同じ順番で、同じ会場紹介、同じ料理の説明、同じ見積もりの説明をすると、1軒目の二人には情報が多すぎて残らず、3軒目の二人には知っていることばかりで、決め手が出てこないまま終わります。
何軒目かを知るだけで、「この二人は物差しを作る段階か、物差しで測る段階か」が分かります。
聞くタイミングは、予約時と冒頭の2回
何軒目かを聞く場面は2つあります。
1つ目は見学の予約時です。予約フォームか電話で「ほかに見学した式場、予定している式場はありますか」を聞きます。ここで聞くと、見学の前に担当者が準備できます。ただし、フォームの項目を増やすと予約の完了率が下がることがあるので、必須にはしません。任意の選択式にして、「まだ見学していない」「1〜2軒」「3軒以上」の3択くらいに留めます。
2つ目は見学当日の冒頭です。予約時に答えていなかった二人も、ここなら答えてくれます。聞き方は、尋問にならないことが大事です。
「今日はいくつか回られている途中ですか。それとも、ここが最初ですか」
「最初です」と答えた二人に、「それなら、見るポイントをお伝えしますね」と続けられます。「3軒目です」と答えた二人には、「それなら、ほかで見てきたことと比べながら、気になるところを教えてください」と返せます。どちらの答えでも、担当者が次の一言を持っていることが肝心です。
聞くだけで終わらせると、二人は「競合と比べられている」と感じて身構えます。聞いた直後に、答えに合わせた動きを見せることが、聞く理由の半分です。
1軒目の二人には、見るポイントを渡す
1軒目の二人は、式場を比べる材料を持っていません。ここで会場の自慢を並べても、何が自慢なのかが伝わりません。
渡すものは、見学の物差しです。たとえば次のような内容です。
- 式場の見学で確かめることは、会場の雰囲気、料理、見積もりの総額、担当者との相性の4つが中心になること
- 見積もりは、初回の金額と、最終的に支払う金額の差を聞いておくと、式場同士を比べやすくなること
- 見学に慣れていないうちは、1日に回る式場は2軒までにしておくと、記憶が混ざりにくいこと
3つ目のような、自社に直接得がない助言を入れるのがコツです。物差しを渡してくれた担当者は、押し売りをしない人だと受け取られます。自社が不利になる基準を渡す必要はありません。見学の目的を整理するだけで十分です。
1軒目の二人に決めてもらうことは、無理にめざしません。この日の目標は、「次の見学で、ここと比べたい」と思ってもらうことと、連絡先を交換して、比べたあとの再来館につなげることです。
2軒目の二人には、1軒目との違いを聞く
2軒目の二人は、頭の中に比べる相手が1つだけあります。聞くことは「1軒目と比べて、気になったことはありますか」です。
ここで注意したいのは、他社の名前を聞き出すことではありません。式場名は聞かなくて構いません。聞くのは、「広さ」「立地」「料金の見え方」のような軸だけです。軸が分かれば、その軸に沿って自社の説明を並べられます。
「1軒目は人数に対して会場が広かった」と言われたら、自社の会場が何名から何名まで無理なく使えるかを、具体的に伝えます。「見積もりの項目が細かかった」と言われたら、自社の見積もりの項目の数え方を見せます。相手の式場名を出さずに、二人が気にしている軸に答えるわけです。
他社の機能や料金を悪く言ったり、比べて自社が優れていると断言したりすることは、しません。比べるのは二人で、担当者は二人が比べやすいように材料を出すだけです。
3軒目以降の二人には、差が出る場所だけ話す
3軒目以降になると、二人はすでに会場の雰囲気にも料理の説明にも慣れています。会場の紹介を最初から丁寧にやると、二人は「同じ話だな」と感じて、集中が切れます。
このとき有効なのは、次の3つです。
1つ目は、見学の時間を短くすることです。仮に標準の案内が90分の式場だとして、3軒目の二人に60分で終える提案をします。「ほかも回られているなら、気になるところに絞って、1時間でお見せしますね」と言えば、二人の負担を減らせます。短くすることで、二人は「この式場は自分たちの時間を考えてくれる」と受け取ります。
2つ目は、見積もりを早めに出すことです。3軒目の二人は、すでに他の見積もりを持っている可能性があります。持っていれば、自社の見積もりを見せたときに、項目ごとに比べてくれます。見積もりの出し方の順番については、過去の記事でも触れていますが、軒数が多いほど早い段階で出す意味が増します。
3つ目は、迷っている1点を聞くことです。3軒目まで回って決めていないなら、どこかに迷いが残っています。「いま、決めきれていない点は何ですか」と聞いて、その1点に今日の残り時間を使います。ここは、2回目の来館を誘う場面でも同じ聞き方が効きます。
仮の式場で、時間の使い方を計算する
具体的に考えるために、仮の式場で計算してみます。ここでの数字はすべて仮定です。
- 見学の標準時間は90分
- 内訳は、会場紹介30分、料理の説明と試食20分、見積もりと質疑30分、予備10分
- 見学に来る二人の内訳は、1軒目が3割、2軒目が3割、3軒目以降が4割(仮の割合)
標準の90分をそのまま全員にやると、3軒目以降の4割の二人にとっては、会場紹介の30分が「すでに見たことのある話」になりがちです。この30分のうち15分を削って見積もりと質疑に回せば、同じ90分でも、決める材料に使える時間が30分から45分へ、1.5倍に増えます。
逆に1軒目の3割の二人には、会場紹介の時間を削らずに、見学の物差しを渡す5分を足します。90分に5分を足して95分、あるいは予備の10分から5分を回せば、時間は増えません。
この計算で見たいのは、「全員に同じ時間配分で案内している」状態が、一部の二人にとっては無駄になっているという点です。仮の数字なので、自社の見学の記録で、何軒目の二人に何分かけているかを一度書き出してみてください。
変えるときの3つの落とし穴
何軒目かを聞いて説明を変えるやり方には、うまくいかなくなる場面があります。
1つ目は、聞き方が詰問になる場合です。「他にどこを見ましたか」「どこと迷っていますか」と畳みかけると、二人は他社名を伏せて身構えます。軒数だけ聞いて、式場名は聞かない運用にすると、答えやすくなります。
2つ目は、答えを鵜呑みにしすぎる場合です。「1軒目です」と言っていても、実はオンラインで複数の式場の情報を見てきているかもしれません。軒数は「実際に見学した数」でしかなく、情報の量とは別です。二人の質問の具体さ(「ゲスト数は何名から何名まで」「見積もりの変動項目は」)を見て、説明の深さを調整します。
3つ目は、担当者ごとに対応がばらつく場合です。軒数ごとに説明を変えるルールを個人の感覚に任せると、できる担当者とできない担当者の差が広がります。チェックシートに「何軒目か」「聞いたか」「どう変えたか」の3つの欄を作り、見学後に記録すると、あとで成約率を軒数別に見られます。
軒数別の成約率を見る
記録を貯めていくと、見学の成約率を軒数別に分けて見られます。
- 1軒目で来た二人の成約率
- 2軒目の二人の成約率
- 3軒目以降の二人の成約率
どの区分が低いかで、直す場所が変わります。1軒目の成約率が低いのは、物差しを渡しても再来館につながっていないのかもしれません。3軒目以降が低いのは、他社との差が見学の場で出し切れていない可能性があります。
ここも数字を作らずに、自社の見学記録で数えます。1〜2か月分でも、傾向は見えます。件数が少ないうちは、「どの区分が極端に低いか」だけ見るにとどめ、細かい比較はしません。
記録の欄は3つで足りる
見学後の記録に欄を増やしすぎると、書かれなくなります。足りるのは「軒数(予約時の回答、当日の回答)」「説明を変えた点」「二人が最後に口にした迷い」の3つです。
説明を変えた点は、「会場紹介を15分に縮めた」「見学の物差しを渡した」くらいの一行で構いません。迷いの欄は、二人の言葉をそのまま書きます。月に一度、この欄を読み返すと、軒数ごとに二人が引っかかる点がかなり違うことに気づくはずです。気づいたことは、そのまま次の月の説明の順番に反映できます。
まとめ
- 見学の冒頭で「何軒目か」を聞くと、説明の順番と長さを二人に合わせて変えられる
- 聞くのは軒数まで。式場名や迷っている相手は、聞き出さなくていい
- 1軒目には見学の物差しを渡し、この日の目標は再来館にする
- 2軒目には、1軒目との違いを軸で聞き、その軸に答える
- 3軒目以降は、会場紹介を縮めて見積もりと迷っている1点に時間を回す
- 軒数別に成約率を記録すると、どこを直すかが見える
軒数を聞くのは、競合を探るためではなく、二人の頭の中の段階を知るためです。
