来館・成約

式場見学の冒頭で「譲れない1つ」を聞き、見積もりまで同じ軸で揃える

式場見学の冒頭で、担当者は二人に何を聞いているでしょうか。人数、時期、ご予算あたりが定番だと思います。そこに「いちばん譲れないことを1つだけ教えてください」を足すと、そのあとの案内も見積もりも、二人の言葉に揃えられます。

僕の考えははっきりしています。見学の60分を、会場の自慢を全部見せる時間にしてはいけません。二人が「ここだけは外せない」と思っている1点を最初に確かめ、そこに答えを出す時間にした方が、成約の話に近づきます。理由は、二人が式場を決めるとき、たくさんの良い点を足し算しているわけではなく、1つの外せない条件が満たされたかどうかで、候補に残すかを決めていることが多いと考えるからです。ここは仕組みとしての僕の見立てで、統計ではありません。

この記事では、この質問をする理由、聞き方、記録の仕方、案内と見積もりへの反映、聞くときの落とし穴を整理します。数字は仮の式場での計算です。式場ごとに置き換えて読んでください。

「全部の良い点」は、二人に残らない

見学の案内には、伝えたいことが山ほどあります。会場の広さ、チャペルの天井の高さ、料理の素材、衣装、ヘアメイク、庭、アクセス、プランナーの経歴。どれも嘘ではなく、式場の強みです。

ただ、二人の側から見ると、60分で20個の強みを聞かされても、持ち帰れるのは3つか4つです。しかも、その3つか4つは、担当者が選んだものではなく、二人が気にしていたことです。

たとえば、親のためにしっかり挙式をしたい二人は、親族の控室とチャペルの席数を覚えて帰ります。予算を抑えたい二人は、見積もりの総額を覚えて帰ります。料理にこだわりたい二人は、試食の味を覚えて帰ります。同じ会場を見ても、持ち帰るものが違います。

そこで、見学の最初に「どれを持ち帰りたいか」を二人に聞いてしまう、というのがこの記事の考えです。聞けば、担当者は案内の中心を決められます。聞かなければ、案内は式場の自慢の順番になり、二人が気にしていた点は、最後に質問されるまで出てきません。

聞く質問は2つだけ

この質問は、たくさん聞く必要はありません。2つで足ります。

  1. 「結婚式で、これだけは外せないということを、1つ教えてください」
  2. 「逆に、ここは式場にお任せでもいい、妥協できるところはありますか」

2つ目が大事です。外せない条件だけを聞くと、二人は欲しいものを全部言ってしまいます。「全部大事です」という答えになると、案内の軸が決まりません。妥協できる点を一緒に聞くと、二人の頭の中で優先順位がつきます。

聞き方で気をつけることが3つあります。

  • 見学の冒頭、会場に入る前の席で聞く。歩きながら聞くと、二人の答えが短くなります
  • 「1つ」と数を決めて聞く。「あれば教えてください」だと、答えが曖昧になります
  • 二人に別々に聞く。同じタイミングで聞くと、どちらかが遠慮して、先に話した方に合わせてしまいます。「それぞれ、1つずつ教えてください」と言うのが近道です

二人の答えが食い違うことがあります。新婦は「写真映えする会場」、新郎は「ゲストが食事を楽しめること」というような場合です。ここで担当者が、食い違いを調整しようとする必要はありません。そのまま2つを記録して、案内の中でそれぞれに答えを出せばよいです。

聞いた答えは、1行で記録する

聞いた内容は、見学記録に1行で残します。長い文章にしません。

  • 外せないこと(新婦):
  • 外せないこと(新郎):
  • 妥協できること:
  • 案内で最初に見せた場所:
  • 最後に二人が何と言ったか:

この5行の目的は、見学後の追客です。「外せないこと」は、お礼の連絡と再来館の誘い方にそのまま使えます。たとえば外せないことが「親が歩いて来られる距離」なら、再来館の連絡で最寄り駅からの歩き方の案内を添えられます。

記録に残していないと、見学の翌日、別のスタッフが連絡するときに、何を聞いていたかが分かりません。「いかがでしたか」という一般的な連絡になってしまい、二人にとっては、何も覚えていない式場からのメールになります。

案内の順番を、外せない1つで決める

外せない条件が分かったら、案内の順番をその場で入れ替えます。会場の動線上、順番を変えにくい式場もあると思います。その場合でも、最初の説明の一言だけは変えられます。

たとえば、外せないことが次のように分かれたとします。

  • 「料理」と答えた二人:会場の前に、試食か料理の説明から入る。会場は、料理が出るときの動線として見せる
  • 「予算」と答えた二人:最初に、見積もりの例(二人の人数に近い人数)を見せ、金額が上がる項目と、下げられる項目を先に伝える
  • 「親族への配慮」と答えた二人:控室、バリアフリー、チャペルの席数を先に見せる
  • 「写真映え」と答えた二人:光が入る時間帯と、撮影位置から先に見せる

どの場合も、案内の最初の5分で、二人の外せないことに対する答えを出します。残りの55分で、他の強みを足していきます。二人は最初の5分で「この式場は、ちゃんと聞いてくれる」と受け取り、その後の話を聞く姿勢が変わります。

注意したいのは、外せないことが自社の弱点だった場合です。たとえば、外せないことが「駅から近いこと」で、自社が駅から徒歩15分だった場合、最初に弱点の話をするのは勇気がいります。それでも、僕は最初に答えを出す方がいいと考えます。弱点を隠したまま案内を続けると、二人は会場を見ながら、頭の片隅で「駅から遠いんだよな」と思い続けます。先に「駅からは15分です。そのかわり、こういう手当てをしています」と伝えてしまえば、二人はその前提で残りの案内を見られます。

見積もりも、同じ軸で作る

いちばん差がつくのは、見学の最後に出す見積もりです。

外せない条件を聞かないまま見積もりを出すと、式場が標準的なプランを組んで出すことになります。二人にとっては、外せない1点にお金がかかっているのか、他の項目にかかっているのかが分かりません。

外せない条件を聞いていれば、見積もりの組み方を次のように変えられます。

  • 外せない項目を、見積もりの最初の行に置く
  • 外せない項目に、いくらかかっているかを、総額と並べて示す
  • 妥協できる項目は、下げた場合の金額を併記する

仮の計算で見てみます。ある二人が、60人の披露宴で、料理を外せないと答えたとします。仮の見積もりの総額が400万円で、うち料理が120万円、ドレスが60万円、装花が30万円とします。

  • 料理は総額の30%(120万円 ÷ 400万円)
  • ドレスは15%、装花は7.5%

妥協できることがドレスと装花なら、ドレスを標準にして20万円、装花を簡素にして10万円下げた案も併記できます。合計で30万円下がり、総額は370万円になります。料理の120万円は動かしません。これは「二人が優先したいところにお金を使い、他は抑える」見積もりの形です。

二人は、他の式場の見積もりを持ってくると、総額だけを見て比べます。ここで、外せない条件に対する金額と、その理由を式場が説明できれば、総額が少し高くても納得されやすくなります。ただし、納得されるかどうかは僕の見立てで、これも統計ではありません。

聞くときの落とし穴

この質問には、使い方を間違えると逆効果になる場面があります。

1つ目は、答えを使わないこと。 聞いたのに案内に反映されないと、二人は「聞いただけだ」と感じます。聞いたら、必ず最初の5分で答えを出します。答えを出せない質問は、聞かない方がましです。

2つ目は、答えを営業トークに変えること。 「料理が外せない」と言われて「うちの料理はこんなに素晴らしい」と自慢を重ねると、二人は圧を感じます。やることは、二人の外せない条件が満たされるかどうかを、事実で示すことです。試食をする、料理長の経歴を話す、食材の仕入れ先を見せる、など、事実の提示に留めます。

3つ目は、答えを他の式場への批判に使わないこと。 外せない条件を聞いたあとに、他の式場の悪口に近い比較を出すと、二人は式場を信用しなくなります。他社の話は二人から出たときだけ聞き、比べるなら二人の言葉の範囲に留めます。

4つ目は、答えが変わることを前提にすること。 見学を重ねるうちに、二人の外せない条件は変わることがあります。1軒目では「写真映え」と答えた二人が、3軒目で「予算」に変わることもあります。再来館の連絡では、「前回は〇〇とおっしゃっていましたが、いまも変わりませんか」と聞いて、更新します。

外せないことが「分からない」と言われたとき

1軒目の二人は、外せないことを聞かれても、答えられないことがあります。まだ、自分たちが何を大事にしたいか決めていないからです。

そのときは、無理に答えさせず、選択肢を出します。

「よく伺うのは、料理、写真、ゲストへの配慮、予算の4つなんですが、近いものはありますか」

4つのうち、1つか2つを選んでもらえれば、案内の軸になります。「全部」と答える二人には、「いま、いちばん心配なものはどれですか」と聞き直します。大事なものと、心配なものは、ほとんど同じです。

それでも答えが出ない二人には、見学の最後に、同じ質問をもう一度します。「見てみて、外せないと感じたことはありましたか」。見学を通して、二人の頭の中で整理されることがあります。その答えが、再来館の誘い方になります。

効果を測る方法

この質問を導入した効果は、2つの数字で見ます。

  • 見学後の再来館の予約率(外せない条件を記録した組と、記録しなかった組で比べる)
  • 見学後アンケートの「聞きたいことを聞いてもらえた」に当たる項目

仮に、月に40組の見学があり、再来館の予約が8組(20%)だったとします。外せない条件を聞いた組が再来館の予約を10組中3組(30%)取れたなら、聞かなかった組の30組中5組(約17%)との差は、約13ポイントです。ただし、これは仮の数字で、聞いた組と聞かなかった組では、もともとの熱量が違う可能性があります。聞くかどうかを担当者の判断に任せると、熱量の高い二人にだけ聞いてしまうからです。

だから、導入するときは、全員に聞くと決めて、1か月後に導入前の月と比べます。1か月では差が出ないこともあるので、2か月続けて見ます。その間は、聞き方を変えないことが大事です。

まとめ

  • 見学の冒頭で、「外せないこと1つ」と「妥協できること」を、二人に別々に聞く
  • 聞いた内容は、5行の見学記録に残し、お礼の連絡と再来館の誘いに使う
  • 案内の最初の5分で、外せない条件への答えを出す。自社の弱点でも、先に事実を伝える
  • 見積もりは、外せない項目を最初の行に置き、妥協できる項目は下げた金額も併記する
  • 答えを使わない、自慢に変える、他社批判に使う、は逆効果になる
  • 効果は、再来館の予約率とアンケートで、全員に聞く形に揃えて2か月見る