式場見学の最後に、二人だけで話す時間を取るか決める条件
見学の最後に、見積もりを前にして担当者が言います。「いかがでしたか。気になる点があれば、何でも」。二人は顔を見合わせて、「持ち帰って考えます」と答える。式場の現場で、毎日のように見る場面だと思います。
僕の考えは、見学の最後に15分だけ、担当者が席を外して二人だけにする時間を、条件つきで取る価値がある、です。全員に取る必要はありません。取ってはいけない日もあります。この記事では、その分かれ目と段取り、取ると元が取れるかを、前提を置いた計算で整理します。
先に断っておくと、見学の終盤に二人だけの時間を取った式場の成約率が、取らない式場より何ポイント高いかを示す調査は、探しましたが見つかっていません。以下の数字は、すべて僕が置いた仮の前提です。実在の式場の数字ではありません。断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。
「持ち帰って考えます」の中身は二種類ある
保留の言葉は同じでも、中身は二つに分かれます。
一つ目は、式場に決めかねている保留です。他の式場と比べたい、予算が合うか分からない、日取りが合わない。これは式場側の材料が足りない保留で、担当者が説明を足すことで動くことがあります。
二つ目は、二人の間で話し合えていない保留です。気に入ったかどうか、お互いの気持ちを確かめていない。片方が良いと思っていて、もう片方は違和感があるが、担当者の前では言い出せない。見学は説明を聞く時間がほとんどで、二人が感想を言い合う時間がありません。その場で結論を求められないぶん、「持ち帰る」しかなくなります。
担当者から見ると、この二つは区別がつきません。どちらも同じ「持ち帰ります」で、同じ追客メールの対象になります。ただ、二つ目の保留は、メールを何通送っても動きません。動かせるのは二人の話し合いです。その話し合いを、式場の外で、別々の帰り道で、LINEで行うのと、見学の直後に同じ場所で行うのとでは、状況が違います。直後なら、会場の記憶が新しい。気になった点を、その場で見に行ける。担当者に聞きたいことも、すぐ聞けます。
これが、二人だけの時間を取る理由です。成約を押し込むためではありません。二人の話し合いを、式場の記憶が新しいうちに行える場所を用意する、ということです。
取ってよい日と取ってはいけない日
全員に取ると、逆効果になる日があります。分かれ目は三つです。
一つ目は、二人に前向きな反応が出ているかどうかです。見学の途中で二人の口から「ここ、いいね」「この日はまだ空いていますか」といった言葉が出ているなら、二人だけの時間は意味を持ちます。逆に、他の式場を何軒も見ている途中で、初めての来館に近い二人には、まだ話し合う材料がありません。この場合は時間を取らず、次の来館の理由を残すほうが合っています。
二つ目は、見学の時間に余裕があるかどうかです。次の組が控えていて、15分を取ると次の案内が遅れる日は、取りません。待たせた次の組の印象を落とすほうが損になります。フェアの日で組数が詰まっている日は、別の段取りに切り替えます。これは後の節で書きます。
三つ目は、同席者です。親や友人が同席している見学で「二人だけの時間」と言うと、同席者が置き去りになります。同席者がいる日は、「ご家族でお話しする時間」に言い換えるか、取らないかを選びます。
まとめると、取ってよい日は次の条件が揃った日です。
- 二人の口から前向きな言葉が1回でも出ている
- 次の案内まで15分の余裕がある
- 同席者がいない、または同席者も含めて話す時間にできる
三つのうち一つでも欠けるなら、取りません。無理に取ると、「早く決めさせたいのでは」と思われて、かえって警戒されます。
席を外すときの一言
取ると決めたら、席を外すときの言い方が重要です。ここでの失敗は、席を外す理由が「決めてほしいから」に聞こえることです。
僕なら、こう言います。「ここまでで、お二人だけで話したいことが出てきているかもしれません。15分ほど席を外します。見積もりと会場の図面はここに置いておくので、自由に見てください。決める必要はまったくありません。戻ったら、気になったところだけ聞かせてください」。
ポイントは三つです。
- 理由を二人の側に置く。「話したいことが出ているかもしれない」と言い、式場の都合に聞こえないようにする
- 時間を先に言う。「15分」と言えば、二人は長く待たされると感じないし、席に縛られる感覚もなくなる
- 決めなくていいと言い切る。これが無いと、二人は戻ってくる担当者に結論を言わなければならないと身構え、話し合いが「どう断るか」に変わってしまう
席を外す間に置くものも決めておきます。見積もり、会場の図面、日程の空き状況の紙、飲み物。これだけで足ります。パンフレットを山積みにすると、「持ち帰って読んでください」と言っているように見えます。机の上に出すのは、二人が今話すのに必要なものだけにします。
戻ったあとの聞き方
15分後に戻ったら、最初に聞くことが肝心です。「いかがでしたか」と聞くと、また「持ち帰ります」が返ってきます。僕なら「話して、気になった点が一つでもありましたか」と聞きます。「一つでも」と置くと、答えを出す負担が下がります。
返ってくる答えは、おおむね三つのどれかに分かれます。
- 具体的な疑問が出る。「この日の料金はいくらになりますか」。答えられるものはその場で答える。見積もりを出し直す必要があれば、そこで時間を使う
- 二人で意見が分かれていると分かる。片方が「雰囲気は好き」、もう片方が「予算が不安」。この場合は、不安な点を1つだけ聞き、次の来館で確かめることを提案する
- 特に何も出ない。無理に引き出さない。「何か出てきたら、いつでも連絡してください」だけ言って終える。この場合は、二人の間で結論が出ていない可能性が高く、追い込むと逆効果になる
どの答えが返ってきても、その場で決めさせようとしません。目的は、二人の保留の中身を知ることです。中身が分かれば、後の連絡で何を送るかが決まります。
フェアの日で15分が取れないとき
組数が詰まっている日は、15分を取れません。その日は代わりに、三つのうちのどれかを選びます。
一つ目は、見学の途中に短い時間を入れることです。会場の最後の部屋で「ここで1分、お二人で感想を言い合ってみてください」と言って、担当者が数歩離れます。1分でも、お互いの感想を口にする場ができます。
二つ目は、帰りに渡す紙に「二人で話すときの質問」を3つ書くことです。「いちばん良かった場所はどこか」「いちばん不安な点は何か」「次に見たいものは何か」。紙があれば、帰り道のカフェで二人だけの時間が持てます。取れなかった15分を、持ち帰りで補う形です。
三つ目は、予約の段階で見学の所要時間を長めに伝えておくことです。最初から「最後に15分、二人で話す時間を含めて2時間」と案内しておけば、当日の15分は予定として組み込まれます。ただし、これは予約枠を長くするので、1日の組数が減ります。減った組数と、取れる成約が釣り合うかは、次の節の計算で確かめます。
取ると元が取れるかを数える
前提を置いて計算します。数字はすべて仮定です。
- 月に40組が見学に来る
- 担当者の時間を1時間あたり3,000円と見なす
- 1組の成約で残る粗利を100万円と見なす
- 二人だけの時間は、40組の全員に取ったとする(実際には条件を満たす日だけ取るので、これは多めの見積もり)
1組あたり15分ですから、40組で10時間です。10時間かける3,000円で、担当者の時間は月に3万円分です。粗利が100万円なら、3万円は0.03組分にあたります。40組に対しては0.075ポイント。つまり、成約率が0.075ポイント上がれば、時間の元は取れる計算になります。
ここまでは担当者の時間だけです。もう一つ、会場の枠があります。15分長く部屋を使うことで1日の見学枠が減るなら、その分の機会損失が出ます。仮に、1日の見学枠が6から5に減る日が月に4日あるとします。減る枠は月4つで、見学は月40組から36組に減ります。成約率が25%のままなら、成約は10組から9組になり、粗利は100万円減ります。
この場合、成約を10組に保つには、36組中10組が必要です。10÷36で約27.8%。つまり、成約率が25%から2.8ポイント上がらないと、枠が減った分を取り戻せません。
ここから、判断が二つに分かれます。
- 枠が余っている式場(見学枠の埋まりが7割に届かない平日など)は、15分を取っても枠は減らない。この場合は担当者の時間だけで済み、0.075ポイント上がれば元が取れる。取らない理由がほとんど無い
- 枠が満席に近い式場(土日のフェアの時間帯)は、15分で枠が減る。2.8ポイントは大きな差で、保証はできない。この場合は、先の節の「1分の感想時間」や「紙を渡す」に切り替える
ここでの計算は、現実の数字に入れ替えてください。式場ごとに、枠の埋まり方と成約率は違います。大事なのは、15分の費用が、担当者の時間の問題か、枠の問題かを分けて見ることです。
効果の数え方
取り始めたら、効果を数える必要があります。数え方は簡単です。
- 二人だけの時間を取った見学と、取らなかった見学を、日ごとに記録する
- 取った組の成約率と、取らなかった組の成約率を、1か月ごとに比べる
- 取る日と取らない日が、条件で分かれていることに気をつける。前向きな言葉が出た日にだけ取るので、取った組のほうが、もともと成約しやすい。単純に比べると効果が大きく見える
この偏りを避けるには、条件を満たした見学の中で、取る日と取らない日を交互に割り振ります。たとえば条件を満たした見学を、奇数日は取る、偶数日は取らない、とします。2か月ほど続ければ、取った組と取らなかった組を、同じ条件で比べられます。
もう一つ数えたいのは、戻ったあとの答えの分布です。「具体的な疑問が出た」「意見が分かれた」「何も出なかった」の割合を数えておくと、保留の中身が見えてきます。意見が分かれる組が多ければ、見学の中で二人の双方に向けた説明が足りていません。具体的な疑問が多いなら、事前の資料に載せるべき項目が分かります。何も出ない組が多いなら、二人の時間の取り方、または席の外し方に問題があるかもしれません。
二人だけの時間でやってはいけないこと
最後に、やってはいけないことを書きます。
- 部屋の外から様子をうかがわない。聞こえる位置に立たない。話し合いの声を聞かれると思うと、二人は本音を言わなくなる
- 戻る時間を早めない。15分と言ったなら、15分は戻らない。二人が盛り上がっているときに戻ると、話し合いを切ることになる
- 契約書や申込書を机に置かない。置くと、「ここで決めてほしい」という圧になる。置くのは見積もりと図面までにする
- 戻ってから「どれくらい進みましたか」と聞かない。進み具合を聞かれると、決断を迫られていると感じる
二人だけの時間は、決めさせる時間ではありません。二人が話し合える環境を作る時間です。成約率が上がるとすれば、話し合いの材料が揃って決めやすくなった結果です。
まとめ
- 「持ち帰ります」には、式場に迷っている保留と、二人の話し合いができていない保留の二種類がある。二つ目は追客メールでは動かない
- 二人だけの時間は、前向きな言葉が1回でも出た、15分の余裕がある、同席者がいない、の三つが揃った日に取る
- 席を外す一言は、理由を二人の側に置き、15分と先に言い、決めなくていいと言い切る
- 戻ったあとは「気になった点が一つでもありましたか」と聞く。結論を求めない
- 15分が取れない日は、1分の感想時間、帰りに渡す質問の紙、予約時の所要時間の案内のどれかに切り替える
- 仮の前提では、枠が余っていれば成約率0.075ポイントの上昇で元が取れる。枠が減る日は2.8ポイントが必要になるので、取る日を選ぶ
- 効果は、条件を満たした見学の中で交互に取ったり取らなかったりして、同じ条件で比べて数える
