来館・成約

式場のフェア名は、特典の額より何をする日かで決める

結婚情報サイトのフェア一覧を、新郎新婦になったつもりで開いてみてください。同じ地域、同じ週末の日付で、式場のフェアが縦にずらっと並んでいます。二人が最初に目にするのは、写真と、フェアの名前です。会場の説明文を読む前に、名前と写真で「開くか、飛ばすか」が決まります。

僕は、このフェア名を、式場が一番軽く扱っている場所のひとつだと考えています。写真は撮影費をかけるのに、名前は前月のものをコピーして日付だけ変える、という式場も多いのではないでしょうか。広告費が同じでも、名前の書き方で、予約数も、予約した二人の質も変わります。

この記事は、フェア名を「特典の額」で書くか、「何をする日か」で書くかを整理する話です。数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の数字ではありません。フェア名の付け方を比べた調査は、探しましたが見つけられていません。そのため、断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。

先に結論を書きます。

  • フェア名で稼ぐのは予約数ではなく、「来て満足する二人の予約」です。予約が増えても、来館率と成約率が落ちれば損になります
  • 名前の先頭に置くのは、特典の額よりも、二人が当日にすることです。見学、試食、相談のどれが中心かが一目で分かる名前にします
  • 特典は名前でなく、詳細ページに回します。名前に入れるなら、条件つきの額ではなく、安心を渡す言葉(所要時間、即決しなくてよいこと)を先に置きます

一覧で見られている名前は、どんな書き方が並んでいるか

ゼクシィの愛知エリアのフェア一覧を、検索で確認できた範囲で見ると、名前の書き方はおおよそ4つに分かれます。

  • 特徴+体験を並べる型:【 】の中に会場の特徴を入れ、そのあとに体験を続ける。たとえば「ガーデンチャペル×和牛&オマール無料試食」のような形です
  • 安心を渡す型:「90分クイック」「即決なしお気軽相談」のように、所要時間や、その場で決めなくてよいことを書く
  • 特典の額を出す型:「最大28万優待」「3大特典」のように、金額や数を前に出す
  • 対象を名指しする型:「少人数婚」「【26年11月挙式希望】」のように、誰向けかを書く

これは検索で確認できた一覧の観察で、全国の傾向でも、効果の比較でもありません。ただ、同じ一覧の中に4つの型が並んでいること自体が、式場側が「どれが効くか」を決めきれていない証拠のように、僕には見えます。

ここで大事なのは、どの型が正しいかではなく、型ごとに「どんな二人が開くか」が違うことです。

名前の型で、開く二人が変わる

特典の額を出す型

「最大28万優待」と書くと、費用に敏感な二人が開きやすくなります。見学の予約が増える可能性は高いです。

ただし、名前に金額が入ると、二人は「その金額を受け取るために行く」という気持ちになります。式場を見に行くのではなく、特典をもらいに行く。ここで、来館後の話が2つ出てきます。

  • 特典に条件がついている場合(契約当日まで、特定のプラン限定など)、その場で条件を聞いた二人は、がっかりします。名前の約束と、当日の説明にずれが生まれるからです
  • 特典の額だけで来た二人は、同じ週に他の式場の特典も受け取りに行っています。比べるのは式場の中身ではなく、金額になります

特典の書き方には、景品表示法の面でも注意があります。この点は、別の記事(フェア特典の期限表示と景表法)で扱っています。ここでは、名前に額を入れるほど、条件の書き漏らしが目立つ、とだけ押さえておきます。

何をする日かを書く型

「ガーデンチャペルで挙式体験と無料試食」のような名前は、二人が当日にすることがそのまま分かります。額で釣らない分、予約の数は特典型より少なくなるかもしれません。一方で、来る二人は「その体験がしたい」と思って予約しています。

見学の席で、二人がしたいことと、式場が用意していることが一致します。接客の最初の5分で、「今日は何を見たいですか」と確かめる必要が減ります。

安心を渡す型

「90分」「即決なし」という言葉は、見学そのものを警戒している二人に効きます。結婚式場の見学は、「その場で契約を迫られないか」が不安になりやすい場面です。この不安が予約の手前で止めているなら、名前の中で先に答えるのは筋が通っています。

注意するのは、書いたことを守れることです。「即決なし」と書いて、見学の最後に「今日だけの特典です」と言えば、名前が嘘になります。書く前に、現場がその約束を守れるかを確かめてください。

対象を名指しする型

「少人数婚」「26年11月挙式希望」のような名前は、該当する二人には強く刺さり、該当しない二人は開きません。件数を追うフェアには向きませんが、日程が空いている月を埋めたいときには、役に立ちます。

名前を決めるときの3つの問い

型を選ぶ前に、次の3つに答えてください。

  1. このフェアで、来てほしいのはどんな二人か。日程が空いた月を埋めたいのか、試食を軸に迷っている二人に来てほしいのか
  2. 当日の中心は何か。会場見学、試食、模擬挙式、相談のどれか。全部と答えるときは、いちばん時間をかけるものを選びます
  3. 名前に書いたことを、当日必ず守れるか。守れないなら、書かない

名前は、この3つの答えをそのまま短くしたものです。答えが決まっていないまま名前を考えると、「迷ったので額を書いておく」になりがちです。

仮の式場で数えると、予約が増えても得とは限らない

モデル計算をします。数字はすべて仮の前提です。

  • 一覧のフェアページの月間閲覧が2,000回
  • 現在の名前(体験型)では、閲覧から予約に進む割合が4.0%
  • 予約した組のうち、来館する割合(来館率)が80%
  • 来館した組のうち、成約する割合が25%

この前提で、月の来館と成約を数えます。

  • 予約:2,000 × 4.0% = 80組
  • 来館:80 × 80% = 64組
  • 成約:64 × 25% = 16組

名前を特典型に変えると、閲覧からの予約の割合が4.8%に上がったとします。

  • 予約:2,000 × 4.8% = 96組
  • 来館:来館率が変わらなければ 96 × 80% = 76.8組
  • 成約:76.8 × 25% = 19.2組

この場合、成約は月に3.2組増えます。特典型が圧勝に見えます。

ここで、現実に起こりやすい変化を足します。特典で来た二人は、他の式場の特典とも比べています。予約の質が下がり、来館率が75%に落ちたとします。

  • 来館:96 × 75% = 72組
  • 成約:72 × 25% = 18組

差は月2組に縮みます。さらに、特典型で来た二人の成約率が25%から22%に下がるとすれば、成約は72 × 22% = 15.8組で、体験型の16組を下回ります。

この数字は、特典型が悪いと言うためのものではありません。名前を変えたときに見るのは、予約数だけでは足りない、という確認です。見る場所は3つあります。

  • 予約数(閲覧からの割合)
  • 来館率(予約したのに来なかった二人)
  • 来館後の成約率

名前を変えた月は、この3つを前月と並べて見てください。予約数だけが上がって、来館率か成約率が下がっていれば、名前が約束と当日のずれを作っています。

名前を変えたとき、前後を比べる手順

名前だけを変えて効果を見たいときは、次の手順が使えます。

  1. 変える前の月の3つの数字(予約の割合、来館率、成約率)を控える。フェアページの閲覧数と予約数は、掲載している媒体の管理画面で見られることが多いです
  2. 同じ曜日・同じ枠のフェアで、名前だけを変える。特典の内容、料理、日程は変えない
  3. 2〜3回の開催で、3つの数字を並べる。1回だけだと、天気や連休で動いた数字を名前の効果と見間違えます
  4. 予約の割合が上がり、来館率と成約率が落ちていないなら、新しい名前を残す。どれかが落ちているなら、名前を戻すか、約束の書き方を直す

比較に使う数字は、同じ媒体の中で同じ条件にそろえてください。媒体が違うと閲覧する二人の層も違うので、そのままでは比べられません。

名前の長さと、先頭に置く言葉

一覧では、名前の後半が切れて表示されることがあります。端末や媒体の仕様によって見え方が違うので、実際の表示を、スマホと画面の広いパソコンの両方で確かめるのが確実です。

そのうえで、先頭に置く言葉は次の順で選びます。

  1. 二人が当日にすること(挙式体験、試食、相談など)
  2. 安心を渡す言葉(所要時間、即決なし)
  3. 対象(少人数婚、希望の時期)
  4. 特典(額ではなく、何がつくか)

特典の額は、名前の最後に置くか、詳細ページに回します。額が先頭にあると、一覧で他の式場の額と並べて比べられてしまうからです。比べられる軸を、金額に決めてしまうことになります。

同じフェアに複数の名前を使い分ける

同じ内容のフェアを、複数の媒体に出す式場もあります。媒体によって見る二人の層が違うなら、名前を変えてよいと僕は考えています。

ただし、条件はひとつです。名前が違っても、当日の中身は同じにすること。媒体ごとに名前を変えて、中身の約束まで変えると、現場が何を案内すればよいか分からなくなります。受付で「どちらのフェアで来ましたか」を聞くのは、予約の数え方(媒体別の予約数を足すと実際の組数より多くなる)にも関わるので、予約番号と一緒に残す運用にしておくと、後で数えやすくなります。

名前の見直しで、僕が避けたい言い方

  • 「必見」「見逃せない」のように、二人を急かす言葉。期限や限定で追うことは、このメディアでも避けている書き方です
  • 「他の式場より安い」のように、他社との比較を前提にした言葉。根拠が示せないなら、書かないほうが安全です
  • 体験の名前だけが先に立って、何をするのか分からない言葉。「特別体験」「プレミアム」だけでは、中身が伝わりません
  • 現場で守れない約束。「即決なし」「ノルマなし」は、守れるときだけ書きます

まとめ

  • フェア名は、予約数だけでなく、来館率と成約率まで動かします。予約が増えても、後ろの数字が落ちれば得とは限りません
  • 先頭には、二人が当日にすること(見学、試食、相談)を置きます。特典の額は名前の後ろか、詳細ページに回します
  • 「即決なし」「90分」のような安心の言葉は、現場が守れるときだけ書きます
  • 名前を決める前に、来てほしい二人、当日の中心、守れる約束の3つに答えます
  • 名前を変えたら、同じ枠で2〜3回の開催を並べて、予約の割合、来館率、成約率の3つを前月と見比べます
  • 名前は、一覧の中で二人が最初に読む、式場の最初の約束です