来館・成約

式場見学で会場を見せられない日は、見せる代わりに再訪日を決める

見学の当日、案内の途中でこう言わなければならない日があります。「申し訳ありません、こちらの会場は今日、別のお打ち合わせの準備中でして、中をご覧いただけないんです」。

土日の見学が重なる式場では、そう珍しい場面ではないと思います。披露宴会場が前日の片付けから戻りきっていない。午後に別の組の試食会が入っていて、テーブルが組まれている。チャペルでは挙式のリハーサルが続いている。予約を受けた時点では空いているはずだった場所が、当日になって見せられなくなります。

このとき、現場でよく起きる対応は二つあります。ひとつは、写真と動画で代わりに説明して、そのまま見学を終えること。もうひとつは、見せられなかったおわびに、特典や値引きの話を先に出すことです。僕はどちらも、成約の取りこぼしにつながりやすいと考えています。

結論は、見せられないものを最初に正直に伝えて、見せる日を二人と一緒にその場で決める、です。この記事に出典の数字はありません。後半の数字は僕が置いた仮のもので、業界の平均ではありません。判断の条件と段取りの話として読んでください。

二人が持ち帰るのは「見られなかった」という事実です

見学に来た二人にとって、披露宴会場は見学のいちばん大きな材料です。予算を決める前に、「ここで自分たちの席がどう並ぶか」を目で確かめたい。写真は載っていても、天井の高さや窓の位置、入口からの距離は、立ってみないと分かりません。

だから、会場が見られなかった日の二人は、見学が終わったあとに二つの気持ちを持ち帰ります。ひとつは「大事な場所を見られなかった」という物足りなさ。もうひとつは「見られないまま決めるわけにはいかない」という保留の理由です。

保留の理由がはっきりしているのは、本来は悪いことばかりではありません。迷っている点が一つに絞れているからです。見せたいものがあって、それを見せる機会を作れば、保留は解けます。問題は、次の機会を作らないまま二人が帰ってしまうときです。

この場合、二人の中で「見られなかった会場」は、他の式場の見学が続くうちに薄れていきます。次の週に別の式場で披露宴会場をしっかり見せてもらえば、そちらの記憶が基準になります。見せられなかった会場は、比べる土俵にも上がれません。

代わりに写真や動画を出すだけでは足りない理由

「代わりに写真をご覧ください」は、一見すると誠実な対応に見えます。ただ、二人が知りたいのは、写真に写る会場の良さではなく、自分たちの結婚式がそこで開けるかどうかです。

写真は、どの会場でもよく撮れています。公式サイトにも媒体にも、すでに載っている写真です。見学に足を運んだ二人にとって、その場で見せてもらう写真は新しい情報になりにくい。見学に来てもらった時間の価値を、写真では取り戻せません。

動画も同じです。広角で撮った会場の動画は、実際より広く見えることがあります。二人が見たいのは、広さそのものより、人数が入った状態での余白です。それは動画では確かめにくい。

写真や動画が悪いわけではありません。見せられない日の補助にはなります。ただ、それだけで終わらせると、二人は「見られなかった」の気持ちだけを持ち帰ります。補助の資料は、再訪日を決めたあとに「当日までに見ておいてもらうもの」として使うのがいいと思います。

おわびに特典を先に出すと起きること

もうひとつの対応、おわびの特典です。見られなかったお詫びに、見積もりの値引きや、ドレス試着の無料券を出す。気持ちは分かります。ただ、これは順番を間違えると逆効果になります。

特典を先に出すと、二人は見学の価値を、特典の額で測り始めます。会場を見られなかったことが、「割引してもらう理由」に変わる。すると、見積もりの話は金額の交渉に寄ります。肝心の、会場を見て決めたいという気持ちは置き去りになります。

さらに、他の組が同じ条件で来館したときに、特典の出し方がそろっていないと、会場の信頼にも響きます。見せられない日の対応は、式場として一つの型を持っておくほうが、現場の判断が楽になります。

特典を使うなら、再訪の日が決まったあとです。「次にお越しいただく日は、試食を同じ日にご用意します」のように、再訪の理由を増やす形で出します。見られなかったおわびではなく、次の日の中身を足す。同じ特典でも、意味が変わります。

当日の段取りは4つの順で組みます

では、実際に何をするか。僕が考える段取りは、次の4つです。順番が大事です。

1. 案内の最初に、見せられないものを先に言う

見学の冒頭、案内を始める前に伝えます。「今日はこの会場とこのチャペルは、準備のためにご覧いただけません。それ以外をしっかりご案内して、最後に、ご覧いただく日を一緒に決めさせてください」。

途中で、会場の前まで来てから「実は見られません」と言うのは避けます。二人が期待を高めたところで外れると、落差が大きくなる。最初に言えば、見学全体の見方が変わります。

予約の段階で分かっているなら、前日の連絡の時点で伝えるのが一番いいです。当日に知るよりずっと受け止めやすい。ただ、当日にならないと分からないことのほうが多いので、案内の冒頭で言う段取りを標準に置いておきます。

2. 見せられるもので、二人の判断材料を先に集める

見せられない場所があっても、見学の中身が空になるわけではありません。控室、ロビー、廊下、料理の試食、衣裳の見本。見せられるものを先に見てもらいます。

ここで一つ、二人に質問します。「会場のどこを一番確かめたいですか」。広さ、天井、窓、入口からの距離、ゲストの席からの見え方。答えは二人でそれぞれ違います。この答えが、再訪の日に見せるものを決めます。

答えを聞いておけば、再訪の日は「もう一度全部をご案内する日」ではなく、「確かめたい1点を見る日」にできます。担当者の負担も軽くなるし、二人も短い時間で済むと分かるので、来やすくなります。

3. 帰る前に、再訪の日をその場で決める

見学の最後に、手帳やスマホを出してもらって、候補の日を2つ決めます。「後日またご連絡します」ではなく、その場でです。

決める日は、会場が確実に見せられる日にします。空き状況を見て、「この日の午前は、ご覧いただける状態です」と言える日を選ぶ。ここで担当者が自信を持って日付を出せないと、再訪の約束そのものが弱くなります。

二人の都合が合わない場合も、決められるところまでは決めます。「再来週の土曜か日曜の、どちらかの午前」まで絞って、確定は翌日の連絡に回す。それでも、何も決めずに帰るよりずっと、再訪する確率は上がると考えています。

4. 再訪日までに、確かめたい1点の資料を送る

再訪の日が決まったら、二人が確かめたいと言っていた1点に合わせて、資料を送ります。天井の高さが気になる二人には、同じ角度で撮った写真と寸法の図面。窓の位置が気になるなら、時間帯別の光の入り方の写真。

ここで初めて、写真や動画が役に立ちます。再訪の日に実物を見る前の予習として使います。二人は、当日に何を見ればいいか分かった状態で来られます。

連絡の手段は、予約のときに聞いた手段に合わせます。電話が通じにくい二人にはメールやLINEで。再訪の前日に、もう一度日時と集合場所の確認を送ります。

仮の数字で、損得を確かめてみる

数字を置いて確かめます。ここから先の数字はすべて僕が置いた仮のもので、実際の式場の数字ではありません。自分の会場の数字に置き換えて使ってください。

仮に、ある会場で見学に会場が見せられない日が、月に4組あるとします。この4組の成約率を15%と置きます。会場をきちんと見られた組より低いはずです。

そのうえで、再訪日をその場で決めた組は、70%が実際に再訪し、再訪した組の成約率は30%になるとします。再訪日を決めたのに来なかった組は、成約率5%とします。

計算は次のとおりです。

  • 再訪日を決めない場合:4組 × 15% = 0.6組
  • 再訪日を決めた場合:4組 × (0.7 × 30% + 0.3 × 5%) = 4組 × 22.5% = 0.9組

差は月に0.3組です。年にすると3.6組。成約1組の売上が数百万円の会場なら、見せられない日の対応を変えるだけで、年に数組の成約が動く計算になります。

もちろん、これは置いた数字から出た計算です。再訪率が50%なら差は縮まるし、再訪後の成約率が20%なら、さらに縮まります。大事なのは、自分の会場で次の3つを数えられるようにすることです。

  • 会場が見せられなかった見学の組数
  • そのうち、再訪日をその場で決めた組の割合
  • 再訪日を決めた組が、実際に再訪して成約した割合

台帳に「会場見学の可否」の一列を足すだけで、3つ目まで追えます。1か月数えれば、仮の数字を自分の数字に置き換えられます。

再訪の約束が、うまくいかないときの判断

再訪日を決めても、二人が来ないことはあります。そのとき、何度も連絡して追いかけるのは、二人の負担になります。

僕は、再訪日の前日に1回確認を送り、当日に来なかったら、翌日に1回だけ「改めてご都合のよい日をお聞かせください」と送るところまでにするのがよいと思っています。それで返事がなければ、そこで止める。見せられなかったことの負い目で、追客が重くならないようにします。

もうひとつの判断は、最初から「見せられない日は、予約を受けない」という選択です。人気日の予約を受けたあとで、会場が使えない日が出る。それが月に何度も起きるなら、予約の段階で空き状況を確認して、会場が見られる枠だけを案内するほうが、二人にとっては親切です。

ただし、枠を絞ると、見学の組数は減ります。見せられない日の見学を全部断るより、見せられない分だけ再訪日を決めて取り戻すほうが、組数が減らない運用です。どちらを取るかは、見せられない日が月に何組あるかで決まります。月に1組以下なら、枠を絞る手間のほうが重い。月に5組を超えるなら、枠の運用を見直す価値があります。この線も、僕の感覚で置いたものなので、自分の会場の数を見て動かしてください。

まとめ

  • 会場が見せられない日、二人は「見られなかった」事実と「見ないと決められない」保留の理由を持ち帰ります
  • 写真や動画で代わりを済ませても、見学に来た時間の価値は戻りません
  • おわびの特典を先に出すと、見学の価値が金額で測られます。特典は再訪日が決まったあとに足します
  • 段取りは、最初に伝える、確かめたい1点を聞く、帰る前に再訪日を決める、1点の資料を送る、の順です
  • 仮の数字では、再訪日を決めるだけで月0.3組、年に3.6組の差が出ます。数字は自分の台帳で置き換えます
  • 見せられない見学の組数と、再訪日を決めた割合を数えれば、この運用が効いているか判断できます

見せられない日は、避けられません。見せられない日の対応を、あらかじめ決めておくかどうかで、その日の見学が成約につながるかが変わります。