式場の返信テンプレートは文面より二人の聞き返しの数で直す
式場の問い合わせへの返信は、ほとんどの会場で定型文を土台にしていると思います。月に何十件も届くものに、毎回ゼロから書くのは現実的ではありません。
その定型文を見直すとき、多くの会場は文面を見ます。もっと丁寧にしよう、感じよくしよう、写真を足そう。でも、直した文面で予約が増えたかどうかは、なかなか分かりません。直す前と後で、問い合わせの顔ぶれも、時期も、広告も違うからです。
結論から言います。返信テンプレートは、文面の出来ではなく、返信のあとに二人が聞き返してくる数で直すのがいいと僕は考えています。聞き返しは、テンプレートに足りなかった情報が、二人の言葉で戻ってきたものです。数えられて、毎月比べられて、直す場所まで教えてくれます。
この記事に出典の数字はありません。後半の数字は、僕が置いた仮のものです。業界の平均ではないので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
文面を磨いても直らないものがある
返信の文面を直す作業は、続けていると手ごたえがあります。読みやすくなった、感じが良くなった、と社内で言い合えます。ただ、読み手の二人にとっての価値は、感じの良さだけでは決まりません。二人が知りたいのは、この式場が自分たちの条件に合うのか、次に何をすればいいのか、の二つです。
たとえば、返信メールが三段落で、冒頭のあいさつが丁寧で、最後に見学予約のリンクがあるとします。これだけで十分に見えます。でも二人が読み終えて最初に思うのが「で、希望の日は空いているの?」だったら、そのメールは半分しか仕事をしていません。二人は、答えがもらえなかった質問をそのまま返信してきます。
この「聞き返し」は、二人の側にも手間をかけています。もう一度メールを書くのは、少し面倒です。面倒でも書いてくるなら、その質問は二人にとって重要です。逆に、面倒だから聞かずに別の式場へ移った二人は、数字に出てきません。見えている聞き返しの裏に、見えていない離脱があると考えるほうが安全です。
聞き返しを数える:決め方は3つだけ
数え方は難しくしないほうが続きます。僕なら次の三つを決めます。
1. 何を聞き返しとするか
返信メールまたはLINEに対して、二人が最初に送ってきた次のメッセージのうち、質問の形をしているものを聞き返しとします。見学の日程に関する「では○日でお願いします」は聞き返しではなく、前に進む返事です。「駐車場はありますか」「料金は税込ですか」のような質問が聞き返しです。
2. 何を記録するか
スプレッドシートの列は三つで足ります。問い合わせの日付、聞き返しの有無、聞き返しの内容(二人の言葉のまま)です。内容は分類しようとせず、まず原文をそのまま貼ります。分類は後でいくらでもできますが、原文は後から作れません。
3. 誰が記録するか
返信を打つ担当者がその場で付けるのがいちばん確実です。月末にまとめて遡ると、必ず抜けます。入力が重いなら、聞き返しが来た問い合わせにだけ印を付けて、内容は転記する運用でも構いません。
この三つだけで、1か月分のデータが取れます。最初の月は、直す前の基準です。数字が良いか悪いかは気にしなくて構いません。
仮の数字で、聞き返しを減らす価値を計算する
数字は、前提を置かないと意味がありません。次のように置いてみます。これは僕が置いた仮の数字です。
- 月の問い合わせ:60件
- 聞き返しがあった問い合わせが見学予約まで進む割合:30%
- 聞き返しがなかった問い合わせが見学予約まで進む割合:45%
- 見学予約から成約までの割合:35%
聞き返しがあると予約まで進みにくい、という前提です。理由は、聞き返しのやり取りで一往復分の時間が空き、二人の気持ちが他の式場に動く時間ができるからです。この差の大きさは会場によって違うので、自分の記録から出すのが本来です。
聞き返しがある問い合わせが、全体の40%のときと、20%のときを比べます。計算するとこうなります。
- 40%のとき:60件のうち24件が聞き返しあり、36件がなし。見学予約は 24×0.30+36×0.45=7.2+16.2=23.4件
- 20%のとき:12件が聞き返しあり、48件がなし。見学予約は 12×0.30+48×0.45=3.6+21.6=25.2件
差は月に1.8件です。成約率を35%とすると、月に0.63組、1年で7.6組ほどの差になります。ここに自分の会場の1組あたり粗利を掛ければ、返信テンプレートを直す作業にかけていい時間の上限が出ます。
もちろん、聞き返しの割合は広告や時期で動きますし、「聞き返しがあると予約化率が下がる」という前提が自分の会場で成り立つかは、記録を取ってみないと分かりません。ただ、前提の置き方が分かれば、自分のデータで同じ計算ができます。計算は、次の月から回せます。
聞き返しの内容は、三つの引き出しに入れる
1か月分たまった原文を眺めると、聞き返しはたいてい似た質問にまとまります。僕は三つの引き出しに分けるのが扱いやすいと思います。
引き出し1:先に書いておけば聞かれなかったもの
「駐車場は何台ですか」「料金は税込ですか」「子ども連れで行けますか」のように、答えが決まっていて、変わらないもの。これは返信に一行足す、あるいは見学予約のリンク先のページに置くだけで消えます。いちばん簡単で、いちばん効果が出る引き出しです。
引き出し2:二人によって答えが変わるもの
「希望の日は空いていますか」「予算内に収まりますか」のように、二人の条件がないと答えられないもの。これは一行足しても消えません。やることは、最初の返信で二人の条件を一つだけ聞き返すことです。聞き返しを二人にさせるより、式場から先に聞き返すほうが、やり取りの主導権を持てます。
引き出し3:返信の中身が伝わっていなかったもの
「見学の予約はどこからすればいいですか」のように、すでに書いてあるのに二人が見つけられなかったもの。これは情報が足りないのではなく、置き場所が悪いサインです。文面を長くせず、予約の入口を一つに絞って、リンクの置き場所を見直します。
引き出し1だけで、聞き返しの半分近くが消えることもあります。分けてみて初めて、直す順番が見えてきます。
直し方:やることと、やらないこと
聞き返しの原文を見ると、全部に答えたくなります。ただ、全部の答えを返信に詰め込むと、メールが長くなり、今度は読まれなくなります。直し方の線引きを、先に決めておくのが大事です。
やること
- 引き出し1は、返信本文に一行で足す。長くなる場合は、見学予約ページに置いて、リンクで渡す
- 引き出し2は、最初の返信の最後に、二人の条件を聞く質問を一つだけ置く。挙式希望時期でも、人数でも、候補は一つに絞る
- 引き出し3は、予約リンクの位置と数を見る。同じ返信に予約リンクが3つ並んでいたら、一つに減らす
やらないこと
- 聞き返しの上位5つをまとめて追記する。一度に5行足すと、読む側の負担が増える
- 聞き返しが少ない質問に、念のため答えを足す。月に1回しか来ない質問は、聞かれたときに答えればいい
- 定型文の語調を全面的に変える。文面を大きく変えると、直した効果がどこから来たのか分からなくなる
直すのは、1か月に1〜2か所までにします。そうすれば、翌月の数字の変化を、直した箇所と結びつけて読めます。
半年に1度の棚卸し
聞き返しの記録は、毎月見るものと、半年に1度見るものを分けます。
毎月見るもの
聞き返しがあった問い合わせの割合と、引き出し1の件数。前の月より減っていれば、直した箇所が効いています。
半年に1度見るもの
返信テンプレート全体の読み直しです。このとき、半年分の聞き返しを並べて、次のことを確かめます。
- 半年前にはなかった新しい質問が増えていないか。値上げ、新しい会場の追加、人数の変更などがあれば、答えが変わっているものがあります
- テンプレートに入れた一行のうち、もう聞かれなくなっているものはないか。聞かれなくなった一行は、削る候補です
- 季節で出てくる質問はないか。雨の日の動線、年末年始の営業日などは、その時期だけ足せるようにしておきます
テンプレートは、足すだけだと必ず長くなります。聞かれなくなった一行を削るのも、棚卸しの仕事です。
判断の分かれ目:記録を取らずに直してよいとき
月の問い合わせが10件ほどの小さな会場では、聞き返しの割合を出しても、1件の違いで10%動きます。数字として読むには、件数が少なすぎます。このときは割合を気にせず、聞き返しの原文を全部読むことだけを続けます。割合は出さなくていい。引き出し1の質問が見つかったら、その場で返信に足します。
件数が月30件を超えてきたら、割合で見るほうが向いてきます。ここも会場によって違うので、あくまで僕の目安です。
また、返信を打つ担当者が複数いる会場では、担当者によって聞き返しの割合が違うことがあります。担当者の優劣を見るために数えるのではなく、「この人の返信には何が書いてあって、あの人の返信には書いていないのか」を比べる材料にします。数字を評価に使うと、聞き返しを記録しなくなります。
まとめ
- 返信テンプレートは、文面の良し悪しでなく、返信のあとに二人が聞き返してくる数で直す
- 聞き返しは、質問の形をした二人の次のメッセージ。日付・有無・原文の3列で記録する
- 仮に月60件の問い合わせで、聞き返しの割合が40%から20%に下がると、見学予約は月に1.8件増える(仮の前提による計算)
- 聞き返しは「先に書けば消えるもの」「二人によって変わるもの」「置き場所が悪いもの」の三つに分けて直す
- 直すのは月に1〜2か所。足すだけでなく、聞かれなくなった一行を削る
- 月の問い合わせが少ない会場は、割合より原文を読むことから始める
