来館・成約

式場の見学前は、担当が二人の問い合わせ文を読み返す5分を決める

式場の見学で最初の一言が決まるのは、二人が会場に着いた瞬間ではありません。担当者が、予約のときに二人が書いた文面を、見学の前に読み返したかどうかで決まります。

予約フォームの自由記入欄や問い合わせメールには、二人の迷いがかなり具体的に残っています。「親がチャペルの段差を気にしています」「予算は先に聞いておきたいです」「他の式場も見ています」。それを担当者が見ずに、いつもの挨拶といつもの会場説明から始めると、二人は「ちゃんと読んでもらえていない」と感じます。逆に、最初の一言で書いたことに触れれば、そこから先の説明が聞かれる態勢になります。

この記事の結論は、見学の前に、担当者が二人の問い合わせ文を読み返す5分を、個人の気配りでなく会場の決まりにしたほうがいい、ということです。理由と、5分で何をするか、決まりにするときの落とし穴を順に書きます。

この記事に出典の数字はありません。以下の数字は、計算しやすいように僕が置いた仮のものです。業界の平均ではないので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

読み返しが抜けるのは、怠慢ではなく段取りの問題

見学が重なる土日の午前は、担当者は前の組の見送り、会場のセットの確認、次の組の受け入れと、息をつく間がありません。予約の内容は台帳や予約管理の画面に入っているのに、それを開く時間が、一日の流れの中に置かれていないのです。

読み返しは「できる人がやる」仕事になりやすい。几帳面な担当者は前日の夜に全組分を見て、そうでない担当者は着席してから見る。同じ会場でも、担当者によって二人の最初の印象が変わります。

もう一つ、二人の側から見ると、予約のときに書いたことは「もう伝えたこと」です。もう一度聞かれると、同じことを何度も説明させられている気持ちになります。式場を何軒も回っている二人は、他の会場では最初から読んでもらえたと感じた経験を、比べに持ち込みます。

5分で見るのは3つだけ

全部を読み込もうとすると、5分では足りません。見るものを3つに絞ります。

  1. 二人が書いた自由記入の文面そのもの(要約でなく原文)
  2. 誰が来るか(二人だけか、親やきょうだいが同席か)
  3. どこから来たか(予約の入口。媒体、検索、紹介など)

自由記入は原文で読む

台帳に「親の同席あり」とまとめられていても、原文が「母が足が悪いので、階段が少ない会場を探しています」なら、必要なのは「親の同席」ではなく「階段」への答えです。要約に変わった時点で、二人の言葉の細かな温度が落ちます。原文のままで読めるようにしておくのが、5分の最初の条件です。

同席者は、説明の宛先を変える

同席者が親なら、説明は二人だけに向けないほうがいいことがあります。同席者がいるかどうかを前日に知っているだけで、席の並びや最初の声かけを替えられます。これは当日、会って初めて分かる情報ではありません。

入口は、二人が何を知っているかの手がかり

どこから予約したかで、二人がすでに知っていることが変わります。会場のサイトを見て予約した二人には、サイトに書いてある内容をもう一度説明する必要は薄いはずです。比較サイトから来た二人には、他の会場との違いを聞かれる前提で話を組めます。入口は、説明を省く場所と厚くする場所を決める材料になります。

読み返した内容を、最初の一言に変える

読み返しは、それだけでは何も変わりません。見学の冒頭に、書いてあったことを1つだけ拾って言葉にします。

  • 「ご予約のとき、お母様が階段を気にされていると書いてくださっていましたね。先に段差の少ないほうからご案内します」
  • 「日程の候補を3つ書いてくださっていたので、先にその日の空き状況をお伝えしますね」

ポイントは、2つ3つと並べないことです。全部拾うと、読み上げているようになります。1つだけ拾えば、「ちゃんと読んでくれている」という印象が残り、残りは会話の中で自然に出てきます。

仮の会場で、5分の費用を数える

読み返しが決まりになると、担当者の時間は増えます。それが見合うかを、仮の会場で計算します。

  • 月の来館:40組
  • 1組あたりの読み返し:5分

40組 × 5分 = 200分、つまり月に約3.3時間です。担当者が3人なら、1人あたり月に1時間強です。

これに見合うかは、成約率がどれだけ動くかで決まります。仮に、読み返しが定着して成約率が1ポイント上がったとすると、来館40組 × 0.01で、成約は月に0.4組増えます。年に直すと5組弱です。1組の成約の粗利が何十万円になる会場なら、月3.3時間は十分に見合うはずです。

ただし、成約率が実際に上がるかどうかは、僕は数字を持っていません。読み返しがどの程度効くかは、会場ごとに確かめるしかありません。後半で、確かめ方を書きます。

決まりにするときの落とし穴

読み返しを仕組みにするときに、うまくいかなくなりやすい点が3つあります。

落とし穴1:全員が読める場所に置いていない

予約内容が、予約を受けた人のメールや個人のメモにしか残っていないと、担当者は読み返せません。見学の担当が決まったら、その担当者が1か所で読める状態にします。予約管理の画面でも、共有のシートでもかまいません。肝心なのは、担当者が探しに行かなくていいことです。

落とし穴2:読み返しの時間が一日の予定に入っていない

「前日までに読んでおくこと」と決めても、前日に余裕のある日は少ないものです。読み返す時間は、その日の最初の見学の20分前など、時刻で決めます。時間が置かれていない決まりは、忙しい日から先に落ちます。

落とし穴3:読んだことを言わなければ、二人には伝わらない

担当者が読み返しても、冒頭で何も触れなければ、二人にとっては読まれていないのと同じです。読み返しとセットで、最初の一言を1つ拾うところまでを決まりにします。拾う内容は担当者が選んでかまいません。

予約を受けた人と、見学を担当する人が違うとき

小さな会場なら、予約を受けた人がそのまま見学も担当することがあります。けれど、受付の担当と接客の担当が分かれている会場では、読み返しの意味はもっと大きくなります。二人は受付の人に話したつもりで、当日は別の人が出てくるからです。

このとき、受付の側で一手間かけておくと、読み返しが短く済みます。電話で聞いた内容を台帳に残すとき、二人の言葉をそのまま1行だけ残すのです。「階段が少ない会場がいい」「予算の上限は先に聞きたい」のように、二人が使った言い方のまま書きます。「親が足が不自由」と書き直すと、担当は二人が何に困っているのかをもう一度推測することになります。

電話の予約は、フォームと違って自由記入が残りません。聞き取った人の手に、読み返しの材料づくりが任されています。ここが抜けると、担当者がどれだけ早く台帳を開いても、読む中身が薄くなります。

読み返しシートは、欄を3つだけにする

5分で読むためには、読む画面を整えておくことも大事です。見る場所が散らばっていると、5分のうち3分は探す時間に消えます。

予約ごとに、次の3つの欄を1か所にまとめておきます。

  • 二人の言葉(原文のまま)
  • 来る人(二人だけか、同席者がいるか)
  • 入口(どこから予約したか)

欄を増やしたくなりますが、増やすほど読まれなくなります。「予算の感触」「挙式時期」などは、必要なら二人の言葉の中に書かれているはずです。別の欄を立てるのは、5分で読み切れる量に収まる範囲にとどめます。

シートを作る手間をかけられない会場なら、予約管理の画面を開いたときに、この3つが最初に目に入る並びになっているかを一度だけ見直せば足ります。新しいツールを入れる話ではなく、今ある画面の並びの話です。

読み返しが効かない場面

どんな場面でも効くとは言えません。

  • 自由記入がほとんど空の予約。読み返す材料がありません。この場合は、読み返しより、見学の最初に「今日いちばん知りたいことは何ですか」と聞くほうが早いはずです
  • 二人の文面に会場への不満や警戒が書かれているとき。一言拾うだけでは足りず、冒頭に時間をとって答える必要があります
  • 見学前にやることが多い日。読み返しの時間が確保できないなら、全組でなく、同席者のいる組や自由記入の長い組だけを先に読むと決めておけば、決まりが崩れません

効いたかどうかの確かめ方

読み返しを決まりにしたら、効いたかどうかを見ます。大がかりな検証でなくても、次の2つで足ります。

  1. 見学の終わりに、担当者が「冒頭で拾った一言」を1行メモしておく。拾った組と拾わなかった組で、その場の反応や成約までの動きを後から並べて見る
  2. 月の終わりに、読み返しを実施した組と実施しなかった組の成約率を並べる。件数が少ないうちは、差が偶然の範囲かもしれません。数か月ぶん溜めてから判断します

月の来館が40組なら、1か月で比べられる件数は限られます。差が出ても出なくても、最初の数か月は結論を急がず、続けて数えるのが堅実です。

始めるなら、まず1週間だけ

いきなり全組で始めるのは重いので、まず1週間だけ、次の手順で試します。

  1. 見学の担当者が、予約内容を1か所で読める状態にする
  2. 最初の見学の20分前に、自由記入の原文・同席者・入口の3つを見る
  3. 冒頭で拾う一言を1つ決めておく
  4. 見学が終わったら、拾った一言と二人の反応を1行メモする

1週間やってみて、5分が長すぎるなら3分に縮めるか、見る対象の組を絞ります。続けられる形にすることが、効果以前の条件です。

まとめ

  • 見学の最初の一言は、担当者が予約時の文面を読み返したかどうかで決まる
  • 読み返しが抜けるのは怠慢でなく、一日の流れに時間が置かれていないため
  • 5分で見るのは、自由記入の原文・同席者・入口の3つだけ
  • 読み返した内容は、冒頭で1つだけ拾って言葉にする。全部拾うと読み上げになる
  • 仮の月40組なら、読み返しは月に約3.3時間。成約率が1ポイント動けば、月0.4組に当たる
  • 落とし穴は、読める場所がない・時刻が決まっていない・言わなければ伝わらない、の3つ
  • 自由記入が空の予約や、強い警戒が書かれた予約には、読み返しだけでは足りない
  • 効果は読み返した組と、していない組の成約率を数か月ぶん並べて確かめる