来館・成約

式場の見学メモは感想より「二人が決める条件」を残す

見学が終わったあと、担当者は何かしらメモを残していると思います。ただ、そのメモを開いてみると「ご夫婦ともに好印象」「料理を気に入っていた」「検討して連絡するとのこと」といった感想が並んでいる式場が多いはずです。

僕は、見学メモの中身は感想ではなく「二人が何を基準に決めるのか」にしたほうがいいと考えています。感想は、書いた本人にしか意味がありません。決める条件が書いてあれば、担当が休んでいても、替わっても、2回目の連絡で何を言えばいいかが分かります。

この記事では、数字の出典は使いません。業界全体の平均を言い切れる調査は見当たらないので、仮の前提を置いたモデル計算と、仕組みの説明で進めます。

感想のメモは、2回目の連絡で使えない

「好印象だった」というメモが役に立たない理由は単純で、次の行動が決まらないからです。

追客の連絡を書くとき、担当者が知りたいのは「この二人は、何があれば契約に進むのか」です。好印象だったことが分かっても、何を足せば決まるのかは分かりません。結果として、2回目の連絡は「先日はありがとうございました。ご不明点があればお知らせください」という、誰にでも送れる文面になります。

もうひとつ困るのが、担当が替わる場面です。繁忙期の休み、退職、異動で別のプランナーが連絡することは普通にあります。そのとき感想だけのメモを渡されると、新しい担当は二人の顔も声も知らないまま、一般的な挨拶から始めるしかありません。二人からすると「前の人に話したことが伝わっていない」と感じる瞬間です。

感想は、見学中に担当者の頭の中にあった情報のごく一部です。それを文字にしても、残るのは結論だけで、結論に至った理由が抜け落ちます。追客で使えるのは、理由のほうです。

残すのは3行だけにする

メモを細かくしろ、という話ではありません。項目を増やすと、繁忙日の見学後には誰も書かなくなります。僕は次の3行に絞るのがいいと思っています。

1行目:二人が決める条件(1つ)

「何が揃えば、ここに決めるか」を二人の言葉で書きます。たとえば「親の席から祭壇が見えること」「総額が見積もり時点から大きく動かないこと」「平日の夜に打ち合わせができること」のようなものです。

これは見学の途中で、二人がふと漏らす言葉から拾います。聞き出す質問を用意するなら、「今日の見学で、いちばん気になったのはどこでしたか」「他の式場と比べて、ここは譲れないというところはありますか」の2つで十分です。

ポイントは、1つに絞ることです。3つも4つも書くと、どれが本当の決め手なのか分からなくなります。迷ったら、二人が一番長く話した話題を選びます。

2行目:まだ解けていない不安(1つ)

「決めきれていない理由」を書きます。「予算が親の援助次第で確定していない」「もう1軒見てから決めたい」「パートナーの休みが取れず、2回目の来館が難しい」といったものです。

条件が決め手なら、不安は止まっている理由です。条件を満たせていても、不安が残っていれば契約には進みません。この2つが別の行にあると、追客の連絡で「何を伝えるか」と「何を解くか」を分けて考えられます。

3行目:次にこちらが約束したこと(1つ)

「見積もりを人数違いで出し直して、翌日に送る」「平日夜の打ち合わせ枠を確認して連絡する」など、こちらから約束したことです。

これが抜けると、二人は「連絡をもらえるはず」と待っているのに、式場は何も覚えていない、という状態が生まれます。約束の期限も添えておきます。メモとしてはこれが一番大事かもしれません。約束を守れたかどうかは、二人の信頼に直結するからです。

3行で、追客の文面が変わる

3行のメモがあると、2回目の連絡がどう変わるかを例で見てみます。

感想だけのメモの場合は、こうなります。

「先日はご見学ありがとうございました。ご検討状況はいかがでしょうか。ご不明な点があれば、お気軽にお知らせください。」

3行のメモがある場合は、こうなります。

「先日はありがとうございました。お話しされていた、お母様のお席から祭壇が見えるかどうかについて、席の配置図を作ってみました。添付しますのでご覧ください。人数違いの見積もりも、お約束どおり本日お送りします。」

後者は、二人が話したことを覚えていて、その場で出した宿題を済ませた連絡です。読むのに30秒もかかりません。それでも「ちゃんと聞いてくれていた」と感じてもらえる材料になります。

ここで気をつけたいのは、メモの言葉をそのまま連絡に使うと、監視されているように感じる二人もいる点です。「お話しされていた」と言えるのは、二人が実際にその場で話したことだけです。同伴者が漏らした一言や、聞こえてしまった会話を、勝手にメモから拾って連絡に書くのは避けます。メモには、二人が担当者に向けて言ったことだけを書く。これを守れば、嫌な気持ちにはなりません。

前提を置いて、メモの有無で何が変わるか計算する

効果を実数で言い切れる調査は見当たらないので、仮の前提でモデル計算をします。数字は想定です。

  • 月の見学組数:40組
  • そのうち、2回目の連絡が必要な組:20組
  • 担当が替わる、連絡が遅れる、といった理由で2回目の連絡の質が下がる組の割合:3割(6組)

感想だけのメモだと、この6組への連絡は一般的な挨拶に寄ります。3行のメモがあれば、この6組にも「前の話を引き継いだ連絡」を出せます。

引き継いだ連絡によって契約に進む確率が上がる幅を、仮に5ポイントとします。6組の5ポイントは、0.3組です。月に0.3組、年に3.6組の差になります。

visits = 40
second_contact = 20
degraded_ratio = 0.3
lift = 0.05

affected = second_contact * degraded_ratio
print(affected)               # 6.0
print(affected * lift)        # 0.3
print(affected * lift * 12)   # 3.6

仮に1組あたりの契約金額を300万円と置くと、年に3.6組の差は約1,080万円です。ただし、これは5ポイントという仮定に全部が乗っています。実際の上がり幅は式場によって違いますし、ゼロかもしれません。

この計算から言えるのは、金額の大きさではなく、仕組みの構造です。メモを3行にする手間は、1件あたり1〜2分です。月40件でも、合計は1時間ほどです。担当が替わる組が月に数組でもあれば、その1〜2分が効く場面は確実にあります。手間に対して、効いたときの差が大きい。ここが、メモを整える意味です。

運用の決め方:誰がいつ書くか

3行のメモは、書く場所とタイミングで定着するかが決まります。

タイミングは「見学が終わった直後の5分」

見学の終了から1時間経つと、二人が言った言葉はかなり薄れます。理想は、二人を見送って、次の組の準備に入る前の5分です。繁忙日で5分が取れないなら、せめて1行目の「決める条件」だけでも、帰り際に書きます。

一日の終わりにまとめて書くと、感想だけになりがちです。感想は覚えていても、二人の言葉は忘れるからです。

書く場所は「追客のときに必ず開く場所」

予約管理のシステム、顧客管理のシート、紙のカルテなど、式場によって違います。選ぶ基準は一つで、追客の連絡を書くときに、必ず目に入る場所であることです。別のシートに書くと、開かれません。

担当が替わるときは、3行だけを渡す

引き継ぎのときに、全部のやりとりを読み返させるのは現実的ではありません。3行のメモだけを渡せば、新しい担当は3分で状況をつかめます。逆に言えば、3行で状況がつかめないメモは、書き方が悪いということです。

メモで見えてくる、式場側の弱いところ

3行のメモを一定期間ためると、副産物があります。1行目の「決める条件」を集計すると、自分たちの会場で二人が何を決め手にしているのかが見えてきます。

たとえば、1行目に「総額が動かないこと」が目立つなら、見積もりの出し方の問題です。「アクセス」が多ければ、案内の見せ方か送迎の問題かもしれません。2行目の「不安」に「もう1軒見てから」が多いなら、他会場と比べられるときの見せ方を見直す材料になります。

これは感想メモからは取れません。「好印象」を何十件集めても、改善する場所は見えないからです。メモを整えることは、追客の質を上げるだけでなく、会場の改善点を拾う入口にもなります。

ただし、集計は多くても月1回、傾向を眺める程度で十分です。件数が少ないうちは、少数の件で結論を出さないようにします。10件や20件で「うちの二人は総額が一番」と言い切るのは早いです。

書かないほうがいいこと

最後に、メモに書かないほうがいいことを挙げておきます。

  • 二人の外見や雰囲気への評価(「落ち着いた感じ」「決断が早そう」など)。根拠が弱いのに、次の接客の先入観になります
  • 二人の収入や家庭の事情の推測。聞いていない情報は書かない
  • 他の式場の名前や悪口。聞いた事実としては残してよいですが、評価は書きません
  • 契約の見込みの点数付け。点数が先に立つと、点数の低い組への連絡が後回しになります

メモは、次に連絡するときに二人の役に立つ情報だけを残す場所です。担当者の見立てを書く場所ではありません。

まとめ

  • 見学メモが感想だけだと、2回目の連絡が誰にでも送れる挨拶になり、担当が替わると引き継ぎも効かない
  • 残すのは3行。「二人が決める条件」「まだ解けていない不安」「こちらが約束したこと(期限つき)」を1つずつ
  • 条件は二人が一番長く話した話題から選び、二人が担当者に向けて言ったことだけを書く
  • 前提つきの計算では、連絡の質が下がる組が月6組、契約に進む確率が5ポイント上がると仮定して、年3.6組の差になる。上がり幅は仮定で、式場によって違う
  • 書くのは見学直後の5分、場所は追客のときに必ず開く場所、引き継ぎは3行だけを渡す
  • 1行目をためると、二人の決め手が見えて、見積もりや案内の見直しにつながる。ただし件数が少ないうちは結論を急がない