来館・成約

式場の見学予約ページは、所要時間を短く書くと当日に揉める

式場の見学予約ページには、たいてい「所要時間 約60分」「約90分」といった一行があります。予約を取りやすくしたくて、少し短めに書いている式場も多いと思います。

僕は、この一行を実際の所要時間より短く書くのはやめたほうがいいと考えています。予約の入口では得をしても、当日に損が出るからです。結論から書くと、所要時間は「実際にかかる時間」より少し長めに、しかも中身の内訳つきで書く。これが、見学の満足度と成約の両方を守る書き方です。

この記事では、数字の出典は使いません。業界全体の平均を言い切れる調査は見当たらないので、仮の前提を置いたモデル計算と、仕組みの説明で進めます。

所要時間を短く書くと、何が起きるのか

予約ページの所要時間は、二人にとって「その日の予定の枠」になります。二人はその枠の前後に、別の予定を入れます。

  • 午前の枠なら、昼から別の式場の見学
  • 昼の枠なら、夕方からの仕事や家族との食事
  • 夕方の枠なら、帰りの電車や子どもの迎え

予約ページに「約60分」と書いてあれば、二人は60分で組みます。ところが実際に案内すると、会場の見学、模擬挙式の説明、試食、見積もりの説明と進んで、90分から2時間になる式場は珍しくありません。

このズレは、当日の最後の30分に出ます。見積もりの説明に入ったところで、二人が時計を見はじめる。「次の予定があるので」と切り上げられる。これがいちばん痛いのは、見積もりの説明が成約の山場だからです。

つまり、短く書いた所要時間は、予約を1件増やす代わりに、最後の説明を削る約束になっています。

仮のモデル:見学枠が月24組の式場

数字で見てみます。ここから先は、実在の式場のデータではなく、分かりやすくするために置いた仮の前提です。

  • 土日だけ見学を受ける。1日3枠、週に6組、月に4週で24組
  • 実際の見学は、試食と見積もりまで含めて平均105分かかる
  • 予約ページには「約60分」と書いてある
  • 次の予定があって、60分を過ぎたあたりで中座する二人が、仮に3割いる

この前提で数えると、24組のうち約7組が、見積もりの説明の途中で席を立つ計算になります。仮にその7組のうち半分は、中座しても後日見積もりを見て決める二人だとして、残りの約3〜4組は説明が中途半端なまま終わります。

3〜4組が成約したかどうかは分かりません。ただ、見学の最後の30分が足りなかったことは、仕組みとして確実に起きています。月に3〜4組の「説明しきれなかった見学」は、成約率を数ポイント動かすのに十分な数です。

これが「約90分」と書いてあったらどうなるか。実際の105分との差は15分に縮まります。「約120分」と書いてあれば、実際より15分長いので、二人は余裕を持った予定を組みます。差が15分なら、最後の説明を削らずに済みます。

「長く書くと予約が減るのでは」への答え

長く書くと予約が減る、という心配はもっともです。僕は、この心配は半分は当たっていると思っています。

予約ページの時点で「2時間」と見て、離れる二人はいます。特に平日の夜や、午前に別の式場を回る二人には、長く感じられます。

ただ、ここで離れる二人は、当日に中座して成約につながりにくい二人でもあります。予約は取れたけれど、最後の説明を聞けなかった見学は、予約数には数えられても、成約には届きにくいです。

比べるのは「予約数」ではなく「最後まで説明できた見学の数」です。予約が24組から22組に減っても、最後まで説明できた組が増えるなら、損ではありません。

自社でこれを確かめるなら、所要時間の表記を変えて、次の3つを2か月ほど見ます。

  1. 予約数(表記を変える前と後)
  2. 見学の途中で席を立った組数(担当者が記録する)
  3. 見学後2週間以内の成約数

3つを並べて、予約数は減ったが、途中で席を立つ組が減り、成約数が同じか増えたなら、長めの表記が合っています。

長く書くときの書き方:内訳を添える

「約2時間」とだけ書くと、二人は身構えます。長さの理由が分からないからです。そこで、内訳を添えます。

たとえば、こんな形です。

  • 会場と控室のご案内:約30分
  • 模擬挙式のご説明:約20分
  • 試食:約40分
  • お見積もりとご相談:約30分

合計で約2時間。この書き方なら、二人は「試食があるから長いのか」と納得できます。そして、短縮したい二人は「見積もりは次回にする」「試食は今日はなしにする」と選べます。

選べることが大事です。時間が足りないとき、二人が自分で削る項目を選べると、中座ではなく「今日はここまで」という合意になります。

内訳には、順番も書きます。成約に近い説明(見積もり)を最後に置くと、中座の影響がそのまま出ます。時間が限られている二人には、見積もりを先に回す選び方もあります。予約フォームに「ご予定の都合で、見学の途中までになる場合はお知らせください」と一行添えておけば、担当者は順番を入れ替えられます。

所要時間を決める前に、実際の時間を測る

そもそも自社の見学の実際の所要時間を、正確に知っている式場は多くないと思います。感覚で「だいたい90分」と書いていて、実際は2時間近くかかっていた、ということが起こります。

測り方は簡単です。1か月、担当者が見学の開始と終了の時刻を、予約表に書き込みます。

  • 開始:二人を受付で迎えた時刻
  • 終了:二人を見送った時刻
  • 途中で席を立った場合は、その時刻と理由

1か月で20件ほど集まれば、平均だけでなく、いちばん短い見学といちばん長い見学の幅が見えます。表記に使うのは、平均よりやや長い値です。仮に平均105分で、長い見学が135分なら、「約2時間」と書けば、ほとんどの見学が表記の中に収まります。

平均ではなく、幅を伝える書き方もある

もうひとつの書き方が、幅を示すことです。「約90分〜2時間」と書く。幅があると、二人は長いほうに合わせて予定を組みます。

幅の書き方にも注意点があります。「90分〜3時間」のような広い幅は、どう予定を組めばいいか分からなくなります。幅は30分程度に収めます。

また、フェアの日と通常の見学の日で、所要時間が違うはずです。フェアは試食と模擬挙式が入るので長くなり、通常の見学は会場の案内と見積もりが中心で短くなります。予約ページがひとつで、どちらも「約60分」では、片方は必ず外れます。ページ上で、フェアの予約と個別見学の予約を分けて、それぞれの時間を書くほうが正確です。

見学枠の間隔との関係

表記を長くするなら、枠の間隔も確かめます。1日3枠で、各枠の間が実際の所要時間より短いと、前の組の見学が延びたときに、次の組を待たせることになります。

仮に枠の間隔が150分で、実際の見学が105分なら、45分の余裕があります。表記を120分にしても、前後の組が重なることはありません。逆に、間隔が120分で実際の見学が135分の長い見学が起きると、次の組を15分待たせます。

待たせた15分は、次の組の最初の印象を損ねます。所要時間の表記と枠の間隔は、セットで見直します。表記を長くしても枠を詰めたままだと、問題が前の組から次の組に移るだけです。

見直しの順番は次のとおりです。

  1. 実際の所要時間を1か月測る
  2. 平均と長い見学の幅を見る
  3. 枠の間隔が、長い見学でも次の組に響かないかを確かめる
  4. 表記を、平均よりやや長い値に直す
  5. 内訳を添える

他の式場の表記と並べて見る

二人は、複数の式場の予約ページを見比べています。他の式場が「約60分」と書いていて、自社だけ「約2時間」と書いていると、自社は面倒に見えるかもしれません。

ここは、内訳でカバーします。「試食つきで2時間」と書けば、時間が長い理由が価値として伝わります。長さそのものではなく、その時間で何が得られるかを見せる書き方です。

反対に、他の式場の表記を真似て、自社も「約60分」にしてしまうと、実際の見学と合わなくなります。表記は、他社ではなく自社の見学の実態に合わせます。

当日の担当者の動き方も変わる

表記を直すと、担当者の動き方にも手を入れられます。

  • 受付で「本日は約2時間のご予定です。お時間は大丈夫ですか」と一言聞く
  • 二人が「1時間半しかない」と言ったら、見積もりを先にするか、次回に回すかを選んでもらう
  • 終了予定時刻を、最初に伝える

最初に時間を確認するだけで、最後に時計を見られる事態が減ります。これは表記を長くしなくてもできますが、予約ページの表記と受付での確認が揃っていると、二人の納得感がより強くなります。

時間が長くなりやすい見学の見分け方

実際の所要時間は、見学ごとにばらつきます。ばらつきを生む要因は、仕組みとして分かっています。

  • 同伴者が多い。二人に加えて親が来ると、質問が増え、説明が長くなる
  • 試食の品数が多い。席に着いてから食べ終わるまでは、案内の人数で短縮できない
  • 比較している式場が少ない。1軒目の見学は、会場の仕組みから説明するので長くなりやすい
  • 二人の意見が割れている。見積もりの説明で、話し合いの時間が入る

予約フォームに「同伴者の人数」を聞く欄があれば、人数が多い予約にだけ「約2時間半」と出す、という作り分けもできます。そこまで手を入れなくても、予約確認のメールで「ご家族とご一緒の場合は、30分ほど長くなることがあります」と一文添えるだけで、中座は減らせます。

見学の終わりごとに、担当者が「予定より長かった理由」を一言メモしておくと、次の月の表記を直すときの材料になります。理由が「親の同席」に偏っていれば、親向けの案内を分けて考えられますし、「試食の待ち」に偏っていれば、厨房との段取りを見直す話になります。表記を直すことは、見学の中身を見直す入口にもなります。

まとめ

  • 予約ページの所要時間は、二人にとって「その日の予定の枠」になる
  • 短く書くと、見積もりの説明という成約の山場を、二人が削ってしまう
  • 仮のモデル(月24組、実際105分、表記60分)では、約7組が途中で席を立つ計算になる
  • 比べるのは予約数ではなく、最後まで説明できた見学の数
  • 表記は平均よりやや長めに書き、内訳(案内・説明・試食・見積もり)を添える
  • 実際の所要時間は、1か月、開始と終了の時刻を記録して測る
  • 表記を変えたら、枠の間隔が長い見学でも次の組に響かないかを確かめる
  • 所要時間は、他社の表記ではなく自社の見学の実態に合わせる